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別れって辛いよね、ぐーちゃん。いつかはうちとも、お別れ。なんだよ?


タッパからトングで掴み4枚目のお肉を網に乗せて、3枚目をタレ皿からトングで掴んで、あんぐっと頬ばる。

んー、口にご褒美って感じ、この至福の時間だよぅ。


相変わらずピリリと痛みを伴う・・・辛さ?何かなー、マズくは無いし、凛子もみやこも甘さが足りないって。

再チャレンジで成功するかなー、失敗すると生産時間が半分になるから、うーん、次は5日後。


そんな事を思いながら4枚目をタレ皿に移して、5枚目を網にのせようとタッパの中のお肉を、トングで掴もうとしたその時。


「──今、いいか?」




声がする方を向くと、ぐーちゃんが食堂の壁を見つめるのをやめて、うちの肩ををぐっと掴んでくる。


みやこモドキになってから、ぐーちゃんはどこか表情が変で。

今だって、眉を下げて微笑んでるしー、ちぐはぐなんだよなぁ?


違和感、有りすぎるよぅ。



「どしたのぉ、ぐーちゃん?」


うちの肩を掴むみやこモドキの右手を見る。

パワーの調整が出来ないのか、少し・・・痛い。

それなのに、みやこモドキは余り力をいれている様には見えなくて、力の入れ方もそうだけどやっぱり、みやこの体を持て余してるぽいんだ、ぐーちゃん。


「──クドゥーナ、セフィス達にお別れをしよう。すぐに出るぞ、向かうは西だ!」


口調は真剣、こっちは完全に扱えてるぽいんだ。

問題はどう言っても表情だよぉー、何でジト目でうちを睨んでるの?


悪いけど、みやこの顔で睨まれる・・・と、うちはまだ怖い。

今ではみやこも優しく接してくれるから、突き放されても瞳が微笑ってれば怖くなくなったのに。


「ぐーちゃん、今?」


瞳を逸らす。

怖くて耐えられない、自然と全身に刷り込まれたみやこへの恐怖が、ゾクッと背筋を震わせる。


うちもね、悪かったよ。

あの時の事は。

って言ってもみやこの口から出た罵声や、強制する言葉とか思い出したくもないのにリフレイン。

壊れたように脳内リピートする、言わされた台詞。

そんなトラウマがあるから、好き好んでみやこと関われなかったぐらいなのに──


「──今だ。」



声色はみやことは、全然違う女の子の声なんだけど、姿がみやこだと、ね。


うちの問いに、はっきり答え返すみやこモドキ。

恐る恐る見上げると、表情は柔らかく変化していた。

うーん、鏡で見せながら表情の使い方教えないと、うちの方が大変じゃない?


「解ったー。でも、二人はまだ残るかも知れないよぅ?今、山に上ってるイライザって人と友達になったらしーの。んとぉ、ゲーテとかもだねぇー。」


ぐーちゃんが急かすように、うちの肩を掴む力が強くなったけど・・・付いては行くよぉ、うちは。

みやこと凛子はどぉーかなぁ?


みやこモドキの瞳をまともに見れない。


一番のトラウマになってる顔がある、今まさにその表情。

止めてよ、その誘うような瞳。


「──神気が揺らぐ、悪い感じがしたんだよ!」


みやこモドキが叫んだ、強く拳をうちの目の前で握りしめて。

その表情はまるで悪魔にでも、引き込まれそうになるような魅力的なあの顔。


小刻みに全身に震えが走り回る、なにこれ?

やっぱり、トラウマからは逃げれないのぉ?


怖くない、怖くない、怖く・・・ない。

うちは自分を落ち着かせようと、胸に手を当てて心の中に呟く。


克服出来てる、もうみやこを怖がる事は無いと思ってた。

なのに、貌の変化と違和感にあっさり陥落してしまうなんて、・・・あ、段々落ち着いてきたかなっ。


おまじないとも言えない、自らへの暗示。

それでも、驚くほど効果抜群で、震えが収まっちゃうの、やったね!


「・・・止めても無理っぽいね?お別れしに行こう。」


チラとみやこモドキの瞳を見て、覚悟を決めたうちはみやこモドキを見つめ返しながら答えた。

まず、ね。

神気が何か解ってないんだけどね、うち。






やがて、みやこモドキのぐーちゃんとうちは、行き付けの遊び場所、裏路地の空地にセフィス達の姿を見付けて駆け寄ったんだぁ。


みやこ本人とも会った事無いのに、・・・だからこそかなぁ、セフィスは目の前で見下ろしてくる、みやこモドキに眼が点になりながら必死に声に出そう、と頑張るけど出来ないぽいんだ、口をパクパクさせるだけしか。


「──セフィス・・・。」


「セフィス、あのね。」


みやこモドキがセフィスを呼ぶ。

知らない人から名前を呼ばれてセフィスったら、俯いちゃった。


続いてうちが喋り掛けると、顔を真っ赤にしてうちを見上げてくるセフィス。


「クドゥーナ、隣の綺麗なお姉ちゃん誰ぇ?」


照れたのか、そう言って唇をキュッと閉じる。

警戒するわけじゃなくて・・・セフィスはみやこモドキの姿に、圧倒されちゃったのね?

ピンクの、お姫様みたいなワンピースドレス、しかもレースが、これでもかってくらいに使われてて豪華に見えないって事も無い、か。


「──俺は、あのね。」


みやこモドキがセフィスを覗き込もうと前屈みに、中腰になる。


それを見てセフィスが後退り。

ダッ!と回り込んで、うちの足下にすがり付くとみやこモドキを窺うみたいに、顔を半分だけ出して。


「いいから、うちが説明するよ。」


あー、綺麗だけど警戒されちゃうか、そっか・・・みやこはセフィスにも、怖がられちゃう。


みやこモドキなんだけどね、中身はぐーちゃんだし。

仕方ないなあ、うちから説明しないと。


「ぐーちゃんだよ、セフィス。」


足下のセフィスをね、頭をくしゃくしゃと撫でて落ち着いてきたかなと思ったから、しゃがんでセフィスの目線に合わせて瞳を覗き込む。


「う、嘘ぉー!?ぐーちゃんはもっとちぃちゃいの。妖精さんなのっ。」


うちの言葉に小さな両手をセフィスはぎゅっと握りしめて、信じられないと言いたげに吃驚しちゃって。


いやー、うちも信じられないくらいなんだけど・・・ぐーちゃんなんだよね、コレの中身わ。


うちが冗談だよっ。って微笑うのを、セフィスは期待っているんじゃないかってゆーのが解って、心のどこかが苦しいです。


今から、セフィスにお別れしなきゃいけないのに、言おうと喉まで出た言葉を飲み込んで、首を振った。


「そうだよ、クドゥーナ。僕だっておかしいって思うよ。」


後ろで聞いていたケインも、いつの間にか隣にやって来て真面目な顔しちゃってさ。

でも、信じてあげて?真実なんだもん。


「──セフィス、俺をだっこしてくれたろ?人の心の温かさをセフィス達で俺は学んだんだ。」


背中越しにみやこモドキの声が聞こえる。

視線はじぃっと、セフィスを見つめたまま。

ぐーちゃんだってお別れしなきゃいけないのに、頑張ってる。

この先会えない訳じゃないのに・・・辛いね。


「・・・ぐーちゃん、なの?」


「そうだよ。」


瞳を大きく開いて、まだ信じられないみたいにセフィスはうちと、うちの後ろで微笑ってるか睨んでるのか、表情をコントロール出来てないみやこモドキを、交互にキョロキョロと視線を移し、うちが頷いてみやこモドキも頷いた後で。


「──うん。」


「ぐーちゃん、凄い!ちょっとみない間にこんなに・・・。」


叫びながら駆け出したセフィスは中腰になってたみやこモドキの首に抱きついちゃった。


みやこモドキがセフィスを支えるように右手で抱くと、セフィスは片手で首に抱きついたまま、みやこモドキの頬に触れる、その時。


「──戻り方も解らないんだ。それに──今日は、お別れに・・・来たんだ。」


みやこモドキはセフィスを抱き抱えたままスクッと立ち上がり、寂しそうにか細く呟いた。


「えっ、・・・またすぐ会えるよね?」


「ううん、ちょっと遠くへ出ないとぉ、行けなくなっちゃった、だから。」


どこへ行くかはまだ、解らないけどきっと、遠いトコ。

それが解ってたからうちはみやこモドキに抱き抱えられて、うちより高い視点に居るセフィスの頭を手を伸ばして撫でた。


「うぅぅ、クドゥーナぁ!」


ケインは解ったみたいでうちの名前を叫んで、腰の辺りに飛び付いてくる。

嗚咽する声が聞こえてくるけど、見ちゃったら余計苦しくなるの解ったから・・・振り返れないよぅ。


「ぐぅーちゃんん・・・ぅぅう。」


セフィスもみやこモドキをぎゅうっと抱き締めて、最後には嗚咽混じりで泣き出しちゃって。


「ごめんね、わたし、お別れ・・・こんなに辛いなんて、ぐすっ。」


釣られちゃったか。

うちもグズグズに悲しくなっちゃって、頑張って我慢したんだけど、結局。


粒状の熱い水が一滴。


その後は溢れ出すものが止められなくなっちゃって、次から次から流れ落ちてくのが、頬を伝う熱で解ると自然と声に出して、嗚咽混じりで泣いたんだ。


「クドゥーナ、行っちゃうのか?」


「セフィス、デフック、それにケインもぉ、絶対帰って来る。次の無いお別れじゃぁないから、ね。」


よぅ、ガキ大将、遅かったね。

かくれんぼでもしてたのか、この場に居なかったデフックが、まだ止まらない涙を流し続けてるうちに話しかけてくる。

泣き顔じゃないのはみやこモドキと、泣くタイミングの無かったデフック。


順繰りに三人を見詰めながら、溢れる涙を指先で振り払ってうちは、強くそう思ったんだ。

三人のためじゃない、自分のために。

絶対帰ってくるから。


「ぐ、・・・ひっく・・・約束、・・・だよ?」


「ぐす、えへへ。泣かないの、セフィス。皆のお姉ちゃんでしょ?うちは、帰って来る、必ず。」


言葉にもならない、嗚咽に比べても霞むくらいのセフィスの声に、同じように泣いてたらダメだって思って、流れる涙を振り払い無理に笑って。


セフィスの心に刻むように、刻めるように祈りの様な約束をした。


「──俺だって帰って来る。」


「変なの、くすっ。ぐーちゃん、綺麗なお姉ちゃんになったんだから、俺はやめなきゃね。」


声に振り返ると、腕組みしてみやこモドキは微笑んでいた。

潤むような瞳からは、今にも溢れ出そうな熱い水が湛えられてて、


「──それは、難しい。俺が最強だからな、俺を止める訳には行かない。」


そう言って微笑むみやこモドキの頬を、幾つもの熱を含んだ滴が転げ伝い、落ちていった。

強いって言う癖に何にも出来ない、涙を振り払ってるみやこモドキを見てるとなんだかおかしくなっちゃって、


「頑固ね、ぐーちゃん、クスクス。」


今さっきまで泣いてたのに、笑いが我慢出来ない。


「──もう、いいのか?」


皆と視線を合わせて充分に抱き締め合うと、うちはスクッと立ち上がりみやこモドキに並んで手を取り、片手で手を振りながら歩き出す。


ちょっと、離れるだけだもん。


「うん、行こう。凛子にもみやこにも説明して、来て貰わないとだし。」


「──?・・・シェリルには言わないのか。」


「あー、えっとね。うーん、後でそれは説明するね、宿に戻ろ。」


ぎゅっとみやこモドキの手を握りしめて、うちは前を向く。


ぐーちゃんは、みやことシェリルが一緒だって知らないからなぁー。


今、説明しないといけない訳でもないしいーや。

宿着いてから、みやこの前で説明したげればいいよねぇ?





えーと、脳融けてる状態で書いてたもの。


ぐーちゃん、いつ元に戻れるんでしょーか、そしてどーして変化しちゃったのか。



しばらくその話は抜きにして焼き肉焼きませう。



次回──昼くらいにあげれたらいいなぁー。


今、2章なんですけど、イライザ辺りが2は出張るのでイライザ片付けないとぐーちゃんのあれこれ始められないってかー、展開遅いな、2章。

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