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公式発表、26人

生産。

決まった素材さえあれば、ふぁんたじー的な融合で新しいアイテムが出来ちゃう、失敗作だって少なくは無いらしんだけどね、それでも。


素材だってタダじゃない、願えば与えられるものじゃない事もなんとなく解ってはいるんだけど。


嬉々として話す愛那見てたら、わたしにも出来たりしないかなって思った。


聞いてみた。

わたしにも出来たりしないかなってそしたら、


「うちが、2年みっちり生産やって今のレベルなんだよー?」


うげー、それはまた長いや。

だらだらとお喋りをわたしが楽しんでた間に黙々と愛那が積み上げ、重ねた年月の差だ、言ってしまえば京ちゃんだってレベアゲや冒険に費やした時間。


「・・・なるほ。2年・・・気が遠くなるね。」


つくづくわたしは異端なんだと、思ったんだ。

だって、・・・ノルンに来た他の誰かは飛び抜けて高い何かがあったりするのに、わたしにそれは無いんだもん。


「うちは、妖精さんやギルメンと話してたらぁ、生産やって苦しく思った事ないけどぉ。」


「やっぱり、経験値あったりするの?」


愛那なら生産だったり妖精の召喚だったり、ヘクトルと京ちゃんなら強力なスキルと選択した種族のアベレージだったり、冒険で得たわたしに知り得ない情報と高価なマナとグリムと言う成金通貨。

その全て、わたしに無いもの。


そんな事を考えてたら、何でわたし、此処に居るのか解らなくなる、だって要らない子じゃん、わたし。

せめて、葵ちゃんなら。

こんな非日常もそれだけで楽しめるんだろーな。


愛那と話しながらぼーっとそんな無茶な事も頭を過っていく。

葵ちゃん、引退しちゃってるんだけど、ね。

今年受験だから、忙しくなってさ。


京ちゃんは余程お腹が空いてたのか、わたし達に目もくれずランチを食べてる。

たまにぐーちゃんが料理に手を出すのか、『それ、わたしの!』って叫ぶ声なんか出してたけど。


愛那はわたしの前の席に座ると得意気に胸を張って。


「熟練。何だけどぉ、次のレベルまでの表記無くてー、バー表示で左からバー満タンにしたらレベルあがるの。」


なる。

経験値では無くて熟練度ぽい。

それなら数をこなすだけでポイントが加算されるはず、


「あ、別のゲームで見たことある・・・毎日、同じケーキ焼いてたの、思い出したわ。」


そう思って声に出すと、チチチと訳知り顔の愛那が鼻息荒く笑う。

あれ、違う?

危険な事も無いから簡単そうに思えたんだけど、・・・な。


「ふふっ、熟練をあげるには失敗はバー動かないんだよねーぇ。成功率の高いのを幾つ、どれだけの日数で作れるか?ってそれだけが重要?だから、熟練はあがっても失敗が多い品は一度も触って無かったりとかー。」


「それ聞いたら、誰もやる気無くしちゃうよー、熟練度上がらないじゃん。」


一気に捲し立てる愛那に少し引いて答えるわたし。


失敗はバー上がらない、つまりは成功しないと意味が無いんだもん、それは運営もユーザーの事考えて無いじゃないの?


「そうでもなくてねーぇ、成功率upイベや、装備があったりしたんだぁー。」


そーゆー抜け道があったんだ。

成功率が上がるイベント日があれば、生産が好きなユーザーが無理してでもログインしようと頑張っちゃうよね、運営悪知恵働かせてるな。


わたしが頭の中でそんな事を過せていると、京ちゃんが振り返って質問してくる。


「その装備持ってたり?」


京ちゃんの声にわたしは一瞬声のした背中の方に振り返り、んぐんぐと口を動かす京ちゃんと眼が合う。

その後ろでは、京ちゃんと一緒の顔のぐーちゃんが手掴みで京ちゃんのランチを頬ばり、同じように口を動かす。

えっと、同じ物が同じように動いてる・・・何だっけ、あ!思い出した、ユニゾンだ。

エ○ァで見た。ぴったり同じ動きをするんだよね、正に今のぐーちゃんが京ちゃんがそれ、ユニゾンしてた。


「無い無いっ!うちのギルドじゃギルマスだけ持ってたかなぁ、結局・・・生産で創る品何だけど、一人1個限定、特別製。うちの熟練はそこまで中々上がら無くってーぇ。」


京ちゃんの問いに答える愛那はたははと苦笑い。


その口振りだと、成功率up装備は相当特殊で貴重そうなんだって思う。


焼き肉のタレがどれ程の生産レベルなのか解らないけど、10日かっかちゃうような感じなんだから、生産は根性に根性を重ねて熟練度を上げないとダメぽいの、解った。


素材を無駄にするの解ってて、生産しないと行けないんだもんね。

ん、ゲームだと10日も掛からないのかも知れないよね、掛かって1時間とかじゃないとユーザー本気で生産から離れちゃうと思うもん。


「わたしの居たギルドはリベリオン=コール、愛那は?」


「フェアリィ・クレスト。今、どして聞いたの?」


わたしがどーでもいい事を考えて唸っている間に、愛那と京ちゃんが何事か解らない会話をしてる、ギルドって何だっけ?イルミや、葵ちゃん、その他のフレなんかにも言われた事あったような。


でも、結局はイン時間が合わなかったりで詳しい話は無かったっけ。


「そのギルマス、良く素材売ってたから知ってるわ。・・・メサイア、廃人ってあーゆーのに使う言葉よね。」


また解んない言葉だ、はいじん?あれは現国の時間で聞いたんだったかな、俳人。

俳句を作って詠む人だよね?


「ギルマスと・・・知り合いだったんだ、みやこ。うん、廃人だった、けどカンストして。生産も素材余らせるよーになっちゃってて冷めてたよぉ?今年受験だって言ってたのに・・・こっち来ちゃったけどねーぇ。」


京ちゃんが口にした名前に反応して、愛那は困ったように頷く。


そして、吃驚した様にわたし越しに京ちゃんを見詰めたまま、愛那が喋っているのを聞いてたら、急に口ごもると俯いちゃって愛那はごにょごにょと最後に呟いた。


カンスト?また解らない会話だなー、と思ってたら最後にでっかい地雷が。


「「え?」」


思わず京ちゃんと二人、声がハモっちゃう。

何?わたし達の他にもノルンに来てるの?その、俳人さんの、えっと、メサイアさんだっけ。


「うちの探してた人はギルマスなんだよね、住んでるとこも近くて・・・うちら、リア友。三個上なんだけどギルマス──メサイア。こっちでも再会出来たんだけど、急に姿消しちゃってぇ・・・。」


ゆっくり思い出しながらだったりするんだろう、愛那が溜め息を吐いて指で綺麗な碧眼と、お揃いの前髪をかきあげて答えると、我慢しきれなくなった京ちゃんが席を立って愛那に詰め寄っちゃった。


「メサイアが、ここに来てる?」


「う、・・・うん。近い、近いってばぁ。みやこぉ。」


鼻先まで愛那の碧眼を覗き込みながら、前屈みになった京ちゃんが真剣そうな表情で、掴み掛かりそうな勢いだったんだけど。


困ったように愛那が声を溢すと、スッと立ち上がって何事か考え込みながら呟いてるみたいだった、ブツブツと。


氷の川の時も、考えながら思考を纏めるみたく呟いてたしね。


「・・・あの廃・・・居た・・・、こっちに来て・・・」


「凛子ぉ、みやこ変。」


わたしは前に見てるから知ってて、愛那は見たこと無い姿だったからちょっと引いてるぽい。


「京ちゃん、どしたの?」


話しかけても返事は無くて、相変わらずブツブツと呟くのを京ちゃんが止めなかったから、わたしは。


「・・・オイ・・・、──い翼・・・うっひぇえ?」


「何?凛子。」


「急に自分の世界に入っちゃったから・・・擽ったら還ってくるかなって。」


擽った。

脇腹とか背中とか、京ちゃんがその辺、擽ったいかな?と思うとこを。


結果、ぷるぷると震えながら変な叫び声をあげる京ちゃん、普段見せない姿だから妙に可愛らしく見えちゃった。


ニヤニヤとわたし、笑っちゃってたかも。


「そう、えっとね。今考えてたのは、廃人連中はこっち来てるんじゃないかなって、・・・そゆこと。」


「それがどうしたの?」


俳人さんが来たからどうしたってゆーわけ?

余程擽ったかったのか最初の方は声が上擦ってて、俯いちゃった京ちゃんの頬が少し赤い。


京ちゃんは立ってるしわたし座ってるから、俯いちゃっても表情が覗けちゃう。

それに気付いて京ちゃんがますます、かぁっと顔を真っ赤に染めて唇をぷるぷると震わせながら、ぷいと後ろを向いた。


耳まで真っ赤だよ?余程照れ臭かったのかな、でも何が?


「凛子は・・・さ、・・・ギルド戦て知ってる?見たり聞いたりはしてたと思うん・・・だけど。」


まだ、少し赤い京ちゃんがそれとなく椅子を持ってきてテーブルに着く。


誰とも目線を合わせようとしないのは・・・何か京ちゃんとの間に壁を感じちゃうな、全部さっぱりしゃっきり剥ぎ取れたと思ったのに、温泉であんなにわたしが頑張って、さ。


「見てたよ?毎週か、毎月やってたよね。ギルドが良く解らないけど、チャット友達と見てたよ。」


イベントはわたしとかチャット友達には関係なくて、見る専・・・だったんだけど。


お祭りみたいなもので、普段は出店も出せない場所にもズラリと店が並んで楽しかったし、やってるのに気づけば噴水広場に備え付けられた、オーロラビジョン的なモニターの見える場所まで足を運んで、友達と出店の商品を摘まんで騒いだりした。

ゲーム内に味覚無いから味、しないんだけどね。

食べてもステが上がるとかそーゆーのだったから、見る専には意味無いの、あははは。


ユーザー同士が魔法とスキルを競って戦ってたり、運営が用意した超強力なモンスターをユーザーが協力して戦うのだったり、使徒や天使、悪魔とも戦ってたっけ。


もの凄く人数が多かったのを覚えてるかな、エキシビションって武器を巡って総当たり戦なんかもあったよね・・・一番強いユーザーを何人か選び出して、特別なスキルやマナを賞品にしたのもあったよーな、・・・めておだったかなー。


「ま、基本そう。わたしはレベルキャップがカンストするまでは興味無かったんだけど、そこにもやっぱり廃人連中は居たのよ、覚えてるのは“我廃人”のVIP、“赤い翼”のマーシュ、“名無しギルド”のka~in。」


俳人の人の名前を京ちゃん、言ったんだよね、多分、でも。

見てたよ、見てただけだから、わたし・・・名前まではちょっと。

正直、覚えてない、ごめん!


「その人達が来てる、って思うの?」


俳人さんを仲間にしたかったりなのかな?いやいやいや、きっと・・・わたしの思ってる俳人、意味が違うんじゃないかな・・・京ちゃんが言ってるのとは、さ。


「うん。これはクドゥーナと会った時に一度思ってた事だけど、・・・もっと居るんじゃないかなーって。」


爪をがじがじ齧る京ちゃん、始めて見た。

あれ、何だろ?焦ってる、ううん・・・困ってるのかな、眉が寄って顔が歪んでる。


「ヘクトルも同じ事、ニクスで言ってたや。」


50対50が何故出来る様になっていた?みたいな事、ヘクトル言ってたぽい気がする。

50人、頭数集めてやらなきゃならない事があるから・・・じゃないか?的なヘクトルの考えをあの時は聞いて、強くなりたいって純粋に思ったのに、実際は愛那より何にも出来ないお荷物だ・・・わたし達を巻き込んだ張本人は、まだ現れないけどそれでも。


みんなの役に立ちたい、京ちゃんやヘクトルみたく強く、自分のすぐ傍に居る人くらいは自分の力で守ってあげたい、・・・あ!


日本に帰れるなら、そっち優先は当たり前だけど。


帰れるなら、異世界を見捨てるのか?って聞かれたらイエス、わたし以外の誰かが救ってくれる。

イライザみたいな、元々おかしな強さの子だってぷらぷらしてんだし、この世界の住人だって問題あるなら自分達で何とか出来ると、・・・思うし。

わたしは、この世界に来る事を“はい、いいえ”で望んだ訳じゃない、わたしに責任は無い。

唯、帰りたいから生きてるんだっ!日本に!家族に!友達に会いたいっ!


「なんだ、そんな事当たり前だよぅ、うちが来る一月くらい前だったかなぁ?メサイア消えたの。その時の運営発表で合計26人、だよ。意識戻って無い人達。」


愛那が、本日最大の爆弾発言をしたのは、そんなちっぽけに感じたわたしが、改めて日本に帰りたいって回想に耽ってた時だった。

え・・・?


「・・・26人。」


わたし、京ちゃん、ヘクトル、愛那、メサイアって人、で、もう一人。

ディアドが、店に来てわちゃわちゃ一人で騒いだって言ってた人。


その人を合わせても、6人だ・・・愛那の言う公式発表の人数、26人からは20人も足りなくてー、えっと。

この、ノルンのどこかに、後の20人が来てて、生きてるんだ・・・死んじゃってるかも知れないけど、わたし達以外の巻き込まれちゃったユーザーが沢山居る。


「うちも合わせると27人だよねぃ。」


愛那は悪戯っぽく微笑うと、さらりとそんな燃えカスみたいな地雷を。


「それ以上って可能性、無くも無いでしょ。」


京ちゃんがいつに無く真剣な顔で、順繰りにわたしと愛那に視線を向ける。


その後ろでやっぱり、ぐーちゃんが京ちゃんの真似をするみたいにわたしを見詰めてきた。

思わず、ぐーちゃんに向けて苦笑いと指を動かして手を振る。


「一度に複数捲き込まれるってコト?」


視線を京ちゃんに戻して、じぃっと見詰めながら訊ねる。


「そう、愛那と同時にこっちに来た人が居てもおかしくないじゃない。」


そっか、そうだよね。

その可能性大だよ、多分わたしとヘクトルは同時に巻き込まれた感じだったし。

でも、何をそんなに京ちゃんが焦ってたり、困ってるのかな、解んないや。


「・・・で?つまり、みやこはぁ、その人たちを仲間にしようってぇー、思うの?」


わたしと京ちゃんの真剣に悩んでる空気を、気の抜ける様な愛那の声がピキッと音を立てるみたいに、叩き壊すみたいに響く。


「・・・逆。襲ってくるかも知れないでしょ?わたしより強いのに襲われたら、守ってあげられ・・・ない、なって。」


襲われる。

考えもしなかった・・・だよね、ユーザー皆がヘクトルみたいに何にもしてこないって、有り得ない。

どっちかてゆーと、ヘクトルが真面目だって事くらい。


絶対、襲ってくるユーザーだっている。

ああ、弱いわたし達を想って京ちゃんは焦ってたんだ、気づかなかった。


ゲームでだってフィールドに出れば、ユーザー同士が順序をある程度踏んで、戦う事が出来るのは誰かから聞いてたのに。


違う、今までは、愛那から公式発表の人数を聞くまでは、心の何処かで『巻き込まれたのは自分達だけ』って思い込んでたからだ。


京ちゃんが焦る意味が解る。

京ちゃん以上に強いユーザーに襲われて生き残れるか?、それを考えて不安になるからなんじゃないかな。


「・・・京ちゃん。」


「・・・弱くて、ゴメン。」


わたしと、愛那が事の重大さに気付いて頭を下げると、


「可能性、だからね。無くは無いって事、言わせんなって、恥じぃな・・・もう。」


デレた。

唇を噛み締める様に真一文字に結んで、京ちゃんが顔を真っ赤にしながら喋るんだけど、最後は声が聞こえないくらいか細く呟く。


喋りながら、金色の瞳をキョロキョロ落ち着かせれなくなって、言い終わる前にぷるぷる震えてからテーブルに突っ伏しちゃった、・・・可愛い。


ゲーム内のアイコンが使えたなら、プシュー!と水蒸気が出ててもおかしくないって思うくらい。

デレた京ちゃんは、ギリッて歯噛みした、何を悔しがったんだろうね?わたし、解んないや。


「デレたー。みやこぉ、かっわいいぃー。」


「飛び付くなバカ鳥!」


叫ぶ愛那が、京ちゃんの首筋に体ごと飛び付く。

あ、翼バタバタさせてるや。


「京ちゃん、京ちゃんっ!」


わたしも抑えきれずに、感情のまま気づいたら京ちゃんに飛び付いて、椅子が倒れちゃった、アハハハ!


良いお姉ちゃんだよ、京ちゃん。


「守ってあげられ無いかもだけど、逃げれるから。・・・あぁ、いい。」


最後の言葉は、今日は聞かなかった事にする。


わたしも愛那も弱い、京ちゃんみたいに強くなるまでは、どうしても京ちゃんに守って貰わないと死んじゃう。


どれくらい京ちゃんの腕の中に居ただろう、二人共。

もう、お客さん来てるよ。

倒れ込んで、抱き付き合ってる三人をいつの間にかやって来てた、ランチ目的のお客さんにばっちり見られてた。

これが、一番恥ずいじゃんかぁっ!


心の何処かで叫んだけど、不思議と後悔してなかった。

そー言えば、ヘクトル今何してるのかなー、って思ってたら。


ヘクトル》 よう。



フレチャ来た。








ぶったぎる所が作れなかった、次短いよ。


フレチャでヘクトルとお喋り。



次回──なーんも出来てないけどお茶の時間の頃に。



では、アデュー!

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