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責任の所在





冒険者たちに、準備を整える為の猶予を与えて解散させた後、わたくしとダンゼは乗ってきた馬車にて時間を潰す・・・二人っきりの僅かな時間が取れましたのに。


わたくしがダンゼにもたれかかってゆっくりしていると馬車の扉をノックする邪魔者が。

コンコンっとノックの音に気付いたダンゼはわたくしに振り向くと、ささっとわたくしを引き起こし扉を開けます。


そのままダンゼが外へ出て行き、わたくしの耳に嫌な声が届くのです。


「ああ、鉱山主の。」


おしごと、です。

面倒な事に今頃になって、鉱山主がやって来て。

おしごとが始まるのでしょうね、きっと。


「リドリー、と申します。今後ともよろしくおね・・・」


「今後がまず、あったらですね。ね?イライザ様。」


丁寧にお辞儀をしたまま、頭を下げている鉱山主・リドリーと言ったかしら?

リドリーに皆まで言わさず、ダンゼはわたくしに話を振ってくる。


それはもう、先程までわたくしに甘く優しい口調で語り合っていたダンゼとは別人のよう。


おしごとモードです。

わたくしには、ダンゼから事前に『鉱山主または責任者』と交わすべき、カンペが渡され村に着く前に勉強をしてたんだから。


「うむ、ドラゴンは脅威ですわ。退治の際鉱山ごと無くなってもよくて?」


でも、まだ馬車から降りてなかったわたくしに振るのは止めてよ!

扉の影から外を窺ってた所だったのに。


焦る心を落ち着けゆっくり威厳を保ちつつ、わたくしは馬車を降りながら、頭を下げているアンプラ人のリドリーの後頭部に向かい、喋り掛ける。


アンプラ人だと判別するのは簡単でした、真っ白な綿毛に頭を覆われた人は大抵、アンプラ人です。彼等は王族より更に華美な様相で有名でしたし、リドリーは高級な服も最近は解るように仕込まれたわたくしにも解った、都でも高級な店に有りそうな上下で固めて居ましたし、何と言っても無駄にじゃらじゃらと腰に付けた護宝石アミュレットの数にうんざりします。一つでも安い家が建つとか、質素な暮らしなら一年は暮らせるだけの価格だとか、ダンゼから聞きました。


どうしても焦りを隠せず最初の方、声がうわずってしまったけど、ダンゼを横目に窺っても咳払い一つ吐いただけでした。

ので、悪くは無かったのでしょう。

そう、・・・思いたいです。


「いえ、お救いください。イライザ様。」


困ったように返事を返す、リドリーの後頭部を眺めるのも見飽きたので、楽にするようにわたくしはリドリーに言う。


「頭を上げなさい。では、ドラゴンがどのように現れたのか詳しく──」


頭を恐る恐る上げたリドリーは、ハンカチで頬に伝う汗を拭きながら説明を始めたのです。


「──と、このようにドラゴンが目覚めたと、報告を受けています。な、監督?」


「はい・・・。そうです・・・、イライザ様。」


リドリーは知っている限りの鉱山の情報を、わたくし達に話終えるとリドリーの後ろにお辞儀をしたまま控えたギブリミス人に話を振る。


立派な巻き角の蹄獣人、監督と呼ばれたギブリミス人は頭を下げたまま控え目に発言したのですが、


「お前、何をしたか・・・事の重大性が解っているのか?この山が支配の竜の寝床だったんだぞ。」


冷たい口調でそう言って監督をたしなめるように叱り付けるダンゼ。

すると、監督とリドリーはビクッと震えると、リドリーはダンゼにへこへこと頭を下げ、監督は黙ったまま固まってしまいました。


リドリーからの説明によると、上層から安定した鉄が掘れなくなってきたので、下層で大規模に横穴を掘り進めたのですって。

その先に巨大な空洞が発見されたらしいのです、その奥に巨大な鉱石と見間違う竜の鱗を見付けた、と。


一時は坑夫が、巨大な鉱石と思い込んで紺と黒い鱗をツルハシで叩いて跳ね返された上、ポッキリとツルハシは折れてしまったんですって。


驚いた坑夫が鱗を触ると、胎動するようにズクンズクンと動いて、鉱石ではない堅い皮膚か鱗だと気付いた、そう言う経緯だったらしいですけど。


「・・・目覚めさせていなければ・・・誰も、・・・そこに竜の寝床があるなど解りません。」


責任逃れの為かリドリーは苦虫を噛み締める様な表情でダンゼを見据え、ゆっくりとした口調でそう言うのです。

が、わたくしもダンゼも求めて要るのはそんな言葉では無いのです、ドラゴンが居ないと言う村長に他言無用、と口止めをしていたので鉱山主のリドリーも監督も必死で、責任は自分達には無いとアピールしたいのかな。


「死罪も視野に入れるべきやも知れませんね。ね?イライザ様。」


と、ダンゼがわたくしに振ってくるのも打ち合わせの内。


そもそも、これ。

責任者からの説明は村に着いてすぐがセオリーでっ、しょう、がっっっ!

鉱山主が鉱山に居なかったのも、怪しい。


ぇーと、役人を舐めてるのかな?それとも役人とズブズブで、賄賂を渡して手心を掛けさせて無理な鉱山運営があったりしたのじゃないかしら。

鉄関係はわたくしはまだ役人を務めた事は無いですけども。


鉄の値が高くなる様に鉄が減った、と言って大量に掘るなんて事もあるかも知れません、鉄の値が安定しないという話もセバッタに居る時に聞きましたし。


「うむ、・・・支配の竜・・・眠りを妨げたどの様な時も、周辺は酷い様になるとゆう・・・最悪、都落ちもあり得る。お前、・・・ら!解った上でその様に言っているのか?」


え、もしかして・・・もしかしてリドリーって悪い人?で、わたくし、舐められてる?


支配の竜じゃなかったからだとか、関係無い。

ヤバイの掘り起こして責任を取らない算段してるって、さぁ。


ムカつく。

王族とか、役人とかそんなの抜きにわたくしの人格的に、性的にもリドリーみたいな他人任せで乗りきろう!みたいな奴、ダメだ。


権限があったら死罪も生温い、だってさぁ?身勝手な行動で国一つ、滅びるかも知れないんだよ、何人死ぬと思って言ってんの?って事なの。


鉄関係が好きみたいだから、リヴィンス火山に左遷するのが良いと思うよ、首都に帰還命令無く帰れなくしてからね。


毒竜と毒ガスと一緒に一生暮らして欲しい。


二度と人の生活圏に入って欲しくない、考えを改めれる訳無いんだし。


金、大好きだもんね?アンプラ人って言えば豪華絢爛な無駄に金を掛けた馬車に乗ってるイメージあるもん、あー、一緒の空気吸ってる事にも吐き気しそう。


「ですが・・・。」


「くどいぞ、リドリー!ね?イライザ様。」


まだ渋るリドリー。

悔い改めるなんて、出来ないんだもん、死罪にしようよ?ダンゼ、あ!頭掻いてる。

子供の頃から変わらない、ダンゼが困った時の癖。


それで、こっちに振るでしょ。

わたくしに任せたって事、いいよ。

筋書きだと鉱山の権利を取り上げて、国の物にするんだったっけ?手柄になるもんね、でもそれだと村から出ていくばかりだよね、


「うむ、ドラゴンを止められねばリドリーの死罪は揺るがないだろうな。」


リドリーの死罪は許すのはヤダ。

追い込んでも、ドラゴンは退治されちゃってるし、鉱山は取り上げて国と村で共同で持つ事にしたいかな。





その後、リドリーは不敬に抵触すると思うのですけど、唾を吐いてその場を去りました。


監督にはダンゼがきつく叱責して置いたので、リドリーみたいな上司が来てももう無理に横穴を掘り進めたりはしないでしょう、と思いたいです。


「・・・エヘヘ、頑張りました。」


ご褒美をダンゼに戴きたくて摺り寄り、ダンゼの肩にもたれ掛かってから顔を見上げにっこり微笑みます。

そうすればダンゼはぽんぽんとわたくしの頭を撫でてくれるのです、ちょっとソコ!これじゃ上下が逆って言いました?頑張ったら報酬を戴けるのがおしごとでしょう、わたくしに取ってはダンゼとの甘い時間が、何より他に代えられぬ報酬なのですわ!


「ああ、良くできました。これで鉱山主から山の権利が動きます、ドラゴンが相当に厄介でも、責任上はリドリーになります。」


誰が聞いているか解りません。

目で確かめるまでは、ドラゴンが退治されているなど口に出来ないのです。

冒険者の方々には餌が必要なのです、ドラゴン退治という餌が。


村長から、ドラゴンより厄介かも知れない話を聞いています、冒険者の方々を是が非でも連れて山に入らねばならない、とその瞬間に決心はしていたのです。

オークが退治はされたものの、山腹?麓でしたっけ、集落を襲って皆殺しついでに、気味のいい話じゃありませんでしたが・・・苗床と言って繁殖用に・・・後はわたくしの口からはちょっと、おぞまし過ぎて。


「本当にそれでいいのでしょうか?」


甘い時間が、おしごとの時間にすり替えられてしまいます、ダンゼは本当に頑張り屋さんだから、でも。


今、わたくしと意見を共有すべきと思っているからこそ、この場で喋っているのですもの、付き合ってあげないと。

寂しいですけど、少し。


「陛下から申し遣っている腹案なのです、厄介そうであれば・・・捨てて逃げろと。都落ちを考えに入れねばならない相手なのです、支配の竜とは。」


父様──陛下も支配の竜と確認の場合、村を捨てても良いとダンゼに伝えたようです、わたくしにはそんな事言いませんでしたのにっ、解っています。

わたくしに言えばその場をクレーターに変えて親子喧嘩になっていたかも、ですわね?


しかも、都落ちとはデュンケリオンも捨てて退くと言うこと。

うーん、その可能性を感じるなら村人にも退避を命令すべきでなくて?


「鉱山主も監督も敢えて嘘を通し、村を生け贄にする計算なようです。」


「・・・酷い。」


そうでした。

わたくしが聞いた急報では、支配の竜など感じさせる様な話で無く、何処かからやってきたドラゴンを退治して欲しい、とそんな感じだったような?村長も詳しい事を知らされていない様でした、そう言う事。

本当に、クズなのですわね。

リドリー!


「ドラゴンの大きさは城より大きく、濃淡の黒い鱗に金色の瞳・・・支配の竜の危険大なのです、ラザ。」


現れた竜の特徴も今、リドリーの説明で知ったばかりです。

ええ、出立の直前にですよ?普通では有り得ません、情報を隠してもし、冒険者の方々が全滅した上、竜に村々が襲われたらどうするつもりだったのでしょう。


そう考えると支配の竜を退治した、シェリルさん達って本当に凄い・・・です。

その、シェリルさんにギリギリとは言え、わたくしは勝ったのです。

自信が胸の内で広がるのを感じました。


「わたくし、頑張ります。」


ダンゼは演技を止めません。

でしたら、わたくしも続けましょう。

ダンゼの手を取って、大事な宝物を守る気持ちで両手に握り締め、見詰めながらそう言って微笑む。

絵になるでしょう?吟遊詩人が謳った英雄詩の一文を頭に思い出しながら、そう過ります。


「止めてください、陛下に何と言えば。」


見詰め返すダンゼも酔っています、自らの台詞に英雄となる王子を引き留める騎士団長でも重ねているのでしょう、わたくしもダンゼも英雄の詩が好きでしたから。


「リオグリスに生まれた業と。」


それならば、わたくしも最後まで演じましょう、ダンゼの書いた英雄詩。

吟遊詩人に謳われるような素晴らしい物になると、わたくしも喜ばしい、と思えますもの。









あんまり、文が進みませんでした、が。


イライザはこれで山にはいるので、難文は書かなくて良くなった! 山を越えた気分、次は笹茶屋か凛子目線でしょうか。


かなり楽になると思いますー、次回──スラスラ書けたらぅpも昼には。


したいなぁ・・・、約束は出来ないのです。


バトルないとスラスラ書け無かったりなので。

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