独白
う。
ううう。
うー!
にこやかに笑って立ってるって暇!
わたくしは、イライザ・コールガ・クデュバン・サーゲート。
正式にはもう少し、長い名前になる、らしい。
王族と判明してからも、都の水が合わずに・・・居心地が悪くて、とても住んでられなかったの。
側室の子ですもの、やっかみもありますが・・・一番は邪魔物扱い、でしょうか。
サーゲートには王族は居ても貴族とする階級が無くて、領地運営は更新制の役人がやることになっていて、王族でもその役人には立候補すればなれる、はず?
わたくしの場合は厄介払いで押し付けられて、役人が空けば穴埋めにあちらこちらに飛ばされる様に繰り返される配置変えと言えば聞こえは悪くは無いかもしれませんが、体の良いたらい回し。
わたくしの静かな怒りを知ってくれているのは、幼少の砌より共に歩み今は側役を務めてくれるダンゼと世話役であり、母方の伯父でもあるデカットだけ。
まず、邪魔物扱いされている事を王族で知らない者はいないでしょう。
尤も、政に口出しも出来ない小娘には、王城は敷居が高かった、と思えば何のことはないんですけれど。
王族で、王族から邪魔物扱いされると言う立場になれば、役人の高級に位置する将軍や、太府などからも邪魔物扱いを受けると言うことになります、わたくしが現にそうですもの。
しかし、今回の急報の監査には立候補しました。
ダンゼも止めませんでしたし丁度、空いた役が無かったので都に住まいを移したばかりだったので身軽だったのもありました。
ドラゴンです。
急報を宮中の噂で耳にして、直ぐにこれはチャンスであると確信したのです、ドラゴン退治を踏み台に太府も丞相も見返し、救国の英雄になれると胸踊らし村に辿り着いてみれば・・・
え?
もう一度、はい。
ええ、そ、そうですのね。
もうドラゴンは退治されたらしい、との村長からの言葉に、ガラガラと崩れ落ちる音を聞きましたわ、わたくしの成功の、そしてわたくしを邪魔物扱いし、軽んじて来た役人たちに『どーだ、わたくしは凄く優秀なんですよ』と見返すプランが。
プランが壊れようと、役人として来た以上役人としてお仕事をやり遂げねば帰れません。
本当に、面倒くさいです。
わたくしの言葉はとても可笑しいのだそうで、小役人にも学のある方には直すよう言われます。
ええ、生まれながら邪魔物扱いをされ、母方に出生を偽られた上で預けられた悲しき身だった訳ですから?学など不用と、いいえ、実際はもっと酷く、学を身に付けさせまいと手心が入り、母方・・・デカットの兄にあたるホーリット伯父さんを脅して、わたくしが能無しのバカになるよう仕向けたのです。
その様な事から、わたくしの教えとなったのは一番近くに居た使用人の子、ダンゼでした。
物心付くまでは兄弟で弟なのだと思っていた程です。
使用人と言っても、屋敷ではダンゼの一家しか居ませんでしたし、屋敷内に住んでいたので事ある毎に、ダンゼのベッドにはわたくしがお邪魔していました。
屋敷ではホーリット伯父さんの家族が一番偉く、伯父さんの子息やお嬢さん達姉妹は、教師が呼ばれて学習を受ける事が出来ましたが、わたくしとダンゼは教師を付けられる事無く放し飼いと言って良い状態だったのですから、わたくしはダンゼの兄弟なのだと思ってしまうのも当然だった様に思えます。
わたくしの言葉、性格、あらゆる教本になったのがダンゼ。
賢いダンゼは、教えられる事無く色々を知っていて、物の数え方から善と悪に至るまでダンゼから、わたくしは吸収していったのです。
だからか、言葉使いをいくら治しても、地がダンゼに教わった言葉になってしまうので、10年経とうと話し方や文法が可笑しい、訛りが抜けないなどで笑われる事がありました。
ええ、よく有りがちな要らない子の行き様ですよね、これで終わったら?ですけど。
しかし、わたくしはそんな終わり方などしなかった、手を差し伸べてくれたのは当時役人に成れなかった三男坊、デカットでした。
試験に落ちたか、試験を受ける事も出来なかったデカットはある日、わたくしの出生の秘を知り、都に連れていき名乗り出れば後見人となって行く行くは高級役人、と夢見ていたのでしょう。
わたくしはデカットに言われるまま、馬車にダンゼと共に乗り・・・ダンゼが居なければ都に行かないと言えば、デカットはダンゼを拐って馬車に放り込みました。
デカットは王族と面識など無い気だけは大きい野心家でした、バカとも言いますね。
案の定、門前払いをされるのですがわたくしは一目だけでも母を見たくなり、泣きました。
大号泣、だったとダンゼから聞きましたけど、記憶はありません。
獣化を知らず知らず人生初めてした瞬間でした。
王城の門壁はわたくしが一部壊したそうです、ええ、誰もわたくしは止めれなかったのです。
なまじ、王族の獣化を要らない子だとは言え、門番が手出しをしては極刑になるそうです、後から知った事ですが。
デカットの目論見通りに事は運んでいるようで、そうでは無かったのです。
わたくしが王族と解って、後見人の一人としてデカットも付きましたが、出世の無いレールに乗った、という只それだけ。
手心を加えた誰かさんのせいで、わたくしはやることなすこと失敗、失敗の連続なのですから。
後見人も一人減り、二人減りいつの間にかデカットだけになって、その頃には押しも引かれもしない能無しのバカと言えばわたくしの事、と何処に行っても陰口が聞こえてくる様になってしまったのです。
いや、ホントそいつら何度皆殺しにしようかって思ったか。
惨めでした。
少し、マシになったのはダンゼのお陰で、5年経ってやっとホーリット伯父からダンゼの上京が許されて・・・まだわたくしの手出しの出来ない所で手心を加えられていたのでしょう、ホーリット伯父は全てが終ると泣きながら詫びてくれましたが、手心の主の名前は明かしてはくれないまま、旅立ってしまいました。
優秀でした、ダンゼは。
それはもう見事にわたくしの影となり、支えとなり、功労の全てをわたくしの為に。
死に物狂いで役人の役割もわたくしの代わりにこなしつつ、わたくしの功になるよう、働いてくれているのです。
これ程尽くされて惚れるな、と言うのはどれ程、酷なのでしょうか。
役人を続けたい訳でも無いですし、躰は頑丈ですから将軍には成れるやも知れません、ですがそれも有事があればの事で。
そんな経緯ですから、ドラゴン退治を是非とも成功させて、救国の英雄になる必要はあったのですが、無理に太府や丞相に喧嘩を吹っ掛けたいわけでも無かったり。
手心の主を暴いて、跪かせたいと言うのはあります、ダンゼやデカットの昇進もそうですけど、叶わぬなら叶わぬままでも特にそれは良いと思えるのです。
ええ、ダンゼとわたくしが結ばれる事さえ叶えば。
イライザって、キャラが弱いから掴み辛いと言うか、
アイリスに書くつもりだった設定を拾って当てはめただけだから、 なんか足りない子になっちゃった。
取り敢えず何故ダンゼらびゅなのか説明は出来たかな。
更新次回──うーん、明日?