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2 離別、そして

突然のお別れだった。


ヘクトルは強くなりたかったんだ、なのに。

愛那の事をまだ、クドゥーナとしか呼んだ事無かったかも知んない、ヘクトルがカルガインに帰るって言った時は。

10日も怠けてたら、勘が鈍るとかなんとか、そんな事言いながら5日は村で大人しくしてたのに・・・


「じゃあな、次に会うときはオーバースキルを手に入れた後だ。」


ねえ?京ちゃんとクドゥーナには何て言えばいいの?

その時のヘクトルの手には転移アイテム、きっと[マトーヤの洞窟]行き。


「一緒に行くよ?」


その日、酒場から一人、早くヘクトルは帰ってきた。

何時もならべろべろに酔っぱらって、京ちゃんかゲーテに連れられて・・・運ばれてくるのに、変だなって。

そしたら、いきなり荷物を片して食堂に降りてきたヘクトルは、フレンド登録を申請してきたんだ、わたしに。


一緒に行くよ、皆で行こうよ。

これが終わったらカルガインに帰れるって、だから。


「まぷち、俺の知ってるクエストじゃな、俺の契約神様は一人じゃないと会えないんだな、だから──悪ぃ、いかなきゃ。またな。」


「またね・・・」


もう、決めたんだね?ヘクトルは。

止めても・・・、意味なんて無いんだね。

そう思ったから、無理に止めずに素直にまたねって、手を振ってヘクトルを一人、見送った、一瞬だったんだけど。










色々あったなぁー、温泉。

嫌な思い出も出来たけど、うちはそれより何よりぃ。

へへっ、愛那ってちゃんと呼んでくれる、呼んで貰える様になったんだっ。


うちはクドゥーナこと、六堂愛那。

温泉に行って変わった!何もかも!

だぁって、シェリルが絶対教えてくれなくて解らなかったシェリルの本名、笹茶屋京って言うのも教えて貰えたし、んーとね、なんてゆーかぁ、近くなった、て。ゆーの?距離が。


名前で呼び合えるって、なんて素敵な事なんだろーなってね?思うんだ、うち。

シェリル・・・みやこに感じてた壁は、うちが作ってた部分もあったんだってちょっと反省したりするとこもある、あるんだけどぉ。


ホントにみやこの事が怖くて、嫌な夢だって見たんだ、あの、オークの巣で見たみやこに、うちが追いかけられて・・・んーん、それはうちの感じ方だったんだよね。


・・・っても、みやこだってうちの事、嫌ってたって言われたしね、はっきりしゃっきり。


距離をうちら同時に取ってたから、それは壁だってかんじちゃって当然。


だから、そんなのまとめてどっか行った今、今がうちは幸せ!

そーそー、今ね。



「で、何が?」


だから・・・ね?


天井見てるみやこに話し掛けたら、耳に届いてないみたい、欠伸して聞き返して来るんだもん。


「うち、見たんだってばぁ、村長の家に馬車が着くとこ。」


朝、宿の食堂スペースにうちら三人、凛子に、京に、うち。


汗だくの凛子は稽古を切り上げてさっき、座ったばかりでタオルで汗拭いてて、これからバイトに行くんだー多分。

みやこはダルそーに机に突っ伏したり、机に足乗せて体反らしたり、大人しく出来ないんだって、良く解る。

うち?うちは。

そろそろ役人着いたかなって村長に会おうと、行ったんだけど。

会えなかったけど、役人着いたのは確かだし、いよいよ・・・村を出る事になるんだね・・・


みやこは、椅子をキィキィ揺らしながら、机に足乗せて休憩してて、隣通ったらうち、何か捕まったんだよね、みやこに。


喧嘩を売った冒険者が一人もう、表じゃ伸びてて、みやこにアッサリやられちゃってた、どこかの誰かさん。




「本当なのっ?愛那、ただのバカ鳥じゃなかったわね。」


「バカ鳥、ゆーなってぇ、もう。にへ。」


「うゎあ、何その顔。愛那はバカって言われたいの?言われたくないの、どっち?」


凛子ぉ、そんな事言わないでよぅ。

うちはこんな何気無い会話して、みやこに威嚇する素振りされなくなったのが嬉しんだよぉ。

うきゅぅ、みやこに頭撫でられた、今。


「言われたくないの、優しい笑い顔が嬉っしーいーのっ!」


何かってみやこは、凛子とうちで表情が違ってて、嫌だったもん、そんなの。


あの、今ね、うちにも凛子にも向けてるこんな、優しい笑顔のみやこがいいの。


「ん、愛那の言う通りなら役人来たんじゃん、やぁっと村から移動できるわ。」


「長かったようで短いようで、それなりに楽しかったよね・・・てゆーか、これからバイトなんだけど、わたし。」


足を組み替えながら、みやこは伸びをしてて、凛子は汗を拭き終わって机に倒れ込んだまま、体を重そうにジタバタ。


「お別れ、ちゃんとしてきなさいよ。えっと、メイド姿見に行くし、後で。」


凛子はやっぱり、バイトに行くみたいでみやこに鼻ピン!受けて、もっさり起き上がると2階に上がってガサガサ音が聞こえる、ふふっ。


と、思ってたらメイド服で降りてくる、わぁ、可っ愛いなぁー!うちも着てみようかなって。

ん?変じゃ無いと思うよ、ピンク色じゃ無いなら。


凛子が着てきたのはピンクを基調とした、白のレースのメイド服。

装備なんだけど、特に特殊効果も無いいわゆるお洒落のためにある装備。

凛子が言うには、ムダ装備──まぁねーぇ?みやこはこんな役に立たない装備をいっぱい持ってるみたいだし、ムダ・・・解らなくはないかなぁ。


何か、思い付いちゃった!みやこにメイド服着せたいな、手も足もすらりとしてるから似合うと思うんだけど、どかなぁ?


嫌って言いながら、メイド服でバイト通ってる凛子は、なんだかんだ言いながら、馴れたのかも、恥ずかしさに。


「うちも、子供達と遊んで、お別れしてくる。」


ホントならお別れはツラい。

折角、三人組と仲良くなれたのにもう、お別れなんて、ねぇ。


「・・・まぁだ、遊んでたんだ?バカ鳥ねぇ。」


呆れた声でみやこが、うちをバカ呼ばわりします、うちはバカじゃないもん。

賢くもないけど、普通。


ふつーが一番イイ。


「いいかな?それだと話、おかしくない?無理やり過ぎない?ねぇ、バカ鳥って言いたいだけなんでしょー、みやこぉ。」


「はいはい、わたしはえぇとー、酒場行ってくる。」


そう言いながら足を机から下ろして、ハイヒールを取り出すとみやこは足首のバックルを止める、上・・・シースルのベビドールだって教えたげたほがいいかなぁ?

あー、うちの事はやんわり流された!ま、いっか。

いいよ。


「ゲーテと、ジピコスともお別れかぁー、寂しい?京ちゃん。」


「へ?ううん、なんで?」


「そこは嘘でも、寂しいって言ってあげないと、後ろ。」


凛子の困ったような質問にみやこが不思議そうに見詰めて、答えた。

返事を聞いてちょっと凛子は、寂しそうな顔をしてから、みやこの後ろにゲーテとジピコスが居るのを教えて上げたら、みやこは納得の表情に一瞬変わって、ゲーテに抱きつかれるとウザいなぁって顔、うちを見てる時、良くされてた顔。


「姐さぁーん。俺は寂しいですよお。」


「姐さん、ラミッドに来る時は寄って下さぁい。手前のマイエレの町か、ラミッドに居るんで。」


ゲーテもジピコスも別れを辛そうにちょっと涙目で、一緒になってみやこの体に抱きついてる、どこかエッチに見えるのは二人がケモ耳だからなんだろーか?シースルのベビドール姿のみやこにケモ耳ふたりが抱きついてる、・・・気のせいじゃなくエッチだ、うん。

凛子を見ると苦笑いで、それを見てる。

そこは止めようよ?うちもだけど、んー、でもなぁ。あんま、みやこ嫌がってる風じゃないし、いいのかも、コレで。


「役人来ただけでしょ?はっ。今から本番なんじゃないの、ゲーテもジピコスも。」


慕ってくれるのは嬉しいけど、しょーじき嫌って言ってたよ、みやこが。

だから、いい加減離れよーね、ゲーテもジピコスも。

んっと、顔はウザそうだけど、突き放したりはしないんだね、うちが飛び付いた時は手伸ばして力一杯抵抗してたのに・・・なんか、悔しい。


「姐さんは、出てくでしょう?」


「そりゃまあね。」


「じゃぁ、お別れじゃないかよお。」


「態度悪いわね♪いいから、行くわよ。」


あ、みやこが笑った、嬉しそうにさ。

ゲーテとジピコスの首を抱いて、準備が整ったのかスタスタと入り口に向かうみやこ。

ゲーテとジピコスとどーでも良さそうな話で、喧しく。


いいのかな、いいかな、みやこだし、いまさらって言えば今更だもんねぇ。


・・・ベビドール姿のままなんだけど。







2章ってゆーのでしょうか、それぞれが動き出します。


ヘクトルは強さを求めて単身カルガインへ戻り、


凛子は青い蟹亭での最後のシフトに入り、


京は酒場に向かい村で最後の酒盛りを楽しみ、


愛那は悩みます。──次回、昼かな?更新。

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