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そうだ!温泉へいこう。4



そうやって凛子が、溢れる涙を指で振り払って素振りを始めれば、その光景を休憩をとる態でゲーテが昔の自分を思いだし重ねて微笑ましく見守る。

その一方で又騒ぎが起こりそうな、状況に置かれている京が居たりする。


酒場の扉を開いてすぐのテーブルは、訳あって専用になりつつあった。

冒険者達は息を潜めてその時を待つ、黒髪の見目麗しいエルフがテーブルに座るのを。


そして今日も又、件の黒髪のエルフはそのテーブルに座り、いつもの様に酒をグラスに注いで飲み干す、また空になったグラスに注いで飲み干す。

その飲みっぷりだけで周りが小さくざわめいて視線が集中するのに、更にこの黒髪のエルフには酒場の客達にとって付加価値があった。


「ズ・・・、何か、用があるんですか?無いんでしたら、お引き取り下さいね。」


冒険者と言うのは顔を改めるのに絶対に、肩を掴んで振り向かせ様とするものなのだろうか、幾度と無く京はデジャヴュめいて同じ行動を目にして来ていた。

別段変わること無く自然体で京は振り払おうともせず、かと言って振り向りてやる訳でも、グラスを傾けるのを止める訳でもなく、グラスを空にしてから口を開く。

もう、お決まりになっていると言っても過言ではないいい気分で京が飲んでいると邪魔をしてくると言う事。

だから、棘を自主的に抜いた事務的な丁寧に取り繕った言葉に何の含みも無くなった。



「オォイ、いたぞ!きっとコイツだ、性悪エルフ。」


京の言葉に何の応えも返さずに一方的に声を上げる冒険者はブレストプレートに肩当て、手甲と言う初心者には手が出そうに無い、この世界ではそこそこ高価で別段生活に必要無さ気な格好。

ゴロツキや、その日暮らしの山賊ではおよそ手が出せない装備一式に身を固めた、騎士の態の男である。


この専用になりつつあったテーブルに座った黒髪のエルフの一挙手一投足は酒場の客達にとってここ数日は娯楽であり見世物だった。

黒髪のエルフには物騒な噂がつき纏う。

黒髪のエルフは返り血を浴びないとか、怪我をしても傷にならないとか、決して本気にならなくて・・・本気になるとエルフはおぞましい死に神に姿を変えるとかそんな真しやかな噂が。

実際は、取って置きこそ出さないものの本気にはちょこちょこなっていて、その度に周辺の商店が被害にあっている。

「なあ、黒髪の!此処等じゃ有名らしいなぁ?俺らとも遊んでほしいんだわ、いっかなぁ?」


今、京と喋っている冒険者もやはり、そんな信じ難い噂を耳にして真偽を確かめてやろうと又、京と同じ様に暇潰しと軽い気持ちで喧嘩をふっ掛けているのだ。

酒場の客達が息を飲んで視線がついつい京に集中し注目する中、


「──いいですよ?行きましょうか。」


そう言って、立ち上がりテーブルを離れる京は馴れた様子で扉を開いて酒場から歩き去る。

その後を追って冒険者が声を掛けた。


「助かるぜ。」


「俺はエナーグ。カダナリアじゃ名の知れた剣士なんだ、稼ぎのいい仕事(ヤマ)があるって聞いてくりゃまだ、始まってすらねぇってなぁ。」


エナーグと名乗りを上げた冒険者は京に喋り掛けた人物では無く、藪睨みの頬が痩けた姿をしていたりするものの、その体躯は恵まれていて鍛えている所は鍛えているぽく腕の手甲から見え隠れする筋肉は鎧の様に固そうだ。

そんなエナーグが使い馴れた得物であるクレイモアをジャキッと言う鍔鳴りを響かせて構えた瞬間に勝負が決まる。


「え?ぐぉ、ほっ!」


「──もう、良かった?」


ぞろぞろと酒場の外へと客達の足が向きだした頃に、同時にエナーグが名乗りをし始めると、京が準備運動を済ませて天高くジャンプしていたのだ!

エナーグがクレイモアを抜いた時には狙い澄ましたスタンピングニードルが完成して女王蜂の毒針宜しく、婀娜っぽい微笑みを湛えた京が言い放ち、急降下するヒールのかかとがエナーグの頭に刺さる。

もう片足で後頭部をヒールキックで蹴り飛ばし、エナーグが叫ぶ声を遮る追撃を仕掛ける。

そのまま10点満点の着地を決めてフィニッシュ!ポーズを決めて、京は酒場の客達にもサービスして倒れたエナーグを踏みつけて見せる。


「オォイ!え、一撃でエナーグをっ?」



その光景に堪らず、喋り掛けてきた方の冒険者が苦虫を噛んだ様な歪めた表情で悔し紛れに叫んだ。

なおも気を失ったエナーグは膝裏辺りの肌の露出した部位をヒールのかかとでグリグリと抉られている。



「──戦る?それとも、謝る?」


嫣然と微笑んでエナーグの膝裏を踏みつけたまま、京が冒険者を見上げて優しくも凛とした声で問い掛けた。






あの後の事は、振り上げた大剣を冒険者が降り下ろしたと同時に、エナーグが我に返る程ギリッと踏みつけて、超短距離ミサイルキックが名乗りもする暇も与えられなかった、哀れな冒険者の顔面を捉えて加減無く叩き込まれる。


すると、謝罪をするまでいつもの様に蹴り、踏みにじり、嬲し殺す様に満足いくまで可愛がってぴくりとも動かなくなると、今回の冒険者との死闘は終わりを向かえた。



「エルフさん、ウチの前の道は修練場かい?いやね、金はいいんだよ、たっぷり戴いたし。道に付いた血を洗うのもまだいいんだけど、こう毎日暴れられちゃ。」


酒場に戻ってくるとまず、目を細くしたふくよかな体型の女マスターに苦情を言われる羽目になる。

やはり迷惑を(こうむ)っているのか、その瞳は真剣そのものの、京は店の上客で毎日通ってくる常連でもある為に苦渋の決断と言った所か、困りきった口調だ。


「見せ物みたいになってて、それ目的の客が居着いちゃって困る、とか?」


女マスターに言われて、周囲を見渡せばろくに口を着けてないグラスを、遊ばせているテーブルやカウンターの客が目に付く。

グラス一杯の料金で何時間も粘られたら商売にならないとかそう言う事だろう。今、思い付いた言葉を率直に口に出すと、


「ふぅっ──正解。ウチの店は金を貰って酒を出す店で、見せ物屋じゃ無いんだよ。シェリルちゃんだっけ?やるな、とは言わないし、言えないけどね・・・せめて口で解らせて、無理なら表に引っ張りゃいいんじゃないのかい。」


そう言った女マスターは深い深〜い溜め息を一つ。


「う、うん。解った、でも・・・気に食わないとすぐ戦りたくなるんだ♪」


すると、京は答えながら苦笑いを浮かべていたが口ごもると逡巡した後でにこっと笑って女マスターを見詰め、甘えた声でてへぺろ☆として見せる。

それを見た女マスターは肩を竦めてカウンターの奥に戻って、


「黙ってりゃ、お人形さんみたいなのにねえ。」


と誰に聞かせる訳でなく本心を洩らした。

闘う京の変貌ぶりを思い出すと、とても言えた台詞では無いなと内心で思い直しながら。


「おい、エルフがカダナリアのエナーグとネワッドをぶちのめしたらしい。」


早速、先程の死闘をダシに酒場中の客達はざわめき、止めどなく酒を飲み続ける京に視線をチラリと向けつつ、話題作りに必死だ。

目下、誰なら誰が黒髪の性悪エルフに引導を下すか?が話題の華になっている。


「昨日は、マナースのカイオットと、その前はカダナリアにたまたま来てた“剣鬼”メドイックがヤられて酷い様を晒してたってよ!」


「“百腕”ゲーテを軽くお手玉にしたってのも、噂半分ってワケじゃねえのかよ、おっかねえ女だぜ。」


『そんな大声で喋ったら全部聞こえてるんだけど?に、してもゲーテ。ふふっ、百腕って!だっさ。』


そんな噂好きの酒場客の声に耳を傾けていた、京が堪えきれずくつくつと含み笑いを小さく洩らした。

客達に話題は尽きない、そうだ!京が誰かに倒されるまではこの物騒な噂話は終わる事は無いのだから、何処其処のアイツなら倒せるんじゃないか?と話題は続く。


「明日にはラミッドからの冒険者も来る。“俊蹴”のジャバーや、ヴァナなら性悪エルフにも勝つかも知れねえぞ。」


「ばーか!メドイックは都でも名の通った奴だったんだよ、剣を持たせても貰えねえでボッコボコ!お情けで剣を持たせたら、フラフラでよ。面白かったんだが、すぐ降参じゃなあ?」


「蹴りが速いんだろ?それならジャバーでも並べるだろ。ましてや、ヴァナは大斧を使う大男。性悪エルフと言ってもタダじゃすまんさ。」


「ゲーテは速さも腕力もあったんだぜ?それがよ、噂じゃ蹴られて地面にへばりつくしかさせて貰えない処か惨めったらしい謝罪ってのをさせられて今じゃ、性悪エルフの舎弟らしいんだってんだから、速さで付いてけなきゃボッコボコにされて終わりさぁ。」


『ん?んん?』


噂話に耳を傾けていた京はどうにも聞き覚えのあり過ぎる声が酒場に響いたので肩越しに振り返ると、


「お前さぁ、ジピコスじゃねえか!無抵抗でゴミみたいに血塗れにされてたんだろ。」


どこかの客から声が上がる。

その客はあの死闘を見物していた様で、ジピコスを覚えていたのかも知れない。

ああ、ジピコスか。と、京がテーブルの上のグラスに視線を戻すと、


「へへっ!姐さんは強え。ジャバーもヴァナも戦らせねえし、・・・冒険者やめられちまうとそれはそれで辛いしよぅ。」


そのジピコスが声を上げてきた客に口を挟む。

まるで、自分が褒められている様でもあるのか、ジピコスは満足そうににんまりと笑って居たが、口ごもると苦笑いを浮かべて口をつぐむ。


「ジピコス!」


「あっははは・・・姐さん。」


何が気に振れたのかは知らないが、ジピコスが口をつぐんだと同時に京はジピコスの名を呼んで叫ぶ。

その一挙手一投足に視線がついつい集中してしまう京が叫んだ事に一瞬、ピタリと静まり返って何か誤魔化す様なジピコスの乾いた笑い声だけが酒場に響き渡ってやがて消えた。






「こっち来て?」


そう言う京は見るものを魅了する様な小悪魔めいた微笑みをジピコスにだけ向けていた。




「いやぁ、凛子はあれ、使い物になんないんじゃねえかって・・・ぐぉほっ!・・・で、喉でも潤そうかなっと。」


そう言いながら隣に座ろうと椅子を担いでくるジピコスの脇を京が放つヒールのかかとが抉ると、びしぃっと対面を指差しジピコスを座らせると、


「嫌ーな噂話に口挟んで、面倒事増やそうとしてた?」


口を開いた京が空のグラスを突きだし、ジピコスに注ぐ事を態度で要求する。

顔は横を向いて聞こえてくる噂話を聴こうと頑張ってるのを装いつつ横目でジピコスを窺う。

ヘクトル以外から注がれるのにまだ慣れないただそれだけだったが、ジピコスはそんな事でも嬉しく思った。


「そんなことねぇっすよ、姐さんがどんだけ強いかってのをですね、へへ。」


にへらと笑いながら、誤魔化し紛いの言葉をジピコスは口にして、突きだされた空のグラスにトクトクとゆっくり酒を注いでいく。


「温泉。」


注がれたそばからグラスを空にし、ジピコスに突きだすを何度か繰り返して、満足した京が惚けた様な表情でボソッと呟いた。


「を?」


「温泉っ!」


酒を注ぐ手は止めずにジピコスが聞き返すと、小さく叫ぶ。

口を開いて固まるジピコスを見て更に言葉を続けた。


「今日、入りたい。」






はい!って、わけで温泉へいこう。4のぅぴです。


ちょっとだけ長め・・・うにゃ。


温泉へいこうと言い出すと言う切りがいいとこまでです。

これから向かうんですが、唯で終わるわけ無いってわけで続きます。


半分?くらい書いているので、また明日これくらいにぅぴできるかな、できたらいいなって思いたいです。


温泉だから裸ですかね?趣味入りまくりのキワモノ水着でしょうか、まだ決めてません、つまり。


まだそこまで書いてないです。


明日ぅぴできるとこはバトルちぅかも知れないですね、どうなるかは今から書きます・・・

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