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懐かしい想い出

ここドコ?


靄がかかっているみたいに見透せない。

キョロキョロと辺りを観察する。

少しずつ靄が、視界全体を覆うフィルターみたいな靄が晴れていく。

どうしてか、机に座っている。

見間違えようのない。

わたしの机に。

でも、これは高校の時の。

更に良く周りを見ると、どうもここは高校の教室のようで。

どのクラスかまではちょっと壁やなんかがぼやっとしてて判別できないでいる。


えっ……。


さっきまでそこに何にも居なかったのに、誰か来たみたい。

紺のブレザーに、黒とオレンジのチェック柄のパンツにライムグリーンのネクタイ。

下級生、か。


わたしの高校でのネクタイは色で学年が分かる為のもの。

ライムグリーンは一年後輩、か……もしかしてわたしが一年の時の三年生だったかも?


わたしの学年はワインレッドみたいなくすんだ赤で、一個上はイエロー、確かそんなだった気がする。


ちなみに、男子はチェック柄のパンツで女子は深緑のスカートと決まっている。

インナーのシャツは割りと自由だった。

襟さえあれば白でも赤でも、金だってシルクだってサテンでも怒られたりはしない。そんな校風。

でも、白が大半だったっけ。


あっ!!



「……ど、どうして。……あ、夢か………………なんだ、……てっきり。……ううっ」


彼が。

一日だって忘れたりはしない。

今だって目蓋を閉じれば、わたしの目蓋の裏を占領してる。

彼はひとつ下で、同じ部活の後輩。


見た目はふつう、うーん、ふつうより上。

ほとんどの場合、無表情で何考えてるか読めないって雰囲気を持ってる。


卒業間近で会うことも無くなってしまう、そんな頃になっても相変わらず……頭の中はさっぱり解らなかった。


その頃になると、趣味嗜好くらいは分かるようになったけど。

能面みたいな、意識した無表情からは彼の情報を読み取るのは非常に困難を極める。


「いきなりどうしたんだよ?」


あーあ……どうしたとかない、それはないんじゃない?

……生っぽい考えなんか全く浮かばなかったわたしに男とか、女だとか、そういったものを、意識させたのはあなただったのに。


夢、そう夢なのよ。

夢……なんだけど。

それでも、彼が夢の中にやって来てくれたってだけで嬉しくなる。

出会いは最悪。

出会った時はしばらく、吐き気がするぐらい毛嫌いしてたのに……どうしてか、彼以外に真剣に好きになれる人は居なかった。


大学にあがれば忘れてしまう恋、そう思ってた。

だけど、そう。

実際は。


大学に上がって、告白されて他の男子と付き合ってみると、彼がどうしても心と体に焼き付いてて……気休めていどにしか『好き』って気持ちは生まれなくって。


酷い事をされて、酷い事をした、そんな仲なのに……そんな仲だったからこそなのか、彼以外はありえなくなってしまった。

物足りない。


女のこの事を性的に見るようになってしまったのだって、無理やりな彼の影響。

可愛い子に限る。


優しくされた訳でもないし、優しくしたって訳でもないんだけど彼の事を想うとそれだけで眠れなくなった。

そう、ううん、……告白なんて緊張する。


今だって、彼には、彼だけには、気安く『好き』って一言だけが言えない。

言えなかった。

好きで好きで、気狂いしそうなくらい苦しいから、想いでにしてしまおうと思ったんだと……思う。


彼以外にわたしの言った『好き』って言葉はブラフなんだと思う。

気に入ったよ、その程度の意味しか持たない。

言葉の重みは遥かに違う。

気安く言えるんだ。

彼にだけは言えないその言葉は。

彼を尊敬してるし、憧れてる。

そうなるようにマインドコントロールをした。


彼の事がわたしの唯一の支えだった時期がある。

わたしの生き甲斐だった。

好きになりたかった。

彼からの愛が欲しかった。

愛を彼に捧げたかった。


「……夢、なのに。酷いや、さすが稜くん」


夢でもご無沙汰だったじゃない。

想いが溢れてくる。

側に居たいよ……。

体温を感じたい。

彼に甘えたい。

頭を撫でて欲しい。

優しく誉められたい。


夢の中でくらい……いいじゃない、甘い言葉をわたしに囁いてよ。


「あー、うーんと。はぁ……。どんな風に見えてるか、知んないんだけど……もしかして。彼氏、とかに見えてて……夢でなら逢えてた、……のを邪魔しちゃってた?そう、だったらごめん。俺はきみ……シェリルだっけ?その、シェリルの夢に手を加えて入り込んでる別人なんだ……彼氏じゃなくてごめん」


そんなわたしの切なすぎる想いを知ってか知らずなのか、彼の姿をした何者かが彼の姿で、彼の声で否定している。

普段なら全くの無表情でわたしを見ている彼の姿は、今まで見たこともないくらいの困り顔で謝ってくる。

目の前にいる彼は、彼じゃない!

その瞬間、彼らしさは失われた。

自然、プチプチぶちんって、脳内だけで響く。

いけない音が響いた。

これはいけない、感情が押さえられなくなる前兆。


本来なら素っ気ない態度で返してくるところが、焦ったように説明を入れてくる彼じゃない彼。


とはいっても、だ。……夢の中に入り込むなんて、それにしてもどうやったのかしら?

そんな魔法があるとは知らないんだけど……。


意中の相手の夢の世界にログインしました!なんて、ファンタジーで素敵な魔法!

それ、欲しい!

どうしたら手に入る?

何のクエスト、どんな素材を集めたらいい?

どのダンジョンでどのボスをぶちのめしたらそれってレア泥するのかしらっ?


ニヤニヤしてしまう。

凛子の寝顔をたっぷり堪能したら、デザートは夢の中でログインなんて素敵なことと思えないっ?


あ、ヨダレが思わず垂れちゃう。

はしたない!


任意でロックオンするタイプの魔法なら、エウレローラやイライザのベッドにお邪魔して夢の中で逢うなんてのも良いわね……、是が非でもものにしたいんですけどっ!


わたしの甘いスイーツのような、ニヤニヤしてしまうのを止められないような夢の世界に踏み込んでめちゃくちゃにしてくれちゃったこいつ。


さて、どうしたら煮えたぎってきた心を落ち着かせられる?

今すぐ飛び起きて、首根っこを掴み上げてやって、締め上げたい気持ちになる。

それで、夢ログイン魔法をですよ、げっと!と、いきたいわけです。


どこに居るか掴みたいけども魔法探知、魔力感知はやってやれない事は無いんだけど、街中じゃ……魔道具にも感知しちゃうもんなぁ……。

辿り着くまでに魔力がカラになるって、そんなオチしか見えない。

そうなると、そのオチを知ってて無駄な労力は使いたくない。

明日はニクスに旅立つ。


ヘクトルとイライザたちを一応、御互いの紹介も兼ねて引き合わせたんだけど、顔合わせ程度のこと。

つけ加えると、ヘクトルは既に出来上がりでまともにイライザの顔を見ても居なかった……ように思える。

明日のことを思うに、不安だ。

不安しかない。

ま……ヘクトルはいきなりドタキャンするような考えの無いやつでは無いんだ、それはわかってるから安心はしてる。

けど、説明をリピートアフターとかって事にはなりそう……。

ヘクトルは酒に弱くは無い、強い方だから飲むピッチも遅く無い。

つまり、酔わないわけがないってことになる。

飲むな、とは言わなかったけどベロベロに酔うまで飲んでるとも思ってない。

紹介するって、連れてくるって、言った後なのにだ。







夢なのに、なんと!

続きます……続きは早くにあげたいな……努力、しまう!

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