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イライザの受難

「あのね、聞いてくださりますかっ!

勝手に喋らせて貰いますが、よろしいかしら!」


って、イライザがやって来ていきなりまくし立て始めたら、酒場が当たり前のようにパニックになったので……………………例のアジトに連行。


外は大雨。

って、しばらくぶりのデュンケリオン全体の恵みの雨。

とゆーことはだよ、そこは陽の光届かない灰色の世界。

もちろん、時刻は正確には判らない感じ……、だってだって太陽が顔を隠してるんだから。


問題はそんなとこじゃないから気にするべきでも無いんだろーけどね、今は。


「ほぇぇ…………!

こんなところがありましたのね!感動です!」


「この良さがわかるやなんてー、なんてええ子なんやろ!イライザちゃん、ゆーんやったやろか?ほんま、ええ子やわぁー♪」


扉をぬけてすぐキョロキョロと周りを見舞わしていたイライザから心の底からの素直な声が上がり、それを聞いたアスミさんが気を良くしてイライザの頭を撫で撫でしはじめる。

イライザがお姫さまだってしっかり教えておいたのに。

すっかり二人だけの世界でもそこにあるみたいに、さ。

アスミさんがアジトの中を自慢げに案内してて、イライザはそれを着いていく。

金色の瞳をキラキラさせて物凄く嬉しそうに。


……ほっておくとアスミさんとイライザの二人は延々と会話続けるんじゃないのかなー、会話は途切れそうに無いので……。


「あの……聞いて欲しいことがあったんだよね?」


なんでわたしが。

わたしの後ろには背の低い木のテーブルと椅子があって、そこには本人のブランド、【コールドン・ブルー】の新作に身を包んだ二人が座ってる。


みやこちゃんと、部分部分を省けばそのみやこちゃんとそっくりなぐーちゃんが。

黒っぽいみやこちゃん、青っぽいぐーちゃんと着分けてるね、おそらくマネキンも兼ねて着てたとこをイライザが来襲してきたから、マネキンのまま着替えずに座ってるのかな。


そんな、みやこちゃんの指示するような冷たい視線に脅されて仕方なく二人の世界に飛び込んでいったんだ。


一方、ぐるっと反対側に目線を移せば会社が忙しいクドゥーナ商会・会長の愛那が机に向かって緑の髪を振り乱していたりする。

丸くて小さな白いテーブルと二人掛けのソファーは今は愛那が占領ちうのようで。


愛那は愛那で何がそうさせるのか、必死になって小さなテーブルに紙を広げて猛烈にカリカリと何かを書いてる……、マイペースもいい加減にしないとわたしだって黙ってないぞ?と意気込む。


……わたしってさ、思う事と行動は別なんだよね、と理解しちゃってる……出来てますから……。

そんなだから、苦々しい精神的にもやらない方がリスクが少ないならたまーにしか行動起こさないってゆーか、しないんだよね。

わたしはわたしをそーゆーとこ好きになれない……。





そもそもイライザの要件はどんなことだったのさ、ってゆーとこんな事だった。

イライザは興奮して、泣き泣きし始めたからかわりに要約しちゃうよ。


頭の痛いことに、ダンゼが急に忙しくなってよそよそしい。

イライザの事を好きじゃなくなったんじゃないか、と。


イライザも鬱憤が堪ってるみたい、はやくケアしたげないと、だね。


「あの……ダンゼに限ってそれだけは無いと思うよ、イライザ……」


「そうでしたら、……そうだったらいいんですけどっ」


曇らせてた表情が。

わたしの一言に反応して、さらに一段階進んだみたいに眉を吊り上げるイライザ。


はぁ………………っ。

イライザの表情が歪む、それだけでまだまだ、ビックリしちゃうなー。


「心配しないで、きっと他の何かだろーね…………あ、ぁぁあ!!

国王が変わった事で仕事増えてるだけじゃないの?仮にも、役人って国王の次のランクなんでそ?」


その役人も百とか千より多いんだろーけど、ダンゼは結構頑張ってるみたいな感じだから、頑張ってる方向性が違うかもだったりするかもだけど、結局は偉いさんなんだもん。

あれから100日は軽く経ってるんだし、さ。


役人全てがそーよ。ってわけでも無いのだけれど……そういう事で句切りを付けるならそうなるんじゃないでふかね。


「王族の方が、今は前王の王族っていう立場になってしまったと聞きておりますです。いまの王様である黒翼さまは、王族をすぐさま排斥とは言い出さなかったみたいで、王宮にはかわらず兄さま方や姉さま方が残ってます。ダンゼの仕事とは違うと思えるのですけど……」


「ダンゼって、偉いわけじゃないのか……じゃぁ、忙しい理由はそっち系でもなさそう……シェリルさんはどう思う?」


二人だときっと答えは見付けられないと思った。

だから、みやこちゃんにも振ってみる。


「ん、わたし?わたしは……んー、歴史が僅かかも知れないけど動いたようなものじゃない?今回の話は。だから、歴史関連の書物とか、継続させていく為にも何かしらあるんじゃないかしらって思うのだけれど?」


「歴史ーぃ?」


サーゲートの国王がかわったんだもん、そうなると少しは歴史が動くって言うみやこちゃんの言い分は判らない事もない。


わたしの叫びは軽くスルーされちゃった。

スルーですか、そうですか。


「ナルホド、言われてみればそうですね。その可能性は大です、シェリルちゃん!賢いのですわ!」

イライザもパン!と両の手のひらを打ち合わせて、みやこちゃんの意見に乗っかる。


「バカと思ってたの、イライザ……?」


…………一言多いよ、イライザぁ……。


ちゃんと、フォローしてよねぇ?


「シェリルちゃんの興味は血沸き立ち、肉群れ踊るバトルな分野にのみ灌がれている!となどけっしてそんな事を思ってなどいませんよ!」


「はい、イライザ正直乙!そう、脳筋って思われてたと受け取っておくわ」


あぁぁー、それじゃフォローなってないよ……脳筋ってみやこちゃんは取っちゃうし、二人の間でなんかわたわたしちゃうなぁー。

はぁぁ……。


「そんな、瞳はしないで。許して欲しいのです……」


みやこちゃんがイライザを見詰める。

距離を詰めてから仁王立ち。


その時、イライザの口から謝罪の言葉が零れた。

これでおさまるかなって、みやこちゃんの様子を窺うと……このタイミングであの、いい笑顔でイライザから視線を逸らさない。

後光が差してみえるくらいの神々しい。



「許して欲しいの?イライザは、何を許して欲しいの?何を?何を、です……、か?

許して欲しいのって言った!わよね?ね、まぷちもくまーも聞いてたわよね?頷いたの見たわよ。ほら、証人もこっちには居るのよ。許して欲しいのって言ったイライザ……何を、許して、欲しいのです、かぁぁ?」


二人を交互に見てオタオタすることしか出来ない、こんなわたしは嫌だ。

嫌なのに……、強く口を挟んでみやこちゃんにしっかり噛みついていくわけにも行かないし……。


みやこちゃんはにっこり笑ってイライザから視線を外さない、それだけなのにイライザはそこから何かを感じて青くなってる。


「そ、そんなに凄まなくても。イライザが震えてるし、シェリルさん!」


みやこちゃんと、わたしを挟んでイライザ。


捕食者と、止める力のない仲介者を挟んで被害者。

そんな図式が出来上がってる。


「凄む?そんなこと、ないわよ。あるわけないわよね、イライザ?」


イライザが頷いてる。

それを見て、軽く息を吐き出すみやこちゃんの満面の笑み。

ふ、……!


「でしょお?わたしはイライザに訊ねているだけなのよ。これは訊いておかなきゃいけないの、イライザの口から直接言ってほしいの。ど〜しても気になってしょうがないものだからぁ♪」


楽しんでる……久しぶりに城に行ってたらしいけど、城から戻ってからちょっと機嫌悪かったや、そう言えば。

イライザは生け贄ってわけ?


わたしは……どうしてあげることも出来ないけど……祈るよ、イライザ。あなたのために……せめて、早目にみやこちゃんが切り上げでくれますようにと。




ちょっとした事でも、ケンカになっちゃいますよね……、熱くなっちゃうからどっちも。

だから止まれない。


次回は、流れだけは決まってるけど段取れてないっ!!

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