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招かれざる招待状

ソワソワ……ドキドキ……どっくどっく、きゅううううううううっ!


やだな、鼓動が早いのを激しく自覚しちゃう。

胸が締め付けられるような気分にまでなってくる。


空はあんなに青くて、明るくって、雲だって視界の隅の方にちらほらとまばらにあるっぽいだけで、どーぞ、泳いで下さいって言われてるみたいに常夏の南国に居ることをこれでもかって思い出させてくれてる、こんな、とってもいいーお天気なのに。


それとは全く真逆に。

酷く沈んで真っ黒い。

わたしの心は。



帰りたいけど、って…………帰りたくなっても、今さら帰るに帰れないのは、わかってるし。

隣のみやこちゃんの顔を見るのだって心底……苦しく思える。


ヤバぁーい……。


空はあんなに青いのに……。

見知らぬ窓から空を見上げた。

ガタガタっ。


この揺れ、うーん……どうにかなんないかな。


にしても、揺れとは関係無いところでずぅっと続いてるぶるぶるって、なかなか酷い揺れを感じてて。

心の揺れを。


収まれ……収まれって心の奥で唱えて目を閉じた。






場面は変わって、ここはデュンケリオン中央区の、なんだかとーーーっても大きくてとってもとってもとっても広くて、そんなとってもわたしには場違い感が漂う──


補足しておくと、開けた平原と豊かな水量の河と浅く泥の溜まった湿地と点在する森がデュンケリオンを形成してるんだそうで。


ここ、デュンケリオンは連日の長い時間、大雨って事にならない限りは空気が乾いてるっぽいや。


フィッド村くらい山奥だとデュンケリオンとは空気が違う。

そう……言われると、村に居る時と今じゃ口にする水の回数がダンチ。


うん、点在してる森って……樹、足りてないんじゃないの?


都会だからってどかどか斬り倒して開発され続けて絶対数、減ってるんだろうけど……。


はぁ……、脱線した思考をムリやりスイッチ切り替え。

頭の上であっちいって!とモヤモヤしたものを払う。

それって只の勝手な雑念なんだけど、わたしの。


冷や汗かな……額を掌で触れてみると確かに濡れてる……体だって心にきちんと連動して拒否してるみたい。


なんたって、今、わたしの……わたし達の歩いてるのは──


「なんで……?」


デュンケリオンの王城、フィオレランクツエ。

こんなとこを歩いてるなんて、こうして足が前に進んで、廻りの景色が少しずつ変わって行ってるのに気付くたび現実に引き戻されようと…………………………夢遊病っぽく思えちゃって現実感があまり無い。


どっかふわふわ。

どうしたってクリアになんない、常識はずれじゃないんだもん、わたしの頭のスペックは!


んー……、名前は城門を開けてくれた兵隊っぽい門番の獣人が聞いてもないのに教えてくれた。


『どうだい?敬愛する陛下の居すフィオレランクツエの雄大さは!

こう、ずんと!心が揺れませんか?奥から震えが沸き上がってくるでしょう?ねぇ、お客人』


そういうもの、仕事だったんだよ、きっと。


ペラペラと滑らかにそんな言葉が次々と並ぶんだから、言い馴れてる感じだし、あるんだろうな、よくあるサービス業のマニュアルみたいの。


『この城の名は変わってるでしょ?それは建国の途、このデュンケリオンに都を開くということで初代である──』


そう言えば由来も教えてくれたんだけど、王城を建てた王様と王妃様の名前が使われてるとそんな驚くとこの無い有りがちなエピソード。


『──って、聖ナディアとラミッドの放棄した要塞が元もとあったから増設して使ってるらしいんでって話みたいですよ?ぶっちゃけ』


それについては言いたい事もあるけど今は愚痴る空気じゃない、周りの空気がぴんと張り詰めててプレッシャーに圧される感覚が確かにある。

どっから来るんだ、このプレッシャーは──


声に出していい言葉を選ぶ必要な、そんな空気て思っちゃうんですけど。


だから、嫌なことも嫌と言えないよ、隣を歩くみやこちゃんはプレッシャーが感じ無かったりするのかも知んない。


「後で、庭を散歩しながら見て廻りたいわね。ね?凛子ちゃん」


いつも通り、話しかけてくるくらいだもん。

さすがに声のトーンはひそひそ声くらい、落として喋ってるけどね。


「あ。うちもぅー、それぇ……。付いてきたいぃ……えっと、シェリルと、凛子とぉ……」


あ、愛那もわたしの左側でわたしの二の腕にしかっとしがみついて同じように歩いてる。

声違ってる、普段の二割くらいしか声出てないってカンジ!


そんなにいつもみたいに滑りのいい口じゃないのを見るに、彼女もプレッシャーを感じてる、とそんな心の中が伝わってくるんだよ。

だからってわけでも無いんだよ?

俯いたまま、二人に返事したのは。


「ん、……イライザにも来て貰って……、一緒に話したりしながら廻れたらいいね、良くない?」





そんな普段の何気無い会話を二人としてると、どうやら目的の場所に着いたっぽく。


「こちらでお待ちください」


先を歩いて先導してくれてた、頭から巻き角を生やした女騎士っぽい見た目の獣人。

そう言うとぺこっとお辞儀をしてくるりと180度反転して身を返してどっかに行っちゃった。


わたし達は控え室に通されて椅子に座ってやっと一息。


中は縦長の長方形っぽい作りの部屋で、十畳くらいのワンルームにも似てわたしの瞳に映った。

奥に窓が一つと、その手前に細長いテーブルと椅子。

控え室ってこんなに会議室みたいなものなの……?


ふぅっ…………。


そんな時、聞きなれた声とドアが同時に開かれて。


「久しぶりだな。元気そうでなりより……とでも言っておこうか」

「シェリルさん、まぷちさん、お元気、でしたかっ?」



そこにはダンゼ。

ひょっこりとその後ろからイライザの顔が見え。


美男美女に見える、その中味は狼紳士とライオンっ娘と解っててもお似合いに映る。


と、暫く積もる話しもあって少し話した。


「……ちょっと、ちょっと……良いですか?」


「ん?」


「何を聞かせて貰えるのかしら?」


懐かしい話のあとでイライザが耳を寄せるようにと囁いた。


と、どうも秘密な話っぽいの。


「言っておかなければ……と思ったので伝えますね?

どれだけ御父様が挑発するような、失礼な事を口にしてもなのですけど……、無視してくださいませんか?いえ、……必ず、無視か……。あるいは、本気にしてない素振りをして欲しいのです」


内容は、無茶なことはしないでとゆー忠告。


心配しないでも、みやこちゃんは解ってる……。んー、解ってても無茶なこともしちゃうのがみやこちゃんだと……ダンゼは見抜いてたんだよ、ね。


「イライザ、……解ったわ。そうなるように動くようにする」


「しかし、な……。シェリルが嘘に大人しいのを見せられると逆に怪しく見えて。……怖いな」





「聞いてないよ……?」


「招待状は差出人書いてなかったんですけど。凛子が知らないだけじゃ無いのよ、わたしも知らなかったわけなのだし」


「ねぇ。うちら、どぅなっちゃうのぉー……」


どーしてこうなった?

謁見の間に通される……、そこにはだけど国王様は姿を見せず、別の部屋にドタバタと連れて行かれて目の前には今、その国王様が!


「楽にして貰って良い。ん、少し待ってくれ?ここに広げた分だけでも……、目を通して置きたいのでな」


今回は私的な招待ということで、普段は招待されたお客さん、つまり今のわたし達の立場の来城者と会う部屋は謁見の間と言われる所を使うところらしいんだけど……、国王様のお部屋で会うことに……って、……え?


ココ、国王様のお部屋?


「ふ……ん、とこれくらいにしよう。見苦しい所を見られたかな?こんなむさ苦しいとこですまない、謁見の間を使うのは他の者に悪いかと思ってしまってな。畏まった場で言うべきでもない……と、娘から聞かされて……本来なら、あれを交えて宴を設けるものなのだが……。目立つ行動はどうも好みでは無い、そう言うことならばこのような礼の仕方を取る以外ないではないか」


と、そうなんだ。

執務室ってゆーお仕事する部屋なんだって。

ん……?

お礼、……?


国王様からお礼されるような事って何かあったかな。


散らばる紙の一枚一枚が高そうな巻物で、それが隅に無理矢理押し退けられてる現状。


この様子だと仕事は特別はかどってないっぽい。


そう、招待状の送りつけてきたのは王様だったんだよ。






そもそも、わたし達がここにこうしているきっかけって、宿のロビーにシェリルさん名義で届けられてた一通の招待状。


「や、シェリルさん。今日も酒場の大樽を一人で空にするってのかい?」


「飲みたいだけ飲んでるだけよ?誰かに張り合うわけで無いのだし……」


「気付いたら空にしてるってだけって言うんですかい、あれだけの酒を!

こりゃあ、また豪気な女性(ひと)だねえ。あー…………っと、そういや……あったあった。珍しいものがシェリルさんに来てますよ」




受け取ったみやこちゃんは、ロビーの奥に足を進めて酒場の中へ。


何、受け取ったんだろ……?

みやこちゃん何か頼んでたのかな、珍しいものって言ってたよね?

特別なお酒、……とか。

うーんっ、と……いやいや、そうじゃなくて美味しい食べ物を頼んでたりして……?



いつもなら、カウンターになるだけ近い明るいテーブルに座る、でも今日はそうじゃなくてわざわざ壁沿いのそれでいて店の隅の店の中でも暗くてカウンターからも遠い一角。


みやこちゃんに付いてそのテーブルにわたしが座ると、もうすでに宿の管理人さんというわたしなりの認識をしてる、チャールからロビーで受け取ったものを開いて中を確かめてるとこで。


手紙?


それはお酒でも、食べ物でもなくて。

薄茶色の一枚の巻いた紙。

コピー用紙とか、和紙みたいな薄いペラペラの紙じゃなくて厚みがあるの。

見た目でもインパクトがあった、そういう意味では。


少しすると目を通して読み終わったっぽく、テーブルの上にその手紙……を投げるように下ろしてみやこちゃんがカウンターに注文をする声が響いた。


「面倒、だけど仕方ないわね。……マスター、いつもの。まずは5本持ってきて。それと摘めるもの、オススメのを。今日は、別に急がないから!」


面倒、っていう割りにみやこちゃんの金色の瞳はキラって輝いてる。

何が中に書かれてたの?

それはふつーのみやこちゃんとは確かに違って、イベントが始まる前のわくわくした小さい子みたいに待ち遠しいのを隠せてないんだけど。


で、どーしても気になってチラチラと手紙を目で追っちゃう。

でも……みやこちゃん宛に届いたものだし……、見られたくない中身だったら悪いことしちゃうし、手に取って読めないよね……。


「何、凛子ちゃん読みたいの?」


「………………んんん」


「うふふ、別に隠すことが書かれてるわけでもないのよ?わたしのことを代表者にして届いたってだけですもの、これはね」


視線が自然とその手紙に向いてるのを感じ取ったみやこちゃんから訊ねられて、瞳が泳いでしまう。


追い撃ちの言葉にそれなら、と安心しきってわたしはみやこちゃんの手紙を手に取った。

その時、楽しそうにみやこちゃんが笑ってる気がしたのに興味が、好奇心が一心に手紙の中身に向いちゃってそれ所じゃなかったのを覚えてる。


……後から思えば、猪突猛進も猪突盲進って直せるストレートな軽卒行動だったんだなって思い知らされる、わたし。


タイムリープして過去に、その時に戻れるならその手紙は読んじゃダメなのってわたしの前に立って止めたい。

そう、心から思うんだけど、……戻れないのに。



手紙の内容はわたしなりに分かりやすくまとめるとこんな感じ。

実際はかしこまったていうか、難しいことを回りくどく書かれてたみたいで一瞬、ほんの少しくらってしたの。


『今日の天気はとてもいい天気です。いやまあ、そんなことはどーでもいいかも知れません。──要件はですね、ちゃんと会って話したい。お礼もしたいことですし、場所はあなたの居る街の、あなたとわたしの出会いの場。それだけ言えばあなたには伝わることでしょう、ではお待ちしています』



デートのお誘い?

難しいことを書いてあるから文面だけ言えば、ドラマで漫画でよくあるそんな誘い文句が書かれてる手紙……だったんだけど、ね。



でも、実際は…………………………城に来てる。


なんで、わたしも?




予約投稿の、………………日付を間違えました…


ないでーす、ごめんなさい…


なれてないからかなー、次は……予約するときは……チェックするね、うん。


チェックし忘れた!

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