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凱旋ってこんなだっけ?

帰ってきた!


帰ってきた!



帰ってきたんだよー。





誰が?


って、イライザだよ。


ん?

うん、解る。

……解るよ、忘れちゃった訳じゃないよね。

でも、ね……もしかするとだから、…………改めて説明しちゃうね?


イライザ、彼女は最近は全く出番が無かったけど可愛いくって、血統書付きの血筋のライオンっ娘。


けど、彼女の産まれるころでは既に王様のもとには母の違う兄姉たくさんだったって言うから血筋がちゃんとしてたとしても産まれてすぐ母の実家に送られたんだって。


その上彼女の産まれた事を隠されてっていうから、周囲に彼女のママは赤ちゃんは産まれて来なかったって伝えてたかも知んない。


次いでに言うと、彼女を良く知る人から聞いた話だと……イライザって、そんな境遇で更に田舎の実家でも彼女の居場所は無かったらしくて。


それでもイライザは全然、苦じゃなかったらしいのは彼がそばに居たからじゃないかな…彼の名はダンゼ。


イライザとは、小さい頃から兄妹みたいに育ったダンゼ。

彼はイライザの事をね、妹じゃないって意識してたみたいだけど……。


イライザとしては小さい頃は完全にお兄ちゃんだったって言ってたっけ……ドンマイ、元気だせよダンゼ。

小さい頃はって言ってるんだから。

今からが大事なんだって。

そう言う事をわたしの口から言うのは、色恋を解ってないのに、ちょっと可笑しいかも知んないかな。



そんなイライザが覚醒する。


覚醒したイライザの事は、ダンゼから聞いたダンゼの親からイライザの叔父さんに伝わる。

そうして、それまで動いてなかった歯車が動き出したみたいに……ダンゼとイライザ、二人の日常は……全く違うものに変わっちゃった。

一方は王族、一方はただの使用人。


わたしの知識のなかで例を出すとすると、バイト先の店長の娘にバイトが恋をするみたいなものなのかな?

言ってみてなんだけど、ちょっと……この場合の二人の関係とはそれだと違うものかも知んない。


妹じゃないって意識してたダンゼとしてもだよ?


リオグリス、王の血筋とはさすがに思ってなくてどう接したらいいか、解らなくてそんな時に突然の別れ。


王の血筋と判明した彼女は王宮からお呼ばれしちゃって、イライザとしても血筋なんて解らないままダンゼの家族とダンゼとずっと一緒に終わる人生だと思ってたって言うから離れたく無かった、けど、それだとダンゼの家族に迷惑な事になっちゃうから決心する。


既に来ていた迎えの役人の目の前で獣化して証拠を見せたんだって。


ずっと一緒だった家族を置いて王宮に向かう、イライザのその時の心の中を思えば、これで良かったと言いながら……でも、ホントは寂しかっただろう、ね。


わたしの家族とも、いきなり離ればなれになってそれが自分じゃどーしよーもなかったらって思っちゃうと凄く、心がしめつけられちゃうよ。

ホントに辛かったろうなって思った。


フィッド村でぐーちゃんがわたし達に姿を見せてから少し経って、すっかり村ではシェリルって名前とその見た目がちっさい子供にも人生曲がり角のお年寄りにも知れ渡ったそんな時。


何時ものようにみやこちゃんこと、シェリルさんがものみたいに喧嘩相手の冒険者の誰かさんを踏み踏みしてたそんな時に。


颯爽と現れたのが、イライザだったんだよ。

あの時は、お昼を過ぎててでも張り付いた汗がじとつく凄く暑い日だったっけ。


彼女は立派なドレスに、高そうなつばの広い帽子を被ってて、ちょっと見ただけでも村人に見えなかったし、たがらってそんな格好して冒険者ってわけでもなさそうで。


──受けましょう?この勝負。


イライザの顔は顎まで垂れた帽子のつばのせいで見えなかったけど、その一声で触れがたいとゆーか『なんか違う』雰囲気を放ってたんだって。


その後、イロイロあって始めて会った時のバトルに納得がいかないとかで決着つける着けないって、シェリルさんがイライザと戦ったんだけど……、そのままなら、みやこちゃんが負けるわけが無いって展開でいつも通りで。


そのままなら、ね?


でも、いつも通りなまま終わっちゃうとか、常に『わたしよりも強くて、凄くて、苦戦させてくれる強敵とやり合いたい』って言ってたみやこちゃんがそんな事で終わるのを望む訳なかったんだけど……負けず嫌いのシェリルさんが負けを認めちゃうって展開です!!


イライザは、そう、みやこちゃんこと、シェリルさんが唯一負けた相手なんだよっ!


なーんと、更に更に。

王女様なんだよね、イライザって。


だから──今!


「見てみて!パレードだよ、パレード。ほら、シェリルさん」


「まぷちィ、あのねぇー。シェリルはぁ、今、飲みすぎてぇー。お腹痛いんだからぁー急かさない、急かさない」


「クドゥーナ……ぁ?だぁれー、がぁ、お腹ぁ?痛いぃ?なんてー?!

言ったのぉ?かしら、ねぇ?」


「酔わないからって飲みすぎなんだよ、もうっ!シェリルさんはぁ」


「そうだよぅ、そうだよぅ!(ウン、ウンっ!)」


「大した量じゃないわよ?あのくらい……って、思ったよりやじ馬は居ないのね……?」


「あやや……。そう言えば、シェリルさんの言う通り……TVで見てる優勝なんかのパレードってもっと、ずっと盛り上がってて歓声とか花吹雪とかの派手な演出があったりしたよね……ってゆーか……全然少なくないかな……やじ馬」


目の前ではパレードが軍隊マーチっぽい伴奏に乗せて行われてるってゆー。

パレードの音楽隊なんかはそこそこ揃ってる、の……かな?


しっかりと訓練されたテンポでゆっくり歩きながら目の前の大きな通りを通り過ぎていったのは、ダン、ドンダダダタと打撃音を響かせる、いくつか大きさの違う太鼓に、ぱぷぱぷぉおおー♪ラッパが大中小。


それを邪魔しない程度にギターのような弦楽器をボロン、ボロンと掻き鳴らす。

かと思えば、リコーダーと蝶の口をごっちゃに混ぜたみたいな形状の笛が、ピ音を強調するようにピュロロロォロロロと逆に高くて交わらない音を奏でて独奏する。


「ふふ、音だけはパレードって感じさせてるわね」


「シェリルさんの手にはいつも、……いつでもジョッキですけど?イライザさまの前でくらい、真面目に祝ってあげよってなったりしないんだ?」


「わたし、酔わないから。水と変わらないんだから、いいんじゃないー♪」


「じゃ、うちが水と交換したげるぅ。はい、お水だよぅーシェリル♪」


酒場から一つ、二つの路地を越えると今わたしたちの居る大きな通りに出る。

イベントことじゃなくても出店は沢山出てる通りになる。

肉の串焼き、脂ののった魚に塩味をつけて焼いたもの、とろっとろに柔らかい肉の入った乳白色のスープ、真ん中に裂け目を入れて塩ゆで野菜を詰めたパンなんか定番で他にも色々。

何時もならどれかを必ず買い食いしちゃう、してしまうのに。

何時もなら……。


そんな大通りをパレードの為に通行止めにしてるみたいだから?

わたしにとってとても残念なことなんだけど、出店は一件も姿が見えない。


じゃあ、通りに店を構えるカフェなんかはどうなるのかってゆーと暇そう、とっても。


お客さんがあまり居ない、その理由はすぐ後ろのレストラン兼食堂……こちらも普段は賑わいを見せてる記憶があるんだけど、そのレストランの店員の呟きに全てがきれいにはまって疑問が解けた。

理由はなんともあっさりとしたもので、それはと言うと、


「あーあ、やってらんねぇー。ったく、歩く迷惑が何の迷惑を押し付けに来たんだか……あーあ……やだやだ」


と、こんな事を口に出して言った。

歩く迷惑、それはイライザの事を悪く言ってるただの悪口。


知ってたことだけど、そんなの聞いたらわたしにしても、ぽかんとしてられない。

勿論、みやこちゃんも同じように、ぽろりと口を滑らせたレストランの店員に向かって目を細める。


みやこちゃんの方からその時、寒気を感じてちらりと目線を動かす。

そしたら、やっぱり出てたよ、みやこちゃんの背中からは背負うような濁った暗いオーラのようなもの。


それでがくぶるとは言わないけど小さく震えた。

で、聞こえたんだ。

みやこちゃんの声で、


「コロス……」


って、流石にそれは止めてあげて!


わたしたちは、酒場から木の椅子を借りて持ってきてたんだけど、今はってゆーと……悪くないっては言えないかもです!


「あの子の強さはわたしが認めてるの」


「お、おい。なんだ?」


「迷惑?あなたに、イライザは迷惑かけたってゆーのぉ?」


「そりゃあ、かけられてねぇって……」


「迷惑、かけたってゆーの?」


「あぁ、……なんだっ?どうしてそんなに嬉しそうにしてるんだよっ?」


「迷惑をかけるってゆー事はどーゆーぅ……、本当はどうするカンジか教えてあげましょうね♪」


「お、おい!やめろ、……やめてくれ、ひいっ!」


わたしは他人のフリ……もとい、みやこちゃんの怒りの風向きがこっちに来ませんよーにって祈りながら一部始終を耳で聞き、みやこちゃんに背を向けていたから何が起こっていたのかは耳に届いた情報から察するしか無い。

だけど、ゴツン!

きっと聞こえちゃいけない音がして振り替えると。


後ろに居たのは、暇そうなレストランからテーブルを借りて(?)きたみやこちゃん。

視線が合うとにこー、にこぱぁーっと満足そうに気分よさそうに笑った。


「まぷちも、こっちに来て座りなさいよ。寛げるでしょ?

これは、暇だからって貸してくれたレストランにお礼いわなくちゃだわ♪」


「シェリルぅ、はいっ、これ♪

あ、……もちっ、まぷちのもあるよぅ、召しあーがれっ」


丸いテーブルは座ると、持ってきていた木の椅子と高さがぴったりと合うカンジで。

早速、愛那手製のホットドッグもどきの焼き肉ドッグがみやこちゃんに手渡される。


呼ばれて、ため息混じりに座ったわたしが愛那と瞳が合うと、にこっと頬が緩んで微笑んだ彼女は同じように、テキパキと焼けた何かの肉と、これまた何かの野菜っぽいものを細長いパンに挟んでから手渡してくれる。


「……泣いてたよ、あのレストランの店員さん」


受けとると一言、みやこちゃんに言いたかった言葉が頭について離れなくて視線でみやこちゃんを追う。

我慢する努力をしないわたしの口からその言葉は滑り出し、声に乗る。音となって届く。


それに対して、みやこちゃんは悪びれずにかんけーないねっとでも言いたげ、声に出さないだけで肩をすくめてみせる。

次の瞬間には、ぱくっ!


みやこちゃんの小さい口は焼き肉ドッグをかじりつきにかかっている具合で、反省を声に出すような空気は見せなかったよ。


「これ、美味しっ♪ほら、食べないの?肉汁がじゅわっと染み出て。ぺろっといけちゃうわよ」


みやこちゃん、いつもそう。

自分の中で解決してて、悪いことをしてても終わってるなら、謝らない。


「あは、そんなに薦められたら食べないの勿体無いよね。あ、……凄っ……焼き肉の味がする」


その必要なんて無いって思ってる様子だよね。

わたしとしても?


特に、みやこちゃんと喧嘩はしたくないから店員の事を棚上げにした。

要はスルーされたから、深く考えない方にシフトチェンジ!


「へへへへっ♪お代わりあるからねぇ。っとお、そぉれよりぃ……気付く事ぉ、なぁい?」


後が怖い……、ベッドの中にいつの間にか入り込んで来るみやこちゃんだもん。

何をされるか、ちょっと考えない方にシフトチェンジしたから、もうその先はご想像にお任せってことで///////!

その先は棚上げします!



「な・ん・か、気付く事なぁいのぅー?」


「あ、これ。あれだ、完成していたの?」


わたしはそんな二人の会話を聞いているつもりで、実は全く別の、わたしの中でもやもやしている部分の考えを解に導こうとしていた。

考えごとをしながらホットドッグもどきの焼き肉を口に含む。一口、もう一口。

「素材がぁ足りるかー?とか、心配になるくらい失敗ーぃ、しちゃってもぉう、ヒヤヒヤもんだったけどぉー。ここって足を伸ばせばぁ〜色々ぅ見付かったんだぁ。で、かーんせいっ♪」


うぅっ美味しいぃー!


肉汁が口に入り込んだ瞬間、これでもかと口の中で広がりながら唾液を誘発して舌先で味わってから肉汁を飲み込む。

思わずほぉぉと変な声が漏れた。


今までの愛那のパンもそれはそれで美味しいものの、物足りないと言うのはどうしようも無かった。

それはわたし達の食べ慣れたパンには美味しいソースが、味を引き立てるケチャップとか色々な味付けされていて、それを当たり前のように食べてたんだから少々我慢したりするのは当然。


「待ちわびてたのよ、クドゥーナ。これよ、これを待ってたんだからっ」


「こここ、これ!そっくりだよー。ん、もぐ。やっぱり!んふふふふっ、食べ慣れた味だぁ」


それでも、我慢した所で『無くは無い』という事も知っているわたしとみやこちゃんは愛那に比べると贅沢な舌を味覚をこの異世界に来てまでも相変わらず記憶していたと言えなくも無い。


みやこちゃん、興奮してる。

それも仕方ないんじゃないかな?

村では失敗した、焼き肉のタレを愛那の手で再現してみせたんだから!


わたし?

勿論、興奮してた!

ゴハンと焼き肉が、こーなるとやっぱり食べたくなる。


ゴハン、……有ったとしても育て方がわからないとか、固くて小さい豆扱いなんてされてて全くメジャーじゃないとかで流通してないのかも知んないし、希望だけは持ってたい。

希望だけは持っててもいいでしょ?





このパレードは特別なパレードらしくって、なんと南門からわざわざ三日かけて城門まで『悪竜退治』をしたイライザを褒め称える為のものなんだって、さ。


それにしても悪竜って……、ぐーちゃんは何にも悪さしてないのに。


イライザが退治したことになってる悪竜と言われてる討伐されるとこだった大きな巨竜は今やわたし達の仲間だったりする。


食欲旺盛で酒好きだけど弱い、見た目はみやこちゃんそっくりな、悪竜扱いは何があったとしても不当ってしか思えない竜のことで、それを皆が知ったら驚くこと間違いなしの。

そもそも。


ぐーちゃんこと、グラクロ……なんだっけ?とっても長い名前だったことしか覚えてなかった……とにかく、グラクロね。

寝てた山奥の洞窟をサーゲートの商人たちの勝手で掘り進めたのがぐーちゃんを目覚めさせるって事に繋がったんだから、悪いのはどっちっていうの……誰に話しても商人の方なんじゃ?

儲ける為に起こしておいて、危険っぽいから退治するしかないって横暴だよね、全く!


過去の竜ってどれも人類の敵だったでしょーってことが確定的に竜=悪って意識を植え付けてるンけどね。



「思ってるパレードと、なんか違うわよね……賑やかなんだ、そこはいいのだけれど。もうちょっと足りないのよね、苺に練乳が掛かってないみたいな」


みやこちゃん、それを言ったら、んー。


「わたしも何となく。でも、ほら!ここって貴族辞めちゃってるからその関係でもの足りないよーって、わたし達には見えてるのかも」


「わたしの思ってることと同じなんてそう、思ってる?」


「え、違うの?」


「貴族じゃなくて、軍隊だもの。兵士たちのきれいに揃った行進見なきゃパレードと言えなくない?」


何だよ、うん。


「うち、それよりぃ。イライザが何なのかはわかるけどぅー、どんな人なのかまで解んないぃ」


「イライザ、え……うーん。笑った顔が可愛いくてー、でもキレるとやんちゃな……そんなふつーの子だよ。照れ顔なんか、可愛いの二倍増し!」


あはは、愛那……あんまりイライザと関わり無かった?そーだっけ?

じゃあ、知んないのも仕方ないのかな?


あっ!

イライザだよ。

姿を見せて馬車から身を乗り出してみやこちゃん見つけたっぽく、シェリーさーんって手を振ってるイライザ。


うわぁ……。


自重してくんないかな、目立ってる目立ってるよ、わたし達が!






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