えっと……にんげんていいな、そう思ったんですケド
「んー……なんだかなー……」
心の声が零れる。トーンを低く殺し気味に。
そこだけは頑張った、だって迷惑になっちゃうでしょ……?
絶望するのはわたしの勝手だとしても。
今居るのは自由に寛げる自分の為だけに用意された部屋……だったら、そんな気の使い方をする訳がなかった……わたしだって人間である以上は?どっちか、いうと楽に楽に出きるなら……楽チンな事に悪い気はしないわけだから?
そりゃ、ね。
出来るならのんべんだらりと読書しますけど?図書館の中でそんなこと出来るわけ無い───あれっ?
周りを見れば現実感がある、思い思いのスタイルであっちもこっちも本を読んでたり、読んでなかったり……。
そう、なにも無いがらんどうのスペースがあるだけで絨毯のような敷物の上に皆寝転がって寛いでいる。
「お……、おろっ?」
んーと、例えばすぐ右奥のクリーム色の普段着っぽい男の人はクッションのようなもので肘をカバーしつつ、片手でページをめくって本を読んでるみたくわたしには見えるし、
「んー……」
その左にぐるーっと視線を巡らせると、仰向けに寝転んで重ねた本を枕にしてるひげもじゃのおじ様が難しい表情で、大きくて分厚いハードカバーと格闘してる……いやまぁ、とっても難しい勉強をしてるんだろって思うけども。
そんな事が思い浮かぶ、わたしはきっと疲れた顔をしてわたしとは別の客たちを見ているかも知んない。
更にわたしの目には今、気になってしょうがないケモ耳をすぐ横に捉えた……って、ここに居るのは大抵ほとんどが何かのケモ耳なんですけど。
あ、ぴくんと濃い茶のケモ耳が跳ねた、今!
もさもさの尻尾も立派な少女がだらしなく……って言っちゃ悪いかな、すやすや静かな寝息を立てておやすみちう……大きく開けた口には尖った犬歯も見えちゃった。
分厚い石壁に大きく開けられた窓、そこから射し込むぽかぽかの陽射しに思いがげず気持ちよくなって寝ちゃったのかな。
勝手にそんな想像を膨らませるのもどーかなと思うには思ったけど……なんとも可愛らしい。
俯せに寝そべってクッションのようなものを脇の下に敷き込んで本を広げてる……広げてたのかな、今は本は放りだして両腕は顔の前。
とかね、ここの獣人達の思い思いの態勢でまったり過している、そんな姿が目に入ってくるとだよ……。
常識を返せ、わたしの!
声を大にして言いたい、けど我慢することにした。
実際、静かは静かだしこのまったり空間。
声をあげて騒ぐって常軌を逸した利用者は居ないし、そんなことをしたら一発レッドカード!退場!
なんてことがあるかも知れないじゃん?
この図書館に来て、驚く事ばかりみたいで精神が削られてくのが止まらない。
ガリガリと音まで聞こえるように感じちゃうってのは……あははっ。
……これ、重症かな……?
積み上げられ本棚に収まるように整然と並べられてる本の山……山ってのはちょっと違うかもかなあー。
密林、そう!
鬱蒼と茂るツタや見たこともない植物、そんな中からお目当ての本を見つけるって難解なミッションだと思っちゃったんだよね。
誰だって、そう思うよね?
実際は、全部、本……本、本、本!
これを見たら、勉強の虫って揶揄される人だってね……絶対うげぇって嫌な顔するんじゃないかって思ってしまう。
その中から一冊の本を例え通し見でパラパラとだけでも読んでなかったらずっとずっとそれが疑問だったんじゃないかなって思う。
落ち着け、落ち着け、わたし!
疑問、それは人間のこと。
可哀想な視線というか、差別的な視線というか……種族が違うのはわかるけど、好意的でない視線が痛いほど刺さるのはちょっと、ね。
獣人ってカテゴリはケモ耳とふさふさ尻尾がついてなかったら人間と変わんないようにわたしには見えるんで、だからより一層そこまで気にしないでくださいって感じ。
あー、まぁ、りっぱな角がチャームポイントな獣人さんたちも居たっけね……それは又、別の話ってゆーか……気にすんしないで?
エルフってカテゴリは、耳が長い以外に身体にそこまでの違う部分無いんだし、ドワーフにしたって小学生みたいな身長ってチャームポイントを除いては人間と変わらないでしょ?
多分、そう。
他には……こっちに来てからはまだそこまで接触の無いノーム、ホビットとかいろいろ本当にいろいろ居るわけだけど……。
省く。
うん、省こう。
彼らから嫌な思いをさせられたわけじゃなし。
カルガインや村ではそこまでじゃなかったけど、デュンケリオンでふらふらと散歩してるだけで、その嫌な視線があちこちから飛んできて刺さる。
しょーじき……痛いよ……わたし……。
人間の事は、ちょっと通し見で分厚い装丁の本を読んだ程度でも……。
下等、又は弱い存在なんだって書かれてるらしいって何と無く、そういう解に行き着くことができた。
下等って……つまり、劣っている、と?
だから、人間と見れば気に障ったみたいな視線で追ってこられるわけですか……そうですか、気にしなくていいと思うんだけどなー。
劣っている、下に見ているんなら気にしてくれなくても大丈夫ですって。
なんで、そこまで気にするかな……?
つまり、こう言うことでしょ?
虫けらっ、てわたしたちを見てるわけじゃん?
それなら目で追わないで、そっとしてくれれば、その内あなたたちの視界から消えるんじゃない?
ああっでも……わたしも、よくよく思えば虫が視界に入ってきたら、気がつくと視界から消えてくれるまでついつい視線はそっちを追ってるかも。
そういうもんだね、厳しいね……弱小な存在っていうのも、さ。
「やんなるな、もう!鬱だ、……やだ、消えたい……」
今わたしはその辺の他の客みたく、寝そべって床でクッション片手に本を読む。
と、そんな気分にもなれる筈もなく。
「まさか、真似できないよ。それはわたしのカテゴリにインプットされてません……」
思わず、我慢しきれない心から零れちゃうそんな呟き。
日本で育ったわたしとしては、どーしても、汚れてないの解ってるけど、汚れてなくても……地面とか、床とか。寝そべって本を読むってそんなスタイルを楽しむなんてとてもとても真似出来ない訳で。
みんなにも思い浮かべてほしい、コンビニの店の前の地面に座ってる、思い思いの座り方でね……そんな子達を見ていると。
……うわぁ……っ。
そう思ったことが無いとは言わないと思うんですけど。
まさに、今!わたしは、そんな思いで他の客の人を見ているんですってば!
これでわたしと、こんなうわぁっ……って気持ち、共感できると思うんですけど。
どうかな……?
そんなわたしが同じように寝転がってまったりできるか?
答えは、出来ない。
落ち着かないもん……。
そこまでがさつになれないもんね、育ってきた環境はやっぱり違うんだなあー。
あ、わたしの部屋だと何故か寝そべって何しても気にしないかな、何でかな……ま、いいや。
なので、受け付けへ再度GO!!
そして、何とか用意して貰った机で本を広げて読んでいるんですけど、聞いてください……いや、わたしが気にしいってだけなんでしょう?そうですよ?わたしはそんなぺらっぺらで、面倒な性格なんだってわかってるんですって。
……だから、ね。
勿論、わたしはそうあるべきという風に。
壁沿いに机をくっつけて、他の客に背を向けて本を読んでます。
えーと、それでっ、と。……この本のタイトルは、なになに……んーと。
黎明の国……。
このタイトルから察するにデュンケリオンのことかサーゲートの事について書かれてる本みたい。
ただし、わたしには正直難しいみたいだ。
所々、翻訳機能がバグを起こして文字化けしちゃってるし、間違って翻訳してるのか意味の違うって解る漢字があてられて、上質な紙のページの上に踊るように浮かび上がってるし。
もっと簡単な、教科書くらいの意味合いの歴史書とかないのかなー?
誰だって一目で理解できる、なんたってわたしだって読んだら解っちゃったくらいなわけだし、そんな分かりやすく書かれてる本。
「そう思うと、日本の教科書って読みやすかったんだ……どこの本だって親切に丁寧に書かれてるわけじゃないのをあの時はわかってなかったよ……」
そうだよ、ホント、教科書ってこうやって壁にぶつかってみると、どんなにか解りやすく噛み砕かれて書かれてたのかって理解できるような……でも、必要以上に噛み砕いてるよーな気がしないでもないんだけど、ね。
「建国王フィオ……レミリス……が、デカレに生まれ……その頃は……」
今、机の上に広げて読んでるこれは、戦記のようなものの気がしないでもないんだけど、どーもそっち系の意味合いが濃いね。
そのせいか曖昧で書かれてるとこの多いんですけど。
たとえばこれ……。
国史前歴45年、スームパー防衛に失敗するも……とか。
うーん、この……なんとゆうか。
この先に続きないとどうなったか解らない、だけどそのすぐ下に書かれてるのは別のことだけ。
防衛に失敗したの、してないの、どっち?
他にだって陥落させたものの……って続きが無いなら納得できない書き方が何度もある。
ま……まあ、わたしの思うとこ……負けちゃったから正直に書けなくて、こんな書き方でしょうがなくokが出たとかそんなとこなんだろーな……負けてるんだから、書いた人も悩んだんじゃないかな?
どーしても、負けちゃった出来事は無かったことにしたいじゃん、やな事って全部忘れて楽になりたいよね?
これが、事なかれ主義ってやつかも知んない!
視線を左から右へ動かしてパラ読み。
そう、左から右へ文章が書かれてるんだ。
しかも横書き、これって日本とは違って英語の書き方ですが……教科書だって一部はこんな書き方だったからなんとなくこういうものって納得しちゃう。
まま、まぁ驚いたりはしなかったね。
そ!その、疑いの瞳はなんだ?
絶対横書きなんかで狼狽えたりしてないんだもんっ!
馴れたら、読めなくないよ。
馴れだよ、要は。
数冊読めば何とも思わなくなるんだから、人付き合いだって『そういうカテゴリなんだ』ってインプット出来てたら、そのカテゴリに併せて話を合わせてればなかなか間違いは起きないもの。
起きないよね?……そんなものだよね!?
それはちょっと……棚上げしちゃお、人付き合いなんて今はどーでもいいよね?……わたしの。
そんな風に脱線したり、優柔不断にふらふらと考えを巡らせて手を止めたりしたけど。
ページを捲るでもなくパラパラと読み飛ばしながら、それでも重要そうなパーツは抜き出した感はある。
「建国王フィオレミリスに現国王のギッシュロミオール」
わたしは現国王の名前も今知ったわけで。
それだけでも、成果だと思うんだ。
「うーん、コレじゃない。つぎいこ次」
ちらりと横を見れば分厚い本がそれはもう沢山積み上げられてて、どん、どん、どーんと。
「これ見ると挫けそうなわたしが居る……。頑張ろう、わたしの為なんだし!」
いや、わたしが持ってきて積んだんだけどね。
勝手に動き出してここに積み上がったわけじゃない。
さすがにファンタジーでも、そこまで非常識でもなかった。
ちょっちそれは、ね。
分割しようと思ったけど、切るべき線が見えなくて、ま、いっかと更新です。
3日で4000文字書けたのでちょっと速度戻ってきたかな、と思ってる……とか、スランプからは抜けれたと思っていいのかなー、とか。
実際は、スランプとゆーか引出しの数の問題とゆーか……。
バトルシーン書けない、つまりそーゆー事だって。
ニガテなんだ。
読むのは好きなんだけどなー。