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図書館に行ったよ!!

クドゥーナと別れた後。

わたしは、ずっとずっと行ってみたくて、でもでも、中央環状通商道からのたくさんの枝分かれした街道、通り、路地に阻まれてたどり着けていない──図書館を目指してシロイの上に居る。

この、デュンケリオンという都市の活気はどこのどれとわたしが言える以上の熱気で。


どこに、どこまで行っても人の気配が無くなるって事がない。

この活気が地元にあればシャッター商店街に人の足がまた戻ってくるのかも知れないなぁと頭を過った。


どんなに喧騒が聞こえなくたって、そこにはデュンケリオンで暮らす人たちの生活の音があるんだもん。

それが途絶えることなく聞こえてくる。


「あれっ、あれーっ?」


「ここはすぐ前、通ったゾ」


「だ、だよねー。シロイ、これって……さ、迷子?迷ってる、ね?わたしたち、迷ってるぅ?」


「知るカっ…」


いわゆる、……迷子ということじゃないかな、多分。


ヴェーッと威嚇するように鳴き声を上げるシロイは『どーでもいいから肉よこせ』って、その鋭くて大きくてでも綺麗な眼でわたしに訴えてくる。


肉をあげるのはいいんだ。

幾らでもあげる、でも。


「いつになったら着くのよ、ね?シロイ、図書館はドコーっ?」


ホントにどこにあるんだろ、はぁ。

かけらも姿を見せない図書館は。




こっちはうーん。

いった!見覚えがある……、気がする。

……あっちはいったかな、でもな………………あの白地でゴテゴテに色の暴力て表現が似合う看板だらけの建物、見た気がするんだよね。


目の前には三叉路、おまけに少し進めば登り坂の途中に路地が幾つも。


「どれが正解なルートか誰か教えてよぅっ!?」


頬が熱い。

泣きそう。

情けなくて……。


イラつく気持ちを我慢しきれず空を仰いで叫んだ。

その声を、心からのわたしの叫びを誰かが汲んでくれるわけもあるはずもなく……無情にも風に流されるようにして叫び声は街中に消えた。


これじゃ丸っきりわたし、迷子だよぅ……。


じゃあ、こっちの路地から次の通りに出ようかってゆーと…………むー、それも全く違う気がするし………………うーん。




「……やっと、………………やっと、やっと!……着いた……っ」


結局、道行く人に聞いた方が早かったんだよねー。

それに気付いたのは来た道を戻らなきゃって事になった路地から繋がる、その先の大きな通りに露天を出してた気の良さそうな何かの獣人だろうと思う、赤茶の毛艶のいい立派なケモ耳を首筋までてろーんと垂らしているのか印象的な、その露天の主人らしいおばさんに教えられてから、…………とほほ……。


「シロイは大人しくここで寝ててね♪」


とにかく、それはまぁおわったことだし。

言うことを理解してくれて、地面に丸まって寝る体勢に入ったシロイの鼻先に肉の塊を1つ、ぽとんと。


「大事に食べて、ねっ……って……ああっ!言う前にもう無いしっ!追加ねだっても無いんだからねっ。だしてやるもんかっ、絶対に」


図書館に着いた。

シロイとの一件はさらっと流すことにしよう、いつもの事だしね、どーせ。


それより、入るのにお金がかかるかと思ってはいたけど、手持ちで十分足りるくらいだったからよかったよかった。


「入館料は大人10ジェイン子供5ジェインです」


司書さんだったかも知れない。

ジェイン……ここでもかー。

そう、サーゲートの通貨の名称らしい。

10ジェインが、1グリムくらいの価値。

つまり、グリムはジェインより10倍価値が高いってことなんだと思う。


中学あがるまでが子供料金で、わたしは大人料金を払った。

これでも高校生だからね。


わたしの知っている子供料金の境はそうだった、それが。


「これは1グリム……ですか?デュンケリオンではまず見ないですけど。商人か、ご旅行でこられた方だったりします?」


司書っぽい男の人はそれでも笑顔が絶やさず、すっと差し出してきた。

5ジェイン。

銅の色をした小さな硬貨が五枚。


思わず、二度見をしてしまう。


………………。

わたし……、そうですか。うん、……子供だと。

そう言うことだったんだ。


身なりを確かめるみたいにジロジロ見られた。

獣人のようなケモ耳もしっぽも無いからわたしは。


「好きな本をご自由にお読み下さい。御用がおありになったらば、またこの場所に来て貰えれば係の者がおりますので仰ってください。では、ごゆっくりお楽しみになって下さい。当図書館はデュンケリオン最大の蔵書を誇ります。ここで見付からない本は無いと声を大にして断言できます、さあ、お行きなさい。大海原へと」


「あ、あははは……。そうなんですか〜。楽しんで帰ります、じゃっ!」


ちょっくちょくこんな風に見られる。

マニュアルで決まりきったっぽい、一日に何度も繰り返されてると思うその台詞を口にしながらも司書の男の人はわたしにケモ耳を探してるみたいだった。

喋りながら視線が流れるの……。


それなら、さ。

声を大にして言いたいんだからね、最初からケモ耳も尻尾も無いんだからね、って、わたしは。


そんな言葉が脳を過った。

司書の視線に合わせるようにわたしも視線を交わしながら楕円のアールを描く図書館入り口のカウンターを離れる。

まだ、見てるのかよと心の中で思ったけど我慢した。

だって、図書館では迷惑になるもん、静かにしないとねっ?




何故かどっと疲れた気がしちゃった。

どうしてか、そんな気が。



外から見た図書館もお城みたいに大きくて迫力があったけど、中に入っても中は中で、その壮大さに声を失う。時間が止まる。わたし、活動停止!


カウンターを離れてまず数歩で右手には食堂か、体育館かと思うほどのスペースが目に飛び込んでくる。


奥まで見えるように近付いて解っちゃう、近付く前とじゃ見えてる部分がダンチだと。


「何コレ……、ダンスホール……?」


体育館や学校の食堂なんか比較にならない、えっと……なんだろうな……コレ。

映画なんかで見る、貴族のダンスしてるとことか、ううん、広さならそれ以上。

そんなとこで、そんな広さなら何ができるって?

それは。


読んでいた、静かに本を。

そのだだっ広い空間は本を読んで過ごすスペース。

それにしては、それだけの為にしては広すぎるんですけど、ねぇ……?

しかも……吹き抜け?


上を見上げると遥か頭上に濃い赤色の天井が見えた。

ぶち抜けてる……、ここはデパートか何かですか?


付け足して置くなら、何かを思う前に圧倒されて睫毛の先だって動きませんでした、ってことぐらい。

魂抜かれちゃったかなって思っちゃったや。

だけど、実はまだそうじゃなかったんだ……。


「はぁ……はぁ……。何で?何だ、ここ。どうして、こんなに……。無駄に広すぎるんですけど………」


そこを離れる。

精神ががりがり削られたせいかもだけど足が重い。

ここは山登りの途中かってぐらいに。


この図書館はお城って言っても実は間違いじゃないくらいだったりする。

ここのとこ、特別。


「嘘、……でしょ?」


5階建てだって説明書きが目に飛び込んでくれば、もうホントにね。

更には地下も倉庫として使われてるって書かれてる上、図書館裏にはこの規模の半分くらいの別棟があったりと来れば。


取り敢えずこれ以上の精神を削られると、歩行に影響が出そうだから一歩。

本棚が整然と並べられているエリアに足をじわりと踏み入れた。


ここは……本の密林だったりしないよね……?


密林。

それはわたしの頭に浮かんだ最初の言葉。

コレ、棚ひとつに何冊の本が並べられているっていうの……その上で本棚が幾つある?


黒ずんだ木目の本棚が一定の数を置いて、通路を挟んでまた一定数並んでて……それがえんどれす。


校庭……いやいや、……これは陸上競技場に本棚を並べられているって言う方が近い………………どうかな?


こんな密林があと四つ分、わたしの真上に広がっているかと思うだけでくらりとした。


本棚に倒れかかったりしなかっただけわたしをわたしは褒めてあげたい。


奥は当然、見えない。

ここからじゃ視界に一番奥は入ってこない、それって。

そこまで考えて思考停止、再度運転開始。

まるでPCがフリーズから再始動を始めるみたいにきゅいいいんとあの音が耳に響いた気がするくらいには、わたし……脳が焼き付いてショートしてた。


「……うわぁ……」


ダメだダメ。

考えるのは止めよ、アマゾンがここにはある。そう思ってこう。





まさかの、続きます……どーしてこーなった……。

鬱展開のを後まわしにしてこれを持ってきたからですね!!

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