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強くなったつもりで、実は全然そうじゃなくて本質は変われてない


ジョシフォーヌの魔導剣。

それは言ってみればエンチャント……だと、思う。

エンチャント──魔力を足して武器に魔法を付与するスキル。


わたしはサボったから出来ないし、ヘクトルも……得意そうに見えなかったから存在も、知ってて手に要れ方も勿論知っててそれでも後回しにしてたんだ……と、思う。


クドゥーナ……愛那……だっけ?……あの子は似た事が出来るけど根本的にはエンチャントと精霊魔法エレメンタリーは違ってて。

出来ない、きっと。


何か、で読んだ気がするんだ。

攻略サイトか運営の呟きか──魔力付与魔法と精霊魔法は同時には働かないって。

エンチャントとエレメンタリーは打ち消し合うんだって。


だから、もし。ジョシフォーヌがクドゥーナみたく精霊魔法を使ってるなら、エンチャントを頑張ってみろなんて……とんでもなくバカみたいだ。

訳知りみたいに言わなきゃ良かった。


しまったなー……って心の中で後悔した。

無駄なことを言っちゃった。止めとけば、良かったよ。あーあ……、なんかダサい?

ダサいよねー、思いっきり。

……わたし。


あ………………………………来る。


そんな事を声に出さないで頭の中でぐるぐる、何かのショーみたいに目まぐるしくつぎつぎと思考してたんだ。


配役、わたし。

脚本、わたし。

座長、勿論わたしの自己中乙な勝手でお節介な淋しいショー。


わたしにはハッキリと自覚出来るくらいに目に見える『わたしだけの世界』と言うのがあるみたいで脳内ムービーをきっかけにその世界は招待してくる。

拒否したくたって出来ない、絶望の、自虐の世界。


しゅるる、とわたしの全身が精神の殻にくるまれる感覚がして、シーンは変わる。


「いつもいつもー。同じ事の繰り返しでーぇ、楽しいのぉ?」


クドゥーナが出てきたってそれはわたしだし、


「弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い……」


ジョシフォーヌが出演しても、


「気持ち悪いよ。……どうして、……べったりくっついてわたしのベッドの隣で寝てるの? 変だよ、そーゆーの。おかしいよ、みやこちゃん」


凛子が居たってそれは全部わたしでしかない、そんな奇妙で奇抜でうすら寒いムービーをどこか俯瞰で見ている観客なわたしだっている。

後悔をする、ということはわたしにとってはそう言うことなんだ。


「みやこちゃん、みやこちゃん、みやこちゃん、みやこちゃん、みやこちゃん、みやこちゃんみやこちゃんみやこちゃんみやこちゃんみやこちゃんみやこちゃん……ねぇ、みやこちゃん」


全部わたしに返ってくる。





「気にしたってしょうがないよ。だって、受け入れられないんでしょ? 怖いんだもんね、受け入れたものに拒絶されるのが。

離れていっちゃうのが、笹茶屋さんから……だったらいっそ、全部受け入れちゃえば? ……離れてくのもあれば、残るものもあるよ、きっと。それって───何も残らないよりずっといいと思わない?」


考え過ぎ、と怒ってくれる人も居たけど……こればっかりは治らない。

どうやっても。


きっと、昔からそうやって自虐的な脳内ショーを繰り返し繰り返し上演してきたせいで──染み付いちゃって離れない。


気付いてしまえば終わるけど気付けなかったら永遠に終わってくれない、この酷い脳内ショーは。


気付く事が出来れば抜け出せるけど、そうじゃなかったらわたしだけの世界に取り込まれたまま。


「あーあ……、言わなきゃ良かったのにー」


「……ひぅっ」


クドゥーナの役をしてるわたしが、わたしの役をしてるわたしに意地悪そうに笑って、そう言ったシーンは観てるわたしはどうしてか笑っちゃった。


あの子、わたしにそんな事絶対言わないのに。

わたしがクドゥーナに言い返せ無いなんて有り得ないのに。

脳内では凄く意地悪い役なんだもん、クドゥーナって。

あ。


全部の配役が意地悪いから、そうね。

当たり前だったわね。


酷いショーだわ、喉が渇く。いや、いや……いやぁ!早く終われぇぇえええっ!


気づくと、目の前には金属製の門があった。

やっと………………、終わった。

軽く息を吐き出す。

まず、落ち着きたかった。

脳内ショーは癖みたいなもの、精神病かも知れないけどカウンセラーに言っても症状が出るのは突然だし、そうね、狙って脳内ムービーを見るなんて芸当は出来ない。


まず、わたしはこのムービーを観たくないから深層心理では拒否してるんだって。

カウンセラーの先生がそう言ってた。


催眠状態にして過去のトラウマになった出来事をどういう形でも決着させれば自然と治るって。

決着付けさせてないからそう言う症状が出るのかも、だから、わたしが過去のわたしと向き合って解決の糸口を探さなきゃ行けないんだって。


それは断った。

困る。

過去のわたしは、心の奥底に潜んでる凶悪な怪物だ。

向き合えって?そんなのムリよ。


そんなの、そんなの───恐怖しかない。


過去の記憶はわたしをじわじわとなぶるように痛め付けて何も出来なくさせる。

わたしを、わたし、わたし、わたし、わたしを!

……………………弱くさせる……。





どれくらいショーを見てたんだろー。

ひっどい、酷い自虐ショーだったけど。

……………………やだなぁ。

キリキリ切り刻まれるみたい感じでさ………………心を。


思考の海から抜け出すと、ふと気になる事があって門に手を掛けたわたしは、チラリと後ろを背中越しに振り返ってジョシフォーヌを見る。


そこには相変わらず片膝を付いて跪いているジョシフォーヌが居て、何度も何度も床にこぶしを叩きつけているところで。


ホントに悔しそうね、強くなるのよぅ。

わたし?

わたしは……強くなったつもりで。

それはメッキでしかなかったけれど。


ジョシフォーヌ、あなたは次会うとき、……ワクワクさせてくれるのかしら?



「悔しいと言うことはお前の中に強くなろうという気概があるという事だ。誇ることだ。少なくともっ、お前は今よりっ!強くなれるっっ!」


我ながらクサいそんな台詞を力いっぱい叫んで、今度こそ振り返らずに頭の横に翳した掌をひらひらと振ってみせジョシフォーヌの目の前を離れる。


ええっと。

わたしどうして……親身になるつもりも無かったジョシフォーヌにアドバイスなんてしてどうするつもり?

こんなキャラだったかなー。


「オトコは好き、女はきらい。女の子はスキ、男の子は興味無い。そう、……変わる訳無い、正解」


うん。

黒翼になってもシェリルを演じてても、わたしは変わってない。

変わる事は出来ない。

それを改めて認識した所で立ち止まり、軽く頭を振って今考え始めていることを急速にリセット。

深呼吸。

落ち着いたらすぐ歩き出す。


次の相手をあんまり待たせるの、悪いじゃない?

考え事しながら、お相手させるの、悪いじゃない。







高熱にうなされてた頃にすることなくて書いてたら暗黒物質ができてた、鬱になっては無いと思うけど…………うーん。


あのとき何をしても寝付けなくて苦しみから抜け出せなくて、こんな文になったのかなと

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