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地底湖の人魚

地底湖は陽の下ほど明るいわけじゃないけど洞窟に比べると驚くほど明るい。何が作用してこんなに明るいのかは知ることはできないけど。広さはちょっと大きい屋内プールくらいで高さは高い所で大体三、四メートルあるか無いかという所かな。その地底湖を泳いで居たわたしの前に突如気配が生まれる。段々とこちらに近づいてくる水面を滑る様に歩く人?まだ少し離れて・・・いやあれは人じゃない。腕に鱗が確認出来る、何だろ?地底湖に人魚、なわけないよ・・・あるある。どんどん近づいてくるその人には尾ヒレをしっかり視認出来た。


「助けてください。地上の人の助けが必要なのです。」


泣いていたのかわたし達に気付いて泣き出したのか涙を流しているその人は開口一番に1も2もなくわたしにすがり付く。


フロロォォオオオオオ!!!


ああ、ヤバそうな叫び声が聞こえる。振り返ると近くの岩まで泳いでその上によじ登ったのかヤルンマタインが今にも飛び掛からんと槍を構えて威嚇していた。それを見て、


「待ってみて、この人困ってるみたいなの。」


落ち着けヤルンマタイン。この人は害意は無いよと手で制止して彼に伝える。ふぅと安心したように一息付き警戒を解いた彼は槍を降ろすと此方に泳いでくる。


「ああ、地上の人。ありがとうございます。亀さんを大人しくしてくれて。」

なぬ?亀さんだって?ここに居るのは三人。いや、考える前にせめて足の着くとこに移動しよう。ずうっと泳ぐのは大変だ。近くの平たい岩場に体を休めるようにしがみついて息を整えてから視線をそちらに向けるとその人とヤルンマタインが何事か口論をしていた。


「亀さんでは無いのかー。れっきとしたラヌク神の加護を受けた人類でモロー族言うのかー。」

「でも・・・ラヌクは我らニクスにも加護を下さっています。」

「ラヌク様はモロー族の神だぞのかー。」

「亀さん、そんなに怒らないで。えっと、人類ですよ?私達ニクスも、水から上がれば人と暮らせます。あ、自己紹介が遅れましたね。わたし、エウレローラと言います。ニクスです。」「これはどうものかー。モロー族の戦士ヤルンマタインですのかー。」


「わたしはまぷち。種族は人間です。」


何か流れ的に自己紹介を始めた二人の後に付いて自己紹介をする。エウレローラと名乗った人魚はピンク色の上着と蛍光グリーンとイエローを塗りたくったデザインのシャツを着た、鳶色の長髪を一纏めでポニーテールにしている年上に辛うじて見えるくらいの女子で。まだ泣いているので、興味本意で聞いてみることにする。どうして泣いているんですかと。返ってきた答えは以外だったんだけど。


「いいえ?泣いてないですよ。あ、これはニクスの汗です。」


汗なのか・・・汗だったのかー。彼女はわたしの問いにもしかして!と思ったのか頬の水滴を指差してそう言う。ヤルンマタインも頷いている。ニクスの涙はもっと綺麗なんだのかーと続けて。えっと疑問はそれだけじゃないんだけどね。


「質問。ニクスは人魚ですか?」

「種族でゆうと人類ですが、そうですね人魚と言えます。」

「質問。なんで泳がないで尾ヒレで水面を高速移動してきたの?」

「わたし、・・・カナヅチなんです。・・・濡れるのも嫌だし。」


一つめの質問に平然とさらっと答えたのに二つめの質問には照れたようになよなよ動いた上、頬を朱に染めて暫く口をつぐんでから答える彼女。へ、へえ・・・泳げない人魚は一応知ってるけどあれは沫に消えたんじゃ無かったっけ?泳げない人魚がなんでこんなとこに居るんだろ。疲れたのかわたしの居る岩場に近づいてくるとエウレローラはふぅと溜め息を付いて


「地上の人なのに泳げるってまぷちさんは凄いですね。それに比べてわたしは・・・」


あー、うん。それは良いけどどいて。わたしの上で休まないでー。難しい顔をして呟きながらぬるンっと岩場に乗っかってくるエウレローラ、それはわたしが居るのを無視している。見て見ぬ振りつまりスルーですね、わかります。なんか、困ってるらしいけど助けてやんないんだから。我ながら器が小さいとは思ったけどしょーがない。今のエウレローラの行為はそれに値する。と思っていた時にわたしのある異変に気付いたエウレローラの口から衝撃の言葉が零れる。




「まぷちさん、透けてますわよ。地上の人は露出狂とは聞いていました。何も下に着てないなんて。」


わたしを襲った衝撃はどれほどだったか。え?透けてる、って何が。え?嘘・・・見ると決して豊かとは言えない胸も先端の小さな蕾に至っては慎ましやかなりにツンと主張してるのがわかるし、まだ生え揃ってない大事なとこも透けてる、ぴっちと吸い付いてる。思わず、


ふわわわゎ!


と力無く情けない声が零れる、頭ボンって真っ白になる、じんわり涙も浮かぶ。ああ、これは露出狂と言われてもおかしく・・・いや、おかしいだろ。これは泳ぐためにしょーがなく借りてしょーがなく着て気持ち良く泳いだ結果なんですよ、エウレローラ。決してわたし、エウレローラが軽蔑の目で・・・あ、見てないね。兎に角、露出狂とかじゃないから。事情を話してエウレローラに納得してもらうまで暫く、わたしの方が泣かされた件について。


「ダメでしょお嬢さんがそんなカッコしちゃ。はい、わたしの上着を貸しましょう。」


納得してくれたエウレローラを連れて照れながら元の岸辺までぶっ飛ばして泳いで急いで只の布切れを巻き付けてるわたし。水面を涼しい顔で移動してくるエウレローラと潜水してそれに着いてくるヤルンマタイン。ヤルンマタインのシャツは水を弾くのか陸に上がって暫くすると全く水滴が落ちなくなる。借りた上着は高級感漂う柔らかい・・・柔らかくない、これもゴムっぽい。もしかしてと聞いてみたらピンクガエルの皮膚のカーディガンだって。ラヌク神の加護を受ける種族はこのゴムっぽい素材を好むのかな。水弾くのがいいのかもしんない。




「そうですね、似合ってますわ。」

「ありがとう。で、困ってるんだっけ。」

「あああ!そうでした、困ってる。あのですね・・・」


さらっとエウレローラを許してしまえるわたしって器が大きいわ。彼女何するにも悪気が無いんだもん。何となく許したわ、もう。怒りの火種も小さかったし。彼女の声を聞いてそう思ったわたしは問い掛けてみたんだ。うん、まさかさー。そんなことになるなんて思うワケないじゃん?







プロットでは、シェリルがヤルンマタインの替わりに人魚に絡んでるんですが居ないですしね。思いも寄らない水着回になりました。カナヅチ人魚ってありそうで無いような。人魚のイメージってでも、燦ちゃんだから見た目人間と同じで脳みそ溶かす歌を歌うってイメージなんですね。だから『このニクスも』陸では足がありますです。脳みそ溶かす歌は歌いませんけどね。

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