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思わぬ再会

「んんんーー!」


両手で握ったギラッと鈍く輝く刃の鋭そうな片手剣、それをチラリと見てから苦し紛れに少しでも威力があがりますようにと、大振りでマゴニーの左胴を狙って。

思いの全てを込めて打ち込む。


すると、だがしかしマゴニーのニヤケ顔が更につり上がっちゃった、あー!


・・・誘われてたのね。

わざと。

ここをうってこーいって、胴を狙わせたってわけか・・・。

体を傾かせて半身でサラリと躱されて、勢い余って前のめりにバランスが崩れちゃった、・・・うわっ!



「はい、ぶー!──ぷぷっ♪」


コン!と打撃音がすぐ後ろから聞こえて、含み笑い混じりにマゴニーのムカつく声。


えー!

また、負けちゃったの?


「また来てねー。」


手をヒラヒラと振ってマゴニーに見送られる。

丸太を足場に、穴から這い上がったて後ろを振り返って見る、今の今までわたしががむしゃらに戦っていた戦場を。


簡単に。

見たままを言うなら、テニスコートなら2面分ってとこかな、このグラウンドは。

詳しく説明すると、まるーく円形に、2メートルくらい地中にくり貫かれてぽっかり開いた大きな、大ーっきな穴。

高さ2メートルもあるその穴の中に出来た土壁には一定の隙間を置きながら、ぐるっとやっぱり円形に丸太が刺されていて、刺された丸太ははしご代わりにもなるし、壁まで下がると動きが遮られて不利になるって仕組みになってて。


ホントのとこは土壁が崩れて穴が塞がらないようにって補強してるだけじゃないのかなーって思う、この丸太をマゴニーは上手く使ってグラウンド中をくるくる飛び回り、わたしの攻撃はまず当たらない。

そう、当たらないんだ。







あ。

わたし、強くなる為に。

修練の門ってとこに通ってる。

まだ二日目だけど、一人も倒せてない。

いまさっきのマゴニーも、その修練の門の一人目で。

そうそう、マゴニーの紹介をしておこーかな?


まず顔は、潤んだとび色の瞳に無精髭だらけの顔だけど、鼻下のこんもりとした立派な髭は大事に手入れが入ってる。

ブルネットの髪と、零れ落ちそうな大きな瞳、ヨーロッパの人みたい、パッと見はね。

彫りの深い顔の作りは、そうまるで洋画の俳優と変わらない、それでいて全身褐色の肌でしょ。

外見、そんななのに初めて修練の門に来たわたしに、優しく修練の門について教えてくれたマゴニー。


武器OK、魔法OK、力の差が良く解ったらマゴニーたち門の番人は勝負を止めて、次の番人の待つ舞台への扉を開いておしまい。

最中に回復アイテムを使用した時点で失格、番人を倒した後で使うのは、ご自由にって話だったかな?


学校の先生より、もしかしたら教え方上手だったかも知んない。


でもでも、何かの獣人だってことには変わらないわけで頭の両側のケモ耳と、腰の辺りの斑模様の尻尾を見ちゃうと。

そうなんだ、ここはサーゲート。


獣人の王国なんだって、改めて思う。


動物好きにとっては、楽園。

天国と言ってもいい、言い過ぎじゃ無い気がする。

だって、ここのケモ耳には理性がある、いきなり噛みついたりしないし、まず襲われる心配が無いよね?

人と獣の中間って、そんな事も無くてケモ耳が見えてないなら獣人だって言われないと、ちょっと解らない。


そんな獣人たちは、先祖返りってゆーか、《獣化》(アニミテイジ)って呼ばれる特殊技能を持ってる。


持ってるだけで、いきなり獣になったりしないし、血の薄い、濃いとかあったりで獣化してもほとんど力を発揮出来なくって、ただ疲れただけって事になっちゃうんだって。

ジピコスとか、ジピコスとか、ジピコスとか。


血が濃いと先祖と近い姿になる、つまり、濃い血の持ち主と仲良くなれば・・・、パーツや部分的なケモケモじゃなくて、丸ごと獣を抱っこしたり、背中に乗ったり出来るってこと、ん〜モフりたい!モフモフしたい!


あれ?

何か話がズレてったぽいから軌道修正してっと。

修練の門、ここで修行して少しでも強くなりたいって思ったから来たのに。


そう簡単には強くなれないみたい、手加減してるマゴニーにも勝てないんじゃぁね、・・・はぁ。

思わず、ため息が零れた。


髪はテキトーに伸びたら自分で切ってるぽく左右が揃ってない感じ、苦行中の旅人って身なりで。


そんな風に見えて、全然似合ってない立派な籠手だったり、胸当てだったりを付けて角度の付いた変わった剣を得物にしてる、っとこんな人となりと思ってくれたらいいと思う、決して悪く言ってないし見たままずばり、それってとこを紹介したつもりだよ?


・・・借り物の剣じゃ無理なのかなー?


「あー。凛子ぉ、そっちもダメだった感じぃ?」


そうそう。

この甘ったるい声の主には聞き覚えがある、それもばっちり。

そうなんだ。

声のした方に視線を向ければ、バサッと大きな羽音を立てる碧色の髪と揃いの碧眼の少女が、疲れた様に暗い表情をして歩いてくる。

少しの間、離れて暮らしてたけど思ったより長く彼女の姿を見てなかった気にもなってしまう、だって、愛那が居てくれるだけで賑やかにもなるし、華やぐというか、そんなカンジ。


愛那が、さ。

謎っちゃ謎なのかも知れない、どーしてかデュンケリオンに来ててね。

昨日──






獣人の王様、イライザのお父さんが治める国。

サーゲート王国、首都・デュンケリオン。


歩きで見て回るには迷いそうで・・・ううん、絶対迷う!そんな自信が着いちゃうくらい広くて、大きすぎる街、どこにいっても人混みばかり・・・なんてゆーか、さっすが首都。


カルガインが、フィッド村が、ニクスの国がスッゴく小さく思えちゃうくらい大きい、大きすぎる・・・、ムダな気がするんだけど、どうして。


こんなに広いの!

今、わたしはメニュー画面から地図を見てるところ。


それは勿論、ここデュンケリオンの地図。

日本地図や世界地図を穴が空くまで見続けるって程、地図が好きって訳でもないし、趣味でもないわたしの自己分析に依るものでしか無いけどそれでも。


住んでる街の近所なんかは、アプリで地図を見て、アプリを何回も開いて、見て知ってるいつもの町並みに辿り着いたら、涙を瞳いっぱいに溜めてお母さんに飛び付いた小さな時の記憶から、・・・最近にも隣町に自転車で出掛けた帰りに、道を間違えて普段通らない通りに出た時は、アプリを開いて、焦って何回も見て、泣いちゃったんだけど。


それはこっちによせて置いて、わたしの言いたいのはアプリで住んでたエリアの地図くらいなら、何かあると見ていたってことなんだよね。


そんなアプリの地図と比べてみても、ごちゃごちゃとした、まるで蜘蛛の巣みたいなデュンケリオンの道路。


通りと通りとを繋ぐ路地だったり、通りが交差してたり、枝道が沢山。

それに建物と建物の隙間を縫うように細い裏路地だって表示されてるから尚更、こんがらがっちゃう。

誰か、このダンジョンの攻略本をわたしに!


東京とか遠いってほど遠いわけじゃないけど、それでも数えるくらいしか行ったことも無いけど、きっと東京23区すっぽり入るよ!

えっと、・・・今いるのが第4東大通りなんだよね。

通りだけで幾つあるんだか。


うーん!


街に入る時は門が、外壁が見えてて。


こんなもんか!って思ったくらいだったけど、高くても3階建てくらいの建物しか無かった気がするんだけど。


・・・嫌になるくらいに広いの。


遠くまでずっと、ずーっと!


その、建物が続いてて。

切れ目なくて。


そ、そう。

切れ目ある。

北、かなあ?マップ上で開いて見ると。


北だね。

北に、ずっと、ずーっと向こうなんだけど肉眼で見ると、目を凝らしてようやく見える。

大きな山が。


マップで見ると、名前はデュンケリオン・・・、山から名前を取ってこの街はデュンケリオンって呼ばれる様になったのかも知れないなー。

けど、けどけど!

マップを見ると、南も、西も。


やっぱり、びっしり!建物と蜘蛛の巣みたいにぐちゃぐちゃに道が引かれてて。

その内の幾つかに大通りって書かれてる。

んー、・・・と。


中央のリオグリス区にデュンケリオン城と、アミニ王宮、離宮、それに習練場?

そこに行くにも大通りを、えーと!・・・ふ、ふふふふ。


10も!渡って行かないと城と繋がる、中央市街環状大通りに行き着かない・・・、人口密集し過ぎなんじゃないの?


どうして?

こんなに、いっぱい道路を作ったの?

メニューを開いて見えるマップ上、ぐちゃぐちゃ過ぎる道路が繋がってる、これは迷うわ。


地図が有っても、頭が痛くなってくるくらいだもん。








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