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残念、それは弱スキルとしか言いようが無いわよ?


「連れなんだわ、悪いな。」


チラリと周りを窺っても表情は変わらない、余裕を孕んだ笑みを張り付けて、尖った顎の、筋肉質ってより・・・。

あーあー、おいおい、・・・ガリガリじゃない!


でも、この不敵なまでに上からな物言いと、ちょっとくらいわたしを楽しませてくれそうに見える余裕な態度、それと。


今もずっと感じたままのじっとりと舐め回される様な、殺意を孕んだ嫌ーな視線。


この男の表情からはすぐにでも殺せるって、自信に満ちているって読み取れる、わたしを。


見掛け倒しにならないと良いんだけど、でも、あっさり足マットになっちゃったゴリラ顔を見ても眉一つ動かさないって事は何かある・・・って、思ったって構わないよね、ね?


「お仲間のピンチに駆け付けた、そう言うつもり?」


「・・・。」


「こんなにあっさり負けるって。ここまで使えないって解んなかったのぉ?」


「言ったろ?ツレなんだわ、道具じゃねえ。ツレを得物みたいに言われると、いい気しねえよ、そうじゃねえ?」


二言、三言、言葉を交わす、すると嫌ーな感じに圧されて、一歩後ずさる。


その結果、頬の砕けたゴリラ顔の男から足をどける形になり、チラっと目を落とすと、頬の辺りが黒ずんでいる。


「へえ、友達思いなトコあるのね?でも、ホントに友達なら・・・、カワイソーな事になっちゃう前に止めたら?うん、わたしならそうするけど?」


「どっちでもいいんだな、これが。だって、痛め付けるのはかわんねえし!」


尖った顎の男が冷静に怒りに震える。

ちょっと調子にのって挑発し過ぎたかなー、どーもコイツの痛いとこに触っちゃった?


一声叫ぶと、月明かりに照らし出された男のその深緑色の腰まである長い髪がザザザッと蠢いて周囲に溶け込む。


その次はぶらんぶらんに伸ばした左の掌の指、手首を伝って肩、顔、そして全身が周囲の暗闇に溶け込む様に男の姿がかき消えた。


「はっ!──!消えた?・・・って驚いてみる、するとするとほぉら。出てくるでしょ♪」


驚いた、フリをしてみた。

一部始終を見るだけ見てあげたんだから、もうハンデ、要らないわよね?


そう、周囲に溶け込む・・・それって要はカメレオン、それが大きくなっただけってだけでしょ、さってと。


無造作に、周囲と全く変わらない、右手を伸ばすと届いちゃうわたしのすぐ右側の暗闇にひょいっとショート右ストレート。

向き直りもせず、尖った顎の男が消えた空間を見詰めたまま。

少し、脇で溜めただけの手抜きの一撃、それは手抜き過ぎてストレートになりきれてないってより掌打。


わたしが驚いたフリをしたら、すぐ右側のその空間には気を良くしたっぽい男が半月状の瞳と口だけでニタニタ笑ってたんだもん、チラリとそれを横目に窺って空間をとらえる。

そうじゃなくたって丸わかりなのに、愚かとしか。


なんて言うか、今までコイツの余裕見せてられた理由がなんとゆーか解っちゃって、わたし。


そう、そんな瞳に映らない、見えないって特殊スキルなんて何の意味も無いってゆーかさ。


タネのバレた手品なんて、もう見る価値無いわ、一瞬だってね!


「ち、見えて?何でだ?」


「ち、ち、ち。見えてなんて無いわよ?」


ピンと伸ばした人差し指をにこーっと微笑みながら三回、顔の前で振って見せた。

あー、でも、『姿が』見えてないだけなんだけど、こっちはわざわざ種明かししたりしないんだから!


「見えてんだろォ?じゃなきゃ、何で後を追えるっ???」


当たり前な反応だ、視線は常にカメレオン男の、えーとジャシとか言ったっけ?

そいつの挙動を追い続けてる、それは、カメレオン能力が一番の持ち味なら怯みもするわよね、ずるずる敵が、姿が見えてないはずの敵が、じぃーっと視線だけずっと着いてきてたらー。

わたしがカメレオン能力しか無いってなったら、それ絶対焦ると思うし、わたしに置き換えたら・・・グラクロ戦、エクセ=ザリオスをキャンセルされて、もう手が無くなった、そう、あの瞬間と重なる。


あ。

でもでも、少しでも賢いなら友達連れてさっさと逃げてから対策とると思うかな、退却も一つの戦略(タクティクス)、脱兎の如く逃げるが勝ちってね?


負け、濃厚ですよ、とかゆってカメレオンさん。


なんなら、わたしだってあなたの目に『だけ』映らなくなれますけど?

って、それしちゃ流石にカワイソ過ぎてウケるから止めたげよ。

必殺って思ってるんだろうし。


「何をしてるか、理解できたら。簡単なコトよ。ほら、足下のぉ♪雑魚を踏みにじるくらいにぃ♪かーんたぁーん♪」


すぐ移動しちゃったのか二発目は空を切って何も掴めないの、それくらいには頭が回るみたい。


じゃあさ、友達だってゆう足元のコイツの声聞いたらどうするかなー?悲鳴、絶叫だけどね、えへへ。


「ぎぃっ、ぁっああっ!」


そう、そこに掌があるのが悪いんじゃない?


足元のゴリラ顔の掌を見下ろす。


気を失ったままの惨めな様を晒した、ゴリラ顔の掌をハイヒールで踏みつける。

最初は体重は乗せずに、じわじわと。

ヒールの先が。


徐々に。


徐々に。


掌に刺さってく、埋もれてく。

ギリギリと音を立てて。

踏みにじる。


ゆっくり。


ゆっくり。



体重をヒールの先に乗せて。

何度も。



何度だって。



「手の骨、折れちゃったぁ?・・・でもさぁ、お前らっ!こんなコトばっか、やってんのよね!?やり返されるリスクくらいっ!考えてるわよねぇー♪」


大事なんなら、腹の下にでも潜らせときなさいよ?


ヒールの先が捉えたゴリラ顔の掌は、過度の負荷に耐えれなくなったらしくてメギィッと鈍い音を立てて骨が折れちゃった、折るつもりで体重かけたんだけどねー、重く無いんだけどなー、わたし。


ひ弱な骨よね、カルシウム取りなさい?


骨、強くなるわよ。


刺さるくらいの殺気を浴びせてくるんなら、やり返された時の覚悟くらいして置きなさい?

覚悟完了!ってそのくらいの気持ちで初めての敵には警戒感持ちなさいよ。


獣の血、混ざってるくせにコイツら変なとこ甘甘なとこあるわね。


自分にだけ甘い。

野性の獣なら野良ねこだって持ってるってゆーのに、ホント。

警戒って大事よね。

そ・れ・に・。

観察、これも大事。

わたしが何が出来るかって、解っちゃってて喧嘩売るのと、何の情報も無しで動くのとじゃ結果は変わってくると思うの。

そうじゃない?


あ。観察してたらまず喧嘩売ってこないわよね、余程自信家じゃない限りは。





「擬態ってゆーんだったかしら。周囲の色になるわけで、──消えたわけじゃない!」


見えない、見えてない。

残念ね。



でも。



『解る』。



ブンと裏拳をわたしの背後に生まれたネットリした殺意目掛けて当てる、感触は伝わる、そこに居る。


「おぐっ、いてえー・・・って嘘だよー。おしい、おっしいなぁああ!ちょっと違うな。擬態ってゆーのとはよー。俺のは、影に融けてんだ。──声だけ聞こえんだろ?」


何か、否定してる?

間違ってるみたいだけど、特に今からやることには影響は無いって思ったから、どうでも良くなっちゃった、ホラ、もうコイツの観察終わっちゃったし!


「どっちでも?わたしがっ!」


先ずは上段かなー、一発目。

これで倒れられても楽しめないから手抜きで、切れは無いかもだけど、


「おっ、ぶ!」


感触は伝わる、やっぱりわたしの仮説を否定してたけどさ、融けてるよーで溶け込めてないじゃんね。


溶けてるなら、影になってるなら感触とかって無い。

影を蹴れたりしないものでしょ、違くて?


「アナタ、をっ!」


月明かりに照らされて、暗闇がうにょーと伸びてくるのはシュールだとしか思えないよ。


回り込んで何処かから取り出したナイフを握って、わたしの脇を狙って来たけど、そこをヒラリと回転して躱し逆に伸びきった脇を狙って、中段を叩き込む。

二発目ってわけ。


「あおっ!」


いけない、いけない、遠心力考えてなかったなー、イイ感じのが脇に決まっちゃった。


「殴れて、るっ!」


「うえ゛ぇぇぇえっ!」


その場に崩れ落ちる暗闇、人の形を取ると地面を掴んで痙攣するぽく震える。

三発目で足ポキッとへし折りたかったんだって、ま、いいけど。


PKのシュートみたく足を振り上げて、思い切り振り抜く。

うーん、ゴールインした感じはしなかったかなー、芯に届いてなかった・・・、もっと研ぎ澄まさないとだね。

死んじゃったかってくらいの断末魔をあげるカメレオン男の溶けた暗闇。


「──コトに一切、違い無いのじゃないッ?」


「ぁぎゃぁあああっ!」


その暗闇に目を落とし、ハイヒールで踏み下ろす。

ギリっギリっと踏みにじる。

もう、充分楽しんだから壊しちゃってイイ、壊れちゃうトコ見たいなー。


「なっさけないわねぇ♪」


やっぱり、融けてるのか骨を踏んでる感じじゃないんだ、ナンダロ?弾力のある水ってゆーか、手応えがもっと全然欲しい、わたし的に。


それでも痛みはあるみたいよ?


「嘘だろォっ、ジャシが殴られてるなんて。」


「白影だぞ。ゲーレムの白影が敵わないなんて、きっ、聞いてねえよ!」


「おい、こらあっ!」


不通に不通で不通としかいい様の無い雑魚二人が、そこまで一部始終を見てから勝手に喋り出す。

いい感じに手間が省けた。











ビ様「やい、ヴィシャス。」


ヴィシャス「何です?ビー様。」


ビ様「来ねえ!」


ヴィ「月のモノが、ですか?」


ビ様「そこまで人間らしさを器に求めそうか?オイラが。」


ヴィ「いえ?」


ビ様「じゃあ、言いたい事も解っちゃってんのよね、ね?」


ヴィ「・・・、配下の募集ですか・・・。」


ビ様「おう!それ、それ。何でだ?(手近にある皿から、盛られた串肉を一本掴んで)」


ヴィ「・・・『報酬に魅力がないからなんじゃ、とか言えないよな。どうすっかなー、ビー様がもっと寛容だったらなー。』(ゴソガサと募集のメモを取り出し。)報酬、もう少し上げるとゆーのはいかがですか?生活、してくのにはやっぱり、金が必要となるわけっすから。」


ビ様「んぐっ、こんなに串肉、はもっはむ!うめぇのに、むぐっ!どーして、来やしねえー。(串にかぶり付きながら)」


ヴィ「串肉やめにして賃金を払いましょう、それで万事解決っす。」


ビ様「お前はこの美味さが解らんのかっ?ほれ、ほら食え!まだ欲しいか?口の中いっぱいにしてやろうかね?」


ヴィ「んむ、んむむむむっ!(口を無理やり開かされ、次から次に皿から串が口の中に詰め込まれる。)」


ビ様「美味いだろー?美味いよな?美味いでしょー?」


ヴィ「・・・。(息が出来ないほど一気に詰め込まれ窒息したようだ。)」


ビ様「そう、そーか、そーか。やっぱり美味いよな。オイラの舌が間違うわきゃねえよ。」


ヴィ「・・・。(とうとう、泡を噴いて失神したよーで。)」


ビ様「気を失うくれえ、美味かったか、そーか。美味さ爆発だな、オイ!わっはっはー!」


ヴィ「・・・。(カワイソ、誰か助けてあげて。)」


ビ様「やれやれ、しょーがねーな。あたいが募集の宣伝読もうか、えーと?(メモをガサガサ開く。)ただ今我がベベベ団は世界を改革する力を探している、そうなんだってよ。あ、若干だけどホントいっぱい来ても受け入れらんねーもんだから、そこはグッと涙堪えて我慢してくんな。報酬がすげえよ、なんとなんと一日で串肉が3本も喰えるんだってんだから、これ見たら今すぐベベベ団に来るように。損してるよ、お前ら!我がベベベ団と共に世界を改革しようでは無いか!来たれ、若人よ!ってわっかり辛いな、コレ。これじゃ、ダメだな。うん。」














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