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今更な事なんだけど、京ちゃんの胃は。

出てくる、出てくる。

BOXからあれもこれもとテーブルいっぱいに。


改めてその量に言葉を失ってたらいつの間にか・・・ボトルが2本、あっさりと空になった辺りで京ちゃんのテンションが際限なくアップ!


もう、京ちゃんはペースが上がっていくだけって解ってるんだよね、こうなっちゃったら。


「もしゃもしゃ、あ。この肉摘めパイみたいの美味しい!中、シチューみたいにとろっとろ!」


京ちゃんにオススメされて、テーブルの上に山となっている屋台で買った食べ物の中から同じものを選んでひとくち、む。

ふたくち、んぐ。

あ。コレ美味しい。


確かに京ちゃんが言う通りパイ生地みたいの中に、具を細かく刻んだシチュー?がたっぷり。

シチューぽいけど、シチューって言うには物足りない。

日本とここ、異世界ではどうしても食材の差ってあるもんね、やっぱり。


味噌抜き豚汁を、ミルクでコトコト、トロトロに煮ましたって感じもしないでも無い。


味噌、そうだ味噌食べたいな〜ニクスで食べた以来、味噌に出会ってないし、存在しないって解ってるから余計に味噌恋しい。


しばらくパクついてシチューのパイ包みみたいのを完食しながら、わたしは山とテーブルに積まれた中に気になるモノ、発見!

屋台で売られてた焼いたトルティーヤぽい、ナンぽい見た目の外側をしたホットドッグ大の何か。

手にとって、ぺろりと唇を舐めてからひとくち、パクっ。


「あ。これなんか、チーズみたいの入ってる。うま、ウマッ♪」


んむんぐ。

チーズだ、コレ。

紛れもない濃いぃチーズ。

ミルクがあるんだから、何も不思議じゃないけど今まで口にしてなかったから感動もひとしおな。

思わず、大事に何度も繰り返し噛み砕いてからゴックン。


ンまーイ!!

チーズに飢えてたってわけでも無いんだけど、コレって涙モノ。

って、あれ?涙腺、緩くなっちゃったかな?


人差し指で丁寧に、両目から潤んで溢れそうな泉を拭い取る。


「あ。あるんだ?チーズ。」


泣き笑いするわたしを見て京ちゃんも、焼いた分厚いトルティーヤぽいホットドッグ大の何かを手に取る。

ひとくち(かじ)るとピザのCMみたいに、にょーんと京ちゃんの唇から伸びるチーズ。


それを見て嬉しくなったって感じで、わたしも京ちゃんも頬がゆるゆるに緩んで、ニッコリ。


「うはっ、チーズだ。」


「こんなに伸びて、うわー。」


「んむんぐ、やっば〜い!ピザっぽい。食べたくなっちゃうよね、ピザが!」


チーズ、チーズだよ。

こんなの見ちゃうと食べたくなっちゃってやっばい、興奮してきちゃったピザ。


月1食べてたってくらいしか好きじゃなかったのに、いざ食べれなくなって。

もう無いんだって解ると、何故か無性に食べたくなるのって何でだろ?






「話、躱そうとしてるけど。変態じゃん、シェリルさん。」


「はいはい。も、いいから。変態、変態、変態で〜す♪」


あっかるい変態が目の前に座ってる。

わたしの持ち得る常識の中では、ビキニっぽい革の水着にコルセットといった格好のこの露出狂は誰の迷惑にもなってない、ま。周囲からジロジロとヤな視線は絡み付いてくるんだけど、まだ我慢すればいいんだと納得して、いいし許す。


でも、百合っぽくてビアンめいた行動は京ちゃんが思っている以上に、じわじわと真綿で首を絞められてるみたいにわたしを追い詰める、精神的に。

簡潔に、止めて欲しい。


その気持ちには応えられないから、って何回も断ってるのに・・・。

朝気付けば隣で寝てて、わたしの体にぎゅぅうと絡み付いてる、ここの所ずっと。

ま、まぁね?

スベスベしたやらかい肌が触れてくる感触も、暖められた熱が肌伝いに早朝の冷気にひんやりと晒されたわたしの体温を暖めてくれる感覚も嫌いじゃないんだけど。

京ちゃんにウブって言われる、恋愛初心者のわたしには重い、苦しい。

毎朝のドキドキとしたドぎつい、強すぎる刺激が。


元の生活の中でいいなって思う気持ちは有ったりしたけど、『好き。惚れた。告白した』ぽいとこまで気持ちは動いたり、恋する乙女になっちゃったりしなくて。


だから、京ちゃんに流されてくわたしが怖くて、その内に勘違いして受け入れちゃったりしたら立ち直れないんじゃないの、って悩む。


瞳が覚めたそばからの刺激に当てられてるだけだもん、熱のこもった枕だって思えば意識しないで寝直せ無く無いもん。


「あ。こっちの魚の焼き物も美味しいゾ!クドゥーナとか、ヘクトルとかにも食べさせてあげたいわねー、何してるのかしらね?」


「ヘクトル、返事が無いし。クドゥーナとか、どこ行ったかも解んないし・・・。このまま、お別れになっちゃうかも。」


棒の様にぴんとした焼き魚を、あ〜ん!と京ちゃんは大きく口を開けて、ぱくり一口。

器用につぅーと骨だけを抜き出してテーブルに放り出す。


屋台で買った、テーブルに山と積まれてた屋台の商品は京ちゃんとわたしのお腹に消えた。

そうなんだ、全部消えちゃった。

あんなにあったのに、びっくりした。


更に京ちゃんは近くに居たウェイトレスさんに、本日のオススメなんてのを頼んだ。

食べ過ぎ。

わたしなんか、テーブルに突っ伏しちゃって、もう何も食べたくなんて無い。


陽気に元気な狐耳のウェイトレスさんがテーブルに運んできたのは、


「はーい、おまちぃ!朝捕れヘモビアの塩焼き・特盛になりまーっす!用がありましたら、呼んでくれたら駆けつけるよー。それじゃ、ごゆっくり〜。」


北にある湖から朝一で捕れた棒みたいに真っ直ぐな魚、ヘモビアを塩焼きにしただけの料理。

でも、サンマ大のヘモビアがテーブルの上に乗った皿の上には10匹も。


何も入りそうに無いわたしとしては、見るだけで戻しそうなんだけど・・・。


「ヘクトル、まーだ聖域的なトコに籠ってるのー?もしゃもしゃ。クドゥーナ、そっか。・・・フレンドリスト、登録して無かったんだっけ。」


突っ伏したまま、わたしとしては見るのもヤだけど、スルーするのも悪いし、視線だけ京ちゃんを追ってみる。


あの腹ってもしか特別製?

わたしがとっくにダウンしてるのに、京ちゃんのペースは食事にしても、お酒にしても全然変わらない、もとい、ペース上がってるくらい。


「ごっ、ごっ、ごくっ!まぷちぃー、飲もうよー、とことん!」


組んだ腕の隙間から横目で窺うと、テーブルの隅にもう空になったボトルが8本、おっとテーブルの下にも4本。

ヘクトルにウワバミって言われるだけあるよ、それに、何度も言うけど未成年だからなるべくアル中になりたくないの。

そりゃ、一杯くらいは付き合うけど、京ちゃんみたいにグイッと流し込むペースなんて無理だし、ジュースでだってそんなに飲みたくないよ、水腹になっちゃう。


「眠〜い。そろそろ、部屋にあがるね。おやすみぃー。」


「話、聞きなさいよっ!・・・、ヘクトル。アナタ居ないと・・・、飲み相手が居ないわよ。ゲーテもジピコスも、何かー、違うしさー。はぁ。」


逃げるが勝ち。

ていってもノロノロとしか、逃げれない。

お腹一杯に料理が詰まってて気持ち悪い。


食べ過ぎた〜、その倍以上食べててなんで?

まだ追加とかできるの?


異次元な京ちゃんの胃には敵わない!


背に京ちゃんの愚痴っぽい非難の叫びを聞きながら、ようやく酒場の扉を閉めた。






ヴィ「串買ってきたっすよ、ビー様。がらがら(引き戸を開けて閉じながら)、ぴしゃん。」


ビ様「お、ヴィシャス。遅かったな、どしたよ?」


ヴィ「そう、そうなんっすよ。近所の屋台がなんでかしんねっすけど休みで、みっつ隣の屋台まで足運んだんすよー。」


ビ様「ん、ウマいって評判の大門前通りの屋台のかー?そりゃ、楽しみだねえ。早く、早く!一つ寄越せ!」


ヴィ「そうっすよ。俺も楽しみで。行列に並んで買ったんすよー。そんなに気合いいれて手伸ばさなくても渡しますって。」


ビ様「ぬあっ!(執務机の上に膝立ちに目一杯手を伸ばしながら)」


ビ様「ん、んむっ。あぐっ、んぐっ。」


ヴィ「あんむっ、んぐんぐっ!おぉ、ウマいっすね!ビー様!」


ビ様「タレがっ、違ってんだなっ!塩漬け肉ってのは変わってねえのに全く違うや。」


ヴィ「部位もいいとこ使ってるのかも知れないっすね。ほら、こんっなに肉汁が!」


ビ様「肉汁は、なぁ・・・(アブラ)なんだってよ?オイラ、脂より赤身を焼いてくれた方が好きだね〜。」


ヴィ「いつもの肉串は赤身多め、赤身オンリーかもですもんねー。」


ビ様「そりゃ、解ってんだよ。アタイはこの肉串喰うのに必死になるから後、よろしくね!(部屋を出ていく)」


ヴィ「お、俺の分も残しといて下さいっすよ。ビー様が肉串に夢中になってしまったので、お決まりのアレやってお別れです。」





ヴィ「がさがさ(メモを確認して)、えとー、・・・集え!英傑!集え、有能な頭脳!我ら、べべべ団は君たちを待っている!一日の報酬は、肉串3本。働きに応じて最大10本に増える、なんと働き甲斐のある職場!若干名の募集となります、多数の応募があった場合、残念ですが抽選とさせて頂きま、・・・す?・・・抽選じゃ意味無いんじゃね、ねー!ビー様ぁ!」









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