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ぐーちゃんVSイグジスト、決着と。






『・・・てー。話だったよな?イグジストよ、クソ悪魔っ!』


「退かぬ。媚びぬ。この化け物も。ぶっ殺す!」


「思考、読んだわ! 死ね、それなら今すぐ死ね! きいぃぃっ! 契約のルールのせいでっ! 我が逆らえないのがっ! 口惜しい! いいか?そこまでは良かったのだが、途中から勢い余って思いが喉から声に出ているデュノワだったりする。

同化してるから耐えられてて、解いたら即死だから! ドラゴンの王様! あれ、ドラゴンの中でも高級の、最高峰の、もしかしたら神獣とか神霊級だから!」


目の前の、触ったらすべすべしていそうで綺麗な白い肌も露に、ボロきれになったドレスを着たぐーちゃん、もとい笹茶屋京もどきこと竜の中の竜、神すら畏れる、と豪語したグラクロデュテラシームうんたらかんたら──オリテバローと対峙し、デュノワは契約時にイグジストの思惑を大きくズラして優位に立った時の事を思い出しイメージする事にした。

戦意を失って退くと言う、イグジストを思い止まらせる為に。


目の前の、触ったらすべすべしていそうで綺麗な白い肌を露にボロきれになったドレスを着たぐーちゃん、もとい笹茶屋京もどきこと竜の中の竜、神すら畏れる、と豪語したグラクロデュテラシームうんたらかんたら──オリテバローと対峙し、デュノワは契約時にイグジストの思惑を大きくズラして優位に立った時の事を思い出しイメージする事にした。

戦意を失って退くと言う、イグジストを思い止まらせる為に。


そこまでは良かったのだが、途中から勢い余って思いが喉から声に出ているデュノワだったりする。


そのデュノワの声に堪らず、早くこの場を退きたいイグジストがすかさず突っ込みを入れた。

普段からのやりきれなさもにじみ出た、心の底からの叫びに思えたイグジストのその声が辺りに響くと、それに反応して、


──うぉぉおおおおおっ!


カァッと瞳を見開いたぐーちゃんが一声吠え、周囲に斬りつける様に与える威圧感や、ぐーちゃんの全身から吹き出す白と金色のオーラが一層強く、大きく拡がる。


死ねとか言いながらも、実際には『デュノワを失ってたまるか!魂、食べれないだろ!』との思いから愚痴ったイグジストの叫びも最後の方はデュノワを気遣い、危険を報せるアラートになっていたのだが、デュノワは気付かなかったかわりに、視界の中で周囲の空間を捲き込みながら震わせて膨れ上がる様に拡がるぐーちゃんのオーラを見た事で歯噛みしてイグジストに命令を下す。


「力を貸せ!俺にっ!」


契約者であるデュノワの命令は絶対である。

今、圧倒的ピンチな絶対的に勝ち目の無いこの場面になってもデュノワはぐーちゃんを倒せると思っているのか。

それは違っていたかも知れない。


目的の為には、どんなに勝てそうに無い強い敵だろうと排除しないと!と思う一心からだった。

イグジストに力を貸せ。

と命令したのは。


『刺激したくないんだけどっ・・・!膨大に膨れ上がるこのマナを感じないのかっ?ちぃっ!』


絶対であるルールの命令を一応、イグジストは後ろ髪を引かれる思いで実行する事にした。


上位の悪魔から聞き及んでいたのだが、『勝てないと思えた時点で退きなさい!』と。


イグジストが体を『ドクンっ!』と震わせてデュノワの魂の持つ霊力のゲージみたいのを減らせない為に制限していた気を開放すると、2割増し程度抑えられていた力が上乗せされ、底から込み上げ沸き上がってくる、絵も言われぬ感覚にデュノワはにぃっと微笑んだ。

だが、それに反してイグジストは異変を感じていた。


「血の涙、流して何言ってんのー?頭、沸いてんの?・・・、その辺で黙れよ。ゴミが。」


悲鳴をあげていた。

目の前のぐーちゃんという存在の放つ気によってデュノワの、イグジストの体が。


血の涙どころではない、口、耳、鼻、あちこちから血が零れ落ちている。

恐らく、その他にも血管が断裂して無数の内出血をしているだろう。


その事に気付いてイグジストは何とかデュノワの意気を削ごうとしてか、わざとらしく挑発する様に愚痴めいて吐き捨てた。


そんな中鼻先まで近寄ったぐーちゃんの姿を視界に捉えつつ、気付いていたはずのぐーちゃんの放ったミドルキックを避けれずにまともに喰らって思わず膝を突いたイグジストは、もう刹那の時間の猶予も無いと悟り、


「ルールやぶったら、ペナルティー食らうけど!あれと、やり合うって言い張るなら!ペナルティー貰うわ!」


そう言いながら亜空間にスウッと体を滑り込ませながら、


「ま。お前は大事な器だ。無駄に壊したりはしませんから。」


デュノワに対してそう言った後、イグジストの姿は完全に消えてしまった。


「ジャア、マタ。」


イグジストと同化デュノワは消えた。

虚空に響く置き土産と、立っていた場所に轟々と燃え盛る闇黒の業火を残して。


「・・・消えた。わちゃわちゃ、言ってたけど。」


そう呟いてぺたんと座り込むとぐーちゃんは、やっとマナを放出し続けていたのを止めた。


「──ぐーちゃんっ!」


と、同時にクドゥーナが飛び付いたのが早かったか、ぐーちゃんの名を呼んだのが早かったか。



勝ったと解って、抑えきれずにクドゥーナは飛び付き、


「ぐーちゃん、ぐーちゃん、ぐーちゃん! 怖かった、怖かった、怖かったぁ!」


ぐーちゃんの首に手を廻して二人の頬同士をくっ付け頬擦りをする。


「──うん、うん!ごめんね。でも、もう。きっと、大丈夫。」


声を出して屈託の無い笑顔で笑ういつものクドゥーナと、一仕事終えてやりきった感のあるぐーちゃんが向き合って微笑み、


「えへっ。・・・ぐーちゃんを信じてたけど、ぜーんぶ避けられてたでしょお? 不安でっ!」


「どう、だろうな?あの程度ならゴロゴロ湧いてきそうだが・・・。」


「もっと不安にさせてどーすんのよぅっ!もう。・・・大丈夫って言ったんなら不安にさせたりしないでよっ〜!」


「ごめんな、クドゥーナ。」


「ううん、いいよー。ぐーちゃん。」


2、3そんな他愛の無い言葉を交わして互いに肩を抱き合う。


短いようで長かった戦いは、終わった。

イグジストとデュノワの逃走という幕引きではあったにせよ、一応の終結となったのだ。






その後。

クドゥーナとぐーちゃんと。

二人は友好を深めるトークでしばらく座り込んだまま喋り込んでいた。


ひとしきり話し終わるとどちらからと無く立ち上がって、地面に触れていたスカートだったり七分丈のパンツに着いた埃を叩いて払い落とし歩き始めた。

ぐーちゃんの放ったブレスのおかげで、瓦礫を押し退けて真っ直ぐな道が出来ていて歩くのに苦は無さそうに窺える。


「・・・結局、殆ど助けられなかったね。」


キョロキョロと廻りを見回しながら歩いていたクドゥーナがポツリとこぼした言葉だった。

チラリと隣を歩くぐーちゃんは俯いて落ち込むクドゥーナに視線を移して、その頭をぽんぽんと撫でる。

慰めるように。


『ゲームなら、ユーザーの人達がどこにいるってワイプに表示されてわかるのに、ぜーんぜんわかんないぃ・・・。』


実際は、瓦礫の中に別け入らない限りは死んでいるか生きているのかは解りはしない。

とはいってもただ闇雲に瓦礫の中に入るわけにもいかないと、クドゥーナは心底でジレンマに苛まれている最中だった。

手当たり次第に瓦礫に入り込んでもし生きているヒトが居て、入り込んだために瓦礫を崩して殺してしまうんじゃないかというのをTVやニュースで見て知っていたから。

その為、クドゥーナは妖精さんを呼ぶ事も二の足を踏んで躊躇っているくらいだ。

思考の迷路にクドゥーナは足を踏み入れて軽くパニクッていたのかも知れない。そこに、ぐーちゃんがいるって解ってクドゥーナは落ち着きを取り戻した。

撫でるのを止めない手の先、ぐーちゃんの顔を見上げる。

すると、自然に金色の瞳と碧眼の視線がぶつかってぐーちゃんがニコッと微笑み掛けると、不安に押し潰されそうだったクドゥーナもつられた様にエヘヘっと声を出して笑った。


「悪魔、か。狙いは障気で間違い無いようだな。」


「ぐーちゃん、どーゆーことぉ?」


クドゥーナを慰めるのも一応ケリが付くとぐーちゃんは唇を噛んでから、呟いて視線を瓦礫を見回す様に動かす。


「怨み、苦しみ、憎悪、妬み、他にも幾つかあるが、ヒトの持つ負の感情。それが澱の様に溜まっていくと悪い気・邪気になり、邪気が重なると土地ですら汚染する障気となる。」


するとすかさず、キョロキョロ視線を辺りに巡らせて生存者は居ないか探っていたクドゥーナが、気になったのかぐーちゃんに視線を戻して訊ねたので、懇切丁寧にぐーちゃんは説明を始めた。

ぐーちゃんによると負の感情が折り重なると良くないと言うのだ。

邪気、障気と言うのに変質してしまうらしい。


「それで、どうしてヒトをたくさん殺そうとするの?」


「ヒトの死が無念で、無惨であればあるほど濃い邪気となって散らばるのだ。その死だけでぶつけようの無い怨みが他者への、殺される苦しみによって生者への妬みとなり、やがてすぐに世界そのものへの憎悪となるからだの。」


「たくさん邪気が集まると障気になって、それが怖いってゆーのは解るけど・・・、浄化すればいいんじゃない?供養とか、慰霊とか。」


「根本が違うよ。供養ごとき、慰霊ごときではどうにもならなくなるのだ。調律をしようにも、手の施し用が無くなってしまう。ヒトの思いとは、情念とは強すぎるのだ。」


「手が付けられないってこと?」


「そう。聖域や神域というのと同じで力が強すぎ、近寄る事すら出来なくなるかも知れん。」


クドゥーナとぐーちゃんの二人は、説明し訊ねるという、まるでチャットの様に会話のキャッチボールを納得が行くまで続ける。



「そんな・・・この街が、住む事が出来なくなるなんて、嘘。・・・だよ・・・、ね?」


クドゥーナにとってマルセラドは来たばかりで思い入れも思いでも無かった。

それでも、これだけの規模の街がヒトの棲めない場所になると聞いて驚きを隠せず、動揺して強く思いを載せ説明をしていたぐーちゃんを見る瞳にも力が隠る。

ね?で、ぐーちゃんを見詰めながらコテンと小首を傾げて見せるクドゥーナは平静を装おうとして失敗した。

その口から出てくる声が震えて、聞き取りづらい。



「ああ。食い止める。」


そう言うぐーちゃんは金色の妖しく輝る瞳を細めて視線を足元に外す。

邪気でも感じ取っているのか、そのまま跪いて地面に手を翳すぐーちゃん。



「ぐーちゃん?」


クドゥーナが突然目の前で気分を悪くして倒れた様に見えたぐーちゃんを心配して声を掛けると、地面に触れていた手を離し、


「そうな。100日、いや75日くらいわたしがマナを流してやれば街中に散らばった邪気も薄まるよ。」


立ち上がりながらそう言って、クドゥーナに視線を移すと可愛らしく微笑むぐーちゃん。

瘴気にはさせないと心のなかで意気込んで。


『100日くらい。ぐーちゃんはここに居なきゃ行けない、じゃあ、お別れ?』


その時、ぐーちゃんの言葉を聞いてフッとクドゥーナの頭を過ったのは別れを乗り越えなければいけないと言う凛子の寂しそうな笑顔だった。


「・・・ずっと?」


思わずすがり付く様に、寂しさを感じて我慢できなかったクドゥーナの喉を突いて想いが声となって溢れた。


「いんや。毎日、少しずつ少しずつ継続的に流してやらないのはあるだろうが、飛べるからな。居続ける事も無いよ。」


「あは。じゃあ・・・セフィスと。」


突然の別れ。

そう考えた事自体が、寂しさを堪えているようなクドゥーナの声に気付いて立ち上がって、ぎゅっと抱き締めて来たぐーちゃんがあっさりと否定したことに杞憂に終わってホっとするクドゥーナは人差し指で、溢れそうな水源を泣き袋の上を振り払って吹き飛ばす。


『村に、帰れるんだ。』


そんなクドゥーナの脳裏に真っ先に浮かんできたのは、凛子や京ではなくセフィス。

村の子供達の笑顔だった


「ああ、デフックもな。」


「それにケインにだって。」


ぐーちゃんがその声に返して、クドゥーナがまたその声を聞いて直ぐ様投げ返す。

クドゥーナも、ぐーちゃんもニコニコと笑いながら。


「ああそうだ、シェリルにも。」




ぐーちゃんのその言葉にほんのちょっと、クドゥーナはびっくりした。

凛子と京の事を、おまけにゲーテとジピコスの事をすっかり忘れていた自分に。

すると、ぐーちゃんが抱き付いていた体をそっと離し、金色と碧眼の双眸がお互いを見詰め、二人は息を揃えた様に微笑み、





「「会いに行ける。」」




重なった二人の声が、瓦礫の他に何にも無くなったマルセラドに響く。

また、遊びに行ける。

セフィスやデフックやケインの元に。


それに、なんと無く凛子と京も気になる。

村に帰ろう。




お互いそんな事を想いながら、再びぐーちゃんから笑い声を上げながらクドゥーナを包むように抱き付いて行く。

すると、クドゥーナも両腕に有らん限りの力を込めてぐーちゃんを抱き止めた。

その後。

しばらく抱き締め合いを堪能するとぐーちゃんのお腹がギュルルぅぅうと鳴って、それを合図につられた様にクドゥーナもきゅぅーと可愛らしくお腹が鳴った。


テーブルと椅子を2脚出して、それから少し遅めの昼ご飯。


食べ終わると他の生存者の探索に戻っていく。


結果、誰も生きているヒトを見つける事はなかったのだが唯一、なんとか生き残ったイノヤの所に戻るとその姿はもう無かった。


仲間が来たのだろうか、自力だったのか?

それはまた別の話。





召喚士と悪魔編.fin



ぅp間違いしてた方のぅp.でした。


次は大都会デュンケリオンでーす。


前の後書きになに書いてたかなー?忘れた・・・

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