失敗を乗り越えて、成功を掴め。成果をあげよ。諦めるな。忘れるな!
イグジストと同化したニンゲンと、ぐーちゃんとの激闘も大詰めに迫った頃、ある場所では怪しい会合が開かれていた。
闇の中に大きな円卓がひとつ。
円卓の廻りには、既に何人かが座っている。
隅々まで細工の入った高級そうな椅子が8脚。
円卓を囲むように並ぶ。
円卓の上には小さな灯りがひとつ。
お互いの姿を確認させない為だったのかもしれない。
円卓を囲むように座った8人も、輪郭が解る程度で顔は確認できない。
時計回りに、まずてるてる坊主のような頭から足まですっぽりとマントとフードで覆われたシルエットがあり、次に人間大の薔薇のようなシルエットの姿を確認できる。
その隣に。
右手で顔を覆い、左手はだらんと床に垂らし、両足を円卓の上に上げた、闇の中にニンッと笑う白い歯だけが印象的な姿のシルエットがあり、その隣にはひとつ目だけが描かれたペルソナを、その右側に附けられたスティックで支えて顔を隠している長い髪のシルエット的には回りと比べるとかなり小さな子供のような姿が見える。
更に隣には、シルクハットにアルカポネ的な高級スーツでビシッと揃えて葉巻をくゆらせている誰かが座っていて、その隣には椅子の上に一般的な水晶玉の大きさの球体が乗っている。
その横には筆箱の大きさの立方体から手足が生えて、手が生えているより少し上くらいで、箱の真ん中に幅のある四角い穴が空いていてその穴からずるりと長い舌が生えている足に届くくらい伸びていた、そんなシルエットが浮かぶ。
その隣の椅子に、ギロリときつく血走った単眼の瞳で睨み付けてくる円錐形の箱だけが置かれていた。
これが、この会合の参加者の全て。
形代だけが来ている者、ちゃんとした本人、様々な姿で参加してはいるものの、胸中穏やかで無いものもいる。
楽しくて仕方ないものも勿論いる。
「揃った事だし、取り合えず話を始めて貰おうかい。忙しい奴もいるだろう、あたしゃ暇だけどねー。」
そう言うシルクハットにスーツのシルエットが、くゆらせていた葉巻を円卓にぐしぐしと押し付けて消しながら。
「相変わらず、だな。参加しただけで興味が無いんだが、帰っていいか?」
それを見て、聞いていた水晶玉がやる気の無い発言をした。
こう言った事はこの集まりではいつもの事で、周りからは嘲笑うような笑いが誰となく起こる。
「待って貰えんかのぅ。話を聞くだけでも、聞いて貰って宜しいか?」
「えー?なぁに〜?そんなにこてんこてんにやられたのが気に喰わないの〜?」
てるてる坊主のシルエットが何とか留まって貰おうと口を開くと、舌の生えた筆箱のシルエットが口を挟んでくる。
明らかに挑発するかのように。
「配下をあちら側に送り込んでおるんでの。じきな成果が表れると思うんじゃ。それまで、待って貰おうかい。」
てるてる坊主のシルエットが周りを見回すように首を動かす。
「そうだ、前みたいに邪魔された上で寝る羽目にならなきゃいいな。」
薔薇のようなシルエットが以前の手痛い失敗を思い出して口を開くと、突如として雰囲気に似つかわしくない甲高い笑い声がその場に響く。
子供のようなシルエットがペルソナの下で大口を開けて笑っていた。
「きゃははは!それってウケる♪余が生まれる前の話をされてもね〜興味ないっての。余も帰っちゃっていいかな?ダメって言われても帰るよー。じゃねー、バーイ♪」
そこまで言うと子供のようなシルエットがあった場所に残ったのは座っていた椅子だけだった。
「・・・あー、あれは放って置いて。こちらから、報告をひとつ。ま、なんだ・・・。失敗した・・・。後少しのところで配下がやられてしまってね。」
薔薇がトーンの下がった声で報告を済ませると、
「どいつも、情けねえったらねーなー。俺っちが報告をするぜ!順調だ!まー、俺っちが出ばって失敗なんてありえねーな。ま、任せてよ。準備万端、後は期日どうりってねー。」
手で顔を覆ったシルエットが、右足を持ち上げて円卓を蹴ってから口を開く。
態度が偉そうで発言するその声は、よく通る少年のような声音。
「コホン、・・・やかましいのは苦手で。あぁ、失敗した。こちらも同じでね、任せた配下が有能じゃなかったというか・・・、終わります。」
円錐形の箱が蓋をパカパカと少し開きながら報告をすると、それを聞いていた舌の生えた筆箱が、
「ハイハーイ、匿名なんだよねー?じゃ、名乗らないけど、んが、んっ、ぐっ、ちゃんだよー!こっちは粗方順調かなー、配下がまろーんとやってくれちゃうの期待?ってカンジー。えっへん!」
そう言って失敗をした負け組を嘲笑うように、勝ち誇りながら報告を済ませる。
「一応、話終わった?んじゃ、オイラから報告すんね。あーっと、・・・忘れてたわ、アハハハハ!てなわけであたしゃ、今からちょーっといってくるわさ。」
シュボっと新しい葉巻に火を付けながらシルクハットにスーツのシルエットがそう言って、空いている方の手で椅子の背に立て掛けて置いた鞘付きの大剣を肩に担ぐと、
「相変わらずじゃな、ビルト・・・!」
「おーい、匿名なんじゃなかった?オイラだけ、名前だすってどーゆーわけよ。まぁ、いーや。あたしゃ、いくね。」
静かに怒りを周囲に撒き散らす、てるてる坊主がシルクハットにスーツのシルエットの事をビルトと名指しした。
するとビルトと呼ばれたシルクハットにスーツが座っている椅子を立ち上がり、肩に担ぐ大剣をゆさゆさと揺らせながら、すたすたとそのまま立ち去ってしまった。
点けたばかりの葉巻は、やはり円卓の上にぐしぐしと押し付けて消されたようだ、その手に葉巻は握られていない。
「──では、気を取り直してじゃな。失敗したものはまた準備に取り掛かって貰うとしての、順調なものはそのまま成果が出るように頑張って貰おうかのぅ。」
てるてる坊主がそう言うと嘲笑うような笑いがその場に響き、
「「「「この良き日に!」」」」
何人かの男と女の声音で、そう重なる声が聞こえてハモる。
その後には円卓と、その円卓を囲む8脚の椅子だけがその空間にぽつんと取り残されていた。
やっぱり、ヘビコン面白かった〜
しばらく更新なくてごめんなさい、文章がサラサラ出てこなくてー。
後は、時間が無い・・・