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災厄に踏み込んだ鍵騎士

少々時間を巻き戻すことにしよう。

フード姿の男がかなりの数の邪竜・ワームを一度に召喚していた頃。


もうすぐ夜明けだというその頃に別の視点で一部始終を見ていた二人組が居た。


「クハハハハっ!出でよ、地の底に蠢く邪竜どもぉー!俺様のカワイコちゃん達よぉっ!」


「神託は正しかったってワケですか。」


一つはフード姿の男を遠くから見ている三十代ほどの、胸までのくすんだ金髪を特に手入れも録にしてない風の青年。

珍しい事に、特にケモ耳もなく犬尻尾も無いふつうのニンゲンらしかった。青年の言う神託とは、聖女だけが視るという安直ながら、少し先の未来を知る事が出来る手段として占いや星詠みなどと同じく古くから重用され続けたものだった。


誰かれが聖女になれるワケではないが、修行して『はい、貴女今から聖女ね。』という代物でも無い。

ある程度決まった中からより力の強い者が聖女となることが出来る。


『都に近く、・・・大勢の人が今日、明日にでも死にます。極めて悲惨な事態となり、その地は汚染される。その後ろには大火が見えました。』聖女が都のメルヴィ神殿で、余りの恐怖に震えながら不吉な神託を下したのは二日前の事で、王はこの緊急事態に際し、使える人材を各地から呼び戻していた。


だがしかし、時間が掛かる為今すぐとは行かずに、たまたま居合わせた二人が急行したという事に他ならない。


「おい、避難はどうした?」


青年の首の後ろから声がした。

声の主は二人組の片割れでどうやら女性のようだ。

おまけにまだ成人したか、しないかくらいの少女だったりする。


長い茶髪をポニーテールに纏め、その両側から立派な巻き角を生やし、黄緑色の胸当て、同・具足、同・籠手で身を固めた戦士ぽい出で立ちの少女は振り向きもしない青年にシカトか?とでも思ったのかムッとした表情に変わり青年の首をぐいっと左に回して、少女自身も左に移動した。

訊ねた事の答えが、すぐにも知りたいからだ。


神託そのままなら、街は汚染されるのだからそれはつまり。

聖女が口にする汚染とは、邪気が溜まって障気に変わり人の住めなくなったマルセラドを、捨てるといえる事に成りうるからだ。


「今しがた、約9割が街の外に出たってとこですよ、イノヤ。」


少女の厳しく睨み付ける視線に、たじたじになった青年はチラと目線を一瞬合わせてから、視線を明後日の方に移すと口を開いた。

9割というとほとんどな印象を持たれるだろうか? 少し違う。


マルセラドは大きな街である為、9割を避難させたとしても逃げ遅れた数もかなりな数もいた。

シャーウン区のほとんどが伝令や、魔鐘(吊り鐘より遠くにまで音を響かせる魔道具)に気付く間も無かったほどに。


「あー、・・・間に合わなかったか。どっちにしろ、デュンケリオンに行かせるかよ。」


そう言ってイノヤと呼ばれた少女はキッとフード姿の男が召喚したワームを見据えて背中に止めていた、イノヤの伸長よりも青年の伸長よりも長くて大きくて、武骨な大斧を振り回すようにして引き抜いた。


「鍵騎士が二人もでばったんだ、止めれんだろ。」


自慢たっぷりに青年に微笑んでそう続けるイノヤの視線は斧に移っている。

いわく付きの大斧。


鍵騎士にしか使用を許されない、強力無比な武器である為にノイヤも使用するのは初めて。

初めてなのだが、恐ろしく軽く、まるでありきたりな棍棒の様に金属が入っていないかのようだ。


「イノヤはいいですよ、デッカい斧を持ってるんですから。」


「うっせ、オッサンのくせに羨ましがるな。行くぞ。」


オッサンと呼ばれた青年も、イノヤも同時に頷いたが先に動いたのはイノヤ。


獣人である少女は、少しくらいの高さなど足場さえ気にすれば途中で足場を変えて次の足場にジャンプするのを繰り返して無傷のまま地面に降り立ち、その足でダンッ!と地面を蹴ってワームに向けて駆け出した。


「オッサン・・・のくせにですか。いつの間にか歳を取ったものでした。ふんっ。」


そう言って呪の施された短剣を自らに突き立てる。


「ベーレッタハイム、行こうかね。」


ずらずらと地面に並べられた短剣をそう言って手近のワームに投げ付けて魔力暴発、爆散させる。


呪の施された短剣を自らに突き立てる事でベーレッタハイムは○ァンネルのように操る、操剣マスターだった。


獣人でもない、エルフでもない彼が勝ち残る為に選んだ手段が呪いだったのだ。





イノヤとベーレッタハイムが揃って口にする鍵騎士とは、国王が国内外で選りすぐって集めた強者の集まりであり、いわばエリート集団という花形のように国民から羨望の眼差しを浴びる存在だ。


サーゲートに軍隊が無い以上鍵騎士は国内最強な集団と言えるかも知れない。

鍵は1時から12時の数字が割り振られていて、全部で12本ある。


その最強エリート集団の内の二人が、今この場所に現れたのは住人の避難と後もうひとつ、災厄の排除もしくは盾として災厄の足止めをしてくれと使命を受けての事だった。



「小さいのはまだ倒せるっ──けど、・・・あれはっ。」







風邪藥のせいで、やたらめったらーねもい〜。


とりあえずこの辺で。

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