マルセラド──5
その後、ぐーちゃんの全身の大きさにどーしたらいーか、どーしよーか悩みこんでたうちの目の前に、泣きそうな顔をしたぐーちゃんの顔が飛び込んできた。
ぐーちゃんを無視してたワケじゃないけど、結果ほっぽってたんだから違うとも言えないかなぁ。
ん?
寂しくて泣いたんじゃない?
どーすればいいか解らないって、何が?
うちはぐーちゃんの溢れそうな涙を親指でキュっと拭ってあげながら、話を聞くことにした。
「殺さない程度に自動防衛技能が働いていた、はずなのだが。死んでいるのだ、二人ほど。」
クレーターの外だけど、辺りと様子が違う場所がある。
ぐーちゃんが言った死体があるとこは何か燃やしたらこうなった的な、一帯が焦げて地面も真っ黒。
「え、・・・ぐーちゃんが殺したのぉっ?」
今、ぐーちゃんとうちの二人で焦げて炭になりつつある骨を見下ろして居る。
骨組みは確かに人に見えるだけ残ってて、ちょっと人だと認識するとグロい。
焼け死んだんだ、って感情移入しちゃうともう大変。
リヴァース5秒前ってカンジで、ヤっバい。
「解らない。黒焦げだ、・・・自動防衛技能に魔法まで無かったと思う。俺のブレスなら形も残らない、これは一体?」
そう言うぐーちゃんの自動防衛技能で全身がパリパリ稲光みたいにデコレされたツリーみたいに明滅して光ってるんだって。
自動防衛技能、発動で勝手に光るんだとか。
技能発動するとぐーちゃん自身から襲わないけど、カウンター気味にやり返したりするぽくてね、この人達も反撃で殺されたってぐーちゃん思い込みしてる。
「なーんだ。じゃぁ、ぐーちゃんじゃないんだよぅ。」
ん?って顔をしてるぐーちゃんに『ぐーちゃんにそれ出来るワケ無いよって』思いながらコテンと首を傾けて微笑みで返した、ニッコリと。
だって、そのカウンターは炎? 違うよね、死体は? 焦げてるじゃんね、つまり、そうゆーことよ。
解る?
「ここまで来て、この二人を魔法で焼き殺した理由は・・・何だろうな?」
だって、そーでしょ?
誰だって、解るじゃん。
焦げてるんだから、ぐーちゃんじゃない誰かに焼き殺されちゃったんだって。
説明すると解って貰えたみたいで、ぐーちゃんはそう言って不審感を出している。
感じてる。
うちだってそーだ。
でも、それを今優先してたら──
「そんな事をしてる場合じゃ、無いんだよねぇ?」
街を竜に全部食べられちゃうよ、ね。
竜(?)そもそも赤黒いおっきーのが遠くに見えただけで、アレが竜のなんちゃらが〜って思ってるのもぐーちゃんの言葉を信じてるからこそ!で。
うーん、どー言えばいいか──あ。
そんな事もあんな事よりも、ぐーちゃんの本体を使って街を救おうとしてたんだった。
なんで悩んでたんだっけ?
気絶時間以外寝てないから〜どーしても眠いし、街ホントに救えるの?って思っちゃってるし、あ、そーだ。思い出した!
ぐーちゃんの本体って、こんなにデカい。
気付いて見上げたのは天高くそびえるドラゴン。
どでかいクレーターの中心に居て、そのクレーターを一周、二周するほど長い尻尾を持った、四つの足の前足は体重を支える様に大地にピンと張り出して後ろ足はここからは見えないけど折り畳んでて地面に着いてるんじゃないかなー、飛べば見えるとは思うけどねー。
サイズがデカいからね、ぐーちゃんの本体を見たら街を更に壊しちゃいそうだって思ったんだ。
けっこう時間、無駄遣いしたからもう、街が全滅しちゃってたり、して・・・。
そしたら、悩まずにぐーちゃんGO!って言いやすいっちゃ言いやすい。
それだと、何の為に助けようとしてるのか良く解んなくなる、うーん?
難しいなー、コレは。
「そうだった。クドゥーナ、ありがとう。」
「うぇお?」
そんな事考えてる内に、ぐーちゃんはニッコリ微笑んでそれから地面をダンッッッ!!!って吹き出しが入るくらいの勢いで蹴って跳ねた。
そんなの見ちゃったから、目の前で起こったから思わず変な声が漏れる。
「な?」
視線でぐーちゃんを追うと本体ってゆー、ベヒモスの頭にぺたりと貼り付いた、ん?もぞもぞと起きて・・・あー、着地失敗したんだね?それでそれで、右の掌を開いて・・・ベヒモスの頭の中心辺りを触っ・・・た?
「き、消えちゃった。」
瞬間、ほんの一瞬金色の閃光がぐーちゃんの周りの地面っても?ベヒモスの頭の辺りなんだけど・・・から囲む様に噴き出して。
───ベヒモスが消えた。
ほんの一瞬の出来事過ぎて良く解らないんだけど、ぐーちゃんの周りを囲む様に噴き出した閃光がおさまった後、幻でも見たみたいにさっきすぐそこにある様に見えてたおっきなドラゴン──ぐーちゃんの本体ってゆーベヒモスが消え去ったんだ。
ぐーちゃんもどうなったか、・・・ってアレ?
気付いて急いでぐーちゃんの救出にむかったんだけど、けど。
うち、過保護になりすぎてたかなー、ぐーちゃんがちょっと頑丈だってことをすぐ忘れちゃう。
そう。
ぐーちゃん、クレーターの中心に居たりする。
正確にはボロボロのドレス姿のみやこもどきがクレーターの中心に立っていた、とゆー言い方が正しいかも。
近寄ると違和感があるみたいでぐーちゃんは、
「消え・・・、んー?」
そう言って体の各パーツのチェックするみたいに、みやこもどきの胸をぎゅむって揉んだり、太股をさわさわと擦ったり、二の腕をむにむに、頬っぺを指先でぷにぷに、お仕舞いに『ふん!』と地面に正拳突き。
叩きつけられた地面は見る間にべこぉおっ!と凹んでクレーターの中心に更に小さくクレーターを作る、そのまま見てるとビシィイッッッと岩でも砕ける様な轟音が響いて地面に裂け目が出来るだけで終わらなくて、ヒュオッと突風が吹き抜けていっちゃう・・・とか、もうみやこの強さを断然越えちゃってた、スゴいよぐーちゃん。
「いや、慌てる必要は無さそうだ。この体は・・・凄いな。グラクロ・デュテラシーム──オリテバローを取り込んだようだ。」
本体を取り込んだとかさらっと言っちゃうぐーちゃんマジヤバい。
セ◯か◯ゥみたいです、アレおかしいなー?
頼もしいはずなのに、このガクガクブルブル麻痺したみたいな震えは何?
もしかして、今のぐーちゃんを見てビビッちゃったの?うちは。
「ん・・・、取り込んだ?どういう・・・ぇ!」
パニクった頭でそう言ってぐーちゃんに視線を戻すと、
「コォオオオ、コ・・・ブレスを使う事が出来そうだな。」
口からあの危ない光を一瞬輝かせてそう言うぐーちゃん。
ちょっと人間のスペック超えたことしようとしてたよ?
ブレス?
そもそも人間にはブレス袋なんて無いよ?
ちょっと、無いわーって。引いた、マジこれ。
つまり。
うちは一瞬で消されちゃうかも知れないブレスを持った似非人類と一緒に、・・・ってそんな悲観しなくても、アレは普通じゃないヤバいやつってわけじゃくてずっと一緒してきたぐーちゃんなんだもん。
ちょっとベラボーに高いスペック見せられちゃって、視線の先でニコニコしてるアレがぐーちゃんだってこと、思考から欠落してたっぽい。
「ちょっと・・・ぉ。」
これ以上何かあったら、マジヤバいって。
怖くて近寄れないのは、体の細胞レベルで危険だって反射作用が働いてる?
もう頭では納得出来てるのに、軟弱な細胞ってだからダメ。
足が一歩も踏み出せないで唸っている間に、次の動きがぐーちゃんからあったのが見えた。
「──フォルゴート!」
唱えて現れた燃え盛る火焔を何かあった?的に掌で掴んで揉み消すのを。
「ふむ。魔法まで使えるか、では・・・」
ホント試してみただけって涼しげな凛とした表情のぐーちゃんの腕ががっちり、
「ぐーちゃんっっ?」
膝の裏に差し込まれて、背中にするすると手が伸びて。
ひょいと買い物袋でも持ち上げたみたく抱き抱えられちゃった。
ひぃい。
また、あの、音速なジェットコースターなの?と、瞳を閉じた瞬間。
「むー。竜種の膨大なマナを洩らさず内包出来ている。なんだ?この体。まるで、自分自身のようだ。」
誰に言うでもないぐーちゃんの喋るその言葉が、聞こえてくるのと同時に違和感。
あるぇー?
「浮いてる、浮いてるよ!ぐーちゃんっ。」
音速なジェットコースターかと思ったら、これは体感した事誰でもあると思うけど急激な上昇!そう、高層階へ10秒で向かう嘘みたいに速いエレベーターに乗ったみたいな浮遊感と全身に掛かるG!
のった、動いた、ちょっと気持ち悪くてー、はい、着いた〜!み・た・い・な?
きっと今うちの瞳に映る世界は、地上何百メートルの景色。
飛べる翼があるうちでもあんな急上昇は出来ない、ぐーちゃんだからこそ出来たンじゃないの。
「本体を完全に収納出来てしまったんだ、クドゥーナ。」
「それって──」
そう言う声に反射的に思わず、ぐーちゃんの瞳に問い掛ける。
喉まで出かけてた言葉は、チートなんじゃない?って事。
まさに、今のぐーちゃんはチートだもん。
「おしゃべりは後のようだぞ?」
目の前に迫ったあちこちから白煙を上げるあの街は、全体的に眩く輝いていた。
マルセラド5で〜す。
やっと、ぐーちゃんりみっけぶれいく(限界突破)なカンジでワーム戦もノリノリでプロット作ってますー。
風邪には勝てないけど…