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マルセラド───4


う、うーん。

ぐーちゃんの声がする。

けど、姿は見えなくって。

心地好く寝てるん、だから?

あれ──

ん?

うち、寝てたっけ。

寝てなかったよねー。

あー。

そう、そうだよ。

そこまで考えて急に、


「──ーナ。クドゥーナっ。お、起き──」


水底から引き上げられる様に、意識が覚醒して瞳を開けた。

んー?

んん、ー?


ぐーちゃんに抱えられた、って記憶はあるんだけど。

そこから先は覚えが無いかなー、どうも。

ぐーちゃんのフルスピードを一瞬だけ感じて、それは世界の何もかもがぼやけて見えた。

二度と体験したくない、そんなスピード。

光速移動では無いと思う、でもあの一瞬は風を切る音も無かった・・・お、音速?


音より速くて、音を置き去りにして飛ぶから音が後から聞こえるって・・・何かのTVで見たよ確か。

わー、アレが音速の世界の一瞬?

理解して余計に、二度と嫌って気持ちになった。

首が物凄い力でグイと逆方向に押されて、渡っちゃダメな川まで行った気がするもん。

手前までだけど・・・。


辺りを見回す余裕も出てきた。


今寝かされているのは、どこか暗い森の木立?木は周りにはいっぱいだけど、うちの周囲だけ、そうだなー木立の広さは大体6畳くらい。


ぐーちゃんは心配そうな顔で膝立ちになりながらうちの顔を覗き込んでくる、じぃぃっと。


「べ、べっつにぃー?体に悪いとこ無いから、大丈夫だから、そんなに心配してくれなくていいんだよ?」


視線が合って、なんか照れて、照れちゃってぐーちゃんの顔を押してどーにか視界から退いてもらう必要があった。


ぐるんと回転してから両手で顔を押さえる。

熱も無いのに、きっと。

顔、真っ赤だと思う。

熱い、頬っぺ・・・。


しばらく、その体勢からじりじりと体を出来るだけ丸めて恥ずかしさを堪える、瞳を閉じて耳を押さえて完全情報遮断。

ぐーちゃんだけど、みやこの顔で、躰で、もしかしてうち・・・い、い。嫌ぁあああ!


違う、違う、違う。

だって、ホラ。

声はみやこじゃないじゃない?


みやこにときめいてなんか無い、みやこにときめか無い、みやこは頼りになるし強いけど、それだけだもんっ!


と言ったグッズグズに妄想にふけこんで言い訳を自分自身にしてたその時、


「クドゥーナ、大丈夫?」


ぐーちゃんに呼ばれてしゃーなし瞳を開けて、ぐーちゃんの瞳を見れずに胸に向かって口をひらいた。


うわ、だっさー。

うち、ぐーちゃんの顔を、みやこの顔を今、ちょっと見れない。


「うちはいいよ。早く本体を、どうしたの?」


ん?

ぐーちゃんの様子がおかしい・・・、困ってる?

トイレならその辺ですればって、違うの?


手を取って引っ張られる、本体を見つけられたのかな。


木立から少し入り込むと・・・着いた。


視界が急に開けて、そこは森が大破壊されちゃってるぽく根から抜けて逆に刺さってる樹が見えたり、折れて中身が散乱してたり、とにかく何かが『暴れたらこうなるよね』的な景色をうちの瞳に映す。


必死に視界に入れるのをためらうけど、どーにもそれは視界に入れない努力をしても無駄に感じられる大きさのそれは黒い一個の塊。


それはあの時は解らなかったけど、グラクロなんちゃらの全て・・・グラクロなんちゃらの特徴的な瞳とあの角を見たら何となく、あーこれが!ぐーちゃんの全身なのねって自然に思えて。


グラクロなんちゃら・・・あーもう面倒い!ぐーちゃんの本体でいっか。

そのそれが居たのはおっきくって巨大な穴、クレーターの真ん中って言えるのかな?

クレーターのほぼ全体に全身が、すっぽり入ってるのに・・・生えてた樹を押し倒してここにそのまま『降りた』んだ、きっと。


あの時、爛々と輝いていた金色の瞳は蛇の眼の様におとなしく、動かなくなっちゃってる。


紺紫の肌のおっきくってただただ巨大なドラゴン───ベヒモスは肌の色とは少し違う濃黒の鱗をびっしりと生やして・・・あれ一枚あったら鎧ひとつ作れちゃうよね?


体よりも一回りも二回りも長い尻尾、顔の両側から生えた直角な角、口からはみ出すほど長く生え揃った牙、鋭く大地をえぐっている爪、そしてそして何もかもをぶち壊しにする大きさの躰、見上げて居るだけでその大っきな姿に圧倒されて、威圧されて、心臓をぐっと握られたくらいに空気が吸い辛くなっちゃってる。

こ、怖い。

恐怖しか。

全身が見えてたら、きっと、ううん!絶対こんなのと戦う勇気無い。


ノルンの他のゲームで見るドラゴンの数倍、数十倍にも感じちゃうくらいに、デカい!

ライオンのタテガミみたいに首より少し上に漆黒の・・・アレはヒゲ?が、ぐるりと一周生えててノルンで見るドラゴンともちょっと違う。


竜の中の竜。

神すら殺せるとゆーだけはある立派な、ただただ立派なぐーちゃんの本体のお姿に、うちは自然に拍手をしてた、何故か。


日本人の悪習とゆーか、感動とか感激とか圧倒され過ぎたりとかもうどーにかその気持ちを外に出したくてそうしちゃうのかも知れないけど、頭のなかぐっちゃぐちゃのまましばらく笑い声を出しながら拍手をしちゃってたんだよね。


みやこ・・・、ヘクトル・・・。

おまいら、よくこんなのに戦い仕掛けたよ、ホントありがとう・・・うちは、うちだけなら逃げてる、絶対。


そしたら、ぐーちゃんとの出逢いも無いワケで・・・村も助けられなかったし、今こうして全身パリパリさせてる遠目から見てもヤバさガンガンの悪の竜王的なぐーちゃんの全身をまぢまぢと見ることも無かったワケで。


なんか、何故かしみじみ二人に心の中でありがとうを何度も何度も叫んだ。


今からこのぐーちゃんが、街の中で暴れる竜をぺち倒してくれりゅって、思ったら?


ん?

あー、ダメダメ。


このサイズが暴れたらもっと酷い事になるって!

それ、今暴れてる竜を片付けてもノシ附けて更に倍々被害が出ちゃうよね?


それだと街にぐーちゃんを入れる訳にはいかないじゃん、どうすんの?

ねえ?

りんこでも、みやこでも、ヘクトルでもいいから教えてよー。


ぐーちゃんを連れて街を大破壊しちゃうかもじゃんよー、うちは。







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