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マルセラド───2

「──コイツの足元見ろ!光っ・・・魔法、陣?」


深緑のフード姿の男の触れた地面、そしてその周りの地面にもびっしりとリスの獣人の男には読めない、もう1人の兎耳の男も勿論読むことは出来なかったが、古代文字で力ある言葉が書き連ねられていて、読むことは出来ないがある規則や法則に沿って書かれてある事は理解った。


そして魔法陣である事がわかるとリスの獣人の男は、背中に嫌なカンジを覚えた、ぞわりと。


「お前の足元も光って・・・お、い。こりゃぁ──」


兎耳の男が歩くのを止め、事の行く先を見守っていると新たに魔法陣がリスの獣人の男の足元に発動するのを気付いて思わず叫ぶ。


フード姿の男のやりたい事はまだ解らないが、兎耳の男が抱いた嫌なカンジは収まらない。

魔法陣が発動する、しかも壁の内側の街中で。


兎耳の男は、瞳が窪んで頬の皮が垂れて来はじめた中年の風体をした商人だった。

店で取り扱ってるのはいわゆる『素材』。


モンスターの目だったり爪だったり、魔獣の尾だったり、薬草だったり、特別な土だったり様々なものを仕入れて冒険者や必要とする技術者に売るといった商売だ。


外側の商会からモンスターが増えたようで、買取るモノが増え、儲けも昨年よりだいぶ多く、ウハウハ。


モンスターが増えた、つまり、原因があったのだ。


だから、それまで信じてきたものが一蹴されようとしていると、自然に感じた。

アブナイと。


信じて来たもの、それは──王国での平和な生活。


そう考えた時、自然に空を見上げた。

非常時には上空をドーム状の防衛障壁が魔力で作られる手はずだったから。


だがしかし、夜明けの紫色の空模様がただ広がったままで。


そして兎耳の男がフード姿の男に視線を戻した瞬間、


グゥゴオルオオォオオォオオォウウウンンン・・・!!!!


大きな揺れが地の底から響いた。


「な、なんだ?地震か?」


思わず兎耳の男が叫ぶ。

今は立ってられないほどの震動では無いがどんどん強くなっていると感じる。


そして、まばらだった通りにもさすがにおかしいと気付いた人々がぞろぞろと集まってきていた。


「どうなってんだー?あちこっち光ってやがる。」


「何か知らないけど、これだけは言えるわ!ただ事じゃないわよおっ!」


倉庫で荷下ろしをしていた象耳の男の獣人が信じられないものを見た風に、開いた口が塞がらないのか吃驚している。


と、近隣に住んでいた羊蹄獣人の、けばけばしい化粧の若作りした女性がヒステリー気味に金切り声を上げて、くるりと身を翻し逃げる様に立ち去った。


「ククッ、・・・今、繋がった。出でよ、地の底に蠢く邪竜ども。」


フード姿の男の口が半月状に歪む。

そして、風も無いのにフード、ローブ共にバタバタはためいた上、全身が幾状もの閃光に包まれ・・・。


ドン!ドンッ!ドッッッ!


と、地中からまるで地表を叩いているかの凄まじく力強い衝撃が地面を、通りに集まってきていた人々を襲った。


地震などとはまた違う、這い上がってくる・・・何かが。

それも10や20ではない、例えようもないほどの数が地面を突き破って出現するような衝撃。


「「「う、うわぁぁあーっ!」」」


「「「キャ・・・キャアアアアッアアアー!!!」」」


刹那の時を待って、集まってきていた人々の命を吹き散らしてワームが次々と這い出す、叫ぶ事しか出来ないまま死んでいく住人達。







「な、何なんだよっ、何なんだよー。・・・これはっ!」


リスの獣人の男が、揺れが始まると逃げ出していたこの男が。

逃げながら振り返って思わず叫んだ。

それもしょうがなかったかも知れない。

何故なら、夥しい数の巨大なミミズに似たモンスター──邪竜・ワームが振り返った先、男がさっきまでいた辺りからうじゃうじゃと湧き出した湧き水のように次から次から現れたのだから。


まだあそこの通りに残っていたら。

死んでいた。

恐らく、地獄絵図があの辺りには広がってる、・・・勿論、すぐにここにも。


壁内に残っていたら死んでしまう!


早く、ここを出て離れよう!







「この街は布石に過ぎず。いずれサーゲートは無くなる。」


有り得ない事だった、モンスターを召喚したのだ、フード姿の男が。


やろうと思ってやれる事ではない、魔力を無力化は出来ないまでも人や獣人の魔力で、強大で巨大なモンスターを召喚出来る様な魔力が発現する事をさせない為に、苦心して建造された防衛壁の内側では役人の様に特別なアミュレットを持たないと、全身から魔力が無くなる感覚を覚えるはずだったのに。


だがしかし、そこに抜け穴がある事に気付いていた、このフード姿の男の首から提げられて居たもの、それは特別な役人しか持てないアミュレットだった。


魔力障壁を発動させる為にフェンルドを唱え、マルセラドを守る役人数名しか持っていないアミュレット、それがフード姿の男の首にはジャラジャラと幾つも提げられていた。


役人数名は恐らく、皆殺されてしまったのだろう。

ジャラジャラと提げられていたアミュレットの数を合わせると全員分になる。


「くっ、クハハハハ。聞こえるか、人の恨みの声が。壊せ、全て壊してしまえぇっ!俺様のカワイコちゃん達よぉっ!」


男が半月状の目と口でいやらしく笑い、両の手を振り上げ叫ぶとうようよと蠢くワームが合図を待っていた様に破壊、破壊、破壊を開始した。


「えぐれ抉れえっ!食べ放題だっ!殺しつくせっ、壊しつくせっ、喰らい尽せっ!死など生温い、肚で栄養にしてやるといい。」


まさに目の前に広がった地獄絵図を見ながら興奮して、更にワーム達に命令を下すフード姿の男。


辺りの住宅や倉庫などの建物をえぐり、生きているままワームに住人が食われていく、そんな地獄絵図。


まだ日ノ出でも無い明けていく夜の色と、徐々に昇ろうとする陽の光とが交わって紫と赤のグラデーションで世界を包む中、逃げる暇も与えられず何が起こったかも解らず、喰われ、そして死ぬ。

腹の中でゆっくりゆっくり。

時間を掛けてミミズの栄養になっていく。


フード姿の男が下した命令のままに、ワームはそこかしこで饕り喰っていた。

生きている命を、住人を。


「ふふ、気分がいいなぁ。・・・今日は俺様の世界が始まる1ぺいじだからかも知れないが、ふむ。」


フード姿の男の顔に陽の光が射し込み始めると眩しそうに掌を拡げ、射し込む光を遮り、そのまま足下に目を落とす。


男が目にしたものそれは、肉片。

ほんのさっきまでそこで生きていた住人の亡骸。


それをおもむろに拾い上げ、噛み千切って。


むぐんぐ、と咀嚼してからあからさまにマズいものを食った表情に変わり、


「──ベッ!・・・まじぃい。人が喰うもんじゃねーな。人の肉は。」



吐き捨てる様にそう言って空を見上げる。

明るい陽の光が射し込み、幾条もの光線となってフード姿の男の瞳を灼く。


すっかり夜が明けたと言うのに、地獄絵図は止まない。

フード姿の男の目の前でも、後ろでも、横でも。


夥しい数のワーム達が蠢き、犇めきあって。

地面を穴ぼこだらけに変え、そこに建っていたものを何がかも解らないほどに瓦礫に変え、逃げ惑う住人を次から次からと喰らっていた。


そう、これは夢ではないのだから。









マルセラド2をぅpしますた。


マルセラド、無くなっちゃった・・・さあー、どーなるかなー?おっ楽しみー、お楽しみに♪




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