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幕間.2

今回の件、口止めをダンゼが引き受けてくれてオークキングをはね除けたのはイライザって事に。

盛りはするけども、旅の魔法使いがイライザを強化させてオークキングを倒したって筋書きになった。


京ちゃんはそこそこの働きをしたエルフって事にするらしい。

わたしはってゆーと、来てない事に。

ちょっと悲しい気もするけど、面倒を回避する為なんだもん、しょーがないよ。


イライザも渋い顔をしてきたけど『目的の為に目立ちたくない』って事で何とか首を縦に振ってくれた。


ダンゼが一人、悪い笑い顔のまま腕を握り締め、含み笑いを我慢出来てないのを見るに、イライザの為にも筋書きがこうなるのは悪い事でもないんじゃないかな。


「終わったんだよね?」


「酷い一日でした、まるで何週間もオークを相手に戦ってた気がします。」


京ちゃんをマントの上に寝かせてから、隣に立つイライザにしみじみとそう言ってどこか遠くを見るわたし。

に、イライザもしみじみと返事を返してくれる。


終わったと言うことは、イライザ達とももうすぐお別れって事。


そう思うと、寂しくなる。

狡そうな顔のイケメン、ダンゼの事はさっさと忘れてもいいけど。


ま、整った顔の創りはいいにしても、行動の総てに計算が在りそうで何かヤダ。

イライザの事を大事にし過ぎて、周りから自分がどう見られてるか解らなくなってそうなんだよね。

そもそも、そんなことはどうでもいい、と言っちゃいそうダンゼなら。


「それだけ、休む間も無くオークと戦ってたと言う事ですよ、イライザ様。」


「良かった、ダンゼ・・・。」


あーあ、わたしの存在なんてモブですら無いみたいに見詰め合っちゃって、完全に二人の世界に入ってるみたい。


イライザに訊ねたのはわたしなのに。


こんなの見せられる立場の身になって欲しいな。


ゲームなら、とっくに『危機は去った──みっしょん・こんぷりーと!』的な何か切れ目があるんだけど、ゲームじゃないからそんなのなくて。


今にも熱の籠ったセリフを交わしながらキスしそうな目の前の二人を見てたら、何か悪い気がして、さ。


そうだ・・・こーゆーのは、覗きでもしてる気分になっちゃう。


慣れてないもん、一方的に京ちゃんがしてくる事はあっても自分からシた事だってないし、したいなんてこれっぽっちも気がないんだけど・・・それでも気恥ずかしいってゆーか。


そして頭を掻きながら周りを見回すけど、あっちもあっちで。

ゲーテとジピコスとフローレの三人が無事を喜び合っている輪にも加われず、何処かゆっくり出来そうな場所を探してフラフラと夢遊病のように歩いていたら、折れた樹の根が目に止まった。


マナチャージを飲み続けていても、魔力が回復するだけで体を襲う魔力疲れがふっ飛んだ気になるだけなんだよね。

ここ大事。


疲れがやってくるのを先送りにして、ムリヤリ眼を覚まさせてる栄養飲料みたいなもので疲れは無くなるワケじゃない・・・、愛那は割と成功率高い、難しくないアイテムだって言ってたっけ。


副作用ある事で生産は格段にラクになるんだって、副作用無しで魔力を回復するアイテムに比べると7割増しだから、素材的にもマナチャージは始終作り続けてるとか。


時間が経てば魔力疲れがドッと吹き出す、まるで洪水みたいに。


今まで余り不思議にも思ってなかったけど、魔力疲れを先送りにしてる人が身近に居るよね、それもそれがどれだけ強力な魔力疲れなのか解らないくらいの。


勿論、京ちゃんの事なんだけど・・・『睡眠』という無防備な形で魔力疲れを消化してるんだよね?

もし、起きてたらしばらくわたしみたいに吐き気と戦ったりしないとなんだろーか。


睡眠で魔力疲れをわたしも知らず知らず回避した事もあることはあるけど、あれって失神だもん、睡眠じゃ無かったとか、思ったり。

樹の根に腰を落として、時間にして1分くらい経つと乗り物酔い(強)ってカンジかな、魔力疲れにも色々あるにはあるんだよね、頭がガンガンするし、世界が揺れてる?ような・・・。


マナチャージを何個も使った分、今日の魔力疲れは更にキツイ気がしちゃう、いや?これ気のせいじゃないかも?う。吐く・・・!!


う゛、××××ェ。×××××お゛っ!


(しばらく、綺麗な映像でお楽しみください的な。)


も、脳内お花畑です・・・見事、リヴァースしました。

なんとか足元は避けて座ってる樹の根の横に。


樹の根に座り直してから、改めて周りを見回してみた。


空は何事も無かったように変わらず、入道雲が蒼天にぽつりぽつりと浮いている。

思い出したかの様に時折、物凄い突風が吹き抜けていって流れる雲。


視線を落とすとオークキングが走って踏み折った樹木が倒れている、無数に。


もっと言うと・・・目の前には、ふぅー、無事を確かめ合う三人と抱き合っている二人以外は・・・はぁ、凄惨な光景が広がってるんだもん。


慣れたけど、慣れたら慣れた分。


無数に転がる肉塊・・・オークの残骸を見ても眼を疑うんだけど、チャーシューに見えたり。

眼を擦っても一面しょうが焼きが広がってたり。


これって豚肉なんだよなぁ、とっても勿体無い気がしちゃうだなんて、ふぅー・・・ああ、順応しちゃってるなーって思って、少し悲しくなっちゃった。


人間型なんだよね、オークもさ。


それなのに美味しそうとかって、思っちゃうのってやっぱりどうかしてる。


そして、そのオークの肉塊の上で大の字になって仰向けに倒れ込んでるアスミさん。

凄い強かったけど、いっぱいカッコ良いスキルを見せてくれたりしたんだけど、ダメージを与えられなくてノーカン。


起き上がれるとは思うんだけど、起き上がってこないのは・・・悔しいとか、わたしには解らない感情に押し潰されたり、そうでも無かったりして?


起き上がれる様になったら起き上がると思うから、今はそっとしといてあげようと思うんだ。


わたしも一人にしといて欲しい時だってあるし、そんな時わたしは・・・他人の言葉を拒んでしまうだろうから。


一緒なんじゃないかな、アスミさんだって──


あ。そんな事思ってたら、起き上がった。

泣いてたみたい、やっぱり。

目元をぐしぐししてる。

こっち気付いた、目線が合っちゃう、気まずい。


「あっはっはー!、なっさけないトコ見せてしもたなー。」


「誰だって、・・・そーゆー時。ありますよ、だから・・・。」


無理にアスミさん、笑顔作ってる気がしてなんだか胸の辺りがちくりとした。


強がってる、わたしは何故かアスミさんを見てそんな風に思えちゃって、それでかな。


「ありがとうな。・・・ウチ、賑やかしに来ただけみたいや、悔しい・・・メッチャ悔しいわ。」


アスミさんが悔しいって言う気持ち、わたしには痛いほど理解っちゃった。


それはいつもわたしが味わってた気持ち。

・・・無力感。


「うん、悔しいよね。解るよ、全力出し切って手応え無いのはね・・・。」


「せや、メッチャそん通りやわぁ。エグいくらい再生しよるわ、その癖スキル使たらMP減った分ダルダルになてもーてなぁ。こっち来て初めてえらいスキル使たんもあって、反動やろな?しばらく立てへんのやもん、ウチ何しに来たんかー思たら。急に・・・泣いててん、あっははは。キシシシ。・・・笑わな楽になれんってさいあくやわー。」


アスミさんは頭にオークキング戦を思い浮かべながら、きっと思い出しながら、わたしに思いの丈を全部ぶちまけてくれた。


ゆっくり・・・、言葉に詰まったり、俯いたりしながら。


でも、同感出来るからこそ掛ける言葉が見付からない、どんな言葉も今のアスミさんには惨めに感じられるんじゃないかなって思っちゃうとね。


唇を真一文字に結んで、きっと込み上げ続ける悔しい気持ちを堪えようと無理に笑顔で頑張ってるアスミさん。


褒めたり、慰めたりされたらそれこそ惨めだし・・・。


黙ってぎゅううってアスミさんの体を引き寄せて抱き締めた。



色々考えたけど、わたしって経験が無いじゃん?


どうしたら良いか解んなくて、そー言えば葵ちゃんや京ちゃんに抱き締められたら落ち着いたっけ。

って、思ってさ。


すうっと立って気が付けば、わたしの胸の中にアスミさんの顔を埋めて抱き締めてた。


「お。り・・・、りんこちゃん?」


「頼り無い胸だけど、・・・泣くなら貸すよ?」


「うっ、ううっ・・・。うああああっあ。」


顔を上げてわたしの掛けた言葉を聞くと見る間にアスミさんは涙を浮かべて、作ってた笑顔が崩れた。


眉が下がって、整った顔が歪む。

それは心底無理して強がってた、心の仮面がぺりぺり剥がれ落ちてくみたいにわたしの瞳には映った。


下唇が鼻の下に着くんじゃないかってくらいに引き上げられて、ひっくひっくとしゃくり始めるアスミさんの瞳からは溢れそうな潤いがキラリ*


ぽたりっとアスミさんの頬から一粒の滴がこぼれると、わたしの胸に顔を埋めて声を上げて感情をぶつけてくる。

ガシっ、て体を掴まれてどれくらいかアスミさんは『くそぅ、くそぅ。』と何回も繰り返し呟きながら泣いてた。


それからあるていど泣いたら落ち着いたのか、それとも女同士抱き合ってた事に照れてかも知れない。


パッと離れて、カァーっと真っ赤に顔を染めると恥ずかしそうに俯いてから、


「えぇと、・・・ありがとさん・・・。」


そう言ってお礼の言葉を声に出しながら、顔を上げてニコッと満面の笑顔を見せてくれた。

わ、可愛い。


イライザみたいのは気品漂う容姿からのギャップある可愛いだとしたら、アスミさんの可愛さは話した事の無い先輩と話してみたら意外ときさくで可愛いみたいなアレ。


アスミさんの場合は、ちょっと怖い容姿も相まって尚更、この先輩じつは可愛いんじゃん!て気持ちになると言うか、そんな感じなんだよー。


灰色の肌ってだけでビジュアル面でかなり怖いよ?

薄い紫の肌のヘクトルより倍くらいもアスミさんの方が見た目の怖さは上かな、プリンな金髪も結構プラスされるし。


「あ、・・・えっと。そう言えば、さ。いくつなんだっけ?」


「・・・へ?ああ、ウチな、15や。」


「・・・。」


思わず、痛ーいカウンターを食らったみたいに声が出なくなる。

まぁ、身長は同じくらいかちょっとアスミさんが上かなってくらいだけど。


まさか、年下だったなんて。


「どしたん?黙ってパクパクさせてからに。」


「・・・うん、その・・・何か、ごめん。」


「え?何で謝られたん?」


「うーん、・・・あの、わたしは高2なんだけど、先輩ぽいかなぁーなんて、思ってて。」


「なぁる、せやったんかー。えぇよ、ウチはこんなやからなぁ。呼び捨てにしてくれてええよ、アスミ、って。」


「はは・・・でもなー、アスミ・・・、年下かー。」

何だかんだあったけど頼れる(?)助っ人・肥後クマもとい、・・・あ。名字知らないや。

・・・アスミさ、・・・アスミ。

が、わたし達の仲間になった。


強い・・・強いんだけど変なとこもある、年下の女のコ。

わたし特撮見ないんで解んないけど特撮が好きで、アスミの中でカッコ良いものは他人が見て変でも・・・カッコ良いを譲らない、自分ルール。


ほっておくとズッと新しいカッコ良いポージングを探してポーズを取り始めるくらいなんで、重症だと思う・・・も、好きにしてて、よ。




話した通り、ダンゼが冒険者達に相場の何倍もの口止め料金を上乗せした報酬を払う事で、わたし達の存在が表立って吟遊詩人に吟われるピンチは無くなった・・・良かった。


やがて、村に帰り着くと愛那とぐーちゃんが姿を消していた。


ナボールさんが言うには、わたし達がバタバタと出掛けたよりも前に大急ぎで村を出ていった・・・らしい。


うーん、わたし達って・・・そんな薄っぺらな関係だったかなぁー、ま、フレチャで話せば良いよね?


・・・?


んん?


クドゥーナとフレなって無かったっけ?


フレンドリストにクドゥーナの名前が無いみたいなんだけど?


・・・そうやってバタバタと愛那とぐーちゃんの行方が解らなくなってるのを気付いたのは、・・・悪いとは思うんだけど、いや、ホラ・・・わたしも疲れ溜まってたし、京ちゃんもいつも通り寝てるし、うん。ごめん。


外もう、真っ暗だよね・・・今。


ホント、ごめん。

愛那、忘れてたとかじゃないから・・・村に帰ってからも余裕が出来なかっただけなんだから。


うーん・・・と、だから・・・許して、ね?あはっ。あはは、・・・ははっ。







良し、これでやっと次へ・・・長かった・・・長かったよお。


オークキングさん強くなりすぎになりはったもの。


あぁ、次の話は軽く終わって欲しいなぁ、ただ・・・プロット的に長そう・・・後回しにできるとこをはしょってなんとかしたいなー、一週間ううん二週間くらいで、何とか。



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