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幕間.1

『えいやァ!』ってアスミさんがコープスを踏み潰してやっと・・・やっと、オークの脅威から解放される訳なんだもん、少しくらいマッタリしたっていいよねー♪


いや、うん・・・。

ラストが踏み潰して終わりって何か・・・何か、ね?とっても絞まらない終わり方だったけど、さ・・・。


あんなに一杯無くなった人が居たのに、不幸中の幸いと言ったらその人達──大勢の冒険者に悪いけど・・・知った顔が目の前から居なくならなかったのは、ホントに良かった。


そんな事言っちゃうと現金な、ズルい人間かもしれないけども・・・それでも。


もし・・・もしだよ?

京ちゃんが、ジピコスが、ゲーテが、イライザが、ダンゼが居なくなったりしてたらって思うと・・・。

やっぱり、胸の奥に何か刺されたみたいにちくりとするもん、ヤダよ!

そんなの。


だから、ホントに良かったって思うんだ。

そりゃね?知らない人達だって全部救えてたら・・・それは、最高だったけど、さ・・・。


最高の終わり方じゃないけど、終わって改めて思うのはってゆーと・・・。

あれだよね。

オークの数、ハンパなかったなぁって。


蚊柱とか、蜂の巣解るよね?まるで、あれみたいって。

一匹、二匹倒しても意味無いんだ、わたしを含めてふつー逃げるし避けるよね?

それなのに隣で──すうすう寝息立ててる京ちゃんが、山じゅう埋めつくそうってオークの群れのほとんどを斬り殺し、凍らせて殺し、圧し殺し、爆殺し、刺し殺してみーんなぜーんぶぅ滅ぼしちゃった。


寝顔は無害なのにねー、起きてると狂暴か変態なんだもん、何だろ?取扱注意?


「京ちゃん、気持ち良さそうに寝ちゃって・・・」


寝いって起きそうにないからこんな事もできちゃう、京ちゃんの頭をそっと持ち上げて膝の上に乗せるだけなんだけど。


起きてる京ちゃんにこんな事をしたらって思うと、ううん?そもそも起きてたら膝まくらなんてしないしねー?


京ちゃんに肌を触らせたら、それはとっても危険なの。

わたしにとって。


コイツぅ、って良くやられてるデコぴんを額にツンっ。

いつ見てもキレーな長い黒髪を指で鋤きながら、そんな事を思うんだ。


それはそうと・・・。


この世界の誰だってエルフにしか見えない京ちゃんが、たった一人でオークキングとオークの群れを相手にして滅ぼしちゃったなんて・・・うん、信じない、信じないよ絶対。


ゲーテやジピコスとか、毎日のようにやって来てた冒険者達がそれを明らかに物語ってるワケだし。


この世界のエルフは弱者なのかも。

人間ってゆーとそれに輪を掛けて弱いんだけど・・・、わたしがヒール使ってるのを最初に見た人って結構な確率、有り得ないモノを見たみたいに吃驚してくれるもんね。

・・・この、紅い髪が珍しいってのも多分にあるかもだけど。


すうすう・・・。


京ちゃんが起きる心配が無いって、ある意味凄く安心で平穏な時間なんだもん。

普段なかなか出来ないでやってみたい事しちゃうよね?それは。






膝の上に京ちゃんを乗せたまま、ゆるりと時間が経っていく。

空だけ見上げていれば青一色の中にぷかぷか浮かぶ入道雲の白だけだったりでまるで、今までの事は何にも無かった様に思えてきたり。


なーぁんて事はなくて。


・・・目線を下げれば血の海が広がってるのなんて忘れちゃうくらいには、マッタリな時間。


そうなんだよね、オークどうしよ?

シャダイアスが食べてる風でも無いから、ちらりと見ればお腹をパンっパンに膨れあげて苦しそうに仰向けに倒れてるデカい鳥二羽。

あーぁ、・・・リタイアなのね。


食べれなくなるまでたべたくなる良い肉って良くわかったからま、イイケド。


BOXに詰められるだけ放り込んでもいいっちゃいいんだけど・・・量が量だもん、悩む・・・。


「終わった?・・・のか?」


ぼーっとそんなどうでもいい気な思案に呆けて居たら、ぽんと肩に手を乗せられて肩越しに振り向けばゲーテの顔がある。


獣化が解けてしばらく。

すっかり、ケモミミがついただけのマッチョなにーさんの姿に戻ってたりするゲーテはってゆーとね、結論から言っちゃうと空回りしてた。


京ちゃんを助けるつもりでオークキングを挑発するみたいに、カッコつけて出ていったのはいいけど、オークキングに爪も牙もろくに傷を付けれないで、逆に助けるつもりの京ちゃんに助けられちゃうって。

何の為に出ていったんだか、お荷物。

あ。わたしが言えないか、あははは・・・は、はは・・・。


「周りに居たオークも逃げちまったな。ま、逃げちまったもんはしゃーねーか。」


オークキング(アンデッド?)を完全に倒した事が解ると次第に、遠目で戦いを窺っていたのか、残ったオークと戦ってたのが終わったのか周りに仲間が集まってきた。

まずはジピコス。


ジピコスも大あくびをしながら会話に加わってくる、視線をそちらに移せば着てた革の服が上下ボロボロになってて、頑張って戦ってたんだなーってのが解った。


一緒にいた時からボロボロだったかってのは、ちょっと覚えてない・・・それを気にする状況じゃなかったし。

ま、ジピコスは闘うって体つきしてないし、期待しちゃうと酷ってもの。

華奢で細くて、スピードだけで凌いでいくタイプなんだって、自分で言ってたっけ。


パーティには役割が一人一人あって・・・うんたらかんたら、マッチョが4人いたらそれって細くても暑苦しいとか、そんな感じでジピコスの役割も大切なポジションだって。


なんか、誤魔化され感あるけどそうなんだって言うんだもの。


筋肉付けようとすれば、つくんだからなー、だって。

・・・ハイハイ、強がり。


「あたいは何匹か、追い打ち掛けてやったけどね。」


その後ろにフローレ。

バケ乳め。


いや、うん・・・。

しょうじき彼女の回復魔法には、わたしのカバー出来ないとこ何回も助けられたし、でもそれを+してもバケ乳。


投げナイフで周りに群がってくるオークをザクザク倒してくれて、助けて貰ったんだろうけど、バケ乳。


なんだよ、そのぷるんぷるんした生モノわ。


顔と同サイズか、顔よりひとつ大きいくらいじゃない?

それを革ベルト3本で止めてる、ムリヤリ感。


大きめのウェスタンハットみたいな帽子から、金色の髪の束が揺れる。


TVで見たアメリカの吃驚人間みたいなボディーだぁって思っちゃう。


京ちゃんの上を行く露出過ぎる肌。

ま、ラミッドの狐さんが皆こんなカッコなのかも知れないけども。


いや、多分・・・ん、絶対違う、んじゃないかなぁ。


バケ乳・フローレだからこそこんな・・・わたしなら顔真っ赤になってて、一歩も歩けない罰ゲームみたいなカッコ、を自然とやってのけてるんじゃないかなー。


話がおもいっきりズレたので軌道修正を。

逃げたオークをジピコスは見つけて。

でも、逃げられちゃったぽくて。


その点、フローレは得意げに投げナイフを見せながら、逃げたオークも何びきか仕止めたらすい。


えっと、スローイングってゆー特技・・・ゲーム風に言うとスキルなんだっけ。


フローレのスローイングは、上級に手が届くかどうかくらいなんだって。

なんか、どうでもいい話なんだけど、フローレが得意げに話すから・・・耳に残ってた。


「それより何より、皆が五体満足で生きている事を喜ぶべきだろうが。」


朗々と自慢話を話し掛けてくるフローレに相槌を返して聞きに入っていると、その後ろから仁王立ちで立っている背の高いフローレよりも更に大きな影がぬぅっと現れる、カイオットだ。


フローレを押し退ける様に前に出てきたカイオットは、頭を鷲掴みにして余る熊みたいに大きな掌をわたしの頭に乗せるとぽんと軽く叩いてニカッとこれまた大きな歯も見える様に笑った。


「癒しの女神、うん、そうだ。俺が後年までお前の事を語り継いでやろう、オークキング襲来の折りに突如現れた救世の女神と言うのはどうだ?吟遊詩人どもに話してやれば、国中に語り聞かせるだろう。」


「いや、・・・恥ずかしいよ。」


カイオット、わたしはそこまで凄くないよ?

話が大きく盛られ過ぎてる気がする、京ちゃんが救世主にされる・・・のもどうかな。


ここはやっぱり、


「せっかくお姫様がいるんだし、全部イライザがやった事にするってのは?」


「・・・歩く迷惑、か?姫様は回復も出来ないし、氷の壁も作れないぞ?手柄を差出すのはいいが、・・・吟遊詩人も困る、イライザ様も困るだろうな。はっ、説明がつくまい。」


腹の内を読まれた?

噂が広がるのは、色々とまずいのにな、どうしよう?

言われてみたらそうか、出来ない事をイライザのやったって言っても説明することが出来ないんだ。

盲点。


「じゃ、回復はフローレ。って事でいいから、ね?シェリルさんがやったとこはそうだ、なー、・・・旅の魔法使いがやったって感じで・・・ね?」


必死にカイオットに説明がつく様に話を作り変えてって頼んでいたら、


「終わったんですね。」


「一時は、どうなるものかと思いましたが・・・オークキングと言えど無敵では無い、と言う事を改めて解りましたね、イライザ様。」


そう言ってイライザとダンゼが最後にやんわりと物腰軽やかにわたしの後ろに来た。

振り返ってイライザに微笑んで無事を喜ぶ場面なんだけど、今、その余裕がない。

焦っていた、何故なら。

吟遊詩人の詩はマズい。


何度も言うけど、わたし達は決して世界を救うとか大それた旅をしてるワケじゃない。


物語の救世主がいきなり世界から消えたりしない様にわたし達の目的上、救世主とされちゃうと後味が悪い・・・悪すぎる、だから。

吟遊詩人が語り聞かせるような救世主然とした物語に登場させられても困ってしまう、とヘクトルも京ちゃんも言ってたんだよね。

それには、わたしだって同意した。


助けられる人を助けるのは構わないけど、解らないところで御輿に上げられて手の付けられない状態になっても、どれだけ盛り上って頼られて来られても・・・その物語のラストは、救世主が消えてしまった的な何とも言えないラストを迎えてしまう。


どうしても、わたし達は吟遊詩人の詩に表立って登場してはいけないんだ。


世界を救ってくれ、と頼まれても『だが、断る』としか言えない現状。


帰るための道筋を手立てを見つけてしまえば、ハイ!さよならー!って言う事も無くわたし達はこの世界を離れて元の世界に旅立つ。


そんな事を思いながらチラリと膝の上の京ちゃんの寝顔を窺ってみる。


スヤー。


京ちゃんはまだまだ夢の中。

寝息もわずかに聞こえるし。


もう一人のチートさんを見る。

大の字の姿で仰向けに空を、流れていく雲でも眺めてるみたいに目線は上を向いたまま、体はぴくりとも動かさないでそれでいて意識はあるみたいで瞬きをしているのはわたしの瞳にも映った。


「手柄の要らない英雄など聞いた事も無いが、・・・わかった。旅の魔法使いがやったって事にしよう、しかしな?・・・他の冒険者達の口まで俺はつぐませる事は出来んぞ。性悪エルフの強さを、化け物振りを奴等は知ってる。氷の壁が目の前で出来上がったのを見たものもあるだろう。」


「都合が悪いのでしたら、我々が手柄を戴いて、冒険者達には口止め料も払いましょう。」


カイオットがにやりと笑って、笑顔と対照的に後ろ向きな意見でわたしのお願いは結構難しい、と説明しているとそれを聞いていたダンゼが横やりを入れて来るんだけど。

全然それで良いって思える内容だった、わたしには。


幕間、長くなったので分割・・・。


涼しくなれば、更新ぺーすも早く出来ると思うんですけどねー。



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