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死屍累々──獰猛の目覚め 29



オークキングが。


首ももげてぶらんぶらんしてるオークキングが、動いてる・・・?


もうさすがに終わったと死んだよね、死んでたはずなんだよ・・・。


地面に倒れて幸せそうに寝てる京ちゃんを、オークキングも倒して終わったから。

連れて帰ろうと京ちゃんに向かって歩いてたら、オークキングが突然襲ってきた。

死んでるはずで、目玉だって全部消えてたのに。


・・・あれだけ強かったから、ドロップアイテムも期待はしてたのに。

もう、それどころじゃなくなっちゃった。


アスミさんに助けて貰ってなかったらぺしゃんこだったんだもん。

わたし、気付いてなかったし。


襲ってきたオークキングはスピードは遅くなってたけど、なんか嫌な気配がした。


それがわたしには、何なのかって解らないんだけど。

それはそうと今わたしはアスミさんに抱えられてる。

灰色の肌・・・ヘクトルみたいに魔人だったりする?

LVが上だから、ヘクトルより全然強いけど。

そのアスミさんのもの凄い一撃を喰らっても、オークキングは真っ二つにはなんなかった。

異常な固さは、京ちゃんの言ってた支援効果だったりするかも知れないけど、わたし達も京ちゃんも周辺のオークを無茶苦茶倒して、倒して、倒したのに。


今のオークキングを見上げる。

変わった所は遅くなったスピードと、全身を埋めるくらい生えた目。


あ。

視線がオークキングの脛辺りの目と合っちゃった!


すると、全身の目玉がギロリとわたしの方を向いた気がする、ううん・・・これはロックオンされたんだ、きっと。


気付くと今、わたしはアスミさんの肩に担がれて物凄いスピードでオークキングから離れていってる。


自分でもビックリだけど、時間を忘れて目玉に見いっていたみたい。


「うーみゅ、どーしよーな?これ、アンデッドやん!」


走りながらアスミさんが悔しそうにそう言って叫んだ。


「──!アスミさん、止まって!」


「ど、どしたんや?」


今しか無いと思ってアスミさんの首に、気付いて貰おうと手を回してから絞めつつ、耳元で叫ぶと足にブレーキでも着いてるんじゃないかって思ったんだけど、キィッ!て感じでホントにその場で止まった、かなり吃驚したぽくて腰の辺りが締めつけられてたのが一瞬ですぅと力が抜けてストンと地面に降りるわたし。


「京ちゃん、京ちゃん!ヒール。」


イライザやダンゼの居る方向じゃなくて、東の方にアスミさんが走ってくれたから京ちゃんの倒れてる近くまでいつの間にか来てたんだよね。

地面に降りたわたしは真っ先に京ちゃんに駆け寄る。


「あ、アスミさん。助けてくれたのホントにありがとっ!」


助けてくれたアスミさんに御礼を言うのも、忘れるくらい必死だったぽい。


起きてくれるわけじゃ無いけど、放置したらオークキングに踏み潰されて京ちゃん死んじゃうし、あちこちスリ傷だらけだったからもあってヒールを唱える。


いつも通り、癒しの光が京ちゃんの体を包んでシュウっとほんの一瞬で光が消えて傷が無くなった。


良かった・・・解ってたけど京ちゃん、寝てるだけだった。


「・・・ん。ん?何や、じぶんヒール使えたんか?あ。じぶん・・・、じゃ解らんか、えっと。」


話し掛けてきたアスミさんに肩越しに振り返ると、わたしがヒールを使ったのを見て瞳を点にしてた。

そんなに吃驚する事じゃないと思うんだけど?


ヒールってカルガインでも売ってるくらいだし、ちょっと高いぽいけどね。

でも、ほんのちょっとだし。


アスミさんはしどろもどろになりながら、顔を手で覆って言い直す。

ん?自分は解るよ自分でしょ?


「りんこちゃんや、りんこちゃん。・・・アレにヒールしてみてんか?ほれ、はよー。」


少しの間逡巡してたアスミさんは悩んでたかと思うと、答えが出たのかわたしを指差してからオークキングに更に指先を動かすと人指し指を伸ばしてびしっと突き出した。


「え、えー?回復してどーするの!」


んん?

言ってる意味が解らないよ、アスミさん!


「えーから、えーから。説明はめんどーしー。つこーてみたら解るよって。」


わたしは渋い顔でアスミさんを見ていたと思う。

すると使えば解るからって、右手をひらひら上下に振って早く唱えてと催促された。


「・・・ホントにぃ?」


回復してどうするの?


アスミさんには答えが出てるみたいだったけど。


したり顔でアスミさんが見詰めて居るのは、オークキングの全身に生えた無数の眼。


その自信どこから来るのか教えてよ、わたしに。


「やるんやっ!」


視線はオークキングを睨みつけたまま、カッと口を開いてわたしを叱りつける様に叫ぶアスミさん。


説明をちゃんとしてくださいぃ・・・。

心配なんだよぉ。


「もぅっ!──ヒール。・・・ん、・・・ん?んっ?」


「どや?苦しんどらへん?りんこちゃんのヒールはなかなか強力やもんなぁ〜くっくっくっ。」


吃驚だ、わたし。


わたしのヒールで、目の前の全身に目玉を生やしたオークキングがおぞましい声で絶叫をあげるくらい苦しみ出したから。


アスミさんに急かされるままヒールを唱えたら、いつも通り癒しの光がオークキングを包んでぽわっと光が消えるのは本当にいつも通りで。


違ったのは、光が消えた瞬間。

ダメージを与えられた時に再生した、あの感じでブスブスとオークキングは再生を始め、ブォッ、オォオォオォオォオォオォォォォォッ!と地響きが連られて起こるくらいの絶叫をあげて、苦しみ出したってコト。

二度見どころじゃないよ、三度見、四度見。

何度も狂った様に苦しむオークキングを凝視したんだ。


どうして?ヒールが強力で?

オークキングは苦しんでるの?


?マークがいっぱい頭を過ぎる。


「・・・その笑い方、悪役だよ・・・。」


疑問はいっぱいあったけど、アスミさんにツッコみをいれるだけにしておいた。

それより何よりわたしは誇らしかったんだ、皆を苦しめた凶悪なオークの元凶オークキングを。

わたしのヒールが打ちのめしたって事実が、わたしを褒められたみたいに嬉しくて堪らなかったんだもん。


「ええんや、うちが好きで好きで堪らんのはー、悪役も含めて特撮全般なんやもん、続けてヒールつこーて!」


アスミさんにわたしのツッコみは効果が無かったみたいであっさり、そう言って流される。


悪役が好きなら、負けたら悔しいんじゃないかなー。

特撮って悪役は必ず負ける存在だもん。

んー、わたし詳しくないから悪役が勝ってる話もあったり・・・しないか、そんなのっておかしいもんね。


全般好きって。

どっち応援しながら見てるの?どっちも?


「は、はーい。」


アスミさんってわたしの周りに居なかったタイプなんだもん、面食らっちゃう。


勢いに飲まれてオウム返しに返事をして、あちゃーって苦笑いしながらヒールを続けて連打。


ヒール!ヒール!ヒール!


何度も唱える内に、自然に笑い声をあげ始めるわたしの口。

あーっはっはっはっー!!


ヒールを唱える度に、狂った様に苦しみ出したオークキングを見てたらそれはホントに自然に。


完全にわたし、圧倒したっ!







「うちも、やるだけやってみるわぁ。まずは青天一頂!」


アスミさんは急変したわたしの態度にちょっと笑って、見詰めて来る。

すぐに視線を外して俯くと溜め息を一つ。

そこから再び顔を上げると、キリッと真剣な表情に変わってて。


何かスキルを使ったのか叫び、人指し指を天に突き立てる。

と、ビュンッと上に物凄い勢いで引っ張られる様に跳ね上がるアスミさん。


見上げる様に視線を上空に移すと、アスミさんは背景に広がる蒼い空にふわり浮いていた。


「──かーらーのー!極・伏龍突尾!」


・・・さっきの物凄い攻撃に比べれば地味な、バチバチと紫の閃光を光らせながら手に握った刀をブン──と。


振り回しただけに見えた。


刀は触ってもないのに、紫の閃光がぐるんとオークキングの腹の辺りに巻き付くとガクッと膝を着いてその場に動かなくなる。


あ。解っちゃったかも。

刀の剣先が伸びたってカンジかな。


そして、そう思いながら眺めていると、巻き付いていた紫の閃光がアスミさんに。

アスミさんが頭上に振り上げた刀の先に上空高く聳える様に戻っていく、その姿はまるで紫色のオーラで作られた一匹のドラゴン。


「りゃーぁぁぁあぁあっ!」


掛け声と気合い一閃。

アスミさんが刀を振り下ろすと、オークキングに向かって紫色のドラゴンが襲いかかり貫いた様に目に映った。


そして、オークキングの体は真っ二つ。

だがしかし、


「あーあ、これでもあかんの?」


悔しげに叫んで豪快に指を弾くアスミさん。

今目の前では真っ二つになったばかりのオークキングの体が、何事も無かったみたいに傷が治っていく。


・・・嘘。

ウゾウゾと切れ目通しが組織細胞レベルで縫合していたみたいに見えたんだけど。


ヒールはダメージを与えてるのに、アスミさんの何か凄そうなスキルはすぐに再生されちゃう。


つまり・・・。

ヒールしか、ダメージになってないの?


「りんこちゃん、どんどんヒールやー。このアンデッドもダメージ越えたら、さすがに死んでしまうやろ。」


ゆるゆると低速エレベーターで降りてくるみたいにアスミさんが地面に降りて来て、わたしに向かってそう言う。


アスミさんも手応えが無いみたいで、わたし主戦力?

そんなの初めて過ぎて急に緊張しちゃう。


肩が震え・・・た?

違、・・・全身震えてる。

期待されるって、こんなにプレッシャーくるんだ・・・。


京ちゃんが味わってた緊張感、なんだ?きっと。


ん?


んん?


アスミさん、何て言った?

オークキングだよね、わたし達戦ってるの。


アンデッド?


オークキングじゃないの?

俯いてからえ?え?って逡巡したけど、答え出なくてアスミさんにまた視線を戻したら、


「うちが抑えとる内に、だめ押しでヒールじゃんじゃん浴びせて欲しいんやわ。ええよなぁ?」


「う。・・・うん。」


信じられないけど、わたしのヒールでオークキングを殺すらしい。


アスミさんが見てるのはオークキングじゃなくてもっと別の何か・・・って事?

さすがにわたしだって気付いたよ、アンデッドがオークキングに取り憑いてダメージが当たらなくされてるんだよね?


そのアンデッドが、苦しんでるの?わたしのヒールで。


種明かしされてみると、フッと肩の荷が下りた気分だった。

オークキングの再生、あれもアンデッドの能力だったんだ、なんだ・・・それなら、怖くないよ。


えっと、アンデッドは怖くないってわけじゃないけど、再生ばっかしてくるオークキングって思うよりもただでっかいアンデッドって思った方がまだマシって事よ、解るでしょ?










29です。


忙しくて忙しくて、暑くて暑くて夏バテまたしそう。


しっかり食べてるから、大丈夫とは思ってるんですけど。

暑い日が続くと寝れない質で湿気も嫌いだし、ううん、大キライ!!


さ・・・て、もうさすがに決着したいのに・・・。





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