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死屍累々──獰猛の目覚め 28





うーん、・・・と。


困ったな・・・。


高笑いを始めてもう、結構な時間経ったんだけど助けに来たんなら、いい加減にそーゆーのいいから助けて欲しいかな。


とか思ってたらポーズが少ーし、ほんの少し変わった。


右手は伸ばして人差し指をずいって突き出し、半身と左腕を引いて左腕は曲げて握り込んでいる・・・とゆー。


いや、ね。

カッコイイ、ダサいはもういい、考えない。


こーゆーひとなんだって理解っちゃった、何と無く、きっと。


ポーズをビシッと決めて、自分に酔うのが好きなんだって。


それはそうと、いい加減降りてきてくれると嬉しいんだけど、ね。


溜め息を1つ吐いてまた彼女に視線を戻すと、


「とおーっ。」


叫びながらグルグルと何度も前転を空中で繰り返して地面につく手前から狙っていたぽいスタッと膝を付きながら着地。・・・とは行かずに、大の字で地面に激突。


「だ、・・・大丈夫?」


大丈夫なワケ無いんだけど、かなり高い所から飛び降りたのに。

着地失敗して痛そう。


「ん、んん?うちか?うちの事なら、へーきへーき。」


ムクッと起き上がりグッと、親指を突き立ててサムズアップする彼女の顔は泥まみれで。


いやいやいや、絶対ムリしてるよ、・・・彼女は。


それでも数度とんとんと肩を叩くと、


「困っとるんは、アレやろ?な?任せときぃ、ズバッとザクっとやっつけたるわぁ♪」


そう言って彼女は泥まみれのまま、にこりとわたしに向かって微笑んだ。

オークキングを指差して。


そして、シュ、・・・シュッと風切り音を残して、彼女が指差したオークキングに向かって翔ぶように駆け出す。


素早いのなんのっ、てもう姿が見えない。


でも、声は聞こえる。


「はっ!」


叫び声が聞こえて姿が確認できるともう、オークキングの振り上げたナタ?みたいな武器をジャンプして蹴ってるとこだった。

スゴッ!強いよ、彼女。


京ちゃんが避ける、躱すのが精一杯だったナタ?の攻撃を蹴って吹っ飛ばすなんて!


それでも、全身目玉だらけのオークキングはもう一度ナタを振り上げた。


そのナタが狙うのは勿論、空中で自由落下途中の・・・ん?


なんか、空中を蹴って飛んだよーに見えたんだけど、ううん、実際蹴って飛んでる。


空中に足場でもあるみたいに、彼女を目掛けて振り下ろされたナタ?をまるで風に舞う木の葉みたいにふわりと空中で躱した。


「アホウやなぁ〜、自分。これでもう首落とせるんやわ〜。」


ニヤッと笑った気がした。

すると彼女は振り下ろされた右腕を風に乗った様に駆け上がり、その手には細長い剣が握られてて、それが言葉通りオークキングの首筋をズブリ、シュパッと切り裂いて噴水にも似た、スプリンクラーの噴射と言えるかも知れない大量の血を噴霧の様に吹き出し、その場に降らした。


粒の大きな血が、字の通り真っ赤な血の雨の様に地面に降り注ぐ光景にちょっとゾッとしない。


気付けばオークキングの全身の目玉は、集中してギロリと上を向いていた。


首を切り裂いた彼女を恨んで睨むように。


「もう一押しなんかっ?」


叫ぶとシュパッと、もう一閃。


オークキングの首がぶらんぶらんと揺れている。


これでもう決まったよね?

オークキングの首の骨は彼女に完全に斬られて、皮だけで繋がってる感じ。


彼女に視線を戻すと、細長い剣をまるでペン廻しをするみたいにぐるんぐるん空中で振り回して更にトドメに掛かるみたい。

明らかに大技を狙ってるぽいもん。


「しつこい奴はぁ、貰いが少ないってぇ!決まっとる!──ウチ最大のーっ!」


細長い剣をピタリと止めると、両手に握り直して振り下ろした。

空中で前に転がる彼女をオレンジと黄色のグラデーションの光が包むと──


「──一撃や、貰とけッッッ!ダイナスト・ブレーク!」


巨大な丸いチェンソーの様に、回転するオレンジ色のグラデーションの閃光。

オークキング目掛けて体当たりしたそのチェンソーの閃光の刃が巨大な体を切り裂く。

と、ガリガリとかザリリとか音をあげながらオークキングの体は右の鎖骨辺りから右の胸辺りまでを両断していた。


うゎ、桁違いに強い人来ちゃった。

京ちゃんよりも強いと思うし、あのオークキングの体を崩すくらいに両断しちゃうだなんて。


うーん、ますますわたしの存在理由が・・・悲しくなっちゃうなー。


「しゃあっ、釣りはいらんで。」


オレンジ色の閃光が止むと同時に彼女が叫ぶその台詞は、やっぱりどこか古臭いヒーロー物か時代劇の何かに思える。






「・・・、ありがとう?えっと・・・。」


あー、んん?


嘘・・・だよね?


ドタバタしてる時は気が付かなかったけど、彼女──LV75。


わたしのLVは最後に見たのは33だったから、少し増えててもそれでも倍以上って。


きっと青い顔してる今、わたし。


75・・・京ちゃんよりもLV上だよ?


そんな時ふいにユーザー名が視界に入って、え?


この肥後クマって名前は確か。


「ウチはな、ヘクトルから助っ人にて言われてここまで来たんや、色々あってんよ。ま・・・でも結果オーライや。」


そうだよ、何かヘクトルがそんな事言ってたよね。


フレチャで。

物凄くチートな助っ人がカルガインに帰ったらたまたま居て、でも一人にするのは可哀想だからわたし達に合流させる・・・って感じだったっけ。


色々あったって言うけど・・・肥後クマさんみたいな強い人ならちょっと走るだけですぐ村に着いたんじゃないかなー?


さっきメチャメチャ速かったよ、走るの。


・・・眼が、泳いでる。ここまで来るのに迷ったんだ、きっと。


「ヘクトルから聞いとるで。なるべく隠しとこゆーんやでなあ?でも、ま。」


肥後クマさんは喋りながら空中をなぞる。


それから顔をあげて、可愛らしくにこりと笑った。


「ユーザー同士、仲良くしよな?」


肥後クマさんからフレンド申請があります。


》Yes No



肥後クマ》 フレチャならええよなあ?アスミや、ウチの名前


まぷち》 聞こえない程度に小声で喋れば…あ、わたし凛子です。


「そかそか、りんこゆーんやな。よろしゅうなー?りんこちゃん。」


勝手な子だなぁー、さっさっとフレチャを切って手を差し出してくる・・・ん?


んん?


肥後クマさん・・・女の娘?


「どしたん?ほら、握手しよや握手っ。人間関係はまずは握手からや〜、お父ちゃんはそう言ってたんよ。」


「あ、うん。」


フレチャの内容を思い出すと・・・女の子って感じじゃなかったけど、あー、名前だけでわたしが勝手に男の人なのかなーって思っちゃった部分も大きいかな。

女の人の方が心配事も少ないし、いいよね、うん。


ま、それはそれとしてヘクトル以来かも・・・肌の色が人間ぽく無いよ、アスミちゃん?さん?どっち?。


灰色の肌で、髪はプリン?上の方は茶色でセミロングの髪のほとんどは金髪。

で、ツインテ。

赤白の胸当てに、黒い七分丈のシャツ、下は・・・ジーンズのホットパンツに膝から下の白ニーソ、それ必要?


脛までの編み上げブーツに、太ももにはナイフケースと後は額にバンダナかなコレ、白い鉢巻き?に手には手首までの緑色の籠手。


手に握った武器は、細長い剣って思って見えてたけど日本刀!


それも身長よりも長いの!


「気になるん?特注品なんよ、燕返し欲しゅてなー。今はコレ無しにはありえんよーなってしもたわ。」


わたしがじぃっと刀を見詰めて・・・ガン見してたら、アスミさん?はにこりと笑って、刀をジャキッと鳴らして見せる。


刀?


わたしの知ってる刀と違、・・・あ、そーだ。


「愛刀、武者実篤。どぉやァー?この、紫の刀身。」


気づいた!色。

刀の刃が紫と更に濃い紫で出来てる、なにこの刀!


「実際の刀じゃぁこーはならへん、ゲームやこその刀なんよー。」


喋りながら刀もったままポーズをあーでもないこーでもないと忙しなく変えるアスミさん?を見てたら疲れがドッと出た。


京ちゃんを回収しなきゃだし、イライザやダンゼも気になるとこだし?


話をそろそろ切り上げて、京ちゃんのとこ行かないと。


「あ、・・・す、スゴいね、あ、は。あは、あははは・・・。」


いやあ、それにしてもやたら喋る子って感じ。


圧倒されちゃう。


「あ。嘘やん?」


急にギョッとした青い表情に変わったアスミさん?は、


「危ないでっ。」


そう言ってわたしの体を抱えて横っ飛びに押し退ける。


そこに今までわたしが立ってた場所に大きな鉄の塊が降ってきた。









28。


そろそろ終わると思ってたんですけど、終わりませんでしたー。


あのキャラも出したい、このキャラも登場させたい、だから。


早く、終わらせたいのに。


あああ。

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