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死屍累々──獰猛の目覚め 25


「解って?勝てない、じゃない!勝つんだ!それ以外に──」


ゲーテに向かって鼓舞するぽく必死に語りかけていたら、背後に物凄い殺気が突然生まれ、話を途中で中断して弧を描くように横っ飛び、その場の判断だったけどそれは正解で。


何故ならさっきわたしらの居た所を、キングの足が踏み抜いたからだ。

あのまま動かなければ確実にぺちゃんこで、全身の骨が折れるくらいで済めばいい方、可能性としては即死の方が高いんじゃない?


ゲーム時代でもこれくらい大きかったかと疑問になるんだけど、踏み抜かれるだけでHPを軽く赤ゲージまで持っていかれたのは確かに覚えてる。


次にゆっくりと足を引き上げたのを確認するとわたしは駆け出した、キングの片方の足に向かって。


うぉおおぉおおお!


「喋ってんの、こらぁ!大人しくしろっ、このっ、こぉのっーヤローがッ!」


通り過ぎてキングの背中を取る。

勢いそのままに反転して高くジャンプ!


落ちながらオークキングの、長い黄金の毛に覆われた背中に愛剣を振り下ろし、渾身の力を込めて振り抜いて斬り下ろす。


するとさすがにオークキングと言っても痛むのか、邪魔って思ったのか解らないけど巨体を浮き上がらせる。

ジャンプしたオークキングは捻りを加えて、コマの様に大回転。


わたしも耐えきれずに、愛剣を握ったまま宙に放り出された。


オークの癖に。

多彩なアクションを取って来るじゃない、ただ武器を振り下ろすだけでも厄介なのに。


宙に放り出されたわたしは氷の壁の上まで自由落下してから視界に、数匹のオークを引き受けて戦うイライザ、ダンゼだと思う両手に剣を握る狼人、誰だっけ?大きい棒状のなにかを振り回す羆、オレンジの背中の上から弓を撃つジピコス、フローレ、それに凛子を捉えて大きな声で叫んだ。


「りんこっ、皆にヒール!立て直せるっ、今からっ!」


すると、癒しの光がわたしの体を包み、一気にリラックス出来た気分になる。

更に、足元から何かみなぎるモノがヒュンと一瞬で全身を駆け巡る様な不思議な気分を味わう。

最初のが凛子のいつものヒールなら、一瞬の不思議な気分を味わう感覚はフローレの回復魔法・キュアフローだったんだろーな。


キュアは持続性の回復魔法でじわじわゆっくりとHPを回復してくれるかわりに、治癒力はヒールより弱い。

キュアよりひとつ上位のキュアフローは、持続性の効果を伸ばした上で耐久力を少し上げてくれるって追加効果もあったんだっけ。


実はマナだけなら何かに嵌め込んで持ってたりする、今の魔法を受けるまで忘れてたんだけどそれを思い出す切っ掛けになった。

って言ってもさ、嵌め込んだ何かが解らないから思い出しただけで今すぐ取り出せる訳では無いんだよね。


くるりと回転して氷の壁に着地すると、ちょっと面倒な事にゲーテが吼える声が耳に届いた。


「お、俺はっ!ピューリーだっ!死んで本望・・・ギリッ、つええ奴、へっ──」


声のした方に顔を向けると、今まさに駆け出す所だった。


ゲーテのバカ。

調子に乗っちゃって、死ぬなよ?ホント。

嫌だからね・・・何も言わなくなったお前を連れて帰るのとか、ジピコスもフローレも後に残された仲間の事も考えなさいよ!


「ぶっ、壊してやるよぉっ!」


ダサいカッコつけの台詞を吐いて、キングに跳び掛かるゲーテは獣化しててもそれでもやっぱり比べれば圧倒的に大きさが違って。


「利き腕が無くなろうがっ!」


自慢の素晴らしい切れ味の爪も、丸太の様なぶっとい腕のパワーでもキングの足元にも及ばない。


「足が無くなろうがっ!」


宙を蹴って方向を変えたゲーテが次に吠えて前転をしながら、しなやかな筋肉から繰り出した踵蹴りにもキングはノーリアクションで、氷の壁に吹っ飛んだわたし目掛けて動き出す。


ふぅー。深く一息吐いて、息を整える。

惨めね、ゲーテ。

お前程度じゃキングは蚊ほども気にならないんだってさ、だから・・・も、さっさと引っ込んでよぉ。


「俺が、ピューリーだからだっ!」


わたしの願った事も届いた風じゃなくて、続けざまに吼えたゲーテはキングの太いアキレス腱に噛み付く。


ゲーテが蚊でわたしをキングに置き換えたら、実に嫌な攻撃だと思える。

アキレス腱の痛みってちょっと堪れ切れないんだもん。


「だっさ、カッコつけた台詞がだっさーい。ふふふ、今ダサくても勝ったらそれが真実に、少しくらいカッコ良くなるかもよ?」


離れたゲーテにも届く様に、聞こえるように吼えた。

少しでも速く倒さないと、またこのバカは無茶をしそうだなって思いながら、そうすると自然に笑えてくる。

普段よりリラックス出来てて回復魔法も効いているんだって解る、気分が良いんだ。


「それに、終わったらおあずけになってたでしょ。オ・シ・オ・キ・しましょ。クスッ。」


忘れてた。

まだゲーテには貸しがあったっけ。


ま、・・・睡魔に勝てなかったら・・・更におあずけになっちゃうわね、いっか。


わたしが笑って楽しんで痛めつけれるようにゲーテを、可愛い?子分をちゃんと生かして帰らないとだよ。


ゲーテだって恐怖はあるんだと思う、凄く。

普段なら残った冒険者と一緒に、村なんか捨てて逃げ出してて当然だってそう思うもの、実際。

自然災害に立ち向かってる様なものなんじゃないかな、突然大量に湧くオークの群れなんてねー、そうでしょお前ら。


冒険者達にとって不運だったのはやってきた役人が、恐怖を押してでも男を見せたくなるような可愛いお姫様だったって事と、わたしってゆーイレギュラーが存在してたから、逃げるに逃げれなかったんだよね、そうだよね?


最初の襲撃で持ち堪えようと頑張って死んでったのは、イライザが居たせいだし・・・放り出して逃げ出せばあんなに一ヶ所で潰滅してないし、わたしが居ないなら無駄に立ち向かって死んだりしないよね、何の義理もない村なんだもん。


そう言うこと。

わたしが村に居た責任だし、イライザも悪いタイミングだったよね。

だからね、わたしが決める、オークキングをわたしが息の根を止めて皆の仇を取るから・・・何か、仇をとるとか仁侠ものみたい、自然災害から仇を取るとか、ちょっと考えると頭オカシイ。ふふっ。


考え過ぎて変なカンジ、わたしってそうじゃないんだ。

オークキングを倒す、ただそれだけ、そうでしょ。

で、帰って寝るzzz。


ゲーテをボコるのもキングをボコるのもおんなじだし、わたしに取って大事なコトそれは、満足できるかってそれだけの事・・・。






5㎡程の氷の壁の上からオークキングを見上げる。

大きい。

もし、大仏が立った姿ならこれよりは大きいとは思っちゃったけどね、人類に比べたら相当デカいよ。

汚く垂らしたヨダレの雫ひとつが、バケツの水をひっくり返したって感じなんだし。


ビビッてるつもりもないのに嫌だ、何震えてるの?左手、武者震いならいいんだけど。


狙いを静かに決めた。


凶悪そうな眼が気に入らない、その眼をくり貫いてやったらどんなに気分がいいかしら?


口の端が自然とつり上がったのが解った。


その少しの後、わたしは剣を構えて跳び上がる、オークキングの妖しく輝く蒼い瞳目掛けて。


氷の壁はわたしが踏ん張って蹴り付けた勢いでひび割れたのか、足元でガラガラと崩れる音がした。


グングンと近付くオークキングの眼に目掛け、飛び掛かりながら渾身の一撃を準備する。


「──レイジングスラッシュ!」


刹那の時を置いてズン!と衝撃が握った刀身から伝わる、ブジュっと鮮血も噴き出した。

わたしの青い愛剣はその刀身をオークキングの眼に突き立て、更に輝く。

朱く追い撃つように。


そのままわたしは、


「まだまだぁ!」


吼えて剣の柄に力を込める、グリュんと捏ね上げ更に突き刺す。


うぉおおおおおお!


もう、何も考えない。

ただ、オークキングの眼をくり貫いてやるって力、込めた。


「どう?もう片方の眼しか無いわよ。」


激痛に耐えれないオークキングが吼えてわたし目掛けて左手ではたきに来るけど、もう遅いんだ。


ニヤリ☆

わたしは不思議な高揚感に包まれて微笑んでいた、きっとそれは酷く敵を見下した様な笑いだったって思った。


獲物をこれから、たっぷりいたぶれる事を楽しむ時の様なそんな気持ちで。


左眼を突き刺す、わたし目掛け飛んでくる掌を素早く引き抜いた剣で斬る。

シュパァァアっと言う軽い斬撃音を耳で聞いて、オークキングの左の掌から鮮血が噴き出す頃には、もう次の狙いに向かって跳んでいた。


勿論、右眼。

両手で逆手に構えた青い刀身を、わたしの足元でギラリと蠢いた青い瞳に、


「それも、奪ってやる!──喰らえぇッ!パンツァースラストぉッ!」


持ちうる全ての力を込めて突き刺した。

プジュッと耳障りな音を上げてオークキングの瞳は色を失い、眼のあった場所からは閉ざされた隙間から血がこんこんと流れ出す。


すると再び断末魔のような、『ヴゥオオオォオオオオ!!!』と地を割りかねない大音響でオークキングの絶叫がその場に響いた。


眼を失った激痛に暴れまわるオークキングに振り払われ宙に投げ出されたわたしは、


「ちっ、・・・まだ動けるの、いいわ。──ダルキュニルッ!」


落ちながら魔法を発動させ頭の上で出来上がった氷の柱を、オークキングの額目掛けて撃ち出した。

次の魔法を発動させる為に、ディレイタイムがあるのを歯噛みする気持ちで。





30㎡の自由落下はさすがにヤバいんじゃない?

オークキングの太い脚が視界に近付くと、剣を突き立てる事が出来て地面に叩きつけられるのを避けることに成功。


時間を。

稼がないと。


皆がザコを減らしてくれる。

・・・──勝つんだ!


倒して、寝て、ゆっくりして、未来に、明日に繋げるっ!


──勝つんだ・・・ううん、勝つ!完全勝利しかないッ!!


皆で、帰る!


犠牲はもう、要らない!


今、片付けるから。

わたしがっ、殺すからぁっ!


キングをッッッ!!







25です。


おっきな怪獣の眼くり貫くとか、たぎりますよね〜そんな事無い?


オークキングもなかなか弱ってきたぽい、ザクザク勝利が近付いてる気がしましま。


やぁっと終わる、強かったー・・・キングの面倒な設定のせいで(血涙)



次はもう昼だし、明日かな〜そんな訳でそろそろプロットも後少し、もうすぐ終わると・・・いいなぁ。

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