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死屍累々──獰猛の目覚め 20

最初のオークロードを倒してからは、アンタリ山をデタラメに転戦しながらわたし達は更に、湧き水の様に現れるオークの群れをある時は凍り付けにして殲滅し、ある時は矢の雨を降らせて殲滅、撃破した。


でも、京ちゃんが一人でめちゃめちゃに斬った場合の方が多いかな。

いつ終わるのー、多いよ。


どれもオークの群れは同じ場所を目指して進んでるみたいなそんなカンジ・・・勿論、キングがその中心に居て集合を掛けてんのって思える。


だから、わたし達はキングには敢えて近寄らないように、ザコの数を間引くぽく廻りから群れを探して襲撃してるわけ。


なんてゆっかー、逆に襲われる時もある。

そんな時は必ず──オークロードが姿を現してね、コイツがちゃんと指揮を取っている群れはちょっと手強いなって。


こっちがデカい鳥に乗って現れたら、すぐにオークロードは一声吠えて槍隊を前に群れを入れ替えたりする。


シャダイアスを無力化しないと、って考えての行動だった?


でもさ、逆にオーク喰っちゃう様な鳥なんだよね、シャダイアスってさ。


槍を腹に食らっても猛然と白いのはオークに突撃するから、わたしかフローレが回復魔法を唱えて癒す、それだけでちょっと手強いオークの群れでもグラッと崩れちゃう。


群れの真ん中を白いのが切り裂けば、京ちゃんは手に握った長剣を切り払いながら飛び降りて、気付けばオーク達は何が起きたか解らないままシャダイアスの食餌に変わっちゃってるわけなんだから♪


こうなったらもう、後は悪足掻きをしてるだけなんだよね。


オークロードの指示に従って連係が取れてる様なのは、群れが無事で優位に立ってると思えてる間だけ、廻りでばたばた倒されると連係なんて何?なカンジでただ必死に自分らの驚異をどうにかしようとするか、真っ先に逃げ出すかだったから、さ。


逃すか!

バラバラに走り出したオーク達は狙い撃ちに、ちょーどいい矢の的だ。

逃げなくたってわたし達は京ちゃんの突っ込んだ所以外に狙いを定めて、オークを一匹でも多く減らす為に矢を放つ。


「よしっ。」


「こっちも仕留めたぞ。」


狙った獲物の後頭部を射抜いて思わず声が洩れる。

と、ゲーテが自慢気に足元で息の根を止められたオークを瞳で差しながら口に出せば、


「私が外す、そんな訳が無いっ!」


「へっ、役人さんも頑張れー。凛子ぉ、矢が足りなくなるがどうする?」


ダンゼも扱い慣れない大きな弓に苦労してるみたいで嘆くような声があがる、とジピコスが心の籠ってない頑張れを口にしたと思ったら、困ったみたいな口調で矢が無いって言った。


それは・・・マズくない?


「うっ、・・・じゃあ、使った矢でも拾う?」


メニュー画面を開いて確認・・・あ、本気でマズいよ。

矢束、村では手に入らなかったしなー、討伐隊が村から持ち出した矢もオーク襲撃でジャブジャブ使っただろーし。

困っちゃうなー、ホント。


「あー、そうすっかぁ。じゃあ、拾うか・・・。」


「わたしも拾うの手伝うよ。」


今オークを襲ったのはなんてこと無い獣道。

廻りを鬱蒼とした樹木が覆う、ライトボールの明かりだけが頼りな真夜中の闇。


少しの葉擦れの音でも、オークが来たっと緊張が走る中、仕留めたオークから矢を回収しなくちゃいけなくなる現状にちょっと目眩が襲ってくる気もする。


先に降りたジピコスを追って降りようと縄ばしごに手を掛けようとした所で、


「ジピコスー、手伝う。凛子だっけ・・・色目使うのは許さないよ?アタイ。」



そう言うフローレに肩を掴まれ、引き倒されそうになった。

瞳が本気。

・・・別にわたし、ジピコスが好きとかそんなの無いんだけどな。


化け物みたいな巨大な胸をふんっと張ってフローレが厳しい目付きで威嚇してくるけど、さ。


どーだっていい、本気で。

ジピコスは心の師匠だけど、それだけだもん。

恋愛沙汰に何故か巻き込むの、止めて欲しいよ。


心配しないでも、取ったりしないからー、睨むな?バケ乳!


化け物みたいな巨大な胸だから、纏めてバケ乳って事でいいよね、フローレがジピコスに本気なのは痛いくらい解るから良いんだそれは。


関係無いよね?わたし。


どうして、そーなる?


「あ・・・どーぞ、どーぞ。」


わたしの頬が引き吊る間にフローレは、さっさと降りてしまってたみたいでゲーテに笑われた。

誰に向かって言ってんだよって、それは当然フローレに言ったつもりなんだけどね?


視線をジピコスとフローレに移すと、オークに当たったのや外して地面に落ちた矢を何か喋りながら拾ってて。


読心術が使えたら、声は聞こえて来なくても唇の動きで内容が解るのになー、生憎わたし、くの一とかスパイじゃないからそんな技無いから内容は解んない。

ただ、仲良さげに二人はさ、笑ってた。


「オークロードだっ!」


その時までは。

二人で楽しげに矢を拾い集めてたジピコスが気付いて叫んだ、そして必死にフローレの手を引っ張って勢いよく走り出す。


その後ろには、数匹のオークと高そうな服を身に付けたオークロード。


「そう、・・・また出たの。ロードは任せて!他のオークを減らして!」


オークを片付けた後は、少し休憩を取っていた京ちゃんもジピコスの叫び声にピクン、とエルフ耳を震わせて跳ね起きるとそのまま駆け出しながら、わたし達に適格な指示を出すのも忘れない。


オークロードの後ろにもわさわさとオークが次次に藪の中から、樹木の後ろから姿を見せる。


ちょっと、ちょっと。

さっきの群れより多いよ、コイツら。


「いっくわよぉー!」


長剣を抜き放ち、地面を蹴る。

空中で前転をする様に、オークロードを斬り付けてから京ちゃんが吼えた。


着地しながら地面を滑る。

着地した場所目掛けてオークロードのひび割れて呪われてそうな大剣が振り下ろされる・・・そこにはもう誰も居ないのに。


ブンッと空振りだけでも大きな音が響いて、丁度その隙を狙った京ちゃんが飛び掛かった。


両手を揃えて渾身の力を込めた剣をオークロードの脇腹にザクッとかザシュッとか刺さる音が響くと、


「──レイジングスラァーッシュッ!」


刺さった剣から紅い閃光が走る。

更に狂気的な笑みを浮かべた京ちゃんはズブッと押し込んだ。


それでもまだ、オークロードは怯まず京ちゃんを狙って、ヒビ割れた大剣を横流しに振り払った。


一度トンボ返りに跳び退いて京ちゃんがそれを上手くギリギリで躱すけど、何処かを掠めたぽくガリリッて耳障りな引っ掛けた音が。


「ちっ、堅いか!でもっ、効いてる!もう一太刀っ!」


オークロードが苦し気に膝を付いたその刹那、ダッと走りこんだ京ちゃんは、超速でオークロードに剣道の胴取りぽく、横薙ぎでズバッて切り裂く一閃。


それで、堪えてたオークロードの生命活動は断たれたカンジだった。

遠目にもわかるくらい派手に血飛沫を撒き散らしてオークロードはゆっくりその場に崩れたから。


「おいー、またあっさり倒しちまったよなぁ。つえぇはずなんだぜ?オークロード。」


「さっすが京ちゃん。」


あっ。て思ったけど口に出しちゃったらもう遅い。


ついつい、ゲーテの感嘆の言葉につられて、思った事が声になってた。


「なあ、聞いていいか?姐さんの事だよな、みやこって?何だ、名前が別にあんのか?余所の国じゃ幾つも名前あんのか?」


ホラ、どーしよー?


やっぱりゲーテに変に思われちゃったじゃん。


な、何とか誤魔化さないと・・・脳内フル回転。


いい案浮かばないなぁ、黙ってたらゲーテがますます疑いの瞳で見てくるし、でも。


「あー、質問攻めは後にして、オーク減らす、減らす。」


いくらゲーテでも、ジピコスにだって簡単に真実は言えないもんね?


だから、下手な誤魔化しとは思うけど話題をずらさないと。


わたし達が別の世界から来て、この世界がゲームの世界だなんて・・・そうだよ、帰る時まで秘密。


ユーザー以外なら、喋らない限りはバレたりしないって京ちゃんもヘクトルも言ってた。


名前の事は、京ちゃんに何とかして貰おう、ごめん!京ちゃん。


「ち。姐さんみたいな事言うなよな、解ったよ。後でな?・・・姐さんに聞きゃ早いのか。」


「ブツブツ言うより、ほらオーク潰す!」


ゲーテが、わたしの事を京ちゃんみたいだって。


そんなわけないよ、あれだけ強くて無茶苦茶な人に似たりしないって。


たぶん・・・うん、きっとね。


わたしも、ゲーテもオークロードが倒れて逃げ出したオークを逃がしてはいけないから、確実に倒そうと弓を撃ち続けた。


誤魔化せたよね?


下ではジピコスやフローレも京ちゃんと一緒になって残党狩りをしてくれてたし、ダンゼやカイオットもそれなりに頑張った結果。


シャダイアス二匹の食餌がたっくさんできました♪



「とどめだぁッ!」


それから何度も、何度も群れを襲撃したり襲撃されたりを繰り返し、


「ロード何匹だっけ、5、6匹か。そろそろキングもステ下がってるかな?」


今、またオークロードを京ちゃんがさくさくっと倒したのを見てからポロっと溢した言葉。


正直、もうキングを倒して、さ。

寝たい。

今日は昼まで、寝たい。


堅いベッドはヤダな、オレンジの背中ならやらかいし、もうこのままここで寝たっていいよね?


でも、京ちゃんはわたしの心からの言葉に求めてない答えをくれたんだ。


「凛子、キングならきっと出る。襲撃イベントだもん、絶対。」


ああ、やっぱりかぁ。

ここで寝たいのに、寝たいのにぃ──!


瞳を妖しく爛々と輝かせて京ちゃんが不敵に微笑んでいた。


ゲーマーの性とか、業とかじゃ無いよ。

そんなの持ってない、わたし。


「もう、夜が明け──」


うっすら陽の光が、夜の闇に融け出して紫色の世界を作り出している。

もうすぐ、夜明けだよ。


何時間くらいオークを討伐し続けたんだろ?


軽く、6時間?ううん、もっとだ。

倒さなきゃいけないの解るよ?ほっといたらキング、減らした数よりもオークを湧かせて強くて手が出せなくなるかもってそうだよね、うん。


自己完結。


ヒールを唱えても睡魔さんは強敵だ、どっかいってくんないよ全然。


周りを見ても皆どこか疲れてる、当たり前か。

夜の間ずっと走り回ってオーク倒してたんだもん。


走り回ってたのは主にシャダイアス達なんだけど。


燃費悪いなりに、スゴい食欲でバラバラに散らばったオークだったものをムシャムシャしてたのは、シャダイアスがマイナーでしか無いよねって思わせてくれるに充分。


買った肉でシャダイアス達の餌を賄うのは・・・少しの儲けくらいじゃ出来ないと思うもん。


白んで行く空を見上げた京ちゃんが、長い黒髪を風に遊ばせている様にわたしの瞳に映って思わず、絵になるなぁーって思って見入ってたその時。


「出ました!キング、右手奥!」


そう叫んだのはダンゼだった。


ダンゼの指差す方向に顔を向け眼を凝らすと、すぐに森に変化が起こった。

何か大きな物が動く足音、その他にも大勢がいっせいに歩く足音がして木々がメキメキとへし折れ、明け始めた空からの陽の光に照らし出されて、黄金の毛に覆われた巨大なオークがその狂暴そうな蒼い瞳を煌めかせて、ヨダレを垂らしながらニタニタと笑っていた。







20ですか、そうですか。

シリーズ最長になってしまいました…どうしてこうなった!!


やっと出た。


ホントやっと…次の召喚編もこんなに長引くのかなーやだなー、きっとぜーぇんぶ!夏のせい!!


毎日目眩してるのは塩分足りないの?水分足りないの?


はぁー、昼あげれたらいいなぁ。



雨来ないなぁ、ゲリラ豪雨が日本全体を襲わないかなぁ、今日。



はぁー、

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