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死屍累々──獰猛の目覚め 19

ここでオークロードと遭遇するずっと前、キングと戦う為にオークの群れを少しずつ、少しずつ削って居た時に話を戻す。




私は悪魔を見ているようだ。

嬉々として、踊るようにオークの群れを駆逐するシェリルさんを観察しての感想。

私はダンゼ。

イライザ様の側役として赴任した先で色々あって、今は国難に成り兼ねない大群のオークと、それを率いるオークキングの討伐の為に我等は拳を振り上げ、敢然と闘いを挑んでいる。

最早、戦争だ・・・コレは。


イライザ様も条件付きなら何者にも劣らない最強生物なんですが、もし条件が無い状況で長期の戦闘となれば・・・間違いなく最強は目の前のシェリルさんだと私は言うでしょう。


オークは個体そのもの強くなくても群れ為すと、途端に凶暴で手が附けられない強敵に変わる。


それなのにシェリルさんは群れを魔法1つで分断し、時には等しく殲滅する極北のハイランドに行かないと味わえない、超寒波を作り出し何もかもを凍り付かせることだって可能だ。


魔法だけではまだ悪魔に足りない、本当に悪魔的なシェリルさんの本性が表に現れたのはやはり武器をその手にした時だろう。


数度のオークの群れを蹴散らすと、最初は湧きに湧いて騒いでいた冒険者達がその異常性に気付いてか騒ぐ口を閉じた。


肉塊で留まっていても悪いことは無いのに係わらず、シェリルさんは悪魔の様に見るものを魅了する微笑みを浮かべながら、ザクザクと、時には風切り音を発ててオークを肉片にまで切り刻んでいくのを何度も視界に捉えれば当然か。


最強で最凶なのだな。

この悪魔に喧嘩を吹っ掛けられた事を思うと、背筋につうッと冷たいものが滑り落ちていくようだ。


ラザに助けられて居なければ、・・・死んでは居ないにせよ、酷いトラウマになっていただろう事は想像に難くない。


「シェリルさん、弓借りていいですか。私も射つだけ射ちますよ?」


なんて事を言っても味方である以上、これほど頼もしい冒険者は都だろうと辺境だろうと見付ける事はまず無いだろうな。


私の声が耳に届いたのか、どこから徒もなく現れた金属製の弓。

何を貸してくれと言っても、何でも出してくれそうな気がしてしまう。

そんな、シェリルさんの態度。


「ほい、ダンゼ。あなたは剣なんじゃないの?」


「たしなみですよ、イライザ様を守るため現状なんでも出来るように勉強してる途中ですから。」


シェリルさんの声は凛として鈴が鳴る様な響く声である筈なのに、警戒心が無くなっているのか何処か腑抜けて力が入ってない。


重量感ある弓を渡しながら、私に問いかけるその言葉に躊躇せず答えて見せる。

今、私はイライザ様の、ラザの為に生きているのだから、そこに考える余地は要らないのだ。


私の答えに俯くと、しばらく逡巡したシェリルさんは何事か考えが纏まった様でブツブツと呟き、何度も頷いてから顔をあげた、その顔に張り付いていたのは悪い笑顔でニマぁ〜っと。


「こっちも?」


「適性が低いので思いきったマナは使えないですけどね、取って置きじゃないですけど一応は。」


三日月を思わせる嫌味な笑い顔に少し頬が引きつった気がした。


差し出したシェリルさんの掌、その人差し指が上を向くとぽうっと小さな小さな爪先程の焔が現れた、そして音もなくすぐに消える。


言いたい事は解った、魔法は得意か?と聞いてるのだと、そちらの方面で戦力になるか計っているのだと。


だから、正直に答える。

適性は無いわけではない、魔法は使えないわけでは無いのだ私は。


目の前の悪魔か、救世主か解らないシェリルさんと比べるのは恥ずかしいほどほんの少しくらいではあったが、適性が無く全く使えない者からしたら充分使える方だろう。


それでも私の答えに不満そうな顔でシェリルさんはぽつりと小さな声で呟いた。


「ちっ、戦力にはなんないのかー。エンチャントでもあれば違うのに、・・・無いものねだりってアホっぽい、やめよ。」


即座にバカにされた気がした。

いや、必要以上に私に期待してくれていたのだと知るとどこか嬉しくもあり、複雑だがな。


エンチャントとは、聞いた事がある。

魔力を武器に乗せて魔剣擬きを扱えると言う様な事だった気がしたな。


必要と思わなかったから勉強しなかったが、こんな事になるならエンチャントも習うべきだったか。


後悔しても今更だ。

ここにはエンチャントを教えてくれる師も居ないし、私がいきなりその技術を会得出来るわけでもない。


ラザを守りたい一心で・・・傍に寄りたい一心で技術を会得し、必要無いと思えばそれは無視して歩みを進めた。

そして、今があるんだから間違いではない、万能を目指したがそれには程遠い事を、嫌と思えるくらいシェリルさんを見ていると理解出来てしまう。

まるで、まるで胸に杭を数ミリずつ確実に叩き込まれるようでチリチリと胸が痛い。


実力の差か、これが。

言動や態度は悪魔、しかしその力や技は神の御技に思えてくる。

いや・・・待てよ?

あの、そうだ・・・青白い光は神のものでは無かったか。

そう思えば、シェリルさんを神の御使い──使徒とすれば・・・全て、納得出来てしまうではないかっ!


母為るメルヴィの暖かい光でこそ無い、しかし、あの何物の生命を停止させるような輝きは、神が使徒に齎した──神秘の輝きでは無かったか。私はメルヴィ様の輝きを見た事がある、第1神殿に参じた時だった。


巫女がメルヴィ様の奇跡をその身に宿して見せたその輝きが、透ける様な赤だったのは巫女の信心がまだまだだったのか、適性が私のように低かったのかも知れない。


あの赤く輝く光からは紛れもなく暖かい神の力を感じた。

ラザに放とうとしていたあの青白い光からは真逆に春になったばかりのサーゲートでまず感じない冷たい・・・寒気すらした。

神の性質ゆえか、それともシェリルさんが持ち得意とする属性ゆえか?やはり。


叶うなら私にもそんな神の一撃が、御技が欲しい。

全ては愛しいひとを守りたい為に。







ダンゼが笹茶屋の魔力に、技に悪魔的な何かを感じた話。


次第に悪魔よりも更に強大になっていって笹茶屋が神の力を宿した使徒だと勘違いしてゆく・・・そして、自らもその計り知れない力に憧れを抱いて、強くなりたい!!なんて思ったんでしょーね、ダンゼはイライザを守りたい為に強くなろうともがくんだから。


オークロードを倒し始めたからそろそろ獰猛の目覚め編も終わるかなー、長かったなー。


プロットだけではどこまで長引くか解りませんね(汗)


熱中症が周囲で流行ってます、皆さんもご注意をーーー!

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