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死屍累々──獰猛の目覚め 17

余裕たっぷりな京ちゃんは、ふふんと胸を張るんだけど解らないのかな?

自慢の胸も鎧の下だから見えて無いのになー、ドヤ顔で上から目を落として見てくるのもわたしには何してるの?ってカンジなんだよなー。


あの後、追い付いて来たイライザや逃げてきた冒険者が村まで帰るのか、それともここで一度体勢を立て直して迎え撃つのかを話し合っている所を二人きりで話したいと断って今、わたしと京ちゃんは脇に移動して喋る事にした。


わたし達には冒険者達に知られちゃうとマズイかも知れない事とかあるし、色々と。


性悪エルフって言う声はもうあんまり最近、聞こえては来ないけど。

そうかと京ちゃん、悪目立ちなとこは変わんないからなー、あちこち恨まれてる感あるし。


「グラクロのブレスあれば、一瞬で片付きそうだけどねー。戦争か・・・そうかも知れないわね、補充されっぱなしのキングは堅さがパないもの。でも・・・わたし、一度『迎撃』はキング倒したのよ?オークじゃないけど、ゴブリンだけど。」


ぬう、そうだよ。

ぐーちゃんの事にしたってさ、仲良くなったから『ハイこの子、ぐーちゃん。ドラゴンなんだよー凄くない?』ってイライザに言えると思う?

ハイ、思えません。


異世界でゲームとして、仮想世界のノルンに住んでました、色々と知ってます、だから強いです、ってそんなの当然ムリだ。


仮にわたしがイライザと立場が逆だったら、京ちゃんが『これは襲撃イベントで体験してるから任せて!』なんて言っても、まず襲撃イベントって何ぞや?となるもん。


それに『体験してるからキング一人で出来るかも、あ!援護と回復はよろしく』なんて言ってきたら、恐怖でネジ飛んじゃったかな?って思うかも知れないじゃん?

わたしならネガティブ思考が先に出るから、きっとそうなる。


でも、わたしはイライザじゃないじゃ無いですか。


京ちゃんの取って置きと言ってもいいのかなアレは・・・使えば忽ち睡魔と勝てないバトルが始まっちゃう例のアレ・エクセ=ザリオス。

もっと突き詰めるならオーバースキル。


ヘクトルが今、それの手前の固有スキルをゲットに頑張ってたりする一撃必殺の大博打。


倒せたら万歳なんだけど、倒せ無いのに使えば死が見えてる目隠しの綱渡りをしてる様なものなんだよね。

だから、簡単に使うべきじゃないって思った、でも・・・でも!

きっとキングを倒せるのは、現状の戦力ならどう考えても最後はオーバースキル頼みになっちゃう、悔しいけど。


「勝てるなら行く。でも無茶して、死んだらどうするの。」


勝つプランが京ちゃんは見えてるの?


オーバースキル頼みだけじゃ、厳しい。

あれは京ちゃんが戦力から外れる事を意味するもの、戦力から外れる所じゃなかった・・・御荷物になっちゃうんだ、半日も眠り姫してる京ちゃんを庇いながらその後を乗り越えなきゃいけなくなる。


そうなったら、必ずイライザやゲーテに無理が行くよね?

友人として、仲間として、更にゲーテは好きになっちゃってると思うんだ、京ちゃんの事。

口に出して行ってないけど、態度とか。


だから、簡単に獣化しちゃって動け無くなるか、死んじゃうかもだ。

京ちゃんがピンチになったらゲーテはなんだってしそうな気迫が伝わってくるんだよね、怖いとかは二の次に出来ちゃいそうなくらいに。


そこまでの覚悟はわたしに誰かの為にできるかな、ううん、恐怖を振り払うなんて無理だ、わたし。


京ちゃんの為にだって、わたしには難しいや。


葵ちゃん?・・・でも、死んじゃうのは怖いよ、いつか帰って続き読みたい漫画だってあるし、友達ともいっぱいお喋りを楽しみたいし、んん・・・恋だって、まだなのに・・・。


ネガティブ思考が止まんない、死んじゃう事をずっと考えて、考えて、考えてそれ以外の答えが出てこないや。


京ちゃんは見えてるの?

軍隊みたいに襲ってくるオークの大群にどうやって勝つのかって。


「死に戻りは無いしね、メサイア級のユーザー欲しいかも、どこにいるん、だか・・・」


「クドゥーナのギルマスだっけ。そんなに凄いの?」


メサイア。

ここには来てない愛那ことクドゥーナのギルマスで、愛那が今探してる人だ。


こっちに巻き込まれて現れてたのは、確かみたいなんだけど。


そう言えば京ちゃんの知り合いで、生産では頼りきってた相手とかじゃなかったっけ。


きっとそれは強い人なんだろーね、チートだ。

愛那の説明を思い出すと、生産を続けるのは失敗をどれだけ出しても、心が折れない人だけって言ってたから、精神力がキチガイ染みてるのじゃない?


生産でもカンスト・・・天井でやることが無くなるくらいノルンに没入してたユーザー。


仲間として迎え入れられたらそれは凄い戦力になるんだって思うけど、フレチャにレス付かないんだもん。

もう、日本に帰ってしまったのかもなんだって。


「言うなら──ゲームバカ、廃人。わたしよりずっと強いわよ?ずっとね。」


寂しそうに微笑う京ちゃんはそう言って前髪をかきあげてから、左右に頭を振る。

まるで嫌な妄想を否定するみたいに。


そうする京ちゃんの行動は解らないけど、予想以上に化け物だ、メサイアって人。

京ちゃんより強い俳人さんってどんなだ。


「俳人がどうして強いの?現文の授業に出てくる様な人でしょ。」


「えっ・・・あー、あ〜!ハァ・・・それはね──」


わたしが訊ねるとほんの一瞬、時が止まった。

京ちゃんがカチンコなコンクリか石みたいに固まった気がした。


すぐに気を取り直した京ちゃんはヤレヤレと言いたげに深〜いため息を1つ吐いてから解らないわたしにも解るように“ハイジン”さんの強さを教えてくれたんだ・・・親切丁寧に。


恥ずかしい・・・京ちゃんの態度も理解っちゃうくらいに、明後日の方に向かって間違ってたんだ、わたしってば!


ああ、ぁぁぁぁ。

わたし勘違いしてたみたい、俳人じゃなくて廃人。


人を辞めてるって意味あいな使い方をされるみたいなんだけど。


「わたしがスキルを片っ端から集めてた様にあの子、メサイアは──素材を集めてそっちをやり尽くす感じでノルンを楽しんでたのよ、もうノルンに住んでるみたいにね。レベル上げてスキル手に入れるわたしなんかより更に苦行よ?レアな素材なんて、なかなか出ないもの。例えば──」


オリハルコン。

京ちゃんが言うには、初期のオリハルコンの手に入る敵は唯一決められたボス泥だけみたいで、しかも一番出にくい。


それで価値は跳ね上がる一方、皆が列を作ってボス湧きを待ってるくらい、だったらしくて。


うえー、レア素材を手に入れる事が出来るのはparty単位に変更された後も、月に1つのpartyに落ちるかどうかとか、何その鬼畜仕様。


「だから、素材集めてる系な人達って皆自然とその時点の最強クラスなわけ。わたしだってうげーってなる、決められた時間しかないのにボス湧き待ちとか!ねぇ?でも、──」


運営のバグって裏技があったぽくて、死に戻り──ボス撃破後、泥を確認して部屋を出てわざとparty全員死んで町に戻り、またボス部屋に入ると・・・ボスが湧くんだって、この裏技でボスマラソン的な死の行軍をレア泥欲しさに皆してたんだとかで。

partyを解散したり、落ちる人が出て新しい人を入れた場合、死に戻りしてない人を加えると、ボスマラソンは失敗して・・・そのpartyは全員また死に戻りをしなくちゃいけなくなるとか、変な仕様だったみたいだから、やっぱりバグで運営が認めてない裏技だったんだろーねっ、て京ちゃん。


「話が明後日に向かってるから、その話はまたね。じゃあ、行こ?」


京ちゃんがそう言って振り向くと、いつの間に?


イライザと、ゲーテ、少し離れてダンゼがわたしの後ろに立っていた。


ゲーテは厳しい表情、でもやることをやろうと決心がついたのが伝わってくるような真っ直ぐな、真剣な瞳で、まるでゲーテじゃないみたい。


イライザも決心は同様みたいで表情で語ってる。

いつも微笑ってるイメージなんだけど、実際にズタボロでも微笑おうとしてたしね、イライザって。

引き締まった顔からは張り付いた、笑顔は消え去っていたんだ。


後ろで見守るダンゼだけは心配げな視線をイライザに向けてた、もう止まれないんだって・・・決心させられた瞬間だったんだ。







花火とか祭りとかそっち方面に忙しいかったり。

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