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死屍累々──獰猛の目覚め 16

坂を上がると周りに生い茂る木々の数は減って、自然のトンネルを抜ける。


サアアっと強い風が吹く中わたし達は圧倒的な魔力を目にする事になった。


「なんだってんだよ、こりゃあ。」


「凍り漬けのオークだらけだな、ここらは。姐さんが・・・」


ジピコスから驚嘆の声が自然に洩れると、続いてゲーテも顔が固まったみたいにトンネルを抜けて左の山の斜面を見上げて全く動かない。


視線の集中する先には斜面全体を、あるまま全てない交ぜに凍り付かせた氷壁。

勿論、物を言う事の出来なくなったオークの群れをカチコチに閉じ込めた、京ちゃんの範囲魔法の力で斜面全体が凍り付いていたんだ。


高さ10㎡の斜面だけが一面雪景色になってしまっていたら、それは皆驚きの声を上げて見いってしまう。


改めて京ちゃんのけた違いな魔力を見せ付けられて、呆然とするゲーテにジピコス。


二人の顔がどんどん面白い方向にひきつって変わってゆく。

それをゆっくり見ている訳にも行かないので、今度はわたしがジピコスの背中の襟首を引っ張って我に返らせた。


ジピコスの連れも目を大きく見開いて、こっちに聞こえるくらい唾を飲む、ゴクリと。


しばらく固まって動かなかったから、イライザとダンゼも追い付いて来ちゃった。

早く、いこ。

ジピコスが重いため息を吐くと、ゲーテも額を掻いてからやっとわたし達は歩き始めた。


「はああっ!」


更に少し歩き続けると緩い下り坂になっていて、おぞましい断末魔と京ちゃんの気迫の籠った声が下り坂のカーブしている向こうに聞こえた。


「あ、姐さん。」


居ても立ってもいられない様子でゲーテは三人の寝袋を引っ張ったまま、足を早めて京ちゃんの方へ。


わたしとジピコスが京ちゃんの所に追い付くと、もうゲーテと京ちゃんが大量のオークの肉塊をバックに喋っていた。


その光景を見たらさ。

口に出しては言えないけど、死んじゃった冒険者達にも悪いんだけど、京ちゃんが後3人居ればどうにかなりそうじゃない?


「どうしたの?上の指揮官はつ・・・」


「逃げるぞ、姐さん。キングだ!オークキングが出たんだよっ!」


京ちゃんはキョトンとゲーテを見詰めていて口を開いたら、感極まったゲーテが大粒の涙を垂らしてそれを腕で拭いながら空いている方の手で京ちゃんの肩へ置き、京ちゃんの声を遮って叫んだ。


すると、途中で口を挟まれた事にイラついたのかゲーテの襟を掴んで、


「ゲーテ、舐めた口聞くな?殺すわよ。それはま、いっかってゆーか!キング、やぁっと出てきたのね!!」

そう言うとゲーテの襟首を離してから嬉しそうに嫣然と微笑う京ちゃんがわたしの方へ視線を移してくる。

なんで・・・


「・・・え?」


思わず声が洩れる。


「京ちゃん?はああー?何ウキウキしちゃって。」


なんでそんなに嬉しそうなの?

これってまるで、ゲーテをぐちゃぐちゃにしてたあの時みたいなんだ。


ゲーテには悪いけどさ。

キングはけた違いだよ、何がそこまで京ちゃんをときめかせるの?


「ゲーマーの性よ、業よ。強・・・」


「姐さん!戦争だぜ!これは、もう俺らじゃどうにもなんねえ!」


ゲーマーの業って言うけど、それのせいで死んじゃったらどうするの?悔やんでも悔やみ切れないよ。


ゲーテは京ちゃんを止めたいのかな、また必死の表情で食って掛かる。


「バァーカ。」


そこまでされても見るものを魅惑する、婀娜っぽい微笑みを浮かべたまま京ちゃんはゲーテに一言呟いて奇襲する。


あれ、・・・痛いんだよね。

デコピン何回やられたか解んないもん、わたし。


見ればゲーテは鼻を押さえて、声にならない叫びをあげて堪える。


「イライザと、ゲーテに、ジピコス、凛子が居れば・・・うん。何とかなるわね。行こ。」


おーっと。

聞き間違いかなー、行こ?もしかしてもしかして、それってキングと戦うって言った?


それに、さ。


わたしも加わってたような・・・えーーー!


流石にそれは。

・・・怖いよ、あんなの勝てないもん、京ちゃんだって!


「は、はああああ?京ちゃん、無茶させないで、キングって大っきいんだよ!」


わたしは闇をバックに浮かぶ金色のオークを見たんだ。


あれって、ホントに今思い出したら余計にゾッとする。

おぞましい笑みと、汚ならしい顔は。


「今、やらなきゃ被害出るわよ。オークの数は減ってたでしょ?」


京ちゃんの説明によると、オークキングは──こう言った魔物の王は、配下の数で支援効果があがるとか何とか。


数を減らすだけ減らせば、キングは弱まり逆に増えれば増えるだけ強くなるんだって・・・、仮に一万いればそれだけ強く、堅くなってて倒せないけどそれが千まで減ればキングは力を失って・・・支援効果は減るんだとか。


一万、そんなの居るわけ無いって言えば、


「・・・カルガインの巨大トロル覚えてる?」


じぃっと京ちゃんが見詰めて来て。


「うん、えっと・・・」


何て言えばいいかな、照れ臭いかった?ううん、真剣な真っ直ぐな瞳に当てられて恥ずかしかったんだ、きっと。


しどろもどろな答えを返すと、


「そう、襲撃イベント。これは・・・ゲームなら全ユーザーで叩き潰せる、『獰猛の目覚め』か、『王は血を求める』か、『迎撃』ってイベントで。年に4、5回あってキングを倒せば終わるんだけど、種類に依っては一万の配下を持つキングも出てきたわよ?一番厄介なのは『王は血を求める』ね。これは──」


京ちゃんの口から出てくる言葉。


えっと、襲撃イベント確か。

・・・ボスを倒せば終わる、けど倒せないとずっと終わらないって、ヘクトル言わなかった?


意味に気付いて、京ちゃんの瞳を覗き込む。


視線が絡みついてきて、本気さが伝わった。


もう、止めれないね。

解っちゃったから、・・・キングは絶対討伐しないと。

優しいフィッド村の人達も危ない。


「うえ、一週間かけて戦っても終わらない事あるの。ジピコスが戦争っていうわけだ。」


キングの関わる襲撃イベントは大きく3つあるんだって。


まず、獰猛の目覚め。

キングになろうとオーク、ゴブリンが集まり襲撃を始めるとその中からキングが現れて、キングを倒すまで終わらない。


次に、王は血を求める。


イベント開始からキングは居て配下を使って、襲撃を繰返しNPCを拐うんだ。

厄介なのはキングが中々姿を現さないから、こっちから乗り込まなきゃ。って京ちゃんが言うけど、ザコオークだけなら全然怖くないし、京ちゃんに頼りきらないでもなんとかなっちゃう気がする。


最後に、迎撃。

開始から襲撃がされていて街や村が続けて落ちていき、大きい街を目指して侵攻してくるから、片っ端から叩く。

街を餌に回り込んでキングを先に倒してもクリア。

・・・オークは撤退を始めるんだって。


ますますそんなの行きたくないよ、でもカルガインみたいに襲撃される様だったら、村はもたない・・・カルガインにある街を囲う壁が村のは木の柵くらいなんだもん。

あれじゃ、少数ならなんとかなっても・・・今わたし達が相手してるくらいに大群だと、簡単に壊されちゃうよ・・・











襲撃イベント始動。

ってワケで。



次はそろそろ戦うかな?

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