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死屍累々──獰猛の目覚め 12

うちだって一応、月イチくらいはディナー食べに行く様な家だったんだけどね、正真正銘の温室育ちって訳で無いからねー、改めてイライザがお姫様ってゆー事、痛感した瞬間だった。


「ねえ、イライザ?肉に掛けるタレとか、あったりしない?」


わたしが勝手にイライザに敗北するのは、それくらいにして。


首都なら、カルガインやフィッド村にも無いものがあったりしやしないかって探りを入れた。

だがしかし、イライザが捻り出す訳でも無くサラッとわたしだけに解る極大の爆弾わ次の一言で口にする。

あ。わたしがじぃっと見てる間もイライザはゆっくり味わって飲み込んだ、・・・その後だからね?

うん、ちょっとイラってした。


「うーん、タレ?そう言えば、少し前。都で何に付けても美味しいそーす、が売られていたって聞いたよーな。」


イライザのその言葉に思わず口から零れる名前。



「・・・メサイア、・・・」


ぼそっと出てしまったのに気付いたのは、イライザのわたしを見詰める視線に別の意味で熱が籠ったから。

メサイア・・・わたしのフレンドでクドゥーナのギルマス。

そして、こちらに来ていて姿を消したユーザーでもある。

フレチャも出来ない、だから恐らく聖域か神域に居る、それか・・・あなたは日本に帰れたの?メサイア。


イライザは、野菜炒めを食べる手を止めフォークを置いた。

そして、わたしをじぃっと見詰め、


「シェリルちゃん、どこでその名前を?」


そう言ってぐぅっと顔を近づける。


わたしはテーブルの端に座り、イライザはわたしの左に右には凛子が座り左奥にゲーテ、右にはジピコスだ。


わたしも勿論、凛子だって誰かにわたし達は異界からやってきた異邦人です、なんて・・・言ってない。


太府が上からの命令でその名前を徹底的に隠したって話。」


言う必要もないし、それが問題の種になるってヘクトルとも話し合って答えが出てる。


なるべく、その事は黙ってようって。

だから、異界からやってきたって事を知ってるのはグラクロくらい・・・かな、あれを、・・・ドラゴンを人だって言うんならだけど、ね。


話し合ったのはエウレローラと会ったニクスで、だからクドゥーナとは話して無い話題。


今。わたし、イライザに話しそうになる。

なんとか踏み止まったけど。


「え・・・?もしかして有名?」


わざと違う話題に変えた。

きっと苦笑いを浮かべてるか、上手く笑えてないか・・・動揺。


日本から来た、って事を隠しつつメサイアの情報を貰いたい。


「ううん、真逆。太府が上からの命令でその名前を徹底的に隠したって話。」


半目に瞳を閉じた上で、声を細めたイライザ。


それに付き合う様にわたしも顔を寄せ、頬に手を添えて。


「隠す?何で・・・」


視線に気づいて横目に凛子を窺うと既にイライザをガン見で興味津々。


仕方無いとイライザに倣って声を細めた。

ゲーテ達、冒険者には聞かせたく無いと言う事、つまり秘匿すべき案件だからだ、メサイア・・・あの娘をサゲる訳じゃないけど、やらかしたな?


とは言え徹底して隠したつもりだった、イライザだから持っていた情報。


わたしはそれが欲しい。

あの娘に逢えば、食生活が改善されると思うし、主にタレとか、ソースとか、ドレッシングとか、それに・・・下手をするとここのオークなんか、一人で充分だったりするかもなのよね、メサイアなら。


「ダンゼと北に、南に出張していた頃にメサイア?さん、が都に居たっぽくて。真実は解りません、・・・力になれなくて・・・ゴメン。」


いやぁ、検討違いだったわね。


わたしが余りにも真剣にがっついちゃったから、イライザも詳しい事までは解らない、と涙を双眸一杯溜め込んでもうすぐ溢れそう・・・想像するに申し訳なさから泣いちゃいそうになってるのかな、今。


歳は同じくらいだと思うんだけど、だからか愛しいって思えちゃうな、何か。


意図してやってたらあざとい所じゃない真っ黒、腹黒。


「ゴクッ!謝らなくていいのよ?メサイア、・・・あの子ならタレでもソースでも作れちゃうわね。」


いかんいかん、生唾出ちゃった。


抱き着いてベロチューしたいとか、お持ち帰りしたいとかそんなの思ってないよ・・・ホント、思ってないから。


無理矢理瞳を逸らして、イライザの澄んだ瞳を見ない様に頑張ってたら、声が裏返る、何やってんだわたし。


「そーすを使って作った料理を食べたけど、美味しかったよー!味がしっかりしてた、・・・王宮料理よりずっと美味しい。でもそーすは回収されなかった。メサイアが危険と思われたのはね・・・」


良かったな、メサイア。

あなたのそーす・・・お姫様が絶賛してるわよ、瞳をキラキラ輝かせて。

一体何作ったのよ?叙々◯のタレ?それとも、何に入れても一匙で本格派中華になっちゃうあの◯ェイ◯゜ー?


どっちでも良い、そのどっちも今凄く欲しい、わたしだって。


「うぅーん、・・・あの子らしいってゆーか、平常運転なのよね。ものの価値解らないで、バラまくって。」


だがしかし、イライザから聞き出したい情報は◯々苑じゃない、況してや◯覇じゃない。

メサイアの情報が欲しいんだ。


話題を変えてみる。

すると、


「野党が、不相応な国宝・・・ううん、『神話にしか出てこない様な武器で武装していたかも知れない。』って事だってダンゼから説明されました。」


どうやらダンゼがイライザに話した事らしいけど、想像の更に上をいくメサイア、あの娘・・・何やってんのよ。


神話にしか出てこないような武器って、素材オリハルコンのまず街じゃ手に入らない系?


国宝級でもミスリルか、良くてセライア銀でしょ?それを・・・オリハル装備をばら蒔いた・・・らしい。

聞かなくても、普段のあの娘の行動を知ってるなら笑っちゃうくらい解る。


「城壁を一振りで壊されたら、それは危ないって思われるわね。」


冗談抜きで、国の一大事だよねー、そんなの。


さすが生産廃人、カンストユーザー。


神話にしか出てこないような武器なら一振りで、城だって山だって切っちゃうわ、ゲームなら城は切れないけど・・・シナリオの中で山を切った剣やら、岩をバターみたく切った斧とかあったわね。


メサイアがその領域に達して居たら、それは紛れもない驚異に映ったでしょうね、都の人達の瞳に。


「でしょ。出来たら一つ欲しいかなって・・・あはは、何でもない。メサイアの作った武器はそれで国預かりになったの。」


イライザも唯強さを求めて、高みを目指すそんなお姫様だ、オリハル装備を欲しがったって不思議じゃないんだけど・・・コントロール効かなくなるんでしょ?


そんな状態で山切ったり、岩切ったりする剣持ったらイライザは唯の破壊神。


止めといたほがいーよ。


「わたしも安く作って貰ったりしたけど、神話級って・・・」


ちょっと、口を滑らせちゃった。

わたしの剣はメサイア作だよ、オリハルコンはまだ加工するレベルじゃなくてセライア銀なんだけど、熟練度がね・・・。


イライザの瞳がキラリと輝く。


「10人居れば都が陥ちる、そうも太府から聞かされたよ。・・・シェリルちゃん、お知り合いですか?」


いや、悪いけどその期待には添えないんだ、ごめん。

10人で都が陥ちるって見立てられるくらい、メサイアの武器はヤバいと思われてんだ、それは回収もされるし全力で隠されますわ。


イライザは期待いっぱいに、にこにー笑う天使のスマイル。

でも、全力でそれにはスルー。


「そう、それじゃ城壁を二倍にしないとね。路上で売ってたのは一部よ、あの子勘違いしてたなら武器屋か道具屋に大量に売ってるはず。」


余分に出来上がった、失敗作が大量に出るものだってメサイアもクドゥーナも言ってたもんね、生産は。


失敗作は道具屋とか、武器屋に捨てる様に売るのが基本、みたく言ってた気がする。


失敗作って言ってもオリハルコンか、セライア銀か、メテュス鋼だったりすんじゃないの?


いや、ゲーテ達の話聞いてたらミスリル装備でも手が出ないとか、そんな所にメサイアの触れちゃいけない失敗作が持ち込まれたら・・・。


「売られた道具屋などからも回収はされてますよ、ただ・・・」


キラキラしてた顔が曇る、イライザ。

それを見てわたしも顔を覆う。

メサイアの失敗作はすでにこの国にあってはいけないレベルで驚異。

それが解るから、尚更。


「道具屋が他に売っちゃってるんでしょ?あの子の納得いかないレベルの品でも、充分トンデモ武器なんだろうし。」


在庫を死蔵するくらいなら捨て値で売ってしまう。

ゲームならそれが齎す問題は皆無。


でも、異世界に生産廃人がそれを持ち込む問題なら無限大に膨らんじゃう、ミスリル装備でも国宝級で簡単には手に入らない所へ、急激な武器のインフレが起こればどうなるか?


ミスリルでも鉄が切れる、ミスリルの上位互換な立ち位置のセライアなら難なく鋼の門が切れる。


それが意味する所は、この国がひっくり返るて事、まるでちゃぶ台返しみたいにね。


「うん、持ち込まれた道具屋が売っちゃってて回収出来なかったものが幾つかあるみたい。使ってる素材から凄いの、ミスリルも勿論、メテュス鋼やセライア、オリハルコンまで。道具屋は運悪くミスリル以上の素材を見たこと無くて、それで買取りの3割乗せ位で売っちゃったんだって。わたくし、ミスリルの剣をやっと手に入れたのに。」


イライザのその言葉を聞いて、当たらなくても構わない予感が的中した。


そっか、イライザでもミスリルをやっとと言う反応、ニクスでやったみたいに簡単には出せないな、オリハルコンは。


「わたしの・・・この剣はセライア銀、のはず。」


でも、これは唯の種明かし。

青い長剣を取り出す、イライザに見せる為に。


「えっ?セライアですか?」


すると、唇をギュッッと真一文字にきつく結んで、キラキラ輝く金色の双眸。


「元はメサイア作よ?色々変わっちゃったけど。」


申し訳ない。

魔改造されてるからセライア製、メサイア作とは言い切れないとこでわある。


ゲーテとジピコスは冒険者仲間のとこにでも行ったのかな、既に空の木皿を残して姿は気付くとそこには無い。


「メサイアの作った剣・・・これが。」


わたしの手の上から青い長剣を、自らの手で取るとイライザはわたしを見詰めてきた、熱の籠った眼差しで。


黙って頷くと、立ち上がり試す様に嬉々として長剣を振るイライザは。


小さな子供が欲しくて、欲しくて堪らなくてそれでも手に入らなくて諦めていた玩具が手に入ったみたいに燥ぐ。


その様子に吹き出しを入れるなら・・・きゃほーい!とか、うおぉおおおぉおおおおおぉ!とか?


イライザなら、後者かな?


可哀想になってきたから、セライア10くらいあげようかなー?精錬出来る鍛治居ないんだろうし、ダメだよね。







いつになったらタイトル通りの話に繋がるのか、はい。


まだまだです、ではまたー。


余談ですが、グロリアーナの騎士団もまだミスリル配備されてません、それくらいの情勢。


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