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氷の川の異変


いざ!氷の川へ・・・って近くのダンジョンまで転移アイテムでひとっ飛びだったので何の苦労も無かった。きっと苦しい冒険の旅が、なんて思ってた時もあったんだよ。ダンジョンから氷の川まで歩く間に襲ってきたモンスターをサクサクと2人が片付けるのを見るまでは。襲ってくるモンスターのLVが弱いね、2人からするとざっと武器を振るえば終わってしまうくらいには。泥漁りはしたけどろくなもんじゃなかったことを付け加えておこう。


しばらく歩くと干上がって乾いた川の岸辺に出る。ここが氷の川への入り口になっていて上流に進めばシェリルさんの目的のヒュドラや氷の川を凍り付かせている原因もあるはず。岸にそって上流に進めると特に待ち合わせをしてた訳でもないのに何故かレットが。やあ、と挨拶をしている横でさっくりモンスターを倒していたりするのを見た限り、この人も規格外なのかも。数太刀入れるだけで大きな獣は動かなくなった。


「早かったな、俺も今着いたとこだ。」


レットは刃に付いたモンスターの血を飛ばしながらそう言って歩いてくる。


氷の川はそう呼ばれてるだけで別に年中氷ってるわけではないみたい。ディアドさんに教わったんだけど冬なら凍り付いて流れ無いのは判る、冬も過ぎたのに水が流れ無いから下流に水が枯渇したんだって。調べに行った冒険者が持ち帰った情報によってやっと氷トカゲの異常発生と解ったと。それで10日前に討伐依頼を出してブルボンでは討伐隊が用意されているとゆうね。その調べに行って帰ってきた冒険者がレットなんだって。レットの前にも沢山冒険者を送り出したけど有力な情報はおろか、無事に帰ってきた人は居なかった状況で原因もわからずブルボンにも断られ続けて、今に至るということなんだ。


それにしても寒い、寒すぎる。転移してきたダンジョン[マトーヤ洞窟]の辺りはここと比べたら別世界。これが氷トカゲの仕業なのね、町の人の為にも早く終わらせて帰りたい。そんな風に考えてる間にヘクトルとシェリルさんはレットと何やら話してるみたいだった。嘘だとか覚えてないの?とか知らないとか、前を歩く3人のそういった声が耳に届いてくる。


「一緒にparty組んだぞ?」「ごめんな、知らんぞ。」「レットをグリゴラスから助けた事もあったんだけど?」「すまないが、人違いじゃないか?お前らとは昨日の酒場で会ったのが始めてだ。グリゴラスもまだ見ぬモンスターだな。」


「「ええー!」」


2人から心底吃驚した声が上がった。どうも2人はレットの事をよく知っているみたいなのにレットは2人を知らないみたい。確かにおかしな話だよね。ヘクトルもシェリルさんもあんなに親しそうに接しているのに、レットはどこか引いている。


「あ、着いたぞ。前に氷トカゲを見た辺りだ。おかしいな・・・前より雪の量が増えた。」


ヘクトルが地図を確認する。ここに間違い無いみたいだけど、レットは少し焦った様に辺りの雪を調べ始めた。その時だ。


ワラワラと大きな獣が周辺の木々の向こうや乾いた川の岸辺から姿を見せる。おまけに、グギギギギギギと奇妙な音を立てる白い鱗の塊が現れる。


「氷トカゲだ。気を付けとけよ、凍気を吐く。」


レットは叫んで剣を抜く。が、ヘクトルはさも詰まらなさそうに欠伸をひとつつくと、


だあああらっしゃあああ

!!!


気合い一閃、わたしたちの右に見える群れを虐殺にかかる。そう、虐殺だ。モンスターが動く先に剣閃が飛んで避けるとか交わすとかそういった動作が間に合っていない。然程かからずに肉塊の山が出来上がる。


「ボッとしてないで経験稼げよー。」


そんな暇ないじゃんか。ヘクトルはさぼんなと、言うけど左の群れにもレットが飛び込んで然程差も無く決着が付く。氷トカゲはとゆうとシェリルさんの作り出した特大の氷の槍に貫かれて1撃で絶命したくらいだ。それを見てレットがヒュゥッ!と口笛を吹き歓喜する。


「まさか氷トカゲを1撃とはな。嘘でもお前らと知り合いだと良かった。」

「ダルキュニルよ、サイズは大きめだけど。凍気を吐く前に仕止めれば?簡単よね。」


シェリルさんがふふんと胸を張る。だけど兜以外はフル装備だから胸の辺りがちょっと上を向く程度で周りには伝わりづらい。その後もちろんヘクトルに言われて泥漁りをする羽目に。その後も進めば進む程当然モンスターの群れを虐殺しつつ、原因を調査するがよく判らないままだった。その結果泥漁りは捗るわけで、


「また魔石だけ?どうなってんのここの敵は。」


出てくるのは魔石という青い石ばかりとは言っても相当な数を手に入れていた。それを見てシェリルさんには何か思う所があるみたいで歩きながらずっとブツブツと考え込んでいるようだった。そして、拾った魔石を見せるように言ってあらゆる方向から覗くと軽くため息を吐いて、


「全部、ブツブツ、おかしい!ブツブツ。」


真剣な表情で考え込む。しばらくして、えいや!気合いを込めて雪から顔を出していた岩へ叩きつけた。


「ふふふ、やっぱり。ここの魔石は全て使用済みよ。叩きつけただけで割れるなんて相当、力を使った後の証拠だし?」


つまり?


「使用済みか・・・召喚かテイマーの可能性があるな。」


ヘクトルも勝ち誇って自慢げなシェリルさんの意見に同意する。レットは歩み寄って割れた魔石のカケラを調べているみたい。少しの間ブツブツ呟くとレットも同意すると力無く口にした。つまり?


「信じがたいことだが、ここに表れているモンスターは人の悪意で操られている。仲間や町の人を手に架けた奴が居る。」


レットはぎゅううっと音が聞こえるぐらい防寒グローブを握り込む。ええー、酷い事する奴がいるんだな、許せん。具体的にそいつをどうこうできないけど一発殴ってやりたいと思う。


「あのさあ、・・・クエストで来てた時と状況違うからこの先何が起こるか解らなくなってたり、イロイロおかしい。」


唐突に横に立ったシェリルさんはひそひそと口にする。ヒュドラ倒したいんでしょ?と返すと頷くものの、使用済み魔石かよ!になるくらいならクエストを降りたいらしい。確かにレアアイテムが欲しくて来てる2人はヒュドラ倒した後にがっかりするのはヤかもしんない。だけど、それは困る。


「ここまで来ておいてそ・・・」

「来やがった!大きいぞ。」


それはないじゃんかと言おうとしたらレットと声が被る。見ると凍り付いて流れなくなった川の向こうから青い首の竜が幾つも現れた。ヒュドラ?いつの間にかこんなに近づいてたんだ。


だああああああっっっ!!!

気合いを込めて青い竜の1つを絶命させるヘクトル。すぐに大きく舌打ちをしてその場を飛び退く。その間を縫うようにもう1つの竜が、更に更にヘクトルに襲いかかる。右に左に時に上手くステップを踏んで、時に大きく飛びずさって避ける。交わす。


「しつこい!」加勢したレットもザクッと切り下ろしその場を飛び退く。そして時間を食えば喰うほどディアドの忠告通りにもぞもぞ再生する竜の首。このままだとキリがない。ヘクトルがプロボーグを掛けてくれるので心配せずにスリングで竜の目を狙って弾を飛ばす。シェリルさんは何やら待機時間のある魔法かスキルを使うみたいで腕組みして傍観している。


「やるつもり無いんだけど・・・」シェリルさんは軽く息を吐いて整えると、

「行きます!エクセ=ザリオス!!」


全身に青白いオーラが表れそして爆ぜて、再び握った刀身に絡み付く。それを二度ほど繰返しキラキラと輝く刀身はその場の冷気を凍気まで引き上げて斬撃となってヒュドラを纏めて切り裂く。続いて飛び込んだシェリルさんはヒュドラの胴目掛け、死ね死ね死ね!を連呼して滅多斬りに切りまくる。衝き、払い、撫で斬りにする。そして最後に、死ね!と斬り上げてヒュドラは再生するのを停止してトロルの時のように凍り付いて、砕けた?ように見えた。


「消えた?」シェリルさんは苦々しくヒュドラの消えた後を見つめて、やはり疲れ切ったみたいで両膝から倒れ込む。掛けよってありったけのヒールを唱えると


「疲れただけだからヒール意味ないーでもありがとー。」


ふああ、と可愛らしく欠伸をついてトロルの時と同じ様に気を失ったのか寝付いたのか解らないタイミングですやすやと寝息を立て始める。エクセザリオスを使ったから当然なんだけど、ホント寝付くの早いな。それに弊害ではないけど、あの時と同じ様に周囲は一気に冷やされてダイヤモンドの様な光の粒が舞い散っていた。




ヘクトルとレットがヒュドラの居た辺りを調べている。大きか舌打ちが聞こえてきたヘクトルに違いない。つまり。


「やっぱり魔石が落ちてたよ。今までのと同じさ。」


レットからはギリギリと歯噛みする音がした。開いた掌の上には見飽きた魔石がちょこんと乗っている。


「召喚はマナでは無いの?」


そう聞いたら肩を竦めるレットとヘクトル。


「召喚には魔石を使うのが一般的だ。」

「テイマーも魔石を埋め込んで魔獣を操るしな。」


2人は顔を見合わせた後そう言って魔石に視線を移す。まあ、なんだ。案外近くに召喚した人間が居たりして。 なーあんてそんなワケないかあ。あははは。




その頃、凍り付いた滝の上に佇み4人の様子を窺う影が1つ。その人物の名はデュノワと言った。


「余計な真似を。魔石も安くはないのだぞ?」


言葉からもわかる通り彼は召喚使いである。目的があって滝を凍り付かせ手飼いの魔獣をこの地に放った張本人であるが・・・彼自身、ここにいつまでも居ては身が危うくなった事を理解していた。フロストビーストや氷トカゲを大量に失った上、今目の前でヒュドラまで失った。残るトカゲやビーストも直狩り尽くされる事だろう。


「手練れが居るなど聞いてないぞ?ブツブツ。これまでの働きの分にブツブツ・・・割りに遇わん。金をブツブツ。」


静かに怒気を孕んでデュノワは振り返る事無く滝の更に上流に姿を消す。その方向には教皇都ブルボンに続く道が続いていた。






ラストちょっとだけ。一人称じゃ無くなってます

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