【二次創作企画】自殺に至る思考
インジュン様の二次創作企画に参加させて頂きました。
【自殺に至る思考】
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空気を、ひゅうっ、と切り裂く音が、耳元で鳴り響く。
僕は、これからこのまま落ちて、堕ちてしまうけれど。
切り裂かれる風もまた、このまま堕ちていくに違いない。
「「さようなら」…なんて、酷く僕には似つかわしくない言葉かもしれないなあ…」
堕ちていく一瞬、口を開いてそんな言葉を呟いたけれど。
肺に、許容量なんて軽く超えてしまうほどの酸素が入り込んできて、上手に言葉を紡ぐ事が出来なくなる。
どうして、僕は生きているんだろう。
どうして、まだ生き延びているんだろう。
どうして、死んではいけないんだろう。
どうして、まだ生きているんだろう。
ぐるぐる。同じ事ばかり考えて、目まぐるしく思考は廻る。
―人生すべてに意味がある、とか。
生きていれば良い事がある、とか。
そんなの、生まれもった運の量で人生は全て決まるんじゃないか、なんて思う。
ああ、無個性な人形は、ここで退場だ。
そろそろ、他の人形が作り上げられてくるに違いない。
―ピリリリリリリリ
ほんの少し、甲高い壊れた機械音を発しながら、目覚まし時計が息をした。
―…久しぶりに、みた。
ベッドからのそりと起き上がりながら、目覚まし時計を止める。
日付は、十一月十八日。
十一月十八日、と心の中で呟く。
表情はきっと、苦虫を噛み潰したような表情をしているに違いない。
僕の部屋には鏡を置いていないから、顔を見る事は残念ながら出来ないけれど。
十一月十八日。
―…父親が、僕と母さんの前から居なくなった日。
何故、きちんと話してくれないのだ、と今でも思う。
―父さんはな、お前と、母さんの為に居なくなるんだ。
…大丈夫、すぐに帰るよ。
そう言って、父さんが家を出てから数日後。
―リリィーン…
家の電話が、小さく鳴った。
―…はい、もしもし?
―…自殺を、したのだと。
機械的に、淡々と僕にそう伝えた相手方は、事務的に会話を終えると、
―お悔やみ申し上げます。
感情を込めずにそう呟いて、電話を切った。
どうして、自殺なんてしたんだ。
来週には、祖母の家に暑中見舞いを一緒に持っていくと約束したのに。
「自殺をしてはいけない」と、あんなにテレビのニュースを見て僕にそう説いていたのに。
何故―…何故、貴方が。
―貴方が、先に死んでしまうのだ。
その日から、思考回路がぷつり、と音を立てて切れた。
そんな自分が嫌いだった。もっと、何も考えずに生きていきたかった。
だけど、僕には無理だった。
笑いをとることも、勉強で一番になる事も、博愛主義者になることも、理想論者になる事も。
―僕には、出来ない。
所詮は僕も、「操り人形」でしかないのだということ。
糸の切れたマリオネットは、もう見向きもされないのだ。
踏みつけられた鞄も、描かれた落書きも。
「必要」と無くなれば、もう見向きもされないのだということ。
―…人形は、僕らだ。
皆同じ土俵なのだ。
滑稽な道化師のように映るか、美しく映るかの違いだけで。
きっと、生きていたって、死んでいたって、僕等は同じなのだ。
―…さあ、次の哀れな玩具さん。
眠りはとうに遮られた。
もう、そろそろ目覚めてね?
舞台の幕は、上がってる。
滑稽に、惨めに踊ってね。
―ズンッ…
―201X年、8月1X日。
某市立中学校の屋上より、同中学校に通う男子中学生―くんの転落死体が、早朝に発見されました。
発見者は―くんのクラスメイトである少年齋藤君(仮名)であり、部活の練習へ行く途中だったとコメントしています。
―くんは大人しい男子生徒で、品行方正、成績優秀な少年だったらしく、学校側も「何か悩んでいるようには見えなかった」とコメントしており、警察は、自殺との見解を示しており、―くんの自殺の原因を探るとのコメントを発表。
本日のゲストは、心理学専門家の☓☓さんです。
早速ですが、☓☓さん、少年は何に悩んでいたと思いますか?
―難しい問題ですね。しかし、少年は愛されていたことだけは断言できますね。
…ほら、証拠に、少年の担任の教師は、こんなにも涙を流しているではありませんか。
―…本当ですね。少年は、愛されていたのでしょう。
―…ええ、非常に残念です。彼は、愛されているが故に、とても孤独だったのでしょう。
―…ええ、そうですね。非常にやり切れない事件ですね。
……では、お天気です。
キャスターの―さん。明日のお天気はどうでしょうか?
―…はい、明日は全国的に晴れ模様が広がり、一日中良いお天気となるでしょう。
傘の心配はありません。
ほら、ね?
インジュン様、本当に有難う御座いました。