不幸体質少女(1)
「乾さーん、乾美月さーん」
退院の手続きのため、その名を呼ばれた彼女は
頭には包帯を巻き 片目には眼帯、首から下のいたるところに生傷が絶えず、
絆創膏やガーゼが貼ってある。
『満身創痍』
この言葉がよく似合う
彼女はそんな風貌をしていた。
彼女は何も昔からこんなに怪我をしていたわけではない。
小さい頃は男の子とよくケンカをしたりと、わがままぶりを発揮して
母には呆れられたものだけれど、父には心底心配された。
それでも大きくなってくると活発な部分は成りを潜め
静かで、凛とした雰囲気を持つ少女に育っていた。
美月は高校生になりこのまま恋をしたりお洒落をしてみたりと
普通の人生を歩んでいくものとばかり考えていたが
ある日を境に少しずつだが異変が起こっていた。
運動神経が皆無であったり危機意識がないというわけではないのだが
下校途中、男子生徒に自転車でぶつかられたり
歩いていたら突然、野良犬に襲われたり
ある時は交差点で信号待ちをしていたら自動車にひかれそうになったり、
授業を受けていたら外から飛んできたボールが校舎の窓ガラスに当たりガラスで怪我をしてしまったり
階段を降りる時に誰かに押されて転げ落ちてしまったり
最後の辺りで意識がなくなり気が付けば病院に運ばれる始末。
そんなことが立て続けに起こり、彼女は人間不信に陥っていた
まるで誰かが自分のことを狙っているかのようだと…。
病院から出た彼女は安全になれる場所を欲していた。
学校に行っても入学して一週間も経たない内に病院送り、話をしたのは隣の席に座って居た女子生徒くらいで他はほとんどが他人だった。
外に居ても事故に遭いそうになる、もう帰りたい。
骨折などはしていないが、ついさっき退院したばかりの彼女の体調はあまり芳しくない。
この状態で学校へ行くための理由なんてものは無いに等しく、さっさと家に帰り眠ってしまえば気分も変わるのではないかと思った。
「サボりなんて初めてだけど、しょうがないよね」
そうして彼女は帰路についた。