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蒼宮中宮物語  作者: 花詠 詞子
3/9

蒼宮編_#3

 自分の部屋へ戻った姫は、父親から聞いた思いがけない話に戸惑っていた。


「私が東宮様の許へ入内するなんて」


 誰もいない部屋に姫の独り言が響く。

 脇息にもたれ、盛大にため息をつく。


「いずれは結婚しなければならないことはわかってたわ。でも、お相手が東宮様?」


 姫は両手で頭を抱えこむ。


「入内なんて、全然考えてなかったから、頭が混乱してきたかも」


 最後の言葉は涙声になっていた。

 心を落ち着けようと、目を強くつぶり、姫は左右の頬をパンパンと軽く叩く。

 先ほど、父親に言われた言葉をを一言一句、頭の中で繰り返してみた。


『年明けて、二月に東宮が元服される。その際、添臥女御として、そなたが選ばれた。突然のことで驚いたかもしれないが、入内する心構えをしておいてほしい』と、父親が頭を下げてきたのだ。


 その時は入内云々の話よりも、父親が頼むと頭を下げたことに少なからず姫は驚いていた。

 冷静になってきて気付いたことがある。


「私の入内の話なのに。なぜ、お母様がいる前で話さなかったのかしら?」


 声に出してみて、気になっていた事柄に、さらに感じた違和感。


「私の将来のことよ?」


 姫はいろいろ考えをめぐらせていた。

 何度考えても行き着く答えは、父親がいつか話すといった、母親の事情。

 それを聞くまで、今抱えている胸の中のモヤモヤは晴れそうにないと姫は思った。


「お父様。いつかお話してくださる日まで、私待ちますわ」


 誰もいない部屋。

 姫の決意の言葉が響いた。


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