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四星術(仮)  作者: 彩坂初雪
エピローグ
32/33

祝勝会

「一年生チームの勝利を祝して~!」



『乾杯!』



 試合終了後、審判をしてくれた教師にお礼を言ったり、用具の後片付けを済ませてから一年生部員で祝勝会を開いた。

 カチンと小気味良い音が響き渡る。

「しかし、さすが経験者だったな。動きが全然違ったよ!」「中里さんも、普段じゃ考えられないほど活発だったよな!」「この四人に任せて良かったよね」「俺、もう最後泣きそうだったよ」「そうそう! 特に九点差をひっくり返したところなんかすごかったよね!」

 芽依たち四人は大絶賛である。

 皆に囲まれて、褒めちぎられる。

「そうでもないよ」

 芽依は嬉しく思いながらもやんわり否定させてもらう。

「あの九点差をひっくり返した時は、皆が応援してくれた言葉の中からヒントを見つけたんだ。応援がなければ逆転できなかったよ」

「そうだね~。今考えると、あたし、よくあんな作戦思いついたなって自分でも思うもん」

 それだけではない。

 芽依たちが練習に集中できたのも、部員の協力があってこそだった。真っ黒の被り物を全員のサイズに合わせて手作りをしてくれたり、一緒に作戦を考えてくれたりと、今回の勝利は芽依たちだけでは決して手にすることができなかったものだ。

「で、なんであんたらまで着いてきてんだ?」

 質問を全て受け流して、というか無視して黙々とドリンクを飲んでいた相田が口を開く。その視線の先には先輩チーム四人の姿がある。

「そうカリカリすんなって。今までの待遇は改善してやるし、さっきもちゃんと謝っただろ? 混ぜてくれてもいいじゃんかよ~?」

 リタの返答に相田は舌打ちをして黙る。

 試合終了後、真っ先に謝罪の言葉を口にしたのは意外なことに、リタだった。リタは自分が間違っていると思ったらすぐに態度を切り替える性格なのか、その後、芽依やテルに親しげに話しかけてきた。そしてそのままの流れで祝勝会にくっついてきたのだ。

「私たちは一応、部長、副部長だからね……」

 と、花夏が付け足す。

 もともと一年生に協力的だった花夏は「本当にごめんね」と深く頭を下げた。花夏に対してはそれほど悪い印象を持ってなかったため、芽依たちはすぐに許した。

「ふん……」

 そして、黒江。

彼女は見ているこちらの腹が立つような態度で「すまなかったな。許せ」と言ってきた。相田が「なんだその態度は」と問い質したのだが、結局『一年生を練習に参加させること』を承諾しただけで態度を変えなかった。

 試合に負けたからといってすぐに心の整理がつくものでもないのだろう。

「ああ、そういえば一年生チームの皆さん」

「はい? なんですか?」

 最後に、壮太。

 壮太はそもそもこの件に関して最初から興味がなかったようで、試合が終わるや否や芽依たちだけでなく、他の一年生たちにも自己紹介をして回り、すっかり溶け込んでいた。

「僕の印章の正体、なんだか分かりましたか?」

 壮太は試合前と変わらぬ爽やかな笑みを携えていた。

 素でこの雰囲気を出しているから、男としてはちょっと憧れる。こんな爽やかな感じになれたら女子に囲まれて過ごせそうだ。

「結局、不明なままでしたね」

「壮太先輩の印章が分かってたらもっと楽に勝ててたと思います」

「そうですね……。ナイフがいきなり飛んできて……その、恐かったです……」

 芽依たちの反応が面白いのか、壮太は楽しそうだった。

 あははと爽やかさ満点で笑う。

「うん、そうだね。僕の印章はちょっと分かりづらいだろうし」

「答えはなんですか?」

 芽依が聞くと、思いのほかあっさりと答えてくれる。

「一言で言うなら、そうだね……。感覚透過、かな?」

「感覚透過?」

「そう。自分の好きなもの、好きな物質に感覚神経を通らせることができるって言えばいいのかな? 基本的にどんなものにでも適用できるんだ。空気でも、地面でも、ね」

 要は触覚のみを拡大する感じなのだろう。地面や空気に神経を走らせれば、確かにこちらの動きが伝わってもおかしくない。芽依の視力向上なんかよりもよっぽど指令者向きの印章だ。

「おい待て爽やか先輩」

 相田のネーミングセンスは相変わらずだ。

「だったら、試合中にあった妙な間はなんだ? そんな便利な印章ならすぐにでも攻撃をしかけられただろう?」

「ああ、それはリタの印章のせいだよ」

「金髪の印章…………そうか。なるほどな。位置が特定できても、あの金髪の印章は危険すぎる。だから、誰がどこにいるのかを伝えていたのか」

「概ね正解。加えて、リタの印章は君の印章のように、飛び道具じゃない。どの経路を通れば危険がないのかも考えなければならないんだ。きっと、君たち一年生はリタの印章は相当嫌だったろうけど、欠点も多いよ」

 芽依たちもその弱点を突かせてもらった。リタの印章は相手に直接触れた時点で失格となるため、接近戦ではまるで使い物にならない。その上、今壮太が言ったように遠距離でも枷があるのだ。

「それから、あともう一つだけいいかい?」

「なんですか?」

 壮太はふうとため息をつき、それから困ったような表情で言う。


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