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四星術(仮)  作者: 彩坂初雪
第六章
23/33

最終ミーティング

「なあ、本当にこれに着替えるのか?」

「提案したのはお前だろうが」

「そうだけどさ。俺、指令者だし、着替える必要なくね?」

「同じ服着てた方が士気が上がるだろ」

「そりゃそうかもしれないけどさ……」

 決戦当日、女子は別室で、男子は部室でユニフォームに着替えている。他の部員は既に四星術場へ集まり、花夏たち先輩チームは試合の準備をしてくれている。

 先週の月曜日から昨日、日曜日まで芽依たちは練習と作戦会議に明け暮れた。持久力の底上げ訓練はもちろんのこと、考えた案を他の一年生に協力してもらって実際に試したり、試合に出る時の心構え等を相田と詩月に教えてもらったりと、いろいろなことをしてきた。練習不足だと感じた点は各々が家に帰ってからも練習し、時には夜中に緊急会議を行ったりもした。

「服装がどうとか、そんなこと気にするより、試合のことを考えろ。指令者がしっかりしてなきゃ勝てる試合も勝てねえからな」

「分かってるって」

 相田に釘を刺される。

 本格的に練習を始めて、まず思い知らされたのは、指令者の役割。ただ指示を出すと言ってもそう簡単なものではないのだ。仲間全員にしっかり伝わるような、的確なものでなければ混乱させるだけに終わってしまうし、なにより四星術は考える時間がほとんどない。臨機応変に、どんな事態になっても勝利できるよう、常に頭を回転させ続けなければならないのだ。

「よっと。うわー、息しにくいなこれ」

「暑苦しいな」

 基本的に服装は自由なのだが、今回に限り、芽依たちは服装を統一した。

「それはそうと、スフレ、俺は今非常に悩んでいることがあるんだが」

「相田が悩み? 似合わないな」

「うるせえ。……あのツインテール、この前部室に来た時気付いたが、部活する時ポニーテールになるだろ? なんて呼べばいいと思う?」

 どうでもいいことで非常に悩まないでくれ。

「そんなことで悩むならまず、俺の呼び方をだな」

「黙れスフレ」

 芽依の呼び名はスフレで決定らしい。

「別にどっちでもいいだろ。いや、でも試合中わざわざそんな長い名前で呼ぶのもどうかと思うぞ? 普通にテルでいいじゃねえの?」

「普通すぎる。そうだな……ツインテールとポニーテールを混ぜて……」

 混ぜるのか。

「ポニンと呼ぼう!」

「……面白いネーミングセンスをしているようだな相田」

「だろ?」

 褒めてないんだが。

「そういや、名前で思い出したが、中里さんのこと呼び捨てにするのは未だに抵抗感あるんだよな……」

「そのうち慣れるだろ」

「そう思いたいよ」

 指令者として試合に出るに当たって、一つ注意されたことがある。それは、全員を呼び捨てにすること。指示を出す時にさん付けをしていると、間に合わないのだ。相田やテルは元から呼び捨てだったから良いが、詩月だけは別だ。あんな性格をした人を呼び捨てにするなど、抵抗感がない方がおかしいだろう。

 実際、練習時には「ひゃう!」とものすごく驚かれた。

「準備できた男子?」

 ドアが開かれる。

 そこには芽依や相田と同じ格好をした二人の人物が。

「ポニンと中里か。一応準備ならできた」

「ポニン?」

「お前のことだ。ツインテールとポニーテールを混ぜたらこうなった。ナイスだろ?」

「……えーと、いいんじゃ、ない、かな?」

 なんとコメントして良いのか分からないんだろう。本人が自慢げに言ってる分、指摘しづらい。

「あ、そだ。相田君」

「なんだ?」

「さっき詩月ちゃんと話してたんだけど、どうしてメンバーに入ることを決めてくれたの?」

「今更だな」

 言われてみると、確かに聞いてなかった。

 先週の月曜日、先輩たちに相田は「一年を追い出そうとしたのは練習の邪魔になるだけか?」と聞き、その答えを受けてメンバー入りした。メンバーになってくれたというインパクトの方が強くて理由を教えてもらってなかった。

「大したことじゃねえよ。最初、あの先輩たちは練習がどうのっていうことを建て前に一年の世話するのがめんどくさくて追い出そうとしてたのかと思った。だから退部しようと考えたんだ。チームワークが命の四星術で先輩がそれをぶち壊すようなことする部活になんて居てもしょうがねえと思ってな。だが、スフレからフクロウ先輩の話を聞いて、もしかしたら本当に練習をしたいだけなんじゃないかと考え直した」

「で、黒江部長にあの質問をぶつけたと」

「そうだ。ただ練習したいだけならなんの問題もねえ。こっちにチャンスをくれてるんだ。なら、あとは権利を勝ち取ればいいだけの話。そんだけだよ。分かったかポニン」

「分かった……けど、ポニンてどうにかならないかな?」

「なんでだ?」

「……なんでもいいや」

 相田はテルの反応が心底不思議でしょうがないという風に首を傾げる。

「よし。じゃあ、謎も解けたところで最終ミーティングだ」

 とりあえず、相田のネーミングセンスは放置で話を進めよう。

「作戦は全員、頭に入ってるな?」

「言われるまでもない」

「バッチリだよ」

「大丈夫です……たぶん」

 若干一名、不安な返答があったが、問題ないだろう。

 指令者として、一人一人に激励の言葉を贈る。

「相田。今日の試合はお前が中心になる場面が多い。しっかり頼むぞ」

「ふん。誰に言ってる。そっちこそ、指令者の役割をちゃんと果たせよ」

「テル。中里さんのフォローみたいな役回りになるけど、話していた通り、細かい動きは指定しない。ここぞという場面には自己判断で動いてもらっていいからな」

「うん。任せといて」

「中里さん。緊張はするだろうけど、作戦の要は中里さんなんだ。いつも通り、練習した通りにやってくれれば問題ないからね」

「は、はい! 頑張りますっ」

 芽依は隣にいたテルと相田の肩に手をかける。

 自然と、円陣が組まれる。

「じゃ、ここからはキャプテンよろしく」

「この流れで俺がやるのか?」

「キャプテンだし」

 舌打ちしつつも引き受けてくれるところ、やはり相田は良いやつだ。

「お前ら、どのくらいの確率で勝てると思ってる?」

「え? 五分五分ってとこ?」

 テルが控えめに答える。

「それじゃあダメだ。スフレ」

「八割方は勝てるつもりでいるが?」

「まだダメだな。中里」

「百パーセント?」

「もっとだ! ポニン!」

「じゃあ……百五十パーセント!」

「もっとだ!」

「二百!」

「もっとだ! 全員で!」

「「「三百!」」」

「それで勝てるつもりか!?」

「「「四百!」」」

「まだまだ!」

「「「五百!」」」

「限界まで引き上げろ!」



「「「千パーセント!!」」」



「よしっ! 行くぞ!!」



「「「おーーーー!!」」」



 ……さすがキャプテン。士気の上げ方を熟知してるな。


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