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四星術(仮)  作者: 彩坂初雪
第四章
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過去

 芽依は小学校時代を思い出す。

 芽依とテルが出会ったのは、小学校四年生の時。親に教師と警察官を持つ芽依は当時から正義感が強く、間違った行いを見つけると割って入った。

 テルとの出会いもまさにそれ。テルは学年の男子全員にいじめられていた。その理由は、『男っぽい名前のくせに内気で何も言わないから』。今考えると本当にふざけた理由だったと思う。なんでそれでいじめに発展するのか、訳が分からない。だが、そこにいじめは確かにあった。机に落書きされ、下駄箱に入れてた靴がなくなり、果ては暴力を振るわれる始末。どれもこれも小学生なりに印章を使ってやられたものだったから、親も教師も誰も気付いてなかった。

 テルはその頃、今よりずっとモノを言うのが苦手で、反抗なんてまるでできていなかった。先生にさえ相談していなかった。

 そのことを知った芽依は当然の如く止めようとした。現場を目撃すれば「なにをしているんだ」と割って入り、テルを連れて先生にも相談した。いじめの対象は芽依にまで拡大したが、それでも正しいことだと踏ん張った。

 先生は学級会で議題として取り上げてくれて、絶対にそんなことはやめろと叱り付けてくれた。いじめをしていた生徒も「すみませんでした」と謝ってくれて、芽依もテルも安心した。これでいじめはなくなるのだと、すごく安心した。


 けれど、そんな簡単なものであるはずがない。


 先生に見えないよう工夫され、いじめは延々と繰り返された。どころか、先生に報告したことが裏目に出て『先生なんかに頼ってバカじゃないの』という言葉を何度も浴びせられた。さらに、中学校に入学した後もいじめは続いた。他の小学校から入学してきた生徒たちにも噂は広がり、小学校の時よりも大規模なものに発展。テルは不登校となり、芽依も辛い思いをした。



 そんな時、芽依とテルに光を与えてくれたのが、スポーツだった。



 実際にスポーツをしたわけではない。できるわけがない。ただ、テレビに映る選手たちを見て二人は思った。


 皆でなにかをするってこんなにも凄いことなのか、と。


 二人はいつも二人だけだった。他に仲間はいなかった。同情してくれる人は居たけれど、誰も助けてくれなかった。だからこそ、気付かなかった。


 集団の強さ、皆で一つのことをやるという強さ。そして、チームワークの大切さを。


 それは、いじめにしてもそうだった。大人数でかかられたら太刀打ちできない。どう足掻いても、先生に相談しても、どこかで続いていく。

 だから、二人は高校で部活に入ろうと決心した。もっと仲間を増やして、もっと友達を増やして、皆で一つのことをやるんだ。そう思った。後ろ向きかもしれない。いじめが恐いから、仲間外れにされるのが恐いから、部活に入るなんて。


 けれど、当時の二人にはそれ以外選択肢は考えられなかった。


 そして、そのテレビでやっていたスポーツこそが、四星術だ。多くのスポーツの中で、一番チームワークが求められるものだと思わされた。このスポーツなら、自分たちの望むものが手に入ると、そう思わされた。

 だから――

「芽依!」

「え? なに?」

「黙り込んでどうしたの?」

「あ、いや、なんでもない」

 我に返ると、既にどこかの店の中。

 ファーストフード店だ。

「飲み物だけ買ってくるけど、なにがいい?」

「アイスコーヒー。ミルクも砂糖もいらないから」

「カッコイイね~。じゃ、席とっておいて」

「了解」

 離れていくテルを見て、今更ながら、なるほどと思う。

 詩月への接し方が妙に上手いと感じていたけど、もしかしたら昔の自分と重ねているのかもしれない。

 テルは芽依との出会いで少しずつ性格が変わっていった。今でも、皆の前に出ることやここぞという場面ではっきり意見を言うことはできないけれど、芽依の見ている限りすごく明るくなった。明るくなりすぎて、芽依にも理解不能な言葉を発することがあるが、それはそれ。

「さて、席取らないとな」

 芽依は先ほどから筋肉痛で痛みっぱなしの足を休めるため、席に着いた。


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