第二十八話
俺に双子の妹が出来て数日。ナツの声が犬の時にでも完璧に俺と同じになった。俺はナツと一緒に坂下家の庭を散歩している。(今のナツは犬の姿で首輪にリードをつけて俺がナツを引っ張っている。しかし実際は俺がナツに引っ張られている)
「ナツ〜いい天気ね〜」
「ワンッ!」
「そうだ!ナツ、向こうの木まで私と競走よ!」
木までは三十メートル位ある。
「ワンッ!」
そしてリードを外してポケットにしまい俺とナツの競走が始まった。結果はナツが俺に勝った。もちろん二人とも足の速さは人間、犬ともに世界一だ。
「負けたか〜やっぱりナツは速いわね〜」
「ワンッ!」
と吠えてナツは俺に飛び付いて来た。それを俺は抱きしめた。
「もう、ナツったら!・・大好き・・私の大切な妹・・」
「おねえさま・・わたしもだ〜いすき!」
しばらく抱き合ってると坂下に遠くから呼ばれた。
「ユキ、ナツ、ちょっと来て!早く!」
「ご主人様、今行きます!」
と返事をして坂下に向かい走った。
「ユキ、ずいぶんナツと仲がいいのね」
「姉妹ですから」
「ユキ、ナツがこの家に来たお祝いに街に出かけましょう」
「いいんですか?」
「だってナツはこの家から出たことないでしょ」
「おねえさまとまえにでかけたくらい」
「でしょ?だから出かけて外でお祝いするのよ。わかったら早く人型になって準備しなさい」「はい!ごしゅじんさま!」
「ナツ、まって!こんな所で人型にならないで!」
そしてナツは人型になった。ナツは首輪以外一糸纏わない姿である。急いでナツを外出する服を着せた。
「ナツ、私姉として恥ずかしいわ・・」
「ごめんなさい、おねえさま・・」
そして俺はナツと一緒の服を着た。そして俺とナツは首輪を外してもらいナツは腕輪と眼鏡をかけた。外見的には完璧に俺達はそっくりだ。俺とナツはネコミミと尻尾を出して立ち位置を素早く変えた。そして
「ご主人様、どっちがユキでどっちナツでしょうか?」
と坂下にクイズをだす。
「えっ、マジでどっちがどっち・・?」
「ご主人様、言葉遣いがおかしいですよ」
「う〜ん、向かって右がナツで、左がユキ?」
「・・・」
「ちょっとタメないでよ」
「正解です!さすがご主人様〜!」
と二人同時に坂下に飛び付いた。
「ユキ、ナツお願い離れて」
しかし今は二人とも首輪をしていないので、離れずに尻尾で坂下をくすぐった。数分後
「ではご主人様。行きましょうか?」
「あんたたち・・帰って来たらお仕置きね・・」
その声に俺とナツは一瞬で凍り付いた。
そして坂下と俺とナツは三人で街を歩いた。
「そういえばナツはどれくらいまで人型を保てるの?」
「研究所の人に聞きましたらエネルギーを使うそうですが一生保てるらしいです」
「そうなの?じゃあいきなり犬の姿に戻る事はないのね」
「ご主人様か私が命令するかナツ自身が戻ろうとしない限りは・・ところでご主人様、どこに行きましょうか?」
と俺は坂下に質問する。
「う〜ん、ナツは行きたい所ある?」
「え〜っと・・」
「そういえばナツは生まれたばかりだもんね」
「まだ生まれて三日です」
「じゃあブラブラ歩きまわってナツの入りたい店があったら入りましょう」
「うん!」
そしてしばらく歩いているとナツは本屋の前で足が止まった。
「ナツ、本が欲しいの?」
と俺と坂下は聞く。
「うん・・」
「わかったわ。ナツどれでも好きな本をいくらでも持ってきなさい。私が買ってあげる」
「ほんと?」
「私に二言はないわ」
「ありがとう!」
とはしゃぎながら店に入った。そして入口横にある買い物カゴを持って姿が見えなくなった。
「ご主人様、大丈夫ですか?おそらくナツは加減を知りませんよ?」
「大丈夫よ、今私はこの店の本を買い占めが出来るくらい手持ちがあるから」
(・・一体坂下の底無しのお金はどこから出てくるんだ?)
そして俺と坂下も店に入りナツを探した。この店は近辺でも一番大きい本屋なので探すのに苦労すると思ったが坂下は迷いなくナツの居場所にたどり着いた。(しかしなぜ居場所がわかるんだ?)その答えはすぐにわかってしまった。
「ナツ〜探したわ〜」
「ごしゅじんさま!」
「あなたの腕輪に世界最高レベルのGPSが内蔵されているからすぐにわかったのよ」
「へ〜」
「・・ご主人様、まさか私の腕輪にも?」
「えっ?気がついてなかったの?」
「ご主人様は私に腕輪について何も説明しませんでしたよ。これは夕飯は大変な事に・・」
「ごめんユキ〜許して〜」
「・・私とナツのお仕置きをやめてくれたら許してあげます」
「わかったわ・・お仕置きはやめるわ」
そして坂下と俺の口論が終わるとナツが坂下に声をかけた。
「ごしゅじんさま?」
「なに?選び終わったの?」
「うん」
そしてナツは買い物カゴを持ち上げる。カゴの中は本でいっぱいだった。
「どんな本を選んだの?」
「いっぱい!」
「凄いわね。漫画に雑誌にその他諸々」
「ごしゅじんさま、だめ・・?」
「別にもっと買ってもよかったけどね」
「ほんと?」
「ナツ、また今度にしなさい」
「はい、おねえさま・・」
「まあユキもそう言わないで。今日はナツの誕生会も兼ねてるのよ」
「そうなんですか?」
「だってナツが生まれまのは三日前よ。少し遅いけど誕生会を私とユキでやるわ。だから私はナツにプレゼントをあげてユキはナツに料理をご馳走するのよ」
「畏まりました。いつもより美味しく作りますね!」
「ナツ、もっと欲しかったら選んでもいいのよ」
「ありがとう!」
そして数十分後ナツはさらに大量の本を買い物カゴに入れていた。
「凄いわねナツ・・」
そして会計をして店を出るとナツと俺は大量の本を袋に入れて家に帰った。俺は妹の誕生会ということでいつもよりも料理に力を入れた。勿論料理は絶品であり俺は坂下とナツが喜んだ事でとても嬉しくなった。
それからナツの買った本は俺の部屋に置かれた。あまりにも大量の本を買い、さらに逐一買い足しているのですぐに壁の一面は本棚で埋まった。それをナツは檻の中から尻尾を出して本を本棚から入れたり出したりして読んでいた。比率としてはナツの本が本棚の七割に及んだ。