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第二話

 坂下の家で働く事になった俺は

「この家で家事をすることが主な仕事で、他の仕事は後々言う」

と言われた。

(ほっ、なんだそれくらい楽勝だな)と俺は思った。

俺は独りっ子で両親が共働きでしかも殆ど家にいないので家の家事は全て自分で行っていた。そのため家事は得意だった。しかし間もなくある重大に事に気が付き俺は凍り着いた。普通の家ならともかく坂下の家は豪邸である。掃除一つ取っても大変な重労働である。その時俺は一つの疑問が頭に浮かび、坂下に質問をぶつけた。

「なあ坂下、こんな豪邸には付き物の

「お手伝いさん」

はいないのか?今まで一度も見て無いんだけど」

(「メイドさん」

と言うのはなぜか恥ずかしかった)すると坂下は

「家にはもそんな人一人もいないよ」

と言う。

「え〜!じゃあこの広い豪邸で家事はどうしてんの?」

と俺。坂下の家はこんなに広いのに廊下や部屋には埃一つ無かった。

「それはね、掃除に関しては専門の(業者さん)に来てもらってるの。料理は少しは出来るし、洗濯は私一人分の洗濯物しかないから自分でやってる」

と坂下が答えた。

「これからは掃除は祐樹がやるから(業者さん)は来なくていいね」

と俺に語りかける。

「いや!(業者さん)には来てもらってください!」

と素早く突っ込む俺。

「何で?祐樹が掃除やるから来てもらわなくていいじゃん」

俺はため息を一つつくと

「あのね・・・いくら俺が家事得意でもこんな広い豪邸掃除しきれる訳ないでしょ、しかもさっきみたいになんか壊したらやばいだろ」

と今度は俺が坂下に語りかける。すると

「そっかやっぱり祐樹一人じゃ無理か・・・」

と坂下は残念そうに呟く。(この人マジでこの広い豪邸を一人で掃除させる気だった。あぶねえあぶねえ)と内心冷や汗をかく祐樹だった。 そして今俺は坂下に命じられキッチンで昼飯を作っている。

ふと時計をみるともうすぐ十二時になるところだった。

さすが豪邸だけあってキッチンもすごいがそれ以上に驚いたのは料理店の厨房にあるようなでかい冷蔵庫だった。

中を覗くとやはり高級食材が所狭しと並んでいる。

キャビアやトリュフはともかく初めて見る食材が沢山あった。食材を手に取り眺めていたが程なく冷蔵庫から食材を必要な分だけ取りだし(あの食材はどう使うか坂下に聞かないと)などと考えながら料理を行った。そして料理が完成して坂下を呼ぼうとしたその時、タイミングを計ったのごとく坂下がキッチンに現れた。

「祐樹〜昼ご飯まだ〜?お腹空いて死にそう〜」

と坂下は俺に呟く。

「坂下、調度良かった、今呼びに行こうとした所だ。冷めない内に食べてくれ!」

と俺が話しているともう坂下はテーブルに付き俺が作った昼飯を食べようとしていた。はぁ・・・とため息をして俺もテーブルに付いて昼飯を食べた。自分的には食材も最高級品な事もあり美味と思う。そして恐る恐る

「どうだ坂下、口に合えばいいんだけど・・・」

と聞いてみた。そうすると坂下は

「・・・美味しい〜!!!祐樹!本当に美味しいよ!!!ありがとう〜!!!」

突然大きな声でほめられたので驚き半分嬉しさ半分だった。二人だけだが賑やかな昼飯の時間は過ぎて行った。

そして昼飯の時間も過ぎて俺は坂下の部屋にいる。しかしこの部屋の主人は不在である。一体どこに行ったのだろうと考えいると坂下は黒っぽい服と白いエプロンを持ってやって来た。部屋に入るとすぐ俺に

「ねぇ祐樹、この服着てみて?」

と持っていた服を俺に手渡す。

俺は坂下の持っている服に身に覚えがあった。メイド服である。

「何で俺がそんな服着なきゃいけないんだ!俺は男だぞ!」

「祐樹は女の子みたいな顔してるから大丈夫だって」

うっ ・・・人が一番気にしている事をハッキリ言うな!それとなにが大丈夫なんだ?と思ったが、俺は着替えを始めた。なぜなら坂下が目を輝かせて荒い息遣いをしていて怖かったから。しかし流石に恥ずかしいので何とか坂下を説得して着替え中に部屋の外に出てもらった。

「どう?着替えられた?」と声が廊下から聞こえたので

「坂下、着替えたよ・・・」

と弱々しく答えた。すると坂下が素早く部屋に入って来た。そして俺を見て坂下は一言

「かわいい・・・」

と呟く。元々女の子っぽい顔をしているのに声もクラスの男子よりも声が高い事でただでさえ性別を間違えられるのに、こんな服を着ていればほぼ確実に俺は女の子に間違えられる。俺を見て目が光り、息遣いが荒い坂下を見て俺は

「坂下、大丈夫?・・・」

と声をかけた。すると坂下は

「祐樹!かわいい!!!」

と絶叫しながら勢い良く俺に飛び込んで来た。その勢いで俺は床に倒れ込む。しかし坂下は俺に抱き着いたまま離れようとしない。

「坂下、どいてくれ、く、苦しい!」

と訴えても坂下は聞く耳を持たず俺に抱き着いている。

それから坂下が俺を解放したのは数分後だった。俺が坂下を無理矢理引きはがしたが恐らく坂下は俺が抵抗しなかったらいつまでも抱き着いたであろう。しかも、今も隙あらば飛び掛かってきそうな野獣のような目と荒い息遣いをしている。しかしこの空間に俺というか弱い子羊に救いの手を差し延べる者はいない。そして俺は坂下に

「もう気が済んだろ?着替えるから廊下に出てて」

「却下!祐樹はこの家にいる時はその服装でいること!」

と命令してきた。たしかにメイド服は豪邸で働く人の制服みたいな物だが女性の服である。流石に俺は

「ふざけんな!俺は男だぞ!」

と怒鳴った。しかしただでさえ俺は女の子の顔をしていているのにメイド服を着ているのである。なので怒鳴っても何も怖くない。坂下は少しも怯まずに話始めた。

「ふ〜ん、だったら今すぐにあなたが割った花瓶を弁償してよね。もし弁償出来たらその服脱いでいいよ」

「ぐっ・・・」

しかし俺にはそんな事が出来る訳がない。出来るのであればこんな服は着ていない。この展開は九十九パーセント負けると俺の頭の中で解答が出て来ている。それでもあと一パーセントに賭けて頭を働かせた。しかしさらに坂下は俺を絶望へとたたき落とす。

「それに祐樹は私に

「俺にできることなら何でもする」

って言ったじゃん。」

「うっ・・・」

だめだトドメを刺された・・・。そして俺は

「わかりました・・・」

と蚊の泣くような声で返事をした。しかしその微かな声も彼女の耳に確実に響いて聞こえていた。

「祐樹、嬉しい!大好き!」

と叫びながら抱き着いて来た。

先程よりかなり苦しい、祐樹が引きはがそうとするが先程の数倍の力で俺の体を固めている。そして時間がかなり経過しているはずなのだが彼女の抱き着きの力が全く緩む気配が無く(・・かな・り・・息・が・苦・・し・い・・)と苦しんでいた祐樹だった。結局坂下が俺の体を解放したのは坂下が俺に条件を出し、それを俺が了承したからだ。

「ねぇ祐樹、せっかくメイド服着てるんだから雰囲気出そっか?」

「え?・・・」

俺は息をするのも苦しい中、なんとか返事をした。

「私の事を呼ぶ時は、

「ご主人様」

って呼んでね。それと女の子の言葉遣いをしてね。勿論私のメイドなんだからこれから私の言う事には絶対服従ね。この条件を了承したら解放してあげる」

正直クラスメートを

「ご主人様」

と呼びたくないし、しかも女の子らしい言葉遣いをしろと言ってきて命令に絶対服従しろと言ってきた。しかし俺の体は悲鳴をあげて限界だった。そして坂下の苦しい圧迫の中

「わか・り・・ま・した・・」

と小さく呟き条件を了承すると坂下の圧迫が一瞬緩んだ。だが次の瞬間更に力を入れて体を圧迫した。そして解放してくれた。

最後の圧迫に耐えていた悲鳴を出しそうになったが俺は助かった。圧迫を受けて(本当に女子高生か?)と疑った祐樹であった。

 こうして俺は坂下の命令に絶対服従のメイドになってしまったわけだが坂下はかなり俺に対して好意を持っているようだ。(だからメイド服を着せたのかな?)そういう俺も坂下の事を好意に思っているのだが彼女のあの暴走を考えると複雑な心境になる。暫く俺は彼女を見守っていこうと思う。(つーかあの力があれば見守らなくていいな)

  この二人の恋の行方については後ほど記述するとして・・・。ほら、また祐樹が

「ご主人様」

に呼ばれています。また面白い事になりそうですよ。


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