第一話
警告:この小説は人によっては不快になる内容が書かれています。自己責任でお読みください。(作者的に15禁)
「ガッシャーン・・・」
部屋に甲高い音が響き渡る。この瞬間に俺の平穏な人生はこの甲高い音とともに崩れさった・・・。
俺の名前は坂本祐樹、高校1年生だ。成績はクラスの中ぐらいだが学校で1、2を争う位の美形である。しかし、俺はれっきとした男なのだが女の顔をしているため異性はおろか同性まで
「付き合ってくれ!」
と言われたりする。
毎日机や靴箱はラブレターなどで溢れているがすべて丁重に断っている。 ある日俺の前の席に座る坂下美紀に
「もうすぐ夏休みでしょ。私の家に泊まりに来ない?」
と誘われた。 坂下美紀は高校の入学式に知り合い、すぐに打ち解けた。俺は夏休みに予定があるわけでなく
「いいよ」
と即答した。 これが俺の人生を大きく変える事になろうとは・・・。
そして坂下は(・・・やった・・・)と内心微笑んだ。俺はこの時坂下の心の中の黒い願望に気が付かなかった。
そして夏休み初日、終業式に教えてもらった住所にしたがって家を探しているのだが住所に記された場所は白い高い壁が延々と左右に延びているだけである。(・・しっかし坂下の家はどこだよ。住所によるとこのあたりなんだけど・・・まさか間違って教えたのか?)と途方にくれて座り込んでいると、近所の人であろう両手に大きなゴミ袋を持った女性が目の前を通り過ぎた。 「すみませんが坂下さんの家をご存知ですか?」
と質問するとクスクスと笑いながら
「目の前よ目の前」
(えっ・・・でも目の前には白い高い壁しか・・・まさか・・・)と思って考えているといつの間にかゴミを捨てた女性が
「よかったら入口前まで案内しましょうか?私の家も近くなので」
「助かります」
と返事をした。 歩くこと数分、テレビや漫画でしか見たことのない豪華な門が目の前に現れた。呆気に取られていると案内してくれた女性が
「ではこれで」
と挨拶したのであわてて会釈した。その女性はすぐに道の角を曲がって見えなくなった。 門の横に呼び鈴があったので押してみると
「・・どなたですか・・・」
「坂下、祐樹だ」
「・・存じ上げませんけど・・・」
「おい!坂下おまえ俺に
「家に泊まりに来ない?」
って誘っておいてそれはないだろ!」
と俺は若干キレて言い放つと
「嘘よ嘘!今門を開けるから」
とかなり慌てた様子で返事が返って来て門が静かに開いた。 門からしばらく歩くとこれまたでかい豪邸が現れた。玄関には坂下が立っていた。
「ようこそ祐樹〜まってたよ」
「よう坂下、来たぞ」
「立ち話もなんだから中に入ろ」
「ああ」
と返事をすると坂下は手を引き豪邸の中へ俺を招き入れた。中も想像どうり広く床には真紅の絨毯、壁には絵画が沢山飾られていた。
「とりあえず私の部屋に行こうね」
と俺の手を引き歩きだした。
「豪華な家だな」
と思っていると坂下は
「狭い家だけど我慢してね」
と言ってきた。内心(嫌みか!)とムッとしたが声にはださず心の中で叫んだ。
「ここが私の部屋だよ」
と廊下にある絵画を見ていたらいつの間にか坂下の部屋の前に着いた。 部屋の中はやはり女子高生らしいかわいらしい部屋だったが置いてあるテーブルやソファーなどの家具が素人が見ても最高級品だと解るくらい豪華だった。俺は持ってきた荷物を部屋の隅におくと坂下が
「ソファーにでも座ってテレビでも見てて。喉渇いたでしょ、お茶でも持ってくるから」
と言い残し部屋を出て行った。テレビは50インチ?のプラズマテレビだった。ソファーに座りテレビを付けて坂下を待った。しばらくしてプラズマテレビに映るお笑い番組に夢中になっていると坂下が紅茶のティーセットとポットを持って部屋に入って来た。
「祐樹おまたせ〜紅茶で良かった?」
「うん」
「銘柄はどれにする?」
「うーん、坂下に任せる」
「わかった」
とやり取りが交わされた。坂下は慣れた手つきで紅茶を入れている。
「かなり本格的だな」
「私紅茶にはこだわりを持ってるだ〜。はい、どーぞ」
紅茶を入れ終わった坂下はティーカップをテーブルに置いた。俺は
「ありがとう」
カップを持ち上げ紅茶を一口飲む。
「美味しい!こんなうまい紅茶初めてだ」
「よかった〜口にあって」
坂下は笑顔だった。 「ところで坂下の両親は?」
と何気なく聞くと坂下は
「・・・パパとママは共働きで今は海外に出張なんだ・・・」
(ヤバッ・・俺言っちゃいけないこと言ったかな・・・)祐樹が焦っていると坂下は
「大丈夫だよ全然気にしてないし、ところで祐樹はいつまで泊まって行くの?」
「うーん実は俺の両親も共働きで出張中、しかも俺独りっ子だから今誰も家にいないんだ。だからいくらでも泊まっていれるけど、余り厄介になる訳には行かないから2日くらいかな」
(どうせもっと長く泊まることになるのに・・)と考えていると
「どうした坂下?」
と不意に声をかけられて
「な、なんでもないよ、そ、そうだ、家の中を案内するね」
と提案するので少し動揺した坂下を不審がったが、
「そうだな、坂下の家の中で迷子になりたくないし案内してくれよ」
坂下は部屋を次々に案内してくれた。しかし案内される部屋すべてが広くそして豪華なので圧倒され気疲れを起こしていた。しかも部屋と部屋の間隔も長く帰宅部の俺の体はクタクタに疲れ果てていた。しかし同じ帰宅部の坂下はケロッとしている。実は坂下は運動神経抜群でスポーツ万能である。
しばらくすろと坂下が立ち止まり
「つぎの部屋は貴重品を保管している部屋だよ。中見てく?」
「あぁ」
と小さく呟いた。まさかこの数分後に悲劇が訪れようとは・・・。
坂下が壁にある僅かな溝にカードを差し込むと壁から液晶パネルが現れた。暗証番号らしき数字を打ち終わると扉がゆっくり開いた。
俺と坂下は部屋に入った。坂下が照明を操作すると廊下や壁に飾られていた絵画よりも高そうな品が沢山置いてあった。
「スゴッ・・・」
「すごいでしょ〜家で特に高い品物はここに保管してるんだ」
俺の呟きに坂下はやや自慢げに答えた。部屋には俺がテレビで見たことのある品物が多数あった。その時テレビでは数千万円とかなんとか言ってたっけ。呆気に取られている俺に坂下が
「祐樹!早くこっちに来て!」
と突然坂下の声がした。ビックリした俺は体制を崩した。いつもなら踏ん張って耐えるのだが今まで蓄積していた心身の疲れがそれをさせない。踏ん張れない俺は当然転ぶ訳だがその拍子に何かが手に当たった。俺が尻餅を付くとほぼ同時に
「ガッシャーン・・・」
と甲高い音が部屋に鳴り響いた。
「いって〜なんだよ坂下、急に・・・」
俺はふと横に目線を送ると自分の横にある残骸が目に飛び込んできた。俺は全身の血の気が引くのを感じた。
「どうしたの?見てほしい品物があったから呼んだんだけど・・あ!その花瓶・・・」
坂下が口を手で抑えながら俺を見ていた。
「坂下!スマン!」
俺は素早く坂下に謝った。すると
「・・その花瓶は家にある品物の中でもかなり高い品物なの・・・」俺はさらに追い込まれた。ただでさえ数千万円級の高級品がゴロゴロある坂下の家で
「家の中でもかなり高い品物なの」
なんて言われたら俺はどうしようもない。恐る恐る坂下に
「ちなみにいくらなの?」
と小声で耳打ちすると坂下から同じく小声で耳打ちで返って来た答えはさらに俺を追い込んだ。この花瓶一つでこの家にある品物の十分の一が買えるらしい。花瓶の残骸を見つめている坂下に俺は
「坂下!すまない!俺が出来ることなら何でもするから!俺を許してくれ!」
と土下座をしながら必死に訴えた。しばしの沈黙の末、先に口を開いたのは坂下だった。
「・・・ならこの花瓶を弁償して・・・」
「・・すまない坂下、俺には無理だ・・」
なんせ額が額だ。
「・・だったら私のお願い聞いてくれる?・・」
「・・俺に出来る事なら何でも聞いてやる!」
と咄嗟に答えていた。この瞬間坂下は悲しい顔をしながら心のなかは(やった!これで祐樹は私の物)と喜んでいた。動揺しきっていた俺はそんな事は気が付くはずがなかった。
「だったらこの家で働いて!それなら許してあげる!」
「・・わかった、この家で働く事で許されるなら俺は必死に働く!」
と答えた。すると坂下は
「しっかり働いてね」
と少し笑って言った。 ・・・そして俺の平穏な人生は幕をとじた・・・。 こうして俺の坂下の家で働くことになったわけだ。もしかしたら俺は坂下に嵌められたのか?と一瞬思ったが花瓶を割ったのは自分の不注意であって坂下に罪はない。坂下は
「俺が坂下の家で働く事」
で許してくれるらしいので、ならば俺はそれに従うことにした。しかし俺の頭の中にいったいどれくらいの期間働けばいいのか?という一抹の不安が残ったが返済する額が額なので考えない事にした。 一方坂下は(あの花瓶は勿体なかったけどもっといいものが私の物になったかいいか、考えてた作戦は使わなくてよかった)と頭の中でとても喜んでいた。