第7話
「どうします? やっぱ病院に行った方が良くないですか?」
「いいから、さっさと行きなさいよ」
自室のベッドで、私はガバッと布団を頭から被った。
QCの最終審査が行われた翌日の土曜日。休日だった事もあり、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、私は強い眩暈を感じて自宅で倒れてしまった。
情無い自分に嫌気がさした私は、司の優しい気遣いを煙たがり、普段以上に『厭な女』になっていた。
最終選考の結果……信じられないって言ったら司に失礼なのかしら? そう。まさかとは思ったけれど、本当に司のチームは全国の頂点に上り詰めてしまった。司のチームは社内内部に向けての情報処理とその開示が高く評価されての表彰だった。
毎年開催されているQCの発表会だけれど、初めての全国一位表彰に部署は大いに盛り上がって活気付き、社員ひとりひとりのヤル気パワーが業務面での良い効果として反映されていた。
一人、私を残しては……
司の会心を喜ぶべきなのに、何故だか素直に喜べなかった。それどころか、得体の知れない不安を感じて心細くなってしまう。
司がこんなに近くに居るのに。
こんなに傍に来てくれるのに……
どのくらい経ったのかしら?
被っていた布団を軽く引っ張られて、そのまま寝込んでしまった私は、ぼんやりと眼を覚ました。
「あ? ……もうそんな時間なの?」
「うん」
私は外出の支度をして、妙にソワソワとして落ち着かない司の姿を眼で追った。
「先に連れて行くって言ってるのに、意地っ張りだなぁー。素直に医者に診て貰えば? 俺だったらそうするよ」
サイドテーブルに置いた氷水入りの洗面器から、タオルを硬く絞ると、司は私のおでこにそっと乗せた。
冷たくって気持ち良い。
「赤い顔して……熱、あるんでしょ?」
司はそう言って私の顔を覗き込み、ぐぐっと顔を近付けて来る。
「よ、余計な……」
「いいから」
「いくないっ……んふ?」
近付いて来た司の顔は、すこしも止まってくれなくて、私はそのまま唇を奪われた。
驚いて、咄嗟にもがこうとしたけれど、司は私の行動を見切り、素早く両手首を掴んでベッドに押さえ付ける。