第8話 空を支配する者
大柄な男が円壇の中央に立っている。
動かない。
巨大な塊。
山のような存在感。
シュウは空中で軽く体をひねる。
(重いタイプだな)
理解は速い。
遅い。
硬い。
受ける型。
なら――
「終わらせるか」
消える。
音より速い。
次の瞬間、
男の肩が裂ける。
血が飛ぶ。
シュウはすでに上空。
(入った)
再び急降下。
今度は背中。
男の背中が裂ける。
男は動かない。
ただ受ける。
「避けないのかよ」
三度目。
速度を上げる。
視界の外から喉元へ。
衝撃。
確実に入った。
だが――
倒れない。
男は一歩、後ろに下がるだけ。
それだけ。
(なんでだよ)
焦りではない。
違和感。
攻撃は通っている。
致命点も狙っている。
なのに、
“終わる気配”がない。
男はゆっくり顔を上げる。
目が静かだ。
怒っていない。
ただ、見ている。
「速いな」
低い声。
事実確認。
その瞬間、
シュウはもう一度上昇する。
高度を取る。
さらに高く。
空は自分の領域。
ここからなら、絶対に届かない。
(これなら負けない)
急降下。
今度は全力。
空気が裂ける。
円壇の水面が弾ける。
熊の脇腹に深く入る。
確かな手応え。
熊の膝がわずかに沈む。
(いける)
だが、次の瞬間。
男の足が、踏み込まれる。
水が跳ねる。
空気が、重くなる。
シュウは咄嗟に高度を取る。
遅れて衝撃波が走る。
地面がひび割れる。
もし直撃していれば――
終わっていた。
一瞬の理解。
だが、
空は自分のもの。
男は荒い呼吸をしながら立っている。
傷は増えている。
血も流れている。
だが、
折れていない。
「……まだ、届かないか」
男が呟く。
シュウは笑う。
「空は俺のもんだ」
上空。
完全優位。
男の攻撃は届かない。
シュウの攻撃は当たる。
男のダメージは蓄積している。
このまま削り続ければ――勝てる。
一方的な展開。
まさに必勝。
だが、
まだ、終わってない。
そしてシュウは、
男の“重さ”を知らない。




