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第17話 止まれなかった夜

夜の高速道路は、静かだった。


トラックのエンジン音だけが、

一定のリズムで響いている。


ゴォォ……。


ゴォォ……。


馬淵真人はハンドルを握ったまま、

小さく息を吐いた。


「……あと一件」


助手席に置いた伝票を見る。


配送先の名前。


時間。


荷物。


今日、四件目。


本当は三件の予定だった。


でも、


「すみません、代わってもらえませんか」


昼に電話が来た。


同僚だった。


子どもが熱を出したらしい。


真人は少し考えて、


「いいよ」


と言った。


それで終わりだった。


断る理由がなかった。


むしろ、


断る方が面倒だった。



信号を右に曲がる。


夜の工業地帯。


街灯の光が、

トラックのフロントガラスを流れていく。


時計を見る。


二十三時四十七分。


「……まあ、間に合うな」


呟く。


疲れていないと言えば嘘になる。


朝から走り続けている。


昼休みもほとんど取っていない。


でも、


それはいつものことだった。


仕事って、そういうものだ。


真人はそう思っている。


誰かがやらなきゃいけない。


だったら、


自分がやればいい。


それだけの話だ。



コンビニの明かりが見えた。


少し迷う。


止まるか。


コーヒーでも飲むか。


でも、


時計を見る。


あと三十分。


ここで止まると、


少し遅れる。


「……まあいいか」


アクセルを踏む。


トラックが少し加速する。



その時、


ふと


変な感覚がした。


景色が、


一瞬だけ


遠くなる。


「……?」


瞬きをする。


戻る。


問題ない。


疲れてるだけだ。


真人はハンドルを握り直す。


「帰ったら寝よ」


明日は休みだ。


久しぶりに何もない日。


家でゆっくりするのもいい。


洗濯もしないといけない。


冷蔵庫も空だった。


そんなことをぼんやり考える。



信号が黄色になる。


真人はアクセルを少し踏む。


止まるより、


抜けた方が早い。


トラックが交差点に入る。


その瞬間、


視界の端で、


何かが動いた。


横。


ライト。


近い。


「……え」


思った瞬間には、


体が動いていた。


ハンドルを切る。


ブレーキ。


タイヤが悲鳴を上げる。


キィィィィィ───!!


衝撃。


世界が、


一瞬で


白くなる。



時間が、


ゆっくりになった。


フロントガラス。


割れる。


破片。


光。


音が遠い。


真人は、


なぜか冷静だった。


ああ、


事故か。


そんなことを思う。


そして、


ふと


頭に浮かぶ。


「……あ」


荷物。


まだ届けてない。



体が重い。


視界が暗くなる。


遠くで


誰かが叫んでいる気がする。


でも、


もうよく聞こえない。


最後に、


真人は思った。


まだ、やることがあった。



そして、


意識が落ちた。



次の瞬間、


真人は


自分の部屋で目を覚ました。


「まだ終われない」


焦燥感を抱きながら神馬と共に走り


そして、黄泉前で消えた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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