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第11話 天辺

エンジン音が好きだった。


振動が体に伝わる感覚。


スピードメーターが上がっていく瞬間。


風が後ろへ流れていく。


追い抜く。


抜き去る。


置いていく。


それが、気持ちよかった。


シュウは昔から速かった。


走れば一番。


自転車でも、

陸上でも、

バイクでも。


努力というより、感覚だった。


「才能だよな」


周りはそう言った。


親も、

コーチも、

友人も。


彼は疑わなかった。


一番が普通だった。


負けることを、想像したことがなかった。


――あの日までは。


大会の予選。


ほんのわずかな差で二位。


記録は悪くない。


だが一位じゃない。


初めてだった。


表彰台の中央に立てなかったのは。


悔しい、よりも先に、


理解できなかった。


(なんでだ?)


練習は足りていた。


調子も悪くない。


それでも、


上には、もう一人いた。


その夜。


バイクを走らせた。


理由はない。


道路は空いていた。


信号もない。


速度が上がる。


もっと。


もっと。


もっと。


風になって。


目の前にガードレール。


一瞬の判断ミス。


タイヤが滑る。


視界が回転する。


アスファルトが迫る。


その瞬間。


彼は恐怖よりも、別のことを考えていた。


(もっと上に。)


衝撃。


音が消える。


光が遠ざかる。


そこで、本来は終わるはずだった。


だが、


終わらなかった。


目を開けた時、


そこは自宅の部屋の様な場所。


外は空がやけに青い。


風は吹かない。


黒い円壇。


そして声。


──最後まで勝てば、願いが叶う。


──負ければ消える。


願いは、もう決まっていた。


「天辺にいきたい」


名誉でもない。


金でもない。


誰かに勝ちたいわけでもない。


ただ、


天辺を見たかった。


自分がどこまで行けるのか。


まだ終わっていないと証明したかった。


彼は、


死を怖がっていなかった。


怖かったのは、


“ここで終わること”。


だから、


空を選んだ。


だから、


空に選ばれた。


そして、


輝く鷹と共に地面に落ちた。

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