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第八章 エルフとみんなで話しあおう

四人は、歩いていた。

ブリジットがいった。


「紹介したい魔法士がいるって?」

「うん。昔の仲間に聞いてみたら、知り合いに魔法士がいるって」

「なんだ。いるんじゃん、仲間」

「ガレスだけど…」

「アンタ、知り合いって、ガレスしかいないの?」

「もう、あなたまでイジるの?」

「いや、そんなつもりじゃ…」


ブリジットは軽く謝る。

ジョアンナは、どこか不安げな表情だ。


「腕は確かだと思うんだけど。ただ、ちょっと、…難があるらしいのよね」

「難? どんな?」

「うん。ちょっと情緒不安定らしくて…」

「大丈夫か? それ?」


エレノアが思わずいう。


「でも会ってみないことには始まらないしな」

「じゃあ、とりあえず、待ち合わせの店に行くわよ」


町の料理屋。

昼間から賑わうその店の片隅で、エルフの女がテーブルに突っ伏していた。

白銀の髪に尖った耳、そして山のように積まれた空ジョッキ。


「…もう一杯、くれ」

「また、昼から飲んでる…」


隣で呆れた声を上げたのは、金髪碧眼の美しいエルフ、ノーラだった。

彼女こそ、ジョアンナの元同僚ガレスと組む魔法士である。


「この人はアイナ。優秀な魔法士なんですけど…」

「優秀… なのか?」


エレノアが首を傾げた瞬間、アイナがむくりと顔を上げた。


「酒、持ってきた?」

「いや持ってないよ? てか、店員じゃねえよ!!」


アイナは空ジョッキをつかみ、目を細める。


「うるせえな… おまえが店員かどうかなんて、どうでもいい。はやく、酒持ってこい!」

「大丈夫か? こいつ?」


ノーラが、説明する。


「あの! 本当に優秀なんです! ただ! 今は休職中っていうか」

「ノーラか… 酒くれ… 酒…」


四人が呆然と見つめると、ノーラはあわてていった。


「優秀な人は、良いパーティーにすでに所属しているものですよね。優秀だけどパーティーに所属していない、ということは、つまり…」

「何か問題のある魔法士ってことか…」

「そう! そうです!」

「何があったんだよ」

「…アイナは、以前、人間たちのパーティーに所属していました。そこでは優秀な魔法士として仕事をしていたんです。でもある依頼で、洞窟の中のドラゴンに遭遇して…」

「うん」

「倒す実力のなかったメンバーたちは、自分たちを盾にして彼女を助けたんです。そして全滅してしまった」

「……」

「彼女のパートナーたちは、彼女のことを愛していました。あたしも見ていましたから、それは断言できます。でも、ギルドに帰って来た彼女は、裏切者エルフと呼ばれるようになってしまったんです。人間を見棄てて、一人だけ生き残ったエルフとして…」

「なぜ?」

「エルフへの偏見です。エルフの国から人間社会にきているあたしたちは、信用されていないんです。パーティー内ではどんなに信用されていようが、人間の一般冒険者からすれば、信用できない『出稼ぎエルフ』なんです」


その言葉に、一瞬空気が固まった。

ブリジットが慎重に問う。


「そういう風潮があるのは知ってるけど…」


ノーラが小さくため息をついた。


「アイナはパートナーが死んでしまったことは、もちろんショックだったけれど、そんなふうに思われたことは、もっとショックだったんです。それ以来、お酒が手放せなくなってしまって」

「…そういうことか」

「このままでは、彼女はダメになってしまいます。だから彼女を助けて欲しいんです」


ふと、アイナが笑っていった。


「ノーラ、やめときなよ。しょせん、人間なんて、エルフを信用しちゃくれない。真剣に愛したって、誠実に話したって、全部ムダさ」

「アイナ!」

「あいつらもバカだよな。実力のないエルフに騙されて…」


我慢できなくなったエレノアが、アイナの胸ぐらをつかんで立たせる。


「おい! 自分にウソをつくのは止めろ! そいつらのこと、愛してたんだろ!」

「今では、それも、後悔してるよ…」

「おいッ! 冒険者をバカにするなよッ! ここでは、誠実なヤツは、きっと報われる!」

「だったら、この闇はいつまで続くんだよ…」


その後、テーブルに突っ伏して眠るアイナを横目に見ながら、四人たちは相談した。


「どうする?」

「どうって…」

「わからないよ…」


それでも、四人は、アイナと組んでみることを、エディズに話してみることにした。

もちろん、すべてを話して。


「魔法士は、必要だからな…」


レジーナはそういって、エディズにアイナを加えることにした。

アイナも、それを承諾した。


「酒を買うにも、金が要るんだよ…」


初めての依頼の日。

久しぶりのまともな依頼をこなせるか、不安になったアイナは、酒を飲み、ベロベロになって現れた。


「なにやってるのよ!」


同行していたノーラが、アイナを叱った。


「他の人間たちがどう思ってるかなんて、どうでもいいでしょ! アイナは、あなたは、どうしたいのよ!?」

「あたしは… あたしは… 死んだアイツらのためにも、まともになりたい…」

「だったら! ちゃんとしなきゃ、ダメじゃない!」


そして、アイナにヒールの魔法を掛けて、酔いを醒まさせた。

そして、レジーナとスーザンを指さしていった。


「あの人たちは信用できる。アタシにはわかる。だから、ちゃんと仕事をして!」


アイナを愛しているのは、彼女も同じなのだ。


「うん。ごめん」


アイナは、二人に頭を深く下げていった。


「よろしくお願いします。真面目にやります」


レジーナが立ち上がり、アイナの手を握っていった。


「ようこそ。アタシらのパーティーへ」


そしてスーザンがいった。


「うちらも半人前なんだ。みんなで成長しようよ」


彼女たちは森に向かい、ボアの討伐に挑んだ。


「行くぞ!」


レジーナとスーザンが、ボアを見つけた。

レジーナが斬りかかり、スーザンが補佐する。

ボアが叫び声をあげると、仲間のボアが集まって来た。


「来るぞッ!!」

「まだまだ!!」


二人が斬りまくる。


「ファイアーボール!!」


そして、アイナも魔法で、ボアを倒す。


「す、すげえ…」


一瞬で何体ものボアが、黒焦げになった。


「やっぱ、魔法すげえな」


スーザンの感嘆に、アイナが得意げに笑う。

そのとき、生き残りのボアが、アイナを目がけて突進する。


「アイナ、避けろ!」


レジーナが叫び、飛び込む。

牙が掠め、レジーナの腕に血が滲む。


「チッ!」

「ありがとう。でも、キズが…」

「いちいち、礼なんていうな! 仲間だろ!」


スーザンが、ボアを斬り殺す。


「ヒールしてくれ」


アイナが治療する。

彼女は、本当に魔法の実力者だった。


「まだまだ、行くぞ!!」


そして、ボアを斬りまくった。


「…終わったな」

「疲れたあ!!」


そして、アイナが静かに笑った。


その夜。

ノーラが、酒場で彼女たちを迎える。


「どうだった、初依頼?」

「まあ、なんとかね…」


アイナが、ジョッキを掲げる。


「ありがとう。ノーラ」

「あたしは、何もしてないわ」


レジーナとスーザンがいった。


「乾杯!!」


ジョッキを飲み干して、アイナがいった。


「ちゃんと仕事した後の、酒は旨いな…」


レジーナとスーザンも微笑んだ。


「これからもっと、旨い酒が飲めるさ」


笑い声が夜の酒場に弾けた。

彼女たちの背中を、ギルドの窓越しにエンビヤージの四人が見ていた。


「…よかったね」


ミラベルが微笑む。


「うまく行きそうだな」


エレノアがいった。

ブリジットもいう。


「次は、アタシらも一緒に依頼を受けようぜ!」

「そうね」


ジョアンナが小さく笑った。


「強くなっていく彼女たちの姿を見たいわ」


エレノアがいった。


「アタシらも負けられねえぞ!」

「おお!」


こうして、新たな絆が静かに生まれた。

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