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第六章 他のパーティーとゴブリンを討伐しよう

今日の依頼はゴブリンの退治である。


「よっしゃあ! 今日も斬って斬って斬りまくるぞッ!」


洞窟の入り口で、栗色の髪を高く束ねたエレノアが大剣を担ぎ上げた。


「アタシも、バンバン焼きまくるよッ!」


ミラベルも気炎を吐いた。


「ミラベル、テンション上げるのはいいけど、今回は気をつけろよ」


鎖帷子を付けたブリジットがいった。


「そうよ。あなた前回、ゴブリンの耳をぜんぶ燃やして提出できなかったでしょう?」


ジョアンナが、冷静にいった。


「あれは… まあ… 勢いで…」

「ちゃんと火力を調整しなくてはダメよ。練習はしてるの?」

「まあ… 練習も… それなりに…」


エレノアが、即座にいう。


「コイツ、練習、やってませーん!」

「エレノアッ! ちょっ…」


焦るミラベル。

ジョアンナはいった。


「あなたは、素晴らしい魔法士だけど、さらに上のレベルに行くには、精度の向上が必要よ」

「はい。わかってます」


しょげる彼女に、ジョアンナはフォローを入れる。


「気をつけてくれれば良いの」

「今回は燃やしません! ちゃんと耳を残します!」


そんな調子で、四人は、今日も依頼に向かうのだった。


洞窟の奥からは、鼻をつく独特の匂いと、くぐもった笑い声。

ゴブリンの巣に間違いない。

だが、今日は彼女たちだけではない。


「おーい、アンタらがエンビヤージか? 先に行かせてもらうぜ!」


声の主は、銀髪のポニーテールに鋭い目をした女剣士レジーナ。

隣に並ぶ金髪のスーザンが、片手で剣をくるりと回す。


「剣士二人コンビ、エディズだよ! そっちは剣士二人に魔法と治癒師? へえ、まあ剣士だけの方がカッコイイけどね!」

「…は?」


ミラベルとジョアンナの声が重なった。

二人は、冒険者パーティー、エディズ。

今回のゴブリンの巣穴退治では、『四人では人数不足で危険』とギルド側が判断したので、共闘することになった。


ミラベルが、二人にいった。


「何それ、ケンカ売ってんの? 剣士の方が優れてるってこと?」


しかしレジーナはまるで気にせず、ニヤッと笑った。


「気にすんな。あんたらは魔法士のサポート付きパーティーだろ? 後方支援でも頼むぜ!」


その挑発的な笑みに、エレノアが剣を一瞬だけ動かした。

だが、ブリジットは、腕を伸ばして制止する。


「やめとけ。今回の依頼は、共闘案件だ。ケンカしてる暇があったら前を見ろ」

「チッ」


レジーナたちが先行し、洞窟の奥へと消える。

その背を見送りながら、ジョアンナがつぶやく。


「大丈夫かしら。二人とも若いけど…」

「まあ、火力調整が出来なくて、アイツらを燃やしちゃっても、事故ってことで…」

「おい。冗談に聞こえねえよ」


ブリジットがたしなめる。

そして、ジョアンナの予感は、五分後に現実となった。


洞窟の奥で、金属音と悲鳴が響く。


「うお!? クソッ、数が多い!」

「おいッ! ジーナ! 下がれッ!」


ゴブリン十数体に囲まれた、レジーナとスーザン。

剣の腕は確かだが、狭い洞窟では数に勝てない。


そこへ――


「ファイアーボールッ!」


ミラベルの詠唱と共に、紅蓮の炎がトンネルを駆け抜け、ゴブリンの群れを飲み込んだ。


「熱ッ!」

「おいッ! 殺す気かッ!」

「別にぃ。後方支援しただけですけどぉ…」


ブリジットがいった。


「根に持つなよ! 火球は牽制程度にして、あたしらに斬らせろ。耳が残らないから」

「わかりましたぁ」


ミラベルが叫ぶ。


「ファイアーボールッ!!」


それでも、二人が叫んだ。


「近い、近いッ!」


シレッとした顔で、ミラベルがいう。


「でも、遠いと撃つ意味ないしぃ…」


そして、また。


「ファイアーボールッ!!」


二人が叫ぶ。


「熱ぅッ!!」

「火力落とせよッ!」


逃げるゴブリンを、エレノアが追う。


「やああッ!!」


ゴブリン三匹を、一太刀で斬る。

ブリジットが滑るように踏み込み、その横のゴブリン二匹を斬り裂く。

レジーナとスーザンに歩み寄った、ジョアンナの手が青白く光った。


「ヒール!」


二人の傷と火傷が瞬時に治り、彼女が驚愕の目で見上げた。


「おお、すげえ…」

「今さら気づいたの? ほら、立って!」


ジョアンナが冷たく言い放つ。

だがその声には、どこか優しさが混じっていた。


エレノアが剣を構える。


「すごいのは、剣士もだよ!」


剣でゴブリンの群れを薙ぎ払う。

それを見たレジーナとスーザンも、後を追う。


「負けてられっかッ! 行くぞ、スー!!」

「もちろん!」


剣士たちは、ゴブリンを屠りまくる。

結局、洞窟はあっという間に静寂を取り戻した。

レジーナたちは息を切らせ、エレノアに向き直る。


「…悪かった。助かったよ」

「ま、いいってことよ! こういうのは、持ちつ持たれつ!」


そういって笑うエレノアに、レジーナは照れくさそうに笑い返した。

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