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第三章 四人でパーティーをやっていこう

冒険者としての評価が少しずつ上がり始めた四人。

依頼の幅も広がり、街を歩けば「エンビヤージが、また成果を出したらしいぞ」と噂されるほどになっていた。


「聞いた? トライスターのエンビヤージって」

「トライスター(三つの星)? あのパーティーは四人だけど…」

「そうだっけ? 剣士二人と魔術師一人だろ?」


ギルドの酒場でひそひそ声を聞いた瞬間、エレノアは立ち上がった。


「おい、今なんていった! うちの治癒師をナメてんのか!」

「ちょっと! エレノア!」

「落ち着け!」


ブリジットが、すかさず襟首を掴んで座らせる。

ジョアンナは、苦笑しながら首を振った。


「気にしなくていいわ。治癒師なんて、戦闘で目立たないものよ」

「でも…」

「大事なのは仲間が理解してくれること。外野の声は雑音よ」


その冷静さに、三人は改めて感心する。

だが、その静かな日々は長くは続かなかった。


ある日のことだ。

ミラベルに、男が話しかけてきた。


「やあ、きみがウワサの魔術師?」


背の高い冒険者だった。

整った顔立ちに優しげな笑み、軽装の鎧が似合っている。


「え …私?」

「そうだよ。ミラベルだよね? 俺はナイジェル・モートンっていうんだ」


ナイジェルは、軽く手を取って口づける仕草をした。

顔を真っ赤にして慌てるミラベル。


「えっ!? な、何してんのよ!」

「ごめん、つい。だって君があまりに可愛いから」

「か、可…!? わ、わわ…」


その場にいたエレノアとブリジットは同時に眉をひそめた。


「なんだ? このチャラ男」

「絶対にロクでもない」


ジョアンナも、冷たい視線を向ける。


「…用件は、何?」

「実は、君たちに共闘の依頼を持ってきたんだ。特に、ミラベル。君みたいな才能を持つ魔術師が必要なんだよ」


ミラベルの胸は高鳴った。

初めて真正面から「才能がある」と言われたからだ。


ナイジェルと別れた四人は、即座に会議を行なった。


「ダメ。あんなの」


ジョアンナは、即座に断った。


「な、なんで!? せっかくのチャンスだよ!」

「あの男には、何か別の理由があるわ。目が変だったもの」

「決めつけないでよ!」


ミラベルが、声を荒げる。


「ジョアンナはいつもそう! 私たちを子供扱いして、指図して!」

「理想のパーティーにしたいだけよ。それだけ」

「冒険者バカに、異性のことなんてわからないでしょ!」


空気が一瞬で凍りついた。

エレノアもブリジットも口を開けず、ジョアンナだけが静かに彼女を見つめた。


「…そうね。私は真面目なだけの『冒険者バカ』だから」

「……」

「冒険者バカには、意見をいう資格はないかしら」

「……」

「じゃあ、何をいってもムダね…」


そういって、ジョアンナは席を立った。


その夜。

宿のベッドに横たわりながら、ジョアンナは天井を見つめていた。


――借金は、もうすぐ返せる。

――注意を聞いてくれれば良いけど、口うるさいだけのイヤな人間と思われているだけなら、それは悲しい。

――しょせん後から加わったメンバーは、本当の仲間とは思われないのかもしれない。


かつての仲間ガレスとやり直せば、もっと冒険者として未来があるかもしれない。


彼女は、ソロ治癒師になる前は、ガレス・ローダムという男剣士と二人組のパーティーを組んでいた。

初めてのパートナー、初めてのパーティーだった。

しかし、知識もないことから、二人のパーティーは、まもなく立ち行かなくなり、それぞれ別の道を歩むことにしたのだ。

今でもガレスとは、たまに会って、近況を伝え合っている。

ガレスは所属している大所帯パーティーから、そろそろ独立したいと考えていた。

彼女も経験を積んだ今なら、私たちはやり直せるかもしれない…


けれど、この三人と過ごす時間は、確かに楽しかった。


ジョアンナの心は揺れていた。


いっぽう、エレノアとブリジットには、別の考えがあった。


「ねえ、エレノア」

「ん?」

「…あのナイジェル、絶対あやしいよね」

「まあね。ミラベルは魔術師としての能力は決して低くないけど、性格に難ありだからな。そこまで引き抜きたいかな…」

「おまえ、意外と… 冷静だな」

「今の間、何?」

「え? 間なんか、無かったよ?」

「いや、あった!」

「意外と… 何? 絶対『冷静』じゃなかったよね?」

「いやいや…」

「正直にいえよッ!」

「話が進まないから…」

「いえってッ!!」

「『根性悪いな…』って」

「ショッ…ク…」

「話が進まないだろッ! いえっていうからいったのにッ!」

「で?」

「ちょっと調べてみない?」

「いいね。賛成」


二人は翌日、さっそくナイジェルの後をつけた。

そして衝撃の光景を目にする。


「…おい」

「あちゃー」


エレノアは目を伏せた。

ナイジェルは、別の女冒険者と腕を組んで歩いていたのだ。

しかも、かなり親密そうに!

甘い言葉を、囁きながら…


「最低…」

「うん、最低だね」


すぐに二人は、ミラベルに会いに行った。

事実を教えられたミラベルは、顔を真っ青にした。


「う、うそ… 私、本気で…」

「だから、いったでしょ」

「ナイジェルなんて、もうどうでもいいけど… ジョアンナに、ワタシなんていいったらいいの?」

「なるはやでいいから、ちゃんと謝ってくれよ」

「わかってるけど、どうやって? 結構キツいこといったよ、ワタシ」

「そりゃあ、おまえ、ジョアンナの部屋に行ってさ。『おっす! ジョアンナ。まんす、まんす』って…」

「脳筋のエレノアは、それができるかもしれないけど…」

「誰が、脳筋じゃいッ!!」

「謝るつもりなら、早い方が良いわよ」


ブリジットもそういった。

しかし、なかなか決意ができなかった。

翌日、訪ねて来たエレノアがいう。


「え? まだ謝ってないの? 早く仲直りしてくれよー」


ブリジットもいった。


「こればっかりは、逃げてても解決しないわよ」


そんな中、ミラベルは、ジョアンナが、かつての仲間であるガレスと話しているのを目撃した。


(まさか… ジョアンナはパーティーを抜けちゃうの?)


不安に駆られたミラベルは、ガレスと別れてすぐのジョアンナの前に立った。


「ジョアンナ! この前は、ごめんなさい!」


深々と頭を下げた。

ジョアンナは目を丸くした。


「え? どうしたの? 急に」


だが、彼女は、すぐに小さく笑った。


「…いいのよ。私もいいすぎたから」

「だから、お願い… 行かないで。ジョアンナがいなくなったら、私たち…」


涙ぐむミラベル。

ジョアンナは思った。


彼女は本気だ。

本気で私を仲間だと思っている。


ジョアンナは心を決めた。


「わかったわ。私たち、もう一度、仲間として進みましょう」


そして、二人で、エレノアたちの所に向かった。


エレノアと、そして部屋にいたブリジットは、戸を開けた見た二人に微笑むと叫んだ。


「よっしゃあ!」

「仲直り完了だな」


こうして、四人は再び絆を取り戻した。

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